検死は十分で終わった。女二人を追い出し、私の遺体を裸にしてあちこち眺めたり触ったりしただけである。それも、粗大ゴミを扱うゴミ回収業者のようにぞんざいな手さばきである。やたら舌打ちしたり鼻で嘆息する。最後に許すまじきことだが、遺体の頭を指で弾いた。怒髪天を突くとはこのことである。私は拳でひたいを叩いて誰にも聞いてもらえない唸り声を上げると、猛然と医者の首を絞めにかかったが、もちろんどれだけ夢中にやっても私自身の手を支那人のように組み合わせるだけであった。医者は眉をぴくりともしない。死後の世界はまことに不条理である。彼は埃のようなものを摘み上げてポケットに入れると、隣室にいた女二人を呼び入れ、説明をした。
「急性アルコール中毒。ま、死にたくなったら、これくらい馬鹿酒をかっくらえばいいってこった」
私が絶望のあまり床に倒れこんだとしても、あながち責める人もいまい。この瞬間、私の死は数ある死に方の中でも最も間抜けな部類の事故として片付けられることになったのである。
寝ぼけ眼の人は喉元の無精髭を指で摘みながら、私の遺体に振り返った。
「こんな阿呆な格好で硬直したら、仏にもなれん。葬儀屋に連絡して矯正してもらいなさい」
美咲が大きなため息をついたのは、なにか安心したからに違いない。
「ありがとうございました」
美咲は深々と頭を下げた。美咲の背後にいた大仁田も慌ててお辞儀をしたが、そのまま視線を落として、爬虫類の尾っぽの眉をしきりにひそめた。
(つづく)
「急性アルコール中毒。ま、死にたくなったら、これくらい馬鹿酒をかっくらえばいいってこった」
私が絶望のあまり床に倒れこんだとしても、あながち責める人もいまい。この瞬間、私の死は数ある死に方の中でも最も間抜けな部類の事故として片付けられることになったのである。
寝ぼけ眼の人は喉元の無精髭を指で摘みながら、私の遺体に振り返った。
「こんな阿呆な格好で硬直したら、仏にもなれん。葬儀屋に連絡して矯正してもらいなさい」
美咲が大きなため息をついたのは、なにか安心したからに違いない。
「ありがとうございました」
美咲は深々と頭を下げた。美咲の背後にいた大仁田も慌ててお辞儀をしたが、そのまま視線を落として、爬虫類の尾っぽの眉をしきりにひそめた。
(つづく)
はじめまして。
人(私)はどこから来て
何のために生きて
どこへ向かっているのだろう・・・?。
この世界の終末はどうなるのか?
私は、若い頃から人生についていろいろ考え、
人間はどこから来て、何のために生きて
どこに向かって生きているのかを問い続けて来ました。
神の存在、人生の意味は何か、いのちと死の問題」など
について、初心者にも分かりやすくブログでキリストの福
音を書き綴っています。
どうか、時間のあるとき、ご訪問ください。
http://blog.goo.ne.jp/goo1639/
阿是さんらしくて感動です