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た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

老夫婦

2009年10月05日 | 写真とことば
 原因のない悲しみはめったにないが、原因のない喜びはときとしてある。たとえば、ただ、じっとして一日を過ごした夕暮れ時。

 喜びか悲しみかはっきりしない感慨というものもしばしばある。たとえば、あくせくと続けていた何かを、ふとやめ、立ち止まったその瞬間。

人生の増加

2008年08月19日 | 写真とことば
ひとりと ふたりは

そんなにちがうんだろうか

月の重たく熟れた冬

そのちがいも わからぬままに

ひとりと ふたりは 

それでもちがうんだろうか

えのころ草の揺れる夏

そのちがいを わすれたままに

本籍戸籍

入籍奇跡

去来する流れ星の多すぎる今宵

わたしは わたしと もうひとりと

血のにおいのする象牙のやじりで未来を刻した。



 

渓流にて

2008年07月30日 | 写真とことば
両あしを 残してゆきたし 岩清水


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忙殺の夏が今年もやってくる。
働いているか寝ているか
という日々がまた始まる。
精神の覚悟は出来ている。しかし、
頼るところはわが身の体力である。
その体力に虫刺されのような
気懸かりを覚えるここ数年来。

ある人の言葉(46)

2007年12月17日 | 写真とことば
bar■では、ときどき他客の会話がジャズ・セッションのようにほろ酔い心地に鳴り響く。

──本当に惹かれてたら、退かれてもいいじゃん。

 なかなかの名言と思われるこの一女性の言葉を、結婚式の二次会集団は式で出たロブスターのように黙殺した。

──でも、

 とすぐにリーダー格の男が話の続きを引き受ける。

──田んぼは売っちゃいかん。まあ飲めよ。でも、田んぼは売っちゃいかん。

 二杯目のドリンクが行き渡る。もちろん頼まない人もいる。

──わたし、どっちかというと、空気がやわらかい人が好き。

──でも、土地を手放しちゃいかん。

 さあ、そろそろカウンターのカラス貝は退散するとしましょうか。マスター、勘定を。
  
    え? うん、外は寒いと思うよ。  仕方ないよ。  メリー・クリスマス。