釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「帝国の衰退と高価な妄想」

2024-03-19 19:18:51 | 社会
昨日のビル・トッテン氏訳「Empire Decline and Costly Delusions(帝国の衰退と高価な妄想)」。執筆はリチャード・デイビッド・ウルフRichard D Wolffマサチューセッツ大学経済学名誉教授。3月11日、Information Clearing House掲載の同名記事。


ナポレオンがヨーロッパの陸戦でロシアと交戦したとき、ロシアは断固とした防衛を行い、フランスは敗北した。ヒトラーが同じことを試みた時、ソ連は同じように対応し、ドイツは負けた。第一次世界大戦と革命後の内戦(1914~1922年)では、まずロシアが、次にソ連が、侵略者の計算をはるかに上回る効果で2度の侵略を防いだ。その歴史は、特にロシアが脅威を感じて自国を守る決意を固めたときに、米欧の指導者たちにロシアと対峙するというリスクを最小限にするよう警告になるべきだった。

西側諸国(ほとんどのG7諸国:米国とその主要同盟国)の集団は、警告の代わりに妄想によって誤った判断を促した。このような妄想は、21世紀における西側諸国の相対的な経済的衰退を否定する動きが広まったことが一因である。その否定はまた、衰退が西側諸国の集団的なグローバルな行動に限界があることを盲目にした。妄想はまた、ロシアの防衛力と、その結果として生じるコミットメントに対する基本的な過小評価からも生じていた。ウクライナ戦争は、衰退と、それが助長する高価な妄想を端的に示している。

米国とヨーロッパは、ロシアがウクライナで軍事的に勝つために何ができるか、何をするかを本気で過小評価していたのだ。ロシアの勝利は、少なくとも2年間の戦争の後、今のところ決定的なものとなっている。彼らの過小評価は、変化する世界経済とその影響を把握・吸収することができなかったことに起因する。米国とヨーロッパは、中国やBRICSの台頭によるアメリカ帝国の衰退を大したことないと考え、あるいは無視するか、単に否定することでその衰退が意味するものを見逃したのだ。ロシアの同盟国の支援は、自国を守るというロシアの国家的決意と相まって欧米の集団が多額の資金と武装を提供したウクライナを今のところ撃退している。歴史的に見て、衰退する帝国はしばしば否定と妄想を引き起こし、国民に「厳しい教訓」を教え、「厳しい選択」を迫る。私たちは今、そこにいる。

アメリカ帝国衰退の経済学は継続する世界的背景にある。BRICS諸国のGDP、富、所得、世界貿易に占める割合、そして新技術の最高レベルにおける存在感はG7のそれをますます上回っている。この絶え間ない経済発展は、G7の政治的・文化的影響力の低下をも縁取っている。2022年2月以降の米国とヨーロッパの大規模な対ロシア制裁プログラムは失敗に終わった。ロシアは特にBRICSの同盟国を頼りにして、これらの制裁が意図した効果の大半を迅速かつ包括的に免れたのだ。

ガザでの停戦問題に関する国連の投票は、中東と世界における米国の立場が直面している困難の高まりを反映し、補強している。紅海航路へのフーシ派の介入もそうであり、イスラエルに対抗するパレスチナを支援するアラブやイスラムのイニシアティブも同様である。世界経済の変化からもたらされる結果の中には、アメリカ帝国を弱体化させ、弱体化させるものも多い。

トランプ大統領がNATOを軽視するのは、帝国の衰退を食い止めることができなかった責任を追及できる機関に対する失望感の表れでもある。トランプとその支持者たちは、かつてアメリカ帝国を世界的に運営する上で極めて重要だと考えられていた多くの制度を幅広く格下げしてきた。トランプ政権もバイデン政権も、中国のファーウェイ企業を攻撃し、貿易戦争と関税戦争へのコミットメントを共有し、競争力のある米国企業に多額の補助金を出した。これは、新自由主義的グローバリゼーションから経済ナショナリズムへの歴史的転換が進行していることに他ならない。かつて全世界が対象だったアメリカ帝国は、複数の新興地域圏と対峙する、単なる地域圏へと縮小しつつある。世界の残りの国々、つまり地球上の人々の「グローバル・マジョリティ」となりうる国々の多くが、アメリカ帝国から離れつつあるのだ。

米国の指導者たちの積極的な経済ナショナリズム政策は、帝国の衰退から目をそらし、したがってその否定を促進している。しかしそれはまた新たな問題を引き起こす。同盟国は、米国の経済ナショナリズムがすでに自国と米国との経済関係に悪影響を及ぼしているか、近いうちに悪影響を及ぼすことを恐れている。多くの国々が、対米経済関係やその将来への期待を見直し、再構築している。「アメリカ・ファースト」の標的は中国だけではない。多くの国々が、米国との経済関係やその将来への期待を見直し、再構築している。同様に、米国の主要雇用主グループも投資戦略を再考している。過去半世紀の新自由主義的グローバリゼーションの熱狂の一環として海外に多額の投資を行った企業は、特に恐怖を感じている。彼らは、経済ナショナリズムへの政策シフトによるコストと損失を予測している。彼らの反発はこうしたシフトを遅らせる。どこの国でも、資本家たちは変化する世界経済に現実的に適応していくが、同時に変化の方向性やペースについても論争を繰り広げる。その結果、世界経済はさらに不安定化し、不確実性とボラティリティが増大する。アメリカ帝国が崩壊すれば、かつて支配し、強制していた世界経済秩序も同様に変化するのだ。

「アメリカを再び偉大に」(MAGA)というスローガンは、常に曖昧で一般的な言葉を注意深く使うことで、アメリカ帝国の衰退を政治的に武器化してきた。彼らはそれを別の妄想の中で単純化し、誤解している。トランプは、その衰退を元に戻し、逆転させると繰り返し約束している。トランプはその原因となったものを罰するだろう:中国だけでなく、民主党、リベラル派、グローバリスト、社会主義者、マルクス主義者など、彼がブロック形成戦略でひとくくりにしている人々をも罰するだろう。G7の衰退の経済学に真剣に注目することはめったにない。そうすれば、資本家の利益主導の決定が衰退の主要因であることを決定的に示唆してしまうからだ。共和党も民主党もあえてそれをしない。バイデンは、あたかも世界経済における米国の富と権力の地位が、20世紀後半(バイデンの政治家としての生涯の大半)にわたって衰えることがなかったかのように発言し、行動している。

ロシアとの戦争でウクライナに資金を提供し武装させ続けることも、イスラエルのパレスチナ人に対する扱いを支持し支援することも、変化した世界を否定することを前提とした政策である。どれも目的を達成することができていない経済制裁を次々と行っていることもそうである。関税を使って、より優れた、より安価な中国製電気自動車を米国市場から締め出すことは、米国の個人(中国製電気自動車の高い価格によって)や企業(安価な中国製自動車やトラックを購入する企業との世界的な競争によって)に不利益をもたらすだけである。

おそらく、長年にわたる衰退の否定から来る、最も大きく、最も代価の大きい妄想は今度の大統領選挙であろう。二大政党とその候補者は、自分たちが率いようとしている帝国の衰退にどう対処するかについて真剣な計画を示していない。両政党が交代で衰退を主導してきたにもかかわらず、2024年にどちらの政党が提示するのも否定と他方への非難だけである。バイデンは帝国が衰退していることを否定するパートナーシップを有権者に提案している。トランプは、民主党の悪いリーダーシップによって引き起こされた衰退を元に戻すことを漠然と約束している。いずれの党も、変化する世界経済を冷静に認め、評価し、それぞれがそれにどう対処するつもりなのか、何も示していない。

G7の過去40~50年の経済史を見れば、富と所得が極端に上方に再配分している。こうした再分配は、新自由主義的グローバリゼーションの原因としても結果としても機能した。しかし国内の反応(経済的・社会的分裂はますます敵対的で不安定になっている)と海外の反応(今日の中国とBRICSの出現)は、新自由主義的グローバリゼーションを弱体化させ、それに伴う不平等に挑戦し始めている。米国の資本主義とその帝国は、変化する世界の中で、まだその衰退に直面することができない。社会の頂点に君臨し、権力を維持・回復しようとする妄想が、妄想的な陰謀論や政治的スケープゴート(移民、中国、ロシア)と並んで下層部で蔓延している。

その一方で経済的、政治的、文化的なコストは増大している。そしてあるレベルでは、レナード・コーエンの有名な歌のように、「誰もが知っている」。

メジロ

「中国の対EU、対米輸出減少が示す欧米経済の衰退」

2024-03-18 19:18:35 | 社会
昨日は最高気温が17度と久しぶりに暖かい日になったが、今日は一気に気温が10度下がった。昼には小雪も舞った。内陸は雪だ。予報では水曜、木曜にも雪が少し降るようだ。気温が7度の昼に外に出たが、小雪も舞い、風が冷たく寒かった。川では水鳥たちがまだ多く見られた。 ロシアの大統領選挙が終わった。今日のロイターは、「「反プーチン」行動で投票所に行列、ナワリヌイ氏支持者呼びかけ」を載せている。16日には、「ロシア大統領選「今回が最も透明性低い」=選挙監視団体」を載せていた。「選挙監視団体「ゴロス」のスタニスラフ・アンドレイチュク共同議長は、15日から始まったロシア大統領選挙は、ロシアがこれまで経験した中で最も透明性の低い選挙と述べた。 ゴロスはロシアで外国のスパイを意味する「外国の代理人」に指定されている。」とある。わざわざロシアが「外国の代理人」指定した団体の見解を取り上げている。イーロン・マスクは、16日、レガシーメディアの中で英国ロイター通信を世界で最も嘘をつくメディアだとXに書き込んでいた。確かに今日のロイターも嘘を報じている。ロシアは国外のロシア大使館でも投票を受け付けており、ロイターの報じた「行列」はそうしたロシア大使館での投票の行列の1つだ。昨日モスクワ時間10時の時点で、111カ国のロシア大使館、領事館で12万5428人が投票している。ロシアの大統領選挙では選挙ごとにプーチンの得票率が概ね増えている。2000年53.4% 、2004年71.9% 、2012年63.6%、 2018年76.6%、2024年:87.85%。ロシア国民がプーチンを支持する理由は、国民生活が年を追って豊かになっているためだ。特に貧困率は大幅に改善された。習近平への支持率が高いのも同様で、生活が豊かになり、腐敗や汚職が撲滅されているからだ。中国の国民は日本などよりずっと自己主張が強い。不満があれば黙ってはいない。習近平もそれをよく知っている。日本や米国のように国民が貧しくなって行くと、政治リーダーの支持率は最低となる。米下院の「エネルギー・商業委員会」において、ソーシャルメディアTikTokに対する法案が50:0という圧倒的な賛成多数で可決された。法案可決後180日以内にTikTokの親会社ByteDance社がTikTokを売却するか、TikTokを米国内で禁止することを要求している。ByteDance社のCEOは、もし法案が成立すれば、TikTokを売却せず、米国から撤退しると表明している。TikTokは米国で最も普及したSNSであり、特に若年者の支持が多い。検閲や削除がほとんどないためだ。米国はソフト(TikTok)も、通信(HUAWEI)も、ハード(EV)も米国を越えようとすると、証拠もなく「安全保障の脅威」を名目に排除しようとする。自由な競争など棚上げだ。日本の自動車、半導体も同じ手で潰された。ユダヤ系米国人が立ち上げたメディアBreitbartは、16日、「Pinkerton: Why Only 16% of Americans Have Confidence in the Federal Government and What to Do About It(ピンカートン:なぜアメリカ人の16%しか連邦政府を信頼していないのか、そしてそれに対して何をすべきか)」を載せている。米国の格差は極めて拡大しており、大量移民を流入させ、物価が高騰し、実質所得が目減りしている。国内の対立も激しくなっている。世界に展開した軍隊は維持費も莫大で、その実、軍事技術の劣化が進んでいる。何度も事故を起こしたオスプレイだけでなく、F35も同じだ。昨日のZeroHedgeは、「70% Or More Of F-35s May Not Be Combat-Capable(F-35の70%以上が戦闘不能の可能性)」を載せている。米国政府説明責任局によるF-35の監査結果で、 F-35の任務遂行可能率は85~90%が目標となっているが、故障頻発で実際の任務遂行可能率は55%、フル任務遂行可能率は28%、 配備されたF-35のうち72%は、何らかの不備を抱え、フル任務を遂行出来ないことが明らかにされた。ボーイングは軍需産業でもあるが、ボーイングの旅客機が2週間で7回も故障で正常な飛行が中止されている。米国の劣化が随所に見られるようになっている。今日のオーストラリアPearls and Irritationsが、「China’s falling exports to EU, US signals West’s economic decline(中国の対EU、対米輸出減少が示す欧米経済の衰退)」を載せている。執筆者について、「ジェリー・グレイJerry Greyは元英国警察官で、オーストラリアを拠点とする多国籍警備会社で17年間ゼネラル・マネージャーを務めた。20年近く中国に住み、働き、旅行し、勉強してきた。異文化間チェンジ・マネジメントの修士号を取得。ジェリー・グレイは中国南部広東省在住のフリーライター。」と書かれている。

中国の対EU輸出が減少し、中国の対米輸出が急減し、その結果、中国が崩壊の危機に瀕しているという悪いニュースを、欧米のメディアは間違いなく目にしたことだろう。

さて、数日前に国務院から発表された声明がある:「中国の1月と2月の対外貿易は8.7%増加した。中国からの輸出は10.3%増、輸入は6.7%増で、昨年の最初の2ヶ月はすでに高水準だった。

同じ数字について、世界銀行は次のように述べている:「米国の中国からの輸入は、製品の比較優位性が明らかになった大規模な発展途上国からの輸入に取って代わられている。中国に取って代わる国々は、中国のサプライチェーンに深く組み込まれている傾向があり、特に戦略的産業において、中国からの輸入の伸びが加速している。別の言い方をすれば、輸出面で中国に取って代わるためには、各国は中国のサプライチェーンを受け入れなければならないということである。

簡単に言えば、これは世界経済が今変わりつつあることを意味する。中国の近代経済成長の歴史の大半、つまり開放改革以降、そして世界貿易機関(WTO)加盟以降、中国にとって最大の市場は、今年7%減少した米国、同じく6.8%減少したEU、そして2.5%減少した日本といった先進国だった。

EUの多くと日本、そして英国は経済の低迷に見舞われており、その中には中国から買える(あるいは買えない)ものも含まれている。ひとつは、中間層から低所得層、さらには貧困層へと転落する人々が増えていることで、欲しいものを買う余裕がなくなっている。

これはメキシコとの貿易額ほど明白なものはない。『アジア・タイムズ』紙は、中国の対メキシコ輸出の増加が、メキシコの対米輸出とほぼ完全に一致していることを明確に示す見事なグラフで、このことを指摘している。


中国の最大の貿易相手国は現在、すべてASEANかBRICSの加盟国である。ASEANは発展途上国を中心とする東南アジア諸国、BRICSは新興経済国で構成されている。


何世紀もの間、貧困にまみれ、欧米列強に搾取され、植民地化され、場合によっては国民を奴隷にさえされて来た国々が、今や経済的食物連鎖の頂点に立ちつつあるのだ。

先進国は早くから工業化を進め、軍事的に強大な力を持ち、その力によって弱小国の資源を利用して自らを豊かにして来た。数百年にわたり、弱小国は豊富な資源と現地の豊富な労働力から利益を得ようとしたが、経済的には貧しいままだった。中国が今週初めに発表したニュースは、この状況が変わり始めていることを示している。

これが、世界銀行のエコノミストが言う本当の意味だ:「輸出面で中国に取って代わるためには、各国は中国のサプライチェーンを受け入れなければならない」。発展途上国や低開発国は、資源や製品、そしてそれらを製造するために必要な労働から得られる利益のより大きなシェアを取るようになっているのだ。

先進国の消費者にとっては、デパートで製品を買おうとすれば、メイド・イン・チャイナのラベルを避けることは出来ても、タグを避けることは出来ないと言うことだ:「この製品には中国製の部品や材料が含まれている可能性があります。」

国家安全保障の観点からは、チタン、タングステン、リチウム、コバルトなど、必要とされる多くの材料が不足することがすでに強調されている。これらの不足は、資源がないため地元では埋められず、グローバル・サウスと呼ばれる地域まで行って製品を購入する必要がある。しかし、その場合、中国の融資を受け、中国が建設した加工工場を通じてこれらの多くを購入することになる。米国の国防ニュースでは、武器に使う弾薬の材料不足が報じられているが、その理由は、多くの製品を中国に頼っている、あるいは頼っていたからだ。

例えば、中国は世界のコバルトの77%を生産しているが、残りの大部分はコンゴ民主共和国が支配している。コンゴ民主共和国でコバルトを採掘している最大の企業はユーラシアン・リソーシズ・グループで、彼らの加工工場は一帯一路構想の投資であり、第2位の生産者は中国が所有するテンケ・フングルメである。

ある報告書によれば、中国はアフリカ全土で63もの港湾を、財政的利益、運営上の役割、あるいは完全に支配していると言う。デボラ・ブラウティガムが簡潔に指摘したように、この状況はアフリカ人を借金に陥れるためでも、支配権を得るためでもなく、アフリカと中国の間の互恵的な貿易を強化するためである。また、先進国がアフリカとの貿易を望むなら、ほぼ間違いなく、少なくとも中国からある程度の影響力や支配力を持つ港を経由することになるだろうし、将来、ほぼ間違いなく中国が建造することになる船舶を利用することになるだろう。

そして、アフリカの港から製品を積んで出港する船はすべて、輸出税、船積み料、ハンドリング料、そして製品が出港する際にその国に残る輸送料を通じて、出港する国に利益をもたらしている。

アジアやアフリカだけでなく、中南米や太平洋島嶼国も中国との貿易を拡大し、関係を強化している。

これは中国にとって良いニュースであり、発展途上国の多くにとっても同様に良いニュースである。しかし、「衰退する世界」という新しい言葉が辞書に載るのを避けるためには、変化が必要であることを示す憂慮すべき兆候に違いない。



「大統領」が存在しない米国

2024-03-16 19:16:16 | 社会
ハーバード大学教授からコロンビア大学地球研究所所長を務めたジェフリー・サックスJeffrey D. Sachs教授は、ナポリターノNapolitano判事の主催するJUDGING FREEDOMで、「ケネディ暗殺の後、大統領は誕生しなかった。それ以来、大統領はシステムの雑用係でしかない。」と述べている。要するに米国は、ケネディ以後、すべての大統領が軍産複合体や超富裕層によってコントロールされて来た。民主主義や人権を唱える米国が、世界で最も多く他国に軍事介入し、多くの他国政府を転覆させて来た。昨日から明日まで広大な国土を持つロシアで大統領選挙の投票が行われている。昨日の日本のTVでは、兵士に見守られる中で投票を強制さているとして報じていた。解放されたばかりのアヴディフカでは、ウクライナ軍の攻撃に備えて、確かにロシア軍の兵士や市民活動家が投票所を守っていた。しかし、ロシアの安全な投票所では世界各国から訪れた国際監視員が全国の投票所に配置され、投票所の様子が無料でライブ配信されており、こうした事実は日本のメディアでは全く報じられることはない。米国の2020年の大統領選挙では、夜中に監視員も付けずに親子で開票作業が可能で、開票所の様子が外から見えないように窓が隠され、集計所に民主党議員がいても排除されず、1人で投函箱に不自然に大量の票を入れても問題視されず、郵便投票で投票用紙が紛失し、有権者ではない人の票がカウントされ、死者の票までもカウントされ、優勢だったトランプに代わり、最終的にバイデンの票がジャンプした。どちらが民主的か明らかだろう。日本製鉄による米国のUSスティール買収を米国政府は阻止しようとしている。昨日のNHKは「バイデン大統領 日本製鉄のUSスチール買収に否定的な考え示す」を報じている。米国企業が日本の企業を買収することは問題視せず、自国企業が日本の企業に買収されると抵抗する。ソーシャルメディアTikTokは、米国で急速に広がり、特に若年者の間で支持された。しかし、米国はTikTokが中国企業であり、情報漏洩する危険があるとして、TikTokを禁じるか、米国企業が買収するとしている。米国のソーシャルメディア、FaceBook、Google、以前はTwitterなどは国防総省の介入を許し、検閲を行なっている。TikTokのみはその検閲を認めず、イスラエルによるガザ虐殺動画などを多く載せている。米国のメディアはソーシャルメディアを含めてほとんどのメディアがイスラエル国籍の人物により運営されている。昨日の日本のNewsSharingは、「【悲報】インターネット投稿で昨年逮捕された人、ロシアは400人、イギリスは3300人だった 𝕏「プーチン政権の方がイギリス政府よりまともやんけ、どっちが独裁なんだか」「民主主義と言論の自由どこいった?」 」を載せている。日本や欧米の政治家は超富裕層の利益のために動き、超富裕層の利益に不都合となる言動を検閲、排除する。国会を無視して多くを閣議決定している日本の政治も、もはや民主主義を投げ捨てている。13日、X(旧Twitter)のWall Street Silverは、元CIA諜報員フィリップ・エイジPhilip Ageeが語る動画を載せている。「"In the CIA, we didn't give a hoot about democracy"(「CIAでは民主主義などどうでもよかった」)、 "It was fine if a government would cooperate with us"(「政府が我々に協力すればそれでよかった」)、"But if it didn't, then democracy didn't mean a thing to us"(「しかし、そうでないなら、民主主義に意味はなかった」)、"And I don't think it means a thing today"(「そして今日、民主主義が意味を持つとは思わない」)と語っている。1月14日のNewsSharingでは、「エマニュエル駐日米大使が内政干渉「日本はロシアの天然ガス買うな」」を載せたが、米国はロシアからの原油輸入を再開している。米国は原発や核爆弾に必要なウランもまたロシアから輸入している。要するに米国は常にダブルスタンダードであり、自国の超富裕層に都合のいいようにそれを使っているだけだ。昨日、ハンガリーメディアRemixは、「Germany is running out of money and debt levels are exploding, warns country’s finance minister(ドイツは資金不足に陥り、債務残高は爆発的に増加していると財務相が警告)  Germany is facing a debt time bomb, but the current ruling government has no appetite for serious budget cuts(ドイツは借金の時限爆弾に直面しているが、現政権は深刻な予算削減の意欲がない)」を載せた。日本も米欧も軍産複合体に利益が出るようにウクライナを利用し、国民を貧しくし、国の財政を悪化させ続けている。昨日のNewsweek日本版は、「日本のGDP「4位転落」は危機的状況...最大の問題は、「一喜一憂する必要なし」という認識の甘さだ」を載せた。「日本のGDPがドイツに抜かれ、世界順位は4位に転落した。以前から予想されていた事態ではあったが、最大の問題は経済界にまったくといってよいほど切迫感がないことである。 多くのメディアでは、日本のGDPがドイツに抜かれたと報じているが、これは正しい認識とは言えない。諸外国の中で日本だけがほぼゼロ成長であり、他国は普通に成長しているので、日本の順位が一方的に下がっているにすぎない。 このままの状態を放置すれば、近くインドに抜かれる可能性が高く、中長期的にはブラジルやインドネシアなどに追い付かれることもあり得るだろう。これは異常事態であり、日本経済は危機的状況にあるとの認識が必要だ。」とある。14日には、「TSMCが人材を独占し、日本企業は生き残れなくなる? 高給だけじゃない「熊本工場」の衝撃度」も載せている。「工場とはTSMCとソニー、デンソーが共同出資したJASM(ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング)だ。投資総額約86億ドルのうち、日本政府からの補助金は最大4760億円で、日本で最先端の半導体工場になると同時に、過去最大の半導体投資プロジェクトでもある。」、「JASMは現時点で半導体チップで月産5万5000枚、プロセス技術は28~10ナノメートルの間を予定している。TSMCアリゾナ工場の投資プロジェクトと違うところは、TSMCがJASMの全株式を保有するのではなく、株式保有構造上、TSMCが50%超、ソニーが20%未満、デンソーが10%超となっている点だ。 TSMCは現在、中国とアメリカと日本で大型工場を建設しているが、JASMは現時点でTSMCが顧客と共に設立した唯一の合弁会社である。この点から、このプロジェクトに特別な意義があることが分かる。」、「シーシー・ウェイの言う「ある顧客」とはソニーだ。ソニーは世界最大のCISサプライヤーで、アップルにCISを提供している。 そのアップルはTSMCの営業収入の26%を占める最大顧客で、アップルのスマートフォンやタブレットには相当数のCISが使用されているため、もしCISが手に入らなくなったらアップルはこうした製品を販売できなくなる。つまり、ソニーを支えるために日本に工場を構えるということは、アップルを支えるのと同じことなのだ。」。結局は日本は他国の超富裕層の利益のために国費を投じているだけだ。
ボケ

「ロシアに対する恒久的な敵意」

2024-03-15 19:19:17 | 社会
今日のブルームバーグは、「プーチン氏が成功と主張するロシア戦時経済、市民の不満はほぼ皆無」を載せている。「ロシアのウクライナ全面侵攻開始から2年が経ち、戦時経済はうまく機能しているとロシア市民の多くが感じているとしても不思議はない。  賃金は2桁の伸び、通貨ルーブルは安定し、貧困層と失業者は記録的な低水準にある。ロシア連邦統計局のデータによると、プーチン政権の主な支持者である最低所得者層の賃金の伸びは直近の3四半期で年率約20%と、他のどの社会階層よりも上昇率が大きい。」、「昨年の平均月間賃金は7万4000ルーブル(約12万円)余りと、2年前に比べて約30%上昇した。昨年になるまで、ロシアの実質可処分所得が5%以上伸びたことは長らくなかった。  ロシアの独立系調査会社ソーシャル・フォーサイト・グループの社会学者、アンナ・クレショワ氏は「かなりの数のロシア人にとって、戦争は以前では不可能だった社会的・経済的流動性の好機になった。一部の人は新たな事業を立ち上げた」と指摘。「出征した夫や息子の手当を受け取り、アパートや自動車の購入、農村から都市への移動がついに可能になった人々もいる」と述べた。」。以下は昨日カナダのGlobal Researchに載ったインド出身のジャーナリスト、作家のバーラット・ドグラBharat Dograによる「West Should Urgently Reconsider Dangerous, Irrational Concept of Permanent Hostility Against Russia(西側諸国は、ロシアに対する恒久的な敵意という危険で非合理的な概念を早急に再考すべきである)」だ。

100年以上にわたって、ロシア(あるいはそれ以前のソ連)は(悪ではないにせよ)必然的に敵対する国であるという考え方が西側に根付いて来たが、その合理性が明確な言葉で説明されることはなかった。

その結果、回避可能な脅威やリスク、そして軍拡競争という非常に無駄な出費が多発することになった。ロシアが避けられない敵であるという考えは、決して現実に根ざしたものではなく、その危険性が持続し増大する中で、完全に再考される必要がある。

近年、必然的に敵対するロシアという考え方は、軍産複合体に利益をもたらし、NATOの存在と拡大を正当化するために広まって来た。このような狭い思考を超えた合理的な説明はなされていない。

必然的に敵対するロシアという考えは、1917年の共産主義革命にまで遡ることが出来る。確かに共産主義は資本主義に代わるものを提示した。しかし、資本主義やその行き過ぎや歪みに対する代替案は、資本主義諸国の中でも最も高貴な人々によって模索されて来た。事実、こうした考えは、最終的に資本主義システム内のいくつかの重要な改革につながり、資本主義システムの強さと長寿に拍車をかけた。

また、ソ連でいくつかの重大な過ちや行き過ぎが起こり、そのために多くの人々が多くの苦しみを味わったことも事実である。しかし、これは西側諸国がソ連を敵視する理由にはなり得ない。実際、より友好的な関係であれば、より早い段階で誤りを正し、それによって人々の苦しみを軽減することに貢献出来たはずだからだ。

西側諸国は、より具体的で創造的な方法でそのような有益な役割を果たそうとする代わりに、ますます敵対的な役割を採用し、実際にソ連がより民主的な制度に向かって進歩するのを妨害し、独裁的傾向を持つより抑圧的な人物の手を強くした。

ソ連を最も敵対的な勢力として扱う傾向は、ソ連をどうにか打ち負かすために最大限の資源を投入することを厭わなかったヒトラーの中に、非常に傲慢な表現として見出された。ヒトラーとナチズムから世界を救うために最も貢献したのは、第二次世界大戦で最も多くの人々を失った国であるソ連の人々の、非常に不利な状況下での勇敢な抵抗だった。

ヒトラーを倒すという共通の目的のために西側諸国の一部がソ連に協力せざるを得なくなったとしても、ソ連を永久に敵対視する考えを取り除くことにはつながらなかった。実際、第二次世界大戦直後には、ソ連の都市に核爆弾を投下するというアイデアが真剣に検討されたが、幸いなことに実行には移されなかった。

関係改善の大きな契機は1990年代、特にミハイル・ゴルバチョフのイニシアティブによってもたらされた。西側の指導者数人の反応は、当初は心強いものであったように見えたが、すぐに事態は急変し、西側の指導者たちは、臣下のような役割を喜んで受け入れ、西側のビジネスに譲歩しすぎるロシアの指導者だけに満足しているように見えた。

ボリス・エリツィン以降、ロシアの新たな指導層がこれに抵抗し、自国の国益を守る決意を固めたとき、ロシアに対する恒久的な敵意という考えはあまりにも早く戻って来た。

振り返ってみれば、この段階であっても、もっと知恵があれば、西側諸国はロシアともっと友好的に関わり、ヨーロッパの戦略的・経済的安全保障の中でロシアの重要な地位と自尊心に見合った地位を与えることで、短期的・長期的な利益をもっと賢明な方法で追求出来たことは明らかである。しかし、これは実行されず、その代わりに、NATOは東方へ一寸たりとも拡大しないという以前の約束に違反し、NATOの東方への容赦ない拡大が追求された。これは必然的に危険で回避可能な紛争状況をもたらすという西側諸国の上級外交官たちの警告を無視したのである。

最終的なレッドラインは、ウクライナのNATO加盟という文脈で彼らによって特定されたが、ウクライナのNATO加盟に向けた取り組みが開始され、これも無視されたとき、西側の上級外交官が警告していたこのレッドラインは破られそうになり、それゆえ紛争の背景が準備された。

これだけでは不十分だったかのように、特に米国と英国は結託して、2014年にそれなりに中立的だったウクライナ政府に対してクーデターを起こし、特にネオナチ勢力をはじめとするウクライナの反ロシア勢力を強化する土壌を整え、ウクライナの政権がロシアへの敵対心を強めやすい状況を作り出した。これらの政権は、ウクライナ東部のロシア語を話す人々に対して多くの敵対行動を取り始め、その結果、7年間で14,000人近くが殺害された。2022年の初めには、ウクライナ軍からの砲撃が大幅に増加した。

ロシアの侵攻が行われた背景はこのようなものであり、このような背景のもとで行われた侵攻が、ロシアあるいは西側(特に米国と英国)の侵略をどの程度反映しているかということが、正々堂々と議論されるべき問題である。

この問いに答える前に、もうひとつ考慮すべき事実は、戦争が始まってわずか数週間後、ロシアとウクライナは、ロシアの撤退とウクライナの中立に基づく平和的合意の交渉に非常に近づいたが、これは英国と米国によって妨害されたということである。西側で最近発表されたウクライナ戦争に関する記事、論文、オピニオン・ピースのほとんど(そして私はかなりの数を読んだ)に共通しているのは、ロシアを打ち負かし、危害を加えるという目的が望ましいということはほぼ必然的に受け入れられているが、驚くべきことに、この目的の根拠が説明されることはほとんどないということだ。

ほとんどの記事は、ウクライナにどんどん軍事援助を与えるという考えを支持している。もちろん、ロシアを倒すという目的は明確である。しかし、西側諸国がウクライナにますます多くの軍事援助を与えることに反対する記事もいくつかある(この見解は最近、やや頻繁に見られるようになって来た)。しかし、この2番目のカテゴリーの記事でさえも、ロシアを打ち負かすことがもちろん望ましい目的であることを、暗黙のうちに、あるいは明示的に受け入れている。しかし、これらの記事は、ウクライナが最近被った重大な軍事的逆転の現実を考慮すると、ウクライナを利用してロシアに危害を加えるという当初の目的は非現実的、あるいは実現不可能であるように思われる、したがって、このためウクライナへの軍事援助は止めるべきだと、しばしば残念そうに記している。言い換えれば、もしウクライナが戦場でもっと良い結果を出していれば、これらの作家もロシアを打ち負かす、あるいはロシアに危害を加えるという本来の目的を達成するため、さらなる軍事援助の継続を支持しただろう。

ロシアを恒久的な敵と見なす、この広範だがまったく非合理的なコンセンサスに近い考え方には、深刻な間違いがある。ロシアに危害を加えようとする試みは常に正当化され、それが成功しない場合にのみ抑制される必要がある。これらが成功している限り、これらは正当化される。

このような非合理的で不当な敵対感情は、あらゆる危険性をはらみながら1世紀以上も放置され、世代から世代へと受け継がれ、システムに組み込まれ、その周りに文化全体を作り上げ、それ自体の勢いを獲得して来た。

このような考え方は常に非合理的で、非倫理的で、危険なものであったが、現在ではより危険なものとなっているようだ。ウクライナに対する西側の軍事的支援の拡大は、破壊力の弱い武器から着実に破壊力の強い武器へ、そしてそれらを扱い、指導するために必要な武装した人員へと進み、地上軍駐留の話も増えている。それゆえ、ロシアとの直接衝突の可能性が高まり、それに伴う大量破壊の可能性が高まることへの懸念が声高に叫ばれている。

不必要に敵対的で危険な状況が長い間放置されて来た中で、もしかしたら意図しない、あるいは偶発的な引き金によって、はるかに大きな戦争が実際に始まってしまったら、歴史家は、世界大戦や核戦争は、非常に狭い理由で愚かにも長い間放置されて来た危険な敵対神話によって引き起こされたと書くだろう。

従って、西側諸国にとって、ロシアを永遠に敵視するという危険極まりない非合理性に終止符を打つ非常に適切な時期なのである。平和、信頼、協力、友好の勇気ある新たなスタートを切るべきであり、それは間違いなく双方の国民に利益をもたらし、欧州の平和にとっても世界の平和にとっても大きな前進となるだろう。

万作

「「ピーク・チャイナ」神話を疑うべき6つの奇妙な説」

2024-03-14 19:12:55 | 社会
2016年12月22日、ブルームバーグは「中国の習主席、不動産市場の投機抑制をあらためて強調-党会合で」を載せた。「中国の習近平国家主席(総書記)は21日、国民の住宅需要をより良く満たすために中国は不動産バブルをしぼませ賃貸住宅市場を規制すべきだと述べた。先週の中央経済工作会議で概略を示した方針をあらためて強調した。」。2017年10月18日のBloombergは、「Housing Should Be for Living In, Not for Speculation, Xi Says(住宅は投機のためではなく、住むためにあるべきと習近平氏)」で、「Says housing supply will be supplemented by multiple policies(住宅供給は複数の政策によって補完されると発言) Reference closely echoes language issued by panel in December(この言及は、12月に習近平国家主席が発表した内容とほぼ同じである。)」と伝えた。さらに、今月10日にはブルームバーグは、「住宅は「住むため」、投機対象ではない-中国がスタンス堅持を確認」で、「倪虹住宅都市農村建設相は北京での記者会見で、「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではないという理念を最後まで堅持しなければならない」と指摘し、「政府が基本的な住宅ニーズを保証し、市場はその他の多様な住宅要件や制度を満たし、賃貸と購入の両方の市場を確立する」と述べた。  住宅は投機ではなく、住むためにあるというフレーズは当局が16年から一貫して使用。 政府にとって、当時過熱していた市場を冷ます意図を示す重要な手段となった。」と書いている。中国政府は、投機対象となった不動産投資を救済する意志はない。「不動産バブルをしぼませ賃貸住宅市場を規制すべきだ」としており、政府自ら意図的に不動産バブルを崩壊させている。米国の金融資本主義に対して、中国は製造業を中心とした産業資本主義の道を歩んでいる。REUTERSは、2月29日、「Germany's Aareal warns one quarter of U.S. office loans bad(独アーリアル、米オフィスローンの4分の1が不良債権と警告)」を報じた。「経営難に陥っているドイツの金融機関アーリアル(Aareal)は木曜日、40億ユーロ(43億ドル)の米国オフィス向け融資のうち4分の1が未払いとなっている可能性があり、不動産不況が定着する中、さらに悪化する可能性があると述べた。 この暗いメッセージは、不動産不況の深刻さを浮き彫りにし、空きオフィスの価値を大きく下げ、大西洋の両岸の投資家を動揺させている。 「市場は好転するのだろうか?そうは見えません」とヨッヘン・クロエゲス最高経営責任者(CEO)は記者団に語った。 「2024年も厳しい状況が続くだろう。2024年も厳しい状況が続くでしょう。私たちは、米国のオフィス市場は流動的な状態が長く続くと予想しています。」」とある。今日のオーストラリアのPearls and Irritationsには、中国人民大学重陽金融研究院の王文教授・院長の「Six peculiar ‘Peak China’ myths we all should question(「ピーク・チャイナ」神話を疑うべき6つの奇妙な説)」が載せられた。Peak China(ピーク・チャイナ)は中国経済が成長のピークを過ぎ成長率が減速すると言うことを意味する。


ここ数年、欧米の一部の政治家、メディア、シンクタンクの間で、中国の発展軌道に対する見方に顕著な変化が起きている。20年以上前にゴードン・G・チャン(2001年の「やがて中国の崩壊がはじまる」の著者)が主張したことで有名な、中国の崩壊が間近に迫っているというかつての定説は、ついに支持を失い始めた。

しかし、中国の持続的な上昇を認めようとしない姿勢は依然として残っており、「ピーク・チャイナ」という新たな流行語が登場した。当初、中国の主流学界は、まじめな知的関心を払うに値しない、偏った思い込みのうんざりするようなコレクションのひとつと見なしたが、それにもかかわらず、「ピーク・チャイナ」という概念は国際ジャーナルで着実に浸透しつつある。

15年連続で世界第2位のGDPを誇る中国の経済状況は、当然ながら成長率の緩やかな拡大とともに拡大して来た。中国が超大国であることを考えれば、経済指標の変動は成長の軌跡に内在するものであるが、こうした指標を景気後退のデータとすることには本質的な欠陥がある。

この「ピーク・チャイナ」論への新たな独特の情熱は、質の高い発展における中国の躍進を見過ごそうとするもので、よりまじめな学者たちの間で、その大胆な主張と気まぐれな誤認を正そうとする試みが起こっている。

最も誤った「ピーク・チャイナ」神話の6つを検証してみよう。

これらの神話に挑戦することで、中国の真の経済力学をよりニュアンス豊かに理解し、欧米諸国とのより円滑で互恵的な交流を促進出来ることを期待したい。

神話1:中国の経済規模は米国を超えない

いや、より冷静な経済機関の多くは、中国のGDPは2035年までに米国を上回ると主張し続けている。

最近の分析ではそうではないことが示唆されており、中国のGDPと米国のGDPの差は過去2年間で拡大しているにもかかわらず、中国が経済総量で米国を超えることはないとあえて指摘する者もいる。

しかし、そのような見方は、長期的な経済の逆風にそぐわない。

2023年のGDP成長率は、中国が5.2%であるのに対し、米国はわずか2.5%と出遅れている。両国のGDP差の拡大にはいくつかの要因があるが、人民元の対米ドル安が中国のGDPを相対的に押し上げたことが主な要因である。米国はまた、以前はGDPの計算から除外されていたゲーム産業など、中国のさまざまな非従来型の経済活動を考慮し始めた。

コアGDPの構成要素を詳しく調べると、中国と米国の間に顕著な差があることがわかる。驚くべきことに、中国の実体経済はさまざまな分野で米国を大きく上回っている:中国の穀物生産量は7億トンに達し、米国の1.2倍を上回り、発電量は9.2兆キロワットで2.3倍である。中国の自動車生産・販売台数は3,016万台で、米国の3倍である。鉄鋼生産量は13.6億トンで米国の19倍、セメント生産量は22.3億トンで米国の20倍である。中国の造船業は4,231万トンという驚異的な生産量で、米国の70倍という驚異的な数字を上回っている。

こうした数字を見れば、中国経済がいわゆる「産業空洞化」の衰退に抵抗し、統計や金融市場よりも安定した発展を優先していることがすぐにわかる。これは、堅実で国民中心の目標に対する政府のコミットメントを反映している。

多くの「ピーク・チャイナ」アナリストが理解出来ないのは、中国政府はGDPが米国を上回るかどうかなど気にも留めていないということだ。2014年、IMF国際通貨基金は購買力平価(PPP)に基づく数字を算出し、中国が米国を抜いて世界トップの経済大国になったと宣言した。中国中央政府は大騒ぎすることもなく、このニュースを迎えた。

調べてみよう:過去40年間、「米国を凌駕する」という言葉が公式文書を飾ったことはないし、中国の意思決定者の間で話題になったこともない。要するに、中国の発展の焦点は他国を凌駕することではない。より良い生活の質を実現するために、自国の基準を上回ることなのだ。

神話2:中国の不動産危機は将来の成長モメンタムを脅かす

間違いだ。特に今後10年間で、1億人という驚異的な人口が都市部に移住し、不動産開発需要が高まるという予測があるからだ。

とはいえ、中国における不動産の存在意義は薄れつつあり、高騰していた住宅価格バブルは徐々に萎んでいる。商業用住宅の販売額が2021年の18兆元から2023年には11.7兆元へと急減したのは事実だ。しかし、中国の民間投資も2023年には9%急増し、急成長するいわゆる「新3大」産業、特に汎クリーン・エネルギー分野が不動産の伸び悩みを補っている。

まず、太陽光発電産業は目覚ましい成長を遂げており、中国市場は過去10年間で20%以上拡大し、市場規模は約2兆元(41兆円)、世界市場シェアの50%以上を誇っている。

次に、中国自動車市場における新エネルギー車の総売上高は約5兆元(102.5兆円)を記録した。2023年、中国は9年連続で世界最大の自動車生産・販売拠点となった後、世界有数の自動車輸出国に浮上した。

第三に、中国はリチウム電池市場を独占しており、世界の電力電池メーカー上位10社のうち6社を占め、62.6%の市場シェアを占めている。

フィンランド・エネルギー・クリーン・エア研究センターの分析によると、汎クリーン・エネルギー産業は中国の経済成長の主要な原動力となっており、2023年のGDP成長率の40%に寄与し、前年比30%増を記録する。

米国やヨーロッパと比べ、中国の新経済は経済成長において不動産に代わる重要な役割を果たすだけでなく、地球温暖化の緩和にも大きく貢献している。不動産依存からの脱却と新たな製造業の急増は、中国の質の高い経済発展を浮き彫りにしている。

実際に中国を訪れたことのある人は、その電子商取引、5G社会、シームレスな交通機関に驚嘆する。近年、中国の新興産業が台頭し、産業景観の包括的な変革が推進されている。

2022年、斬新な産業、業態、ビジネスモデルを特徴とする中国の「新3大」経済の付加価値は21兆元(430.5兆円)に急増した。このシフトは、中国が従来の不動産への依存から脱却し、イノベーション主導の成長軌道に乗り出したことを意味する。

神話3:外国投資は孤立した中国から逃げている

いや、よく知られた話とは裏腹に、中国からの「デカップリング」は実現しなかった。

2023年に若干の落ち込みがあったとはいえ、中国は1兆1300億元(23兆1650億円)という途方もない額の外資を誘致し、史上3番目の流入額を記録した。労働集約型産業は8%減少したが、ハイテク産業は4230億元(8兆6715億円)を投資し、2022年から1.2ポイント増加した。

喧噪の中、西側メディアは、中国に新たに5万3766社もの外資系企業が進出していることを見落としていた。米国の投資が減少する一方で、フランスやスウェーデンといった他の先進国の投資は25倍、11倍に急増した。ドイツ、オーストラリア、シンガポールはそれぞれ212%、186%、77%投資を増やした。

2023年、中国と欧州の二国間貿易は1兆2,000億ドル(176兆4000億円)という驚異的な規模になった。前年比1%減とわずかに落ち込んだものの、史上2番目の高水準を維持している。一方、2023年の中国と米国の貿易額は約6,600億ドル(97兆200億円)で、前年比11.6%減となった。この落ち込みにもかかわらず、2018年に始まった米中貿易戦争の初期段階をはるかに上回り、史上3番目に高い数字となっている。

これらの数字は、中国と西側諸国の深い相互依存関係を強調するものであり、中国と西側諸国が、デカップリングの試みにもかかわらず、相互に絡み合った利害関係者であり続けていることを示している。

より具体的な洞察として、私たちの多くは各国の在中国商工会議所が実施した調査に注目する。多国籍企業の80%が中国への残留を希望し、投資を拡大している。

外資系企業の大半は、プラスの投資収益を報告している。しかし、中国市場の競争は激しい。一部の多国籍企業は、必ずしも政治的な理由ではなく、むしろ中国国内の強力な企業の台頭を理由に撤退している。このことは、次の「ピーク・チャイナ」記事には出てこないであろう中国経済の図式にニュアンスを加えている。

欧米では中国企業に対する孤立が唱えられているが、中国は一貫して欧米企業に対してオープンで包括的な姿勢を維持している。中国の意思決定者が欧米企業を批判したり、拒絶したりすることはほとんどない。それどころか、中国の指導者が欧米企業と関わり、ビジネス環境の改善や社会保障の確保を目指しているというニュースを目にすることも珍しくない。中国は世界で最も包括的な製造業チェーンを誇り、一貫して外国からの投資を歓迎している。開放は国策となり、中国憲法にも明記されている。

考えてみてほしい:どれだけの多国籍企業が、有利な中国市場へのアクセスを喜んで手放すだろうか?

神話4:中国の失業率は社会的混乱を引き起こす

そんなことはない。政治学者は一般的に、失業率が20%に達すると、その国は社会不安に直面すると主張している。しかし、中国政府のデータによれば、2023年の都市部の平均失業率は5.2%で、社会不安とは程遠い。

14億人の人口を抱える中国は、特に1000万人以上の大卒者を受け入れるために、毎年1200万人の新規雇用を創出する必要がある。近年の景気後退が解雇の引き金になっているにもかかわらず、雇用の喪失が必ずしも社会的混乱につながるわけではない。

失業対策は、中国政府のあらゆるレベルの課題の中でも上位に位置づけられている。これを受けて、減税から利子補給まで、雇用喪失を緩和することを目的としたさまざまな雇用支援政策が展開されている。私は大学教員として、卒業生の就職活動を積極的に支援している。

無視出来ないもう一つの新しい現象は、中国における柔軟な雇用の台頭である。Eコマースの人気と生放送経済の急成長により、中国のフリーランサーは増加の一途をたどっている。歌や講演、撮影、旅行などの収入を新しいメディア・プラットフォームで分かち合っている若者もいる。それはまた、新たな雇用を生み出している。

さらに、中国独自の社会的セーフティネットが救済をもたらし、若者の自活を支えている。

2008年の金融危機で失業率が10%に達した米国を経験した私は、物乞いや求職者が路上に並ぶ光景を目の当たりにした。対照的に、中国ではそのような光景は稀であり、社会的混乱というのは単なる憶測に過ぎない。

神話5:中国の高齢化は経済衰退をもたらす

いや、そうでもない。中国は人口ボーナスを失いつつあるかもしれないが、人材ボーナスへと移行しつつある。

2022年に人口が初めてマイナスに転じたことで、中国社会は大きな議論を巻き起こし、政府は高齢者に優しい経済への転換に向けた取り組みを加速させた。この変化は、中国に新たな発展の波をもたらすことになる。

出産、子育て、教育に関連するコストが上昇する中、世界の中・高所得国は、程度の差こそあれ、少子高齢化に取り組んでいる。

高齢化は労働力を減少させるかもしれないが、必ずしも経済の勢いがないこととイコールではない。中国の対応策は、こうした傾向に対抗するためにAIと自動化技術を取り入れることだ。超重量級ドローン、無人トラック、物流ロボットを活用し、かつては人手に頼っていた保管、ピッキング(倉庫や工場に保管された商品を、伝票やリストに従って集める仕事)、輸送、統合、配送など、数多くの社会サービスプロセスを自動化している。

さらに、中国は高等教育の総就学率が55%を超えており、より質の高い社会サービスを促進する人材配当の一翼を担う、膨大な大学教育を受けた人材の宝庫となっている。

こうした基盤の上に、高齢化社会が新たな経済成長転換の波に拍車をかけている。推計によると、中国では、健康不動産、高齢者向けインフラ改修、健康サービス、高齢者娯楽、補助用品、医療、高齢者保険の年間市場規模は10兆元(205兆円)を超え、年間成長率は15%を超えている。

簡単に言えば、人口福祉は人口規模よりも重要なのだ。定年を60歳から63歳または65歳に延長することは、中国の政策調整に対する共通の期待であり、世界的に高齢化社会に対応するために必要なステップである。

人口の高齢化は確かに新たな開発圧力をもたらすが、進歩にとって乗り越えられない障害には程遠い。

神話6:中国人は将来に自信がない

まだ自信はある。驚くべきことに、中国は過去40年間、戦争を起こしたことも戦争に参加したこともない唯一の主要経済国である。この平和な外部環境と安定した国内社会が、より良い生活への中国人の願望を支える基盤となっている。

大半の親は、次世代に明るい未来をと願い、子供の教育に多額の投資をしている。東アジアの社会では、次世代のための教育の追求に共通の重点が置かれており、他の多くの国々と比べて激しい社会競争を煽っている。

しかし、限られた進歩のために競争が激化するというインボリューション(内側に向かう発展)を特徴とする国々は、しばしば新たな発展の突破口を開く態勢を整えている。航空宇宙、大型航空機、チップ(小さな半導体の板に複数の電子部品を埋め込んだ集積回路)、造船、自動車製造などの産業で先進国に追いつこうとする中国の努力は、インボリューションの成果として実を結んだ。

11億人のインターネット・ユーザーとニューメディアの普及が、中国のインターネットに多様な声を氾濫させる可能性があることを認めなければならない。マクロ経済成長の鈍化や資本市場の短期的な変動は、中間層の不満を煽り、年間移住率の上昇を招き、中国への信頼を揺るがす要因となっている。しかし、これらの問題は中央の意思決定者から大きな注目を集めている。

実際、これらは進歩への新たな原動力と見なすことが出来る。改革開放の45年にわたる発展の道のりは、問題発生-問題解決-成長達成-新たな問題発生-問題解決と新たな成長創造というサイクルをたどる。その繰り返しである。

中国の歴史に精通した人々にとって、現代は中国5,000年の文明の頂点である。国家の回復力と経済的潜在力に支えられ、中国国民は明るい未来に向かって現在の課題を乗り越えている。このような見通しは、国家の合理性と、国家の永続的な強さに対する集団的な信念を体現している。

土佐水木

「グローバル・サウス、多極化するモスクワに集まる」

2024-03-13 19:15:26 | 社会
2月29日、Strategic Culture Foundation掲載のPepe Escobarの記事、「The Global South Converges to Multipolar Moscow(グローバル・サウス、多極化するモスクワに集まる)」、今日のビル・トッテン氏訳。

モスクワでのこの狂乱の日々の注目すべき結論: 世界の普通の人々、団結せよ。

多極世界の首都で多極化に狂奔した日々だった。私は月曜日の午後、ロモノーソフ・イノベーション・クラスターの講堂において、実質的にほぼ全てのグローバル・サウスが代表されているように見えることを、ロシア外相セルゲイ・ラブロフ氏に直接伝える光栄に恵まれた。この場は一種の非公式な国連だが、国連憲章を尊重するという点ではいくつかの面でより効果的である。彼の目は輝いた。ラブロフは、グローバル・マジョリティの真の力を誰よりも理解している。

モスクワでは連続した多極会議に加え、国際ロシア愛好家運動(MIR、フランス語の頭文字で、ロシア語で「世界」を意味する)の第2回会合も開催された。これらの議論とネットワーキングは、一極文化と永遠の戦争によって課せられた暗い予感から離れて、真に代表的な国際秩序を構築するための幸先の良いヒントを提供した。

初日の開会式予備セッションは、外務省報道官マリア・ザハロワがスター性を発揮した。彼女の主要メッセージは明確だった。「自由意志なしに、自由はありえない」というもので、これは容易に新たなグローバル・サウス集団のモットーになり得る。「文明国家」という言葉が全体的な議論のトーンを設定した。なぜなら彼らはポスト西側覇権世界の経済、技術、文化の発展の設計図を入念に作成しているからだ。

上海にある復旦大学中国研究所のチャン・ウェイウェイ国際関係学教授が、北京が「新たな独立極」としての役割を推進する上で重要な4つのポイントをまとめた。それは、現在の状況を簡潔に示している。

1 一極秩序の下では、ドルからコンピュータ・チップに至るまであらゆるものが武器化される。戦争とカラー革命が常態化している。

2 中国は購買力平価(PPP)で世界最大の経済大国となり、世界最大の貿易・工業大国となった。そして現在、第4次産業革命の最前線にいる。

3 中国は、「分割と支配」という西側モデルの代わりに、「団結と繁栄」というモデルを提案する。

4 西側はロシアを孤立させようとしたがグローバル・マジョリティはロシアに同情している。したがって西側諸国はグローバル・レスト(世界の残りの部分)から孤立している。

“神政戦争 “の戦い

ちなみに「グローバル・レスト」というのは誤称である。実際は「グローバル・マジョリティ」のゲームだ。同じことが「黄金の10億人」にも言える。一極の時代に利益を得ている人々は、主に西側諸国全体とその総督のエリート商人でせいぜい2億人ほどである。

月曜日の午後、モスクワでは3つの並行セッションが行われた。「中国と多極化する世界」(主役はウェイウェイ教授)、「ポスト・ヘゲモニー西側」(副題は「ヨーロッパ文明を救うことは可能か?」)には反体制派のヨーロッパ人、学者、シンクタンク関係者、活動家らが参加した。そして最大のお楽しみは、多極化の最前線で活躍する人々による講演である。

私はこの素晴らしいグローバル・サウス・セッションの司会を務める栄誉に浴した。セッションは3時間以上にわたって行われたが、実際は一日続いてもよかった。パレスチナからベネズエラまで、アフリカ人、ラテンアメリカ人、アジア人、そしてネルソン・マンデラ氏の孫であるマンドラ氏など、豪華な顔ぶれによる素晴らしいプレゼンテーションがいくつも披露された。

それは多極化したグローバル・サウスの本格始動だった。私がすべきことはできるだけ多くの人々にフロアを開放することだ。もし主催者側がこのプレゼンテーションのヒット作品をリリースしたら、簡単に世界的大ヒットになるだろう。

マンドラ・マンデラは、「イスラエルを支援し続ける」米国に支配された一極体制から脱却する時が来たことを強調した。

それを補完したのはベナンのカリスマ的活動家ケミ・セバだった。彼は未来のアフリカのリーダーシップを見事に体現している。本会議でセバは世界的な発展を懇願する重要な概念を紹介した:我々は “神政戦争 “の下に生きている。

これは、Wokeカルトを除く、イスラム教、シーア派、キリスト教正統派など、あらゆる宗教に対する西洋の同時多発的なハイブリッド戦争を端的に言い表している。

翌日、国際ロシア愛好家運動の第2回大会では3つの討論会が行われた。 最も関連があったのは、他でもない、「情報戦とハイブリッド戦争」に関するものだった。

私はマリア・ザハロワとステージを共にする光栄に浴した。40年以上にわたり世界中でジャーナリズムを実践し、この業界が完全に劣化していくのを目の当たりにしてきたことに焦点を当てた私のフリーのジャズスタイルのプレゼンの後、私たちはメディアとソフトパワーに関する有益な対話を行った。

ロシア外務省だけでなくグローバル・サウス全域の人々への私の提案は単純明快だった。「少数に支配されたレガシー/主流メディアは忘れろ、それはすでに終わっている。彼らは意味のあることは何もいわない。現在と未来はソーシャルメディアだ。『オルタナティヴ』(代替の)はもうオルタナティヴではなく市民メディアであり、もちろんこれらすべてにジャーナリズムの最高水準が適用されるべきである」

夜、皆がパーティーで盛り上がる前に我々数人はメトロポールホテルのフレスコ画が描かれた豪華な部屋で、ラブロフ外相とのオープンで率直、かつ啓発的な夕食会に招待された。このホテルは1905年創業のヨーロッパのグランドホテルのひとつである。

ひねくれたユーモアのセンスを持つ伝説の人物

ラブロフはリラックスしていた。ここ数十年のハイライトから現在の憂鬱と破滅までを網羅した、最初の見事な外交的力作の後、彼は私たちの質問を聞き、メモを取りながらひとつひとつ丁寧に答えてくれた。

世界で最も伝説的な外交官としばらく対面して印象的だったのは、リラックスした雰囲気の中で、特にヨーロッパ人の怒り、不寛容、批判的思考の欠如に直面したときの彼の純粋な悲しみだった。そのことは、米ロ関係が史上最低水準にあるという事実よりも私たちの会話を通してより重要なことだった。

しかしラブロフは、グローバル・サウス/グローバル・マジョリティ、そして今年ロシアがBRICSの議長国を務めるということで強い意欲を持ち続けている。 彼はインドのジャイシャンカール外相とインドの中国との包括的な関係を大いに称賛した。彼は、ロシア愛好家運動が世界的な役割を果たすべきだと提案し、私たち全員が「普通の人々」(Normal-o-philes)運動の一員になるべきだと戯れに示唆した。

伝説のラブロフはユーモアのセンスでも知られている。ユーモアが最も効果的なのは、大真面目なときである。モスクワでの狂乱の日々から得られる重要な教訓はここにある。世界の普通の人々、団結せよ。

ホシハジロ

民主主義と人権

2024-03-12 19:14:19 | 社会
ウクライナへはNATO軍の将兵が直接入り込んでいることが明らかになり、漏洩したドイツ軍将官の会話から、クリミア大橋の爆破にドイツ軍が関与していたことも明らかになった。ウクライナへの米英提供のミサイルや戦車も英米の兵士が直接操作していた。フランス大統領マクロンがフランス軍をウクライナに派遣すると発言したのも、すでにNATO軍将兵がウクライナにいる事実を認識しての発言だろう。EU首脳のロシア敵視は異常なくらいだ。ロシアのプーチン大統領は、国の安全保障上、NATOの東進は認められない。第二次大戦後、NATOはソ連への対抗として設立された。しかし、ソ連崩壊後もNATOを解散しないどころか、ロシアに向けて拡大し続けて来た。ウクライナでのロシアの優位を崩すためにNATOの直接介入を模索しているようだが、現在のEUや米国の生産力を見れば、そのための十分な軍備は不可能だ。軍需品の生産力はロシアが圧倒している。ロシアは最終的にウクライナの中立化を達成するまで特別作戦を中止しないだろう。そして、米国、EUは最後にはそれを受け入れざるを得ないだろう。11月の米国大統領選挙でトランプが勝てば、トランプはウクライナへは資金を一切支援しないと言っている。NATOから離脱するとも言っている。ウクライナはいずれにしろロシアに実質的に降伏せざるを得ないだろう。ウクライナよりも大きな問題は、イスラエルによるガザでの虐殺だ。イスラエルは、ナチスがユダヤ人虐殺を行ったのと同じようにガザのパレスチナ住民を虐殺している。食糧支援の貨物トラックの輸送を妨害し、ガザ住民を餓死に追い込んでもいる。米国や英国はそんなイスラエルを軍事支援している。英米はハマスをテロ組織とするが、ハマスは選挙で選出された政府組織を有し、世界の3分の2が認める。米英、EU諸国は自分たちを民主主義国と称し、人権を掲げているが、今、その民主主義や人権を破壊しているのが米英。EUだ。先月25日、AERAdot.は、2月13日発売の最新刊『人類の終着点――戦争、AI、ヒューマニティの未来』(朝日新書)からの抜粋・再編を載せた。フランスの歴史・人口研究者エマニュエル・トッドへのインタビュー内容だ。そこでトッドは、「欧米はもはや民主主義の代表ではなく、少数の人や少数の集団に支配された、単なる寡頭政治になってしまったのです。」と述べている。「西側諸国の民主主義は、機能不全どころか、消滅しつつあります。ヨーロッパの共同体(EU)に関しては、もはや完全に寡頭制です。一部の国が他国より強く、一部の国には力がない。ドイツがトップにいて、フランスが下士官、その一方でギリシャは存在感がないといった具合のグローバルシステムです。 ウクライナ戦争も同様です。ヨーロッパは民主主義の価値のために戦っているふりをしているだけで、これは完全な妄想です。そして驚くべきことに、私たちはそれに気づいていません。自分たちの国について話すときには、「民主主義の危機を抱えている」と言っているにもかかわらず。 しかし、西洋以外の人々はそれを見抜いています。彼らは、私たちをありのままを見ているのです。西洋は、何か違うものに変わりつつあり、もはや十分な生産ができなくなっています。また先ほど言ったように、グローバル化とは、第二の植民地時代、つまり「グローバルな植民地時代」であることが判明したのです。」、「つまり、私たちは、新しいことに備えなければなりません。戦争とは関係なく、私たちはもっと悪い事態に備える必要があるでしょう。」。イスラエルによるガザでの虐殺を黙認し続けている英米、EUが自分たちの掲げて来た人権を、ガザでは全く考慮しないことを露呈させた。民主主義も同じだ。相手を非難するための単なる道具でしかないのだ。ロックダウンに反対し、コロナワクチンの杜撰な治験を批判し、コロナ感染対応の政策提言であるグレート・バリントン宣言の起草者であるハーバード大学医学部マルティン・クルドルフMartin Kulldorff教授が解雇された。昨日、自身のX(旧ツイッター)に、「I am no longer a professor of medicine at @Harvard. Here is the story of my Harvard experience until I was fired for clinging to the truth.(私はもう@ハーバードの医学部教授ではない。以下は、私が真実に固執したために解雇されるまでのハーバード大学での体験談である。)」と書き込んでいる。コロナワクチンを批判した元京都大学宮沢孝幸准教授の退職も結局は同じようなものだ。民主主義が機能していれば、こうした不当な解雇や退職はあり得ない。米欧、日本はプーチンや習近平を独裁者、ロシアや中国を覇権主義と称するが、むしろ強権的に国民を強いているのは日本や欧米だろう。特にコロナ禍はそれを如実に示した。中国もロシアも国民の政府支持率は80%以上ある。日本や欧米は50%に満たない。民主主義が機能していれば多くの国民に政府が支持されているはずだろう。一昨日のChina Radio International日本語は、「全人代民主・人民政協民主から読み解く中国」を載せている。「民主選挙を例にとると、中国では県、市、省、国など各級の人民代表大会が民主的選挙によって選出され、人民に対して責任を負い、人民の監督を受ける。高級技師、新業態の労働者、村の幹部など、生産やサービスの現場で活躍する3000人近くが全人代代表となり、14億人以上の中国人民を代表して審議権、提案権、議決権、選挙権などの権利を行使する。同時に各党派、団体、階層、分野で活躍する人々が人民政協の委員となり、民主的な監督、参政、議事を通じて国の管理に参画する。このような形の民主は全人代と人民政協の「両会」で相乗効果を発揮し、中国の民主的政治制度の鮮明な特色を示している。」。全人代代表、人民政協の委員の選挙は国民の投票により行われる。国家主席に選出されるまでは9段階の厳しい審査がある。審査の主要要件は国民のために何が出来たかが重要になる。ただ、中国は1978年12月に鄧小平により打ち出された「改革開放」で、米国の大手金融機関などから資本主義の手解きを受けた。その米国の資本主義がまさに新自由主義であった。新自由主義は米国でも日本でも政治家や企業家の腐敗を生んだように、やはり、中国でも経済発展の中で腐敗を生み出した。習近平が登場すると、習近平は真っ先にこの腐敗の撲滅に取り組んだ。上海派閥の新自由主義に傾倒した腐敗人物たちを次々に失脚させた。しかし、米国は自国に都合の良い上海閥の人脈が絶たれることは気に入らず、これを断行した習近平を悪者扱いにした。この米国のやり方は、戦後ずっと同じやり方であった。米国にとって言いなりにならない人物は、全て独裁者であり、消えるべき人物となる。リビアのカダフィー大佐、イラクのフセイン、シリアのサダトなど、多くの人物が排除されて来た。プーチンも同じだ。ソ連崩壊で混乱したロシアの資源を新自由主義で独占し、国民を疲弊させた。これを覆し、国民を豊かにして来たのがプーチンだ。このプーチンを米国を裏で操る超富裕層が認めるわけがない。ここでプーチンにもおさだまりの「独裁者」のレッテルが貼られる。日本や欧米ではもはや民主主義は機能せず、人権は軽視されている。その民主主義や人権を掲げて、欧米は中国やロシア批判する。
馬酔木

ハードランディングは避けられない

2024-03-11 19:12:41 | 社会
今日で東日本大震災から13年経ったが、今も何も変わらない。1月1日の能登半島地震も被災者は東日本大震災直後と同じ状況に置かれている。この13年は一体何だったのだろう。昼のTVでは東日本震災後に被災者用の新たなテントや給水機が開発されたことを伝えていたが、国はそうした装備を被災地に即座に準備したりはしていない。いまだに体育館のような建物で「雑魚寝」状態だ。日本は地震を含め自然災害大国である。にもかかわらず、そうした災害に特化した省庁がなく、常に対応が遅れ、いつも被災者は同じ苦痛を強いられている。昨日、愛知県の中部国際空港の向かいにある常滑市主催の防災講演会を動画で見た。演者は火山学・地球変動学が専門の鎌田浩毅京都大学名誉教授だ。静岡県沖から宮崎県沖までのいわゆる南海トラフでの地震を独自に西日本大震災と名付けて、2035年プラスマイナス5年、つまり2030年〜2040年までにほぼ100%、巨大地震が発生すると述べている。高知県の漁港で江戸時代から地盤の隆起が何度か測定されて来ており、その隆起毎に地震が発生している。このことから次回は2035年となることが明らかになった。東日本大震災は死者行方不明が2万人、直接被害額が20兆円だが、南海トラフ巨大地震では32万人、220兆円となることが想定されており、実質的な損失は1100兆円もの規模になると言う。産業の中心地帯が並んでいるためだ。この規模を考えるだけで、日本は壊滅状態になる。津波の影響が懸念される原発は4つある。茨城県の東海第2原発、静岡県の浜岡原発、愛媛県の伊方原発、鹿児島県の川内原発である。特に静岡県の浜岡原発は南海トラフ巨大地震では、かなり厳しい状況に追い込まれるだろう。少子化対策と同じで、形ばかりの会議はあっても現実的な対策は何らなされていない。富士山の噴火もスタンバイ状態が続き、いつ噴火があってもおかしくない状態だ。富士山噴火や首都直下型地震は日本の機能不全となるだろう。21世紀前半は世界の大変革があるが、日本は特に悲惨な状況に追い込まれるだろう。昨日の朝日新聞DIGITALは、「「破産するべきは破産」中国の担当閣僚、不動産企業救済しない姿勢か」で、「中国政府で不動産政策を担う倪虹・住宅都市農村建設相が9日、開催中の全国人民代表大会(全人代)に合わせて記者会見し、債務問題が懸念される不動産企業について「破産すべきは破産する」と発言した。問題企業について、政府による過度の救済措置はとらないとの姿勢を明らかにした。」と報じている。中国は日本や欧米のように「大きくて潰せない」と言う考えはない。1997年のアジア通貨危機の際に、すでに中国はそうした姿勢を見せていた。マイケル・ハドソン教授は、「中国はドル債務の銀行を破綻させると言う金融核爆弾を持っている」と述べている。中国は不動産企業を救済しないだけでなく、不動産企業に融資した銀行までも救済せず、破綻さる。預金者だけを救済する。中国の不動産企業や銀行の破綻は、中国国内以上に、中国不動産企業に投資した欧米資本に、ハドソン教授の言う金融核爆弾が炸裂する。巨大なドル資本が消失する。6日の米国The Economic Collapseは、「Has The Banking Crisis Of 2024 Already Started?(2024年の銀行危機はすでに始まっている?)」を載せた。「私たちは、より多くの銀行が間もなく深刻な問題に陥るだろうと警告した。 実は昨日、私は読者に3月11日に丸をつけるように言ったばかりだ。なぜなら、銀行を支えてきた連邦準備制度理事会(FRB)の非常に重要なプログラムが期限切れを迎えるからである。 しかし残念なことに、3月11日を待たずして事態は始まった。 水曜日の朝、ニューヨーク・コミュニティ・バンクの株価は大暴落した。 ゼロ・ヘッジは、このドラマが展開される様子を伝えている。」、「今や、何が起きているのか誰も否定できない段階にまで来ている。 実際、億万長者の不動産投資家バリー・スターンリヒトは、米国のオフィス用不動産で1兆ドルの損失が出るだろうと語っている......。」、「ブルームバーグが今週報じたところによると、米国の商業用不動産と集合住宅用不動産の負債総額の20%以上にあたる9000億ドル以上が、今年満期を迎えるという。借り手は、はるかに高い金利で借り換えを行うか、物件を大幅に値引きして売却するしかないかもしれない。 こんなことは初めてだ。 そしてそれは、金融市場に甚大な影響を及ぼすだろう。」、「債券投資家は商業用不動産へのエクスポージャーが高い銀行を罰しており、ウォール街は不動産債務の痛みが金融システムを通じてどの程度広がるかを見極めようと躍起になっているため、金融機関の収益はさらに圧迫される可能性がある。 悲しいことに、私たちがこれまで目撃してきたことは、ほんの始まりにすぎない。 全国の何百もの銀行が不良商業用不動産ローンに溺れ、その被害は計り知れないものになるだろう。」、「実際、昨日取り上げたように、『シャーク・タンク』で有名なケヴィン・オリアリーは、今後数年の間に何千もの米銀が破綻すると確信している。」、「ResumeBuilderが最近実施した調査によると、米国のビジネス・リーダーの38%が、2024年に自社がレイオフを実施すると予想している。」、「米国経済は、多くの人が思っているよりもはるかに深刻な状況にある。 米国史上最も混沌とした選挙シーズンが社会の根幹を揺るがすのと時を同じくして、私たちは経済の大混乱期を迎えようとしている。」とある。また、昨日の米国ZeroHedgeは、「"We Will Have A Hard Landing At Some Point. I Guarantee You That..."("いつかはハードランディングする。私はそれを保証する...")」を載せた。「エレン・ゼントナーはモルガン・スタンレーのチーフ・エコノミストで、彼女が言ったのだ。 CNBCとのインタビューで、彼女は「金融引き締めの影響」が今後数ヶ月の間に米国経済に甚大な影響を及ぼすだろうと警告した。」、「もしすぐに金利を下げなければ、我々が経験している痛みのレベルは劇的に上昇し始めるだろう。  残念ながら、FRBがすぐに金利を引き下げることはないだろう。インフレが予想以上に過熱し続けているからだ。」、「しかし今、状況は2024年初めに劇的に悪化し、非常に厄介な兆候が現れている。 例えば、あるカナダの年金基金がマンハッタンのオフィスタワーの株式をわずか1ドルで売却したことを知り、私は唖然とした。 カナダの年金基金は、世界でも有数の不動産購入国であり、その革命は世界中の退職年金に影響を与えた。その最大手が今、最も苦境に立たされている不動産タイプであるオフィスビルへのエクスポージャーを制限する措置を講じている。」、「私が、史上最悪の商業用不動産の暴落に向かっていると警告したことを覚えているだろうか?」、「一方、アメリカ中の大企業が大量解雇を続けている。」、「2008年と2009年の大不況以来、このようなことは起こっていない。 木曜日、ゼロヘッジは最近見られた50の大量解雇のリストを発表した。」、「グレッグ・ハンターが経済アナリストのデビッド・モーガンにインタビューしたところ、彼は「世界がかつて経験したことのないような世界恐慌に突入しつつある」と警告している。」、「世界の中央銀行は、莫大な量の資金をシステムに流し込むことで、避けられない事態を遅らせることが出来た。 しかし、それは途方もないインフレを引き起こし、今、恐ろしい経済危機がやって来ている。 だから私は、急速に近づいている「ハードランディング」に備えることを勧める。」。2008年のリーマン・ショック後、米国中央銀行は「非伝統的金融緩和」と称して、超低金利で、米国金融界に紙幣を大量に流し込んだ。これが金融バブルを生み出し、コロナ禍で、さらに紙幣を増刷したことが、インフレを招き、金利を上げてインフレを抑えざるを得なくなった。しかし、その金利引き上げは、長期の超低金利で維持されて来た負債に今、強烈な打撃を与えている。今年中に米国の本格的な金融崩壊が始まり、来年にはドルの崩壊に繋がって行くだろう。
サンシュユ


「殺人ロボットが互いにコミュニケーションを始めたらどうなるか?」

2024-03-09 19:18:52 | 社会
今日のビル・トッテン氏訳、「What Happens When Killer Robots Start Communicating with Each Other?(殺人ロボットが互いにコミュニケーションを始めたらどうなるか?)」。2月21日、CounterPunch掲載の同名記事。

by Michael T Klare

そう、もう心配する時期に来ている、それもかなり。ウクライナやガザでの戦争が示したように、「殺人ロボット」に相当する初期のドローンが戦場に投入され、壊滅的な兵器であることが証明されている。
しかし少なくとも、その大部分は人間のコントロール下にある。では想像してみてほしい。空中ドローン(または地上および海上でそれに相当する物)が逆に私たちをコントロールする世界を。そうなれば今日ほとんど想像できないほど破壊的に異なる惑星になるだろう。残念ながら、それが想像ではないとは言えないのが現実である。主要な国々がすでに人工知能(AI)やロボット兵器に関する研究を始めているからだ。ではその難解な世界にあなたをお連れし、戦争の未来が私たちにとって何を意味するのかを思い描いてみよう。

AIと高度なロボット工学を組み合わせることによって、 米軍や他の先進国はすでに自己誘導型の「自律型」兵器システム、つまり人間が指揮するのとは無関係に殺傷力を行使できる戦闘用ドローンの開発に取り組んでいる。批評家はこれを「殺人ロボット」と呼ぶこのような装置には、自律的な操作が可能な様々な無人飛行機、戦車、船舶、潜水艦が含まれる。例えば、米空軍は「共同戦闘航空機」と呼ばれる無人航空機(UAV)を開発しており、有人航空機と共に高リスク任務に参加することを意図している。陸軍も同様に、さまざまな自律型無人地上車両(UGV)のテストを行っている。海軍も無人水上船舶(USV)と無人潜水船舶(UUV、またはドローン潜水艦)の両方を試験している。中国、ロシア、オーストラリア、イスラエルも将来の戦場のためにこのような兵器を開発している。

これらの殺戮マシンの出現が間近に迫っていることから、世界的に懸念と論争が巻き起こっており、すでに全面的な禁止を求めている国もあれば、米国を含め人間の監視下でのみ使用を許可しようと計画している国もある。

ジュネーブでは、1980年の国連条約「特定通常兵器に関する条約」を引き合いに出して、完全自律型兵器の配備と使用を禁止しようとする国家グループさえある。一方、ニューヨークでは国連総会が昨年10月に自律型兵器について初めて議論し、今秋には本格的な再検討を計画している。

このような装置の戦場での使用をめぐる議論の大半は、人間の監視なしにそれらに人命を奪う権限を与えるかどうかにかかっている。多くの宗教団体や市民団体は、このようなシステムは戦場で戦闘員と民間人を区別することができないため、国際人道法で義務づけられているように、非戦闘員を死傷から守るために禁止すべきだと主張している。他方、米国政府関係者は、このような兵器は法的制約の範囲内で完璧に運用できるように設計できると主張している。

しかしこの議論ではどちらの側も、戦闘で彼らを使うことの最も不安な側面には触れていない。それは、遅かれ早かれ、人間の介入なしにコンピュータ同士がコミュニケーションできるようになり、”知的 “であるがゆえに、敵を倒すための台本にない独自の戦術を考え出すことができるようになる可能性である。このようなコンピュータ主導の集団思考をコンピュータ科学者たは「創発的行動」と呼んでいる。ジュネーブやワシントン、あるいは国連の当局者たちがまだ考慮に入れていない危険の数々がここにはある。

当分の間、米軍が開発する自律型兵器のほとんどは、既存の戦闘プラットフォームの無人版であり、乗組員のいるものと連携して運用されるように設計されるだろう。互いに通信する能力もあるかもしれないが、ミッションは人間の指揮官が指示・監督する「ネットワーク化された」戦闘チームの一部となる。例えば、コラボレイティブ・コンバット・エアクラフトは、有人ステルス戦闘機F-35の「忠実なウィングマン」として機能し、紛争空域でリスクの高いミッションを遂行することが期待されている。陸軍と海軍は、自律型兵器開発へのアプローチにおいて、ほぼ同様の軌跡をたどっている。

ロボットの “群れ “の魅力

しかし、米国の戦略家の中には、将来の戦場で自律型兵器を使用するための別のアプローチを提唱している者もいる。それは、自律型兵器が人間主導のチームの後輩としてではなく、自己主導のロボット群の対等なメンバーとして機能するというものである。このようなフォーメーションは、AIを搭載したUAV、USV、UGVの数十台から数百台で構成され、全員が互いに通信し、変化する戦場の状況についてデータを共有し、グループマインドが必要と判断すれば、戦闘戦術を集団的に変更することができる。

ポール・シャーレは、この概念の初期からの支持者の一人で、2014年のセンター・フォー・ニュー・アメリカン・セキュリティ(CNAS)の報告書で、明日の軍隊が今日のネットワーク化された軍隊よりも、より大きな質量、調整、知性、そして速度で群れとして戦うことができるようになると予測し、「ネットワーク化された、協力的な自律システムは真のスワーミングを可能にするだろう – 分散された要素間の協力的な振る舞いが、一貫した、知的な全体を生み出すのだ。」と記している。

シャーレが予言的な報告書で明らかにしたように、群れのコンセプトを完全に実現するには、自律型戦闘システムが互いに通信し、好ましい攻撃方法について「投票」することを可能にする高度なアルゴリズムの開発が必要である。そのためには、アリやミツバチ、オオカミなど、自然界で「群れ」の行動をとる生き物を模倣できるソフトウェアを開発する必要がある、と彼は指摘した。シャーレはこう述べている。「群れをなすオオカミが、あらゆる方向からの脅威を絶えず変化させながら敵に襲いかかるように、機動と攻撃を協調できる無人車両は、協調性のないシステムが集団で行動するよりもはるかに効果的である可能性がある」。

しかし2014年当時、そのような機械の行動を可能にするために必要な技術はまだ発展途上にあった。この重大な欠陥に対処するため、国防総省はグーグルやマイクロソフトのような民間企業からそのような技術を取得しながらも、AIとロボット工学分野の研究に資金を提供することを進めた。この推進における中心人物は、CNASのポール・シャーレの元同僚で、群れ戦の初期の熱狂者であったロバート・ワークである。ワークは2014年から2017年まで国防副長官を務めていたため、ハイテク兵器、特に無人システムや自律型システムの開発に、増え続ける資金を回すことができた。

モザイクからレプリケーターへ

この作業の多くは国防総省内のハイテク研究組織である国防高等研究計画局(DARPA)に委ねられた。DARPAは、このような協調的な群れ作戦のためのAI開発を推進する一環として、「モザイク」プログラムを開始した。これは、ロシアや中国との将来の高強度戦闘において、有人・無人戦闘システムの活動を調整するために必要なアルゴリズムやその他の技術を完成させることを目的とした一連のプロジェクトである。

「モザイク・コンセプトの優れた柔軟性を戦争に応用する」と、DARPA戦略技術局のダン・パット副局長は説明し、「より低コストで、より複雑でないシステムは、あらゆるシナリオに合わせた望ましい織り成す効果を生み出すために、様々な方法で連結させることができる。モザイクの個々のパーツは攻撃可能(使い捨て可能)だが、全体への貢献度は計り知れない」と述べた。

昨年夏、キャスリーン・ヒックス国防副長官が発表した新しい「レプリカ」戦略の根底には、このような戦争概念があるようだ。「レプリケーターは、(中国の)最大の強みである量に打ち勝つためのものだ。より多くの艦船。より多くのミサイル。より多くの人間。」昨年8月彼女は軍需産業関係者にこう語った。彼女は、何千もの自律型UAV、USV、UUV、UGVを配備することで米軍は中国の軍隊である人民解放軍(PLA)を出し抜き、圧倒することができるだろうと言った。「優位に立つために、我々は新たな最先端技術を作り出そうとしている……我々はPLAの量に我々の量で対抗するが、我々のものは計画しにくく、命中しにくく、打ち負かしにくいものになるだろう」

このような野心的なプログラムを実施するために必要なハードウェアとソフトウェアの両方を入手するため、国防総省は現在、ボーイングやレイセオンなどの伝統的な防衛請負業者や、AndurilやShieldAIなどのAI新興企業からの提案を求めている。空軍のコラボレイティブ・コンバット・エアクラフトや海軍のOrca超大型UUVのような大規模な装置もこの推進に含まれるかもしれないが、現在ウクライナ軍が敵陣の背後でロシアの戦車や装甲車を排除するために使用しているAeroVironmentのスイッチブレード攻撃ドローンのような、より小型で複雑でないシステムの迅速な生産に重点が置かれている。

同時に国防総省はすでに異種ロボットユニットとそれに付随する有人プラットフォーム間の通信と調整を促進するために必要なソフトウェアを開発するよう、テクノロジー新興企業に呼びかけている。これを促進するため、空軍は2024会計年度予算で5000万ドルを議会に要求し、プロジェクトVENOM(「バイパー実験・次世代作戦モデル」)と呼ばれる不吉なものを引き受けた。VENOMの下で、空軍は既存の戦闘機をAIが管理するUAVに改造し、マルチドローン運用における高度な自律ソフトウェアのテストに使用することになる。陸軍と海軍も同様のシステムをテスト中である。

群れが自らの道を選ぶとき

言い換えれば、米軍(おそらく中国、ロシア、および他の一部の大国も同様)が、互いに通信し、移動中に新しい予測不可能な戦闘行動を共同で選択できるアルゴリズムを搭載した自律型武器システムの群れを展開できるようになるのは時間の問題だろう。このような群れに参加するロボットメンバーは、任務目標(「指定された地理座標内にある敵のレーダーや対空ミサイルバッテリーを探し出して破壊する」など)が与えられるが、具体的な手順は与えられない。これにより、彼らは互いに協議しながら自らの戦術を選択できるだろう。限られたテストデータから推測すると、これは人間のパイロットや指揮官が考えつかない(および複製不可能な)非常に非伝統的な戦術を採用することを意味するかもしれない。

このような相互接続されたAIシステムが新しい、計画されていない結果に関与する傾向を、コンピュータ専門家は「エマージェント行動」と呼ぶ。科学誌のダイジェストをするScienceDirectが説明するように、「エマージェント行動は、そのような特性を示さないより小さなまたは単純な実体の相互作用によって、より大きなパターンが生じるプロセスとして記述される」とされている。軍事的に言えば、これは自律型兵器の群れが、個々のデバイスがプログラムされていない戦術を共同で採用する可能性があることを意味する。戦場で驚異的な結果を達成するかもしれないが、同時に、そのような人間の指揮官が意図せず予測できないエスカレーション行為に関与する可能性もある。これには、核および従来の作戦に使用される重要な市民インフラや通信施設の破壊が含まれる。

もちろん、この時点では複数の武器を装備し、人間の監督から切り離された状態でエイリアングループが何を選択するかを予測するのはほとんど不可能である。 おそらく、そのようなシステムには、敵の妨害電波やその他の理由で通信が失われた場合に、人間の監督者との通信が再確立されるまで基地に戻るようにするフェイルセーフメカニズムが装備されているはずだ。しかし、そうした思考マシンが厳しい現実の条件下でどのように機能するか、また、実際には、集合的なマインドがそのような命令を無視して独自に行動する能力があるかどうかは誰にもわからない。

ではどうなるのか?あらかじめプログラムされた限界を超えて戦い続け、意図しないエスカレーションを引き起こすかもしれない。あるいは、敵軍への攻撃をやめ、代わりに友軍の作戦を妨害し、(古典的SF映画『ターミネーター』シリーズでスカイネットがやったように)敵軍を攻撃して壊滅させることを選ぶだろうか?あるいは、良くも悪くも、われわれの想像をはるかに超えた行動をとるのだろうか?

米軍や外交当局のトップは、AIはそのような将来的なリスクを負うことなく実際に使用することが可能であり、米国は将来の危険な誤動作に対して徹底的に十分な安全装置を組み込んだ装置のみを採用すると主張している。実際、国務省が2023年2月に発表した「人工知能と自律性の責任ある軍事利用に関する政治宣言」でも、それが本質的な指摘となっている。しかし多くの著名な安全保障・技術関係者は、将来のロボット兵器におけるエマージェント行動の潜在的なリスクをよく認識しているため、戦争におけるAIの急速な活用に対して警告を発し続けている。

特に注目すべきは、2021年2月に発表された「人工知能に関する国家安全保障委員会」の最終報告書である。ロバート・ワーク(国防総省勤務を経てCNASに復帰)とエリック・シュミット(グーグル元CEO)が共同議長を務めた同委員会は、中国やロシアとの将来の紛争で勝利を確実にするため、米軍によるAIの迅速な活用を推奨した。しかし委員会はまた、ロボットがあふれている戦場の潜在的な危険性についても懸念を表明した。

「このようなシステムを世界的に野放図に使用することは、意図しない紛争の激化や危機的な不安定化を招く危険性がある」と報告書は指摘している。このような事態は、「戦場におけるAIと自律型兵器システムとの相互作用(つまり、エマージェント行動)が、困難で未検証の複雑性を持つため」など、さまざまな理由で起こりうる。その危険性を考慮し、「各国はAI対応・自律型兵器システムに関連するリスクを軽減することに重点を置いた行動を取らなければならない」と結論づけている。

自律型兵器の主要な提唱者が戦闘での使用によって引き起こされる意図しない危険について懸念を表明するとき、我々も本当に心配するべきだ。AIのエマージェント行動を理解する数学的なスキルがなくても、自殺マシンが独自に考える能力を持つようになれば、人類はその存続にかなりのリスクに直面する可能性があることは明らかである。おそらく彼らは皆を驚かせ、国際的な平和維持者の役割を引き受けることを決定するかもしれないが、彼らは戦い、殺すために設計されていることを考えれば、彼らが独立してかつ極端な方法でその命令を実行することを選ぶ可能性のほうがはるかに高い。

もしそうであれば、人類の墓標にRIP[安らかに眠れ]と刻んでくれる人は誰もいなくなるかもしれない。


政府債務とドル崩壊

2024-03-08 19:18:08 | 社会
今日の米国ZeroHedgeは、「US stocks extended on record levels with outperformance in tech amid dovish tailwinds - Newsquawk Asia-Pac Market Open(米株、ハト派的な追い風の中、ハイテク株アウトパフォームで史上最高値更新 - Newsquawk アジア太平洋市場オープン)」、「Dollar Dives Near 2-Month Lows As Bitcoin & Bullion Hit New Record Highs(ビットコインと地金が史上最高値を更新する中、ドルは2カ月ぶりの安値に迫る急落)」、「Credit Card Debt Jumps To New All-Time High, As Card Rates Rise To New Record(クレジットカードの負債が過去最高を更新、カード金利も過去最高を更新)」を載せている。米国半導体企業NVIDIAの時価総額はイタリア、ブラジル、カナダ、ロシアの全株式総額より大きい。米国の名目GDPは中国の1.4倍だが、株価総額は中国の5倍だ。米国の政府債務は34.5兆ドルに達し、史上最高を記録している。2023年12月にGDP比124.2%となった。歴史上、国の債務がGDPの130%超えた国が52カ国あった。そのうち、51カ国が通過切下げ、高インフレ、債務不履行のいずれかの方法で実質的に財政破綻している。52カ国目は日本だ。米国も130%に遠からず達する。3月1日の米国主要メディアCNBCは、「The U.S. national debt is rising by $1 trillion about every 100 days(米国の国家債務は約100日ごとに1兆ドル増加している)」を報じていた。米国の政府債務が36.1兆ドルに達すれば、GDP比130%になる。あと債務が1.6兆ドル増えるのに1年はかからない。米国独立系メディアWatcher.Guruは、6日、「BRICS: Bank of America Issues Warning of a US Dollar Collapse(BRICS:バンク・オブ・アメリカが米ドル暴落の警告を発する)」を載せた。

米国の国家債務は2023年以降、100日ごとに1兆ドルずつ増加している。制御不能な債務は、米国だけでなく、世界中を大混乱に陥れる金融災害につながる可能性がある。BRICSやその他の発展途上国は、米ドルの債務によって自国の経済が破綻することを懸念している。米ドルを外貨準備として保有し続けることは、長年にわたる金融の安定を根底から覆しかねない脅威である。

ドル建ての国家債務は34兆4000億ドルと過去最高を更新し、かろうじてコントロールされている状態だ。国会議員や連邦準備制度理事会(FRB)の役人たちは、増え続ける負債を抑えることが出来ないでいる。

経済が乱高下するなか、バンク・オブ・アメリカは米ドル暴落の可能性について警告を発した。さらに、これによってBRICSは脱ドル構想を世界に広めることが出来る。

BRICSが貿易のためにドルを捨てた場合、米国の多くのセクターにどのような影響が及ぶかは、こちらをお読みいただきたい。米ドルの下落は、BRICSが他の発展途上国を脱ドルへと導くことを可能にする。

バンク・オブ・アメリカは最新の記事で、米ドルと経済は2024年に「大打撃の年」に直面すると警告した。国家債務の増大が、米国経済が下降線をたどる主な理由である。バンク・オブ・アメリカのチーフ・ストラテジスト、マイケル・ハートネットは、「米国の国家債務は100日ごとに1兆ドルずつ増加している。」

ハートネットは、もし今年債務がコントロール不能になれば、米ドルの崩壊が間近に迫っていると警告した。グリット・キャピタルの元アセット・マネージャー、ジュヌヴィエーヴ・ロッホ=デクターは、「これは良い結果にはならない」と書いている。また、BRICSは現在、米ドルの下落を待っており、世界市場で新しい通貨を発行する可能性がある。

・・・・・・・・・・・

2日のUSAWatchdog、「BRICS Will Devastate US Dollar & Economy – Bo Polny(BRICSは米ドルと経済を破滅させる - ボー・ポルニー)」では、地政学・金融アナリストのボー・ポルニーが、「ドルは世界の基軸通貨から外される。世界の基軸通貨の座を奪われれば、債券市場は崩壊し、金利は急上昇し、不動産市場は暴落する。アメリカ経済は壊滅的な打撃を受けるだろう。」、「ドルはその価値のおよそ30%を失い、米ドル指数は70%台まで下がるだろう。」、「私たちは今、デリバティブ契約でレバレッジをかけている。だから、デリバティブ契約の30%削減(数十兆ドル規模)は、経済に壊滅的な打撃を与える。」、「金と銀はすぐに暴騰するでしょう。金は1オンスあたり2100ドルを超えてはいけないし、銀は26ドルを超えてはいけない。. .ドルが世界の基軸通貨である限り、その支配機構は存続する。ドルが世界の基軸通貨の地位を失えば、金と銀は暴騰する。銀は1日で3倍に上昇する可能性があり、金と銀の史上最大の強気相場が始まるだけだ。」と述べている。今日のZeroHedgeは、「Ron Paul: Fed's "Dollar Destruction" And Moral Crisis(ロン・ポール:FRBの「ドル破壊」とモラルの危機)」を載せている。ロン・ポールは元共和党の下院議員だ。

ロン・ポールが最近、平和と繁栄のためのロン・ポール研究所から発表した論説が、オレンジ・カウンティ・レジスター紙に転載された。中央銀行の貨幣印刷がもたらす甚大な損害について、次のように説明している。貯蓄者と投機家を対立させ、消費者が基本的な必要資金を調達するために借金をするよう促す。

その結果は?消費者負債が膨れ上がり、クレジットカードに過度に依存する一方で、将来のための貯蓄はゼロサムゲームとなる:

「…米国人の名目賃金は増えても、実質賃金は下がっている。」

ポールが言うところのFRBの「ドル破壊」は、米国人が慣れ親しんでいるものであり、私たちを苦しめているにもかかわらず、私たちはそれに病みつきになっている。しかし、多くの米国人が安いローンと広範な福祉プログラムにはまっているため、健全なマネーは当初、多くの貯蓄者から拒否されることになる。毎日一袋のキャンディーを食べることに慣れ、健康を害している赤ん坊のように、たとえそれが金の裏付けがある貨幣という形で将来の世代の繁栄のチャンスを確保することであったとしても、自分たちの社会的「支援」が奪われようとしていることに多くの人が激怒するだろう。

ジェラルド・セレンテが言うように、「魚は頭から腐る」のである。イージー・マネーは手当てへの依存を助長し、それが文化的に受け入れられてしまうと、手当てが取り上げられると重大な不正のように思える。健全な貨幣や、道徳的に忌まわしい中央銀行の無限の貨幣印刷の有害な影響について適切な教育がなされなければ、ほとんどの人々(生活保護受給者であろうとなかろうと)は、自分たちの福祉制度がもともと決して手の届くものではなかったという事実に気づかない。非道徳的な指導者と金融政策は、地上レベルでの非道徳的な考え方をもたらし、それが上から下へと伝わり、ウイルスのように社会のあらゆるレベルに感染する。

これは、持続不可能な負債を背負わされ、安い信用と政府の福祉への依存度をさらに高めることになる将来の世代に、さらなる苦労を保証するだけだ。しかし、こうした実験の必然的な結末は、ドルの総崩れだ。そうなれば、パンチが一度に奪われるだけでなく、その結果生じる経済の崩壊は、平民がスクラップのために争い、中央銀行が作り出した問題から救ってくれる強い中央政府を懇願する、途方もなく暴力的で権威主義的な社会の条件を作り出す:

「社会のあらゆる階層で、あまりにも多くの米国人が、同胞を犠牲にして政府が提供する経済的保障を受ける権利があると(信じている)。その結果、暴力や権威主義的な政治運動が拡大する。」

しかし、希望はある。最終的な崩壊は避けられないが、米国のように新たに印刷したドルを世界中にばらまき、インフレを他国に輸出している国にとっても、ドルの崩壊は自由を愛する人々にとって、ケインジアンから文化的な話題と政治的資本をハイジャックする絶好の機会でもある。

不換紙幣の灰の中から、健全な貨幣政策が政治的に定着する可能性がこれまで以上に高い、新しい社会を創造するまたとないチャンスがやってくる。

金が史上最高値を更新し、金利引き下げが予定され、さらに戦争が続くとなれば、2024年から2025年にかけて、不換紙幣の鶏がついにねぐらに帰る時が来るかもしれない。しかし、ポールは、自由を愛する者たちが、自己満足に陥ったり、戦意を喪失したりして、戦いを続けることがないようにと、一縷の望みを託して、この記事を締めくくっている:

「次の暴落が起こったときに、家族が自分たちの面倒を見ることができるような計画を立てながら、自由のメッセージを多くの人々に伝える努力を続けなければならない。」

国(赤)と企業(黒)の株式時価総額