大島恵真(おおしま・えま)の日記

児童文学作家・大島恵真の著作、近況を紹介します。
絵本作家・大島理惠の「いろえんぴつの鳥絵日記」もこちらです。

児童文学評論で紹介していただきました

2019年02月04日 | ごあいさつ
新刊児童書のメールマガジンの「児童文学評論」で、作家のひこ・田中さんが、『107小節目から』を紹介してくださいました。つたない作品ではありますが、たいへんうれしかったです!
うれしいことは最初から最後までですが、主人公の由羽来が「本当は音楽をやりたい」と書かれていることは、そう、それがいちばん書きたかったんだ、と心にすとんと落ちて、ありがたかったです。

この作品は、前述したとおりつたなく、それは、自分の家庭内DVの体験をほぼそのまま書いたものなので、ベースが「物語ではない」というところです。
もっとひどい(書けない)こととかもあり、そこをどう物語にするかに悩んで、矛盾点を解消していったらページ数が初稿の三倍くらいになってしまい、そこからまた削りました。

この作品の前にも、絵本、児童書を出させていただいており、これからの方向性も決まっていたところに、急に、これを書きたいと思い、書いてからわかったことは、ここがゼロ地点なんだということでした(最初に同人の合評会に出したときは、『ゼロ地点から』というタイトルでもありました)。

過去にも、カルチャースクールの小説講座に通って、同じようなテーマで書いたら、ほとんどの方から、「こんなので絶望したと思うな」「自分はもっとひどい目にあっている」とさんざんに言われ、そのときは、私はただ自分の悲しみと家族の愛しさを書きたかっただけなのに、他の人は関係ないのになんで?と不思議に思ったものでした。

悲惨なテーマというのは、読者の方を何かしら刺激するのかもしれないと気づきました。
私が思ったのは、人の悲しみや悩みは、相対化できないということで、ある人にとってはそんな程度で…と思うことでも、本人にとっては、一回、ゼロ地点に落ちて悩みまくらないと、前に進めないものでもあるのだろうということでした。

しかし、過去でも現在でも、いろいろな反応があって、はじめて気づけることもたくさんあります。いろいろ言ってもらえるのは、やはり、感謝感謝です。今回も小説として本になって多くの読者に読まれるのだから、なるべく明るく、楽しく、希望をもって読み終わってもらえるよう、5回くらい改稿しまくっていました。
成功したかどうかはちょっと不安ですが…、笑っていただける要素もあったらうれしいです。

また、私の経験したDVや貧困はそうたいしたものではないかもしれないけれど、私は、同じ経験をした人や、そういうことを加害的にしてしまう人の気持ちも、少しはわかるかもしれないと思いました。
そういう人たちに必要なのは、心を言語化して整理することだとも思います。
私の書いた本を誰に読んでほしいかといえば、自分と同じような経験をした子どもですが、おとなの方にも読んでいただけたらうれしいです。

次作目は、まったくちがうエンタメをめざしていますが、同じ人間が書くので、ある程度貧困とかは入ってくるかも…。
音楽は、これからもずっと書いていきたいと思っています。
音楽と文学があって、私は救われました。あとは、友だち、社会に出てからの人々、たくさんの人に救われました。

今後は、ここをゼロ地点として、楽しい世界を書けるよう精進してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!

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