釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

現代版徐福

2018-03-31 19:13:16 | 科学
紀元前3世紀、中国の秦の時代に、「東方の三神山に長生不老の霊薬がある」として、徐福が始皇帝から、3000人の若い男女や多くの技術者、穀物の種を与えられ、東方の海に旅立った。この徐福の伝説が韓国や日本にも残されていて、日本では本州各地で、伝承がある。2000年以上前から、人々は長寿に夢を抱いていた。長寿への憧れは今も変わらず、現代版の始皇帝と徐福が米国のシリコンバレーにはいるようだ。米国には桁外れの富裕層がいて、彼らは何としても健康な長寿を得たいと考えている。そんな彼らから出資を得て、シリコンバレーのベンチャー企業が長寿薬の開発に乗り出している。米国には国立老化研究所National Institute on Aging(NIA)があり、そこが抗老化作用があると認めるものが7つある。カロリー制限、断食、運動、スペルミジン、レスベラトロール(ポリフェノール)、ラパマイシン(免疫抑制剤)、メトホルミン(糖尿病治療薬)である。断食は日常生活ではなかなか取り入れ難い。カロリー制限や運動は適度には実行しやすい。スペルミジンは日本だと納豆に多く含まれ、特にひき割り納豆に多い。レスベラトロールは赤ワインやブドウの果皮、アーモンドの薄皮、リンゴの皮やザクロ、イチゴなどにも含まれている。ラパマイシンとメトホルミンは共に長寿だけでなく、抗癌作用も明らかになっている。特に、メトホルミンは糖尿病治療薬として、60年以上使われて来ており、安価で副作用も少ないため、注目されており、日本でも岡山大学がその抗癌作用のメカニズムを明らかにしている。米国では、食品医薬品局(FDA)が初めて認める長寿薬の臨床試験として、メトホルミンの臨床試験が2016年から始まっている。プロジェクト名はTargeting/ Taming Aging With Metformin(TAME)と呼ばれる。アルバート・アインシュタイン医科大学(ニューヨーク)の老化研究所のニル・バルジライNir Barzilai所長らが、複数の研究機関で、5~7年かけて行う。メトホルミンは老化を引き起こす細胞の全てのプロセス(細胞増殖、炎症、代謝、ストレス反応)に関わっていて、健康寿命を改善するだけでなく、抗癌作用(特に乳癌、前立腺癌)、認知症・記憶力にも有用であることが明らかとなっている。英国の研究ではメトホルミン850mgを一日3回長期に服用した場合は、ビタミンB12の欠乏が見られることがある。メトホルミン250mgは日本では10円ほどで、健康人が長寿や抗癌作用を期待して服用する場合は500mg程度でいいのではないかと言われる。また、米国ではこうした長寿の臨床試験に5年もかけずに短期間でその効果の指標となる血液中の成分を見出そうとする研究も行われているようだ。バルジライ教授は、動物実験から、人では寿命を20年延ばせる可能性があると言われる。
椿

米国国債「売却」

2018-03-30 19:10:24 | 経済
トランプ大統領は主に中国との貿易不均衡を是正しようと、今月初め、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課す大統領令に署名した。これに対して、中国は保有米国国債の売却をチラつかせている。実際に売却を実施すれば、中国自体も損失を被る。現在、米国の国債の最大の保有者は中央銀行であるFRBで、中国はそれに次ぐ。日本は少しの差で、3番目となっている。かって、1997年に当時の橋本龍太郎首相が米国のコロンビア大学で講演した際、日本が米国国債を保有することについて質問された。これに対し、「本当のことを申し上げれば、われわれは、大量の米国債を売却しようとする気になったことは、幾度かあります。・・・・米国債を保有することは、われわれにとって唯一の選択肢ではないのです。むしろ、米国債を売却して、金を購入することも、もうひとつの選択肢なのです。でも、日本がいったんそのようなことをしようとなれば、アメリカ経済に計り知れない衝撃を与えることになりますよね。そうじゃないですか?多くの国が、米国債を、外貨準備高として、保有しています。 これらの国は、ドルが下落しても、米国債を買い続けるでしょうし、そのことは、アメリカ経済にとって、かなりの支えになるはずです。私は、そうなることを願っているのですが、アメリカが為替レートの安定性の維持に努力し、協力するであろうことは、かなり、明白なはずです。 ですから、われわれは、米国債を売却し、外貨準備を金に変えようとしたい誘惑に、屈服することはないでしょう。」と答えた。しかし、大量の米国国債を保有する日本の首相が米国国債の売却に触れたため、翌日の米国の株式市場は1987年のブラックマンデー以来最大の下げを記録した。これ以来、日本の米国国債の売却はタブーとなった。米国国債の価値とドルの価値は一体である。米国は大きな財政赤字だけでなく、経常収支も大きな赤字となっており、対外的に大きな借金を抱えてもいる。しかもその対外的借金は財政赤字とともに年々増加している。本来であれば、こんな国の通貨は価値が低下する。しかし、米国の通貨ドルは基軸通貨であるため、各国は貿易の取引にドルを使うため、ドルを貿易決済の準備金として持たざるを得ず、ドルが買われ、ドルの価値が維持されて来た。しかし、今月からは中国で石油先物取引きで、ゴールドを裏付けにした人民元での取引が開始された。ロシアなどBRICs諸国間の貿易ではドル離れがすでに始まってもいる。基軸通貨としてのドルもかってほどの固い地盤を失いつつある。しかも、日米欧の中央銀行は揃って、国債を大量に保有しており、これ自体がこれまでの平時の歴史ではあり得ないことである。先進国の現在のともかくもの経済成長を支えているのは、中央銀行の紙幣印刷である。印刷して市中に流した紙幣を、米国の中央銀行が先ず回収しようとしており、欧州が今年からそれをやろうとしている。日本だけはまだその影すら見えていない。「回収」など不可能なほど深刻なのが日本だからだ。

先進国の異様な格差

2018-03-29 19:16:09 | 社会
2008年のリーマン・ショック後、先進国の中央銀行はこぞって大規模な金融緩和を行なった。リーマン・ショックの引き金は、低所得者向けの住宅ローン、サブプライムローンの返済不能であった。住宅金融会社は高金利の住宅ローンにして低所得者に貸付け、その貸付債権を証券化して投資銀行に販売した。このため、返済不能が多発すると、住宅金融会社と投資銀行が連鎖して倒産に追い込まれた。規模の大きい投資銀行も巻き込まれ、資金繰りに窮し、倒産寸前になったが、米国の中央銀行FRBが規模の大き過ぎる銀行の倒産は経済への影響が大きいとして、ドルをそうした銀行に流して、救済し、中規模の投資銀行であったリーマン・ブラザーズなどを倒産させた。RRBが大規模な銀行から不良となった債券を買い取り、見返りにドルを大量にその銀行に流し込んだ。これが米国の金融緩和の実態だ。超低金利は富裕層の借り入れとそれによる金融資産への投資を招き、今またバブルを生み出している。しかし、米国も日本も実体経済は決してよくはなく、貧富の格差が大きく拡大して来ている。昨年12月10日、米国のニューズウィークNewsweek誌は「ALABAMA HAS THE WORST POVERTY IN THE DEVELOPED WORLD, U.N. OFFICIAL SAYS(アラバマ州の貧困は先進国で最悪──国連が報告)」と言う記事を載せた。米国の貧困状況を調査中の国連特別報告者は、南部アラバマ州の山間部の生活環境の悪化を目の当たりにして、衝撃を受けている。「先進国とは思えない、異様な光景だ」、「各家庭から排出される未処理の汚水が、野ざらしになった排水用塩化ビニル管を伝って側溝に垂れ流されていた」。米国アラバマ州では、昨年、鉤虫が腸に寄生してかゆみなどの症状を引き起こす鉤虫感染症が流行したが、英国ガーディアン紙も、鉤虫感染症は南アジアやサハラ砂漠以南のアフリカ諸国など、衛生状態が劣悪な国に典型的な病気だとして、米国の異様さを伝えている。昨年9月の米国国勢調査局の報告でも、米国の貧困層は4100万人に達し、経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進国の中で、米国のの貧困率は2番目に高い(貧困率とは、手取り収入が国民1人当たりの所得の中央値の半分以下しかない人の割合)。黒人やヒスパニック、ネイティブ・アメリカンの子供が貧困家庭で育つ確率は白人の2~3倍になっており、人種的なマイノリティが所得格差で最も大きな影響を受けている。昨年12月14日、日本でもNHKが「ユニセフ事務局長 日本の子どもの貧困率に懸念」と言うニュースを流した。「日本のおよそ16%の子供が深刻な貧困状態にある。」として、子供たちが医療や教育を平等に受ける機会が確保されるべきだと述べている。非正規雇用の拡大により、実質賃金は伸びず、消費も拡大しないため、一部の輸出大企業の利益だけが最高となり、他の企業は収益を確保するために製品価格を上げたり、量的な減少による実質的な値上げに出ざるを得なくなっている。

スピルバーグの近作

2018-03-28 19:19:27 | 文化
これまで数々の話題作・名作を出して来た映画監督のスティーヴン・スピルバーグSteven Allan Spielbergの作品「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書(原題The Post)」が日本でも今月末から放映開始となる。残念ながら岩手県では今月末はまだ放映する映画館がない。1954年にフランス軍がディエンビエンフーの戦いでベトミンに敗れた後、米国は1955年に軍事援助顧問団を強化して、南ベトナム政府軍の軍事教練を開始し、1964年のトンキン湾事件をきっかけにベトナム戦争に本格的に軍事介入して行った。1975年4月のサイゴン陥落まで続いた。この間、米国政府は国民へは正確な戦況を知らせず、巨額の軍事費を投入し、多くの兵士の犠牲をもたらした。このベトナム戦争における米国政府の対応を記録した秘密文書がペンタゴン・ペーパーズPentagon Papersと呼ばれるもので、1971年にニューヨーク・タイムズThe New York Timesがこの文書をスクープし、報じた。スピルバーグの映画は同じくこの文書を入手したワシントン・ポストThe Washington Postの、真実を報じるか、政権との関係を重視するかの葛藤を描いている。ニクソン大統領は国家の機密だとして、ニューヨーク・タイムズを司法に訴えた。ベトナム戦争は南ベトナム政府軍の内部での権力闘争が続き、政府軍の兵士の士気も低下して、巨費を投じた米国の介入も効果がなく、泥沼化した。米国はベトナム戦争での失敗にもかかわらず、以後も世界の各地での紛争に介入し、同じく泥沼化し、最後には投げ出している。米国も今では様々な法により、国家機密として、国民に知らせない事実が拡大されている。過剰な規制すら行われてもいる。そんな状況を批判する意味でも、スピルバーグはこの映画を投じたかったようだ。国家は本来国民のためのものであるが、権力を一度保持した者は、不都合な部分は極力隠そうとする。これは洋の東西を問わずである。司法すら権力の内部に取り込まれてしまう。ペンタゴン・ペーパーズも、当時であったからこそ、報じられたが、現代では米国でも多くのメディアが「事実を伝える」ことから後退している。多くのメディアが政権寄りの大資本により運営されるようになったためだ。インターネットの普及が、メディアの売り上げを減少させ、メディアを守りに入らせたことも一因かも知れない。いずれにしろ、スピルバーグの映画は、かっての「良き時代」のメディアのあり方を描いている。
毎年釜石で最初に咲く早咲きの桜

Great Depression(大恐慌)

2018-03-27 19:20:05 | 経済
スイス人投資家のマーク・ファーバーMarc Faber氏は、チューリッヒ大学で経済学を学び、24歳で博士号を取得し、現在はタイに住んで、投資会社を経営している。これまで同氏は、1987年の米国の株式暴落、日本の株式市場のバブル崩壊の終焉時期、過去最大の資産バブルとそれに依存した米国の経済成長を指摘し、世界的な株安と景気後退となった2008年のリーマン・ショックを予見・警告した人として知られる。そのマーク・ファーバー氏が、インドのThe Economic Times紙のインタビューを受けた記事が昨日載せられている。「現在の世界の債務レベル対GDP比率は、危機発生前の2007年より50%以上も大きい。2009年6月以降、経済は控えめな拡大を続けた。
それは紙幣印刷と信用(money printing and credit)に支えられたもので、おそらくこれ以上信用を増やしてもプラスにならないところまで信用レベルは達してしまった。」「金利面では、紀元前3000年から現在までの5000年間の人類の歴史で、これほど低金利の時代はなかった。」。ファーバー氏は今年これからか来年の景気後退を予想し、大幅な株式市場の下落があると見ている。また、2013年にノーベル経済学賞を受賞した米国イェール大学ロバート・シラーRobert James Shiller教授は、今月23日のThe New York Times紙に「The Trump Boom Is Making It Harder to See the Next Recession(トランプ景気は次の景気後退を予想することを難しくしている)」と題する記事を投稿している。同教授は以前、トランプ大統領が登場した直後に米国のCNBCのインタビューに対して、トランプ政権が1923年から1929年までのカルビン・クーリッジ政権の再来になりかねないと述べていた。クーリッジ大統領は狂騒の1920年代を演出し、退任直後に大暴落が起き、世界恐慌となった。教授はトランプ大統領が「Make America Great Again(米国を再び偉大な国に)」と言ったことに対して、この「Great」が、大恐慌(Great Depression)の「Great」にならないか心配している。「いつか相応の景気後退がやって来る。・・・何がそれを引き起こすかは分からない。しかし、間違いなく次の景気後退はやって来る。(We don’t really know what will do it. But rest assured, the next recession will surely come.)」
山茱萸(さんしゅゆ)と紅梅

有酸素運動と同様に重要な筋トレ

2018-03-26 19:14:21 | 科学
週末から気温が上がり、だんだん春めいて来た。今日も職場の裏山ではリスの姿が見られた。まだリスの食べ物は実っていないので、何箇所にも隠している木の実を掘り出して食べているのだろう。この時期になると、少し山間の道を車で走ると、轢かれたタヌキを見るようになった。気温が上がり、夜間に活動するようになったのだろう。動きの遅いタヌキは暗い山間部を走る車の犠牲になる。東北は動植物が豊かだが、特に岩手は広く、鉄道も不便なため、どうしても移動に車を使い、運動不足になりがちだ。都会の方がかえって電車や地下鉄の乗り換えなど、結構歩く。従って、岩手だと意識的に運動を心がけないと体力も維持出来なくなる。釜石に来て、自然と触れ合う中で、つくづく人はやはり動物であり、動く物でなければならないと思うようになった。若い頃は長くスポーツをやっていたが、ある時、職場のバレーボール大会に出て、ジャンプをした途端に左のアキレス腱を切ってしまった。それ以来、ジャンプへの不安が生まれ、それまでやっていたスポーツから離れ、冬場のスキーのみになった。そのスキーも子供が大きくなると次第に遠ざかり、一昨年、知人と何年ぶりかで安日高原で滑った。加齢とともにアンチエイジングを意識するようになり、運動もそのためにも大切であるので、今は朝の30分ほどのウォーキングと一日置きの筋トレを続けている。一頃加齢とともに有酸素運動が強調されたが、最近の研究では高齢でも可能な限り無理のない範囲で筋トレを行なった方がいいようだ。首都大学東京大学院人間健康科学研究科の藤井宣晴教授らの研究で、筋肉からは多くのホルモン物質、マイオカインが分泌されており、米国では「Exercise is medicine.(運動は薬なり)」と言われ、実際、運動の効果は脳、免疫系、肝臓、膵臓など多くの臓器に見られることが次々に明らかになっている。オーストラリアのシドニー大学の研究者らは、1994年から2008年までの30歳以上の成人8万306名を対象にした、筋力トレーニングと全死因における死亡、癌による死亡との関連性について分析の分析を行なった。その結果、週二回以上、筋力トレーニングを行っている人は、全死因における死亡リスクが23%低く、癌による死亡リスクも31%低いことが明らかになった。また、この分析によれば、専用マシンを使わない筋力トレーニングも、ジムなどで行われる筋力トレーニングと同等の効果があると認められたと言う。米国ペンシルバニア州立大学の研究では、65歳以上の高齢者のうち、筋力トレーニングを行っている人は、そうでない人よりも、全死因における死亡リスクが31.6%低いと言う結果が出ている。デンマークのコペンハーゲン大学の最近の研究では、筋肉が出す"メッセージ物質"が、癌細胞をやっつける免疫細胞を活性化させる働きがあると言う。筋力トレーニングが、有酸素運動と同様に健康維持に重要な役割を果たしているのだ。加齢で硬くなりやすい部分、体幹や太もものストレッチ、スクワットのような筋トレやウォーキングをすれば代謝や筋力がアップしやすくなると言う。東京大学大学院石井直方教授によると、基本的に、筋肉は30歳を超えると減り始めるが、一番減りやすい部位の一つが太ももで、太ももの前の筋肉は、30歳から80歳までの50年間で、約半分にまで減少するのだそうだ。中でも40代から50代にかけてが、筋肉の減り方の速度が最も早い。
紅梅

巨大地震後の巨大噴火

2018-03-24 19:15:29 | 自然
今朝は久しぶりに雲一つない釜石ブルーの広がる朝になった。放射冷却で、薄っすらと氷が張るところもあった。家の裏の空き家の庭には鹿の糞がたくさん落ちている。芽吹きはじめた草を食べに夜にやって来ているようだ。今朝のウォーキング時に今年初めてウグイスの声を聴いた。まだまだ未熟な声であったが。 立命館大環太平洋文明研究センターの高橋学教授は、世界で発生したプレート型の巨大地震の後には、必ずと言っていいほど火山の巨大噴火が起きていると言われる。2011年の東日本大震災後、各地で火山噴火は見られているが、今までのところは巨大噴火と言えるほどの噴火は見られていない。日本での有史以来最大の火山噴火は915年の十和田火山平安噴火だとされる。十和田湖は5万5000年前以後の3回の大規模噴火によって形成された二重のカルデラ火山である。直径約9km、水深100m前後の平たい盆型の十和田湖を成している十和田カルデラと、その内部の直径約3km、最大水深327mの鋭い頂角をもつ楕円錐台型の中湖(なかのうみ)カルデラである。この915年の十和田火山平安噴火では、火砕流は約20Km先まで到達し、その後の雨で大規模な泥流が発生し、日本海まで達している。十和田火山は過去1万1000年間で少なくとも8回の爆発的噴火が確認されている。十和田火山の平安噴火は確かに高橋教授が言われるように、2011年の東北地方太平洋沖地震に対比される869年の貞観地震の前後に864年の富士山の噴火とともに発生している。今年、1月青森県や秋田県などでつくる十和田火山防災協議会は、十和田湖の火山噴火を想定したハザードマップを公表している。大規模噴火時は火砕流が火口から30Km地点まで到達し、特に青森県の下北半島に集中し、いずれも30Km圏外にある原発などの原子力施設には、火山灰が積もる恐れがあるとしている。火山灰は風により青森県は全域、秋田県は北半部、岩手県は南部を除く8割の地域に火山灰が積もる。日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)や東北電力東通原発(同東通村)などがある下北半島に火砕流は達しないが、風向きによって火山灰や軽石などの降下物が10cm以上積もるとされる。2002年に医師でもある作家石黒耀氏が『死都日本』を出した。「地震は怖いけど、火山はそうでもないよね」と言う妻の言葉に驚き、1998年から書き始めたという。当時、宮崎県中部の清武という町に住んでいて、その町では古くから「清武石」という石材が切り出されており、古い家の基礎や石垣に使われている。この石材は、遥か離れた鹿児島県姶良火山の巨大火砕流噴火で出来た溶結凝灰岩であった。破局的な巨大噴火を起こすメカニズムは解明されていないため、明日いきなり大噴火しても不思議はない危険な火山だが、大部分が海面下にあるせいか地図にも記載されておらず、地元民の話題に上ることもなく、火口縁の姶良町に住む人に尋ねるチャンスがあったが、「一応、学校では習うんですが、特に危険な場所に住んでると意識してる人はいないと思いますよ」と笑われてしまったと言う。小説では、宮崎県沖で大きな地震が発生した後、霧島山の地下にある加久藤火山(加久藤カルデラ)が巨大噴火を起こす設定になっている。そして、政府は火砕流にのまれそうな原発から燃料棒を運び出す。現実を考えると、やはり小説の中だけのこととしか思えないのが残念だ。
早朝の愛染山

最悪の貿易戦争ー歴史は繰り返すのか?

2018-03-23 19:12:54 | 社会
昨日は雨模様の1日であったが、今日は雨が上がり、少しの間日射しも刺した。職場の裏山では数頭の鹿やリスの姿が見られた。例年、3月には一度は湿ったまとまった雪が降るが、今年は今の感じではこのまま降ることもなく春になりそうだ。 国際通貨基金IMFの2018年の世界の総GDP予想額は79.43兆ドルとなっている。本年1月5日の英国INDEPENDENT紙の「Global debt: Why has it hit an all-time high? And how worried should we be about it?」と言う記事によれば、国際金融協会the Institute of International Financeのデータで、2017年第3四半期には世界の総債務額は233兆ドルとなっている。米国の2017年のGDPは19.36兆ドルで、政府債務は21兆ドルを現在超えた。先進国は2008年以後、極端な金融緩和とともに、政府債務を大幅に増やして来た。すなわち中央銀行の金融緩和と政府の財政出動と言う二輪で経済を支えて来た。にも関わらず、先進国の経済成長率は低迷し、実体経済は決して芳しくなく、金融緩和による株式・債券・不動産などの資産バブルだけを生み出した。米国の大手の経済・金融情報配信社ブルームバーグBloombergの昨日の「Jim Rogers Says Trade War Is Making His Bearish View Even Darker(ジム・ロジャーズ、貿易戦争が弱気な見通しを暗くしていると指摘)」と言う記事では、冒険投資家で著名なジム・ロジャーズJim Rogers氏のインタビュー記事を載せている。氏は昨年6月から、70年余りの人生で最悪のクラッシュがやって来ると言い続けている。2008年以後、米国は官民ともに超低金利に任せて、債務を膨らませ、史上最大の債務と史上最大のバブルを生み出している。これが弾ければ、誰も経験したことがない最悪のクラッシュとなると言う。そこへさらに、昨夜米国大統領は500億ドル相当の中国製品への関税賦課を命じる大統領令に署名した。これに対して、中国の崔天凱駐米大使は「貿易戦争をわれわれは望まないが、それを恐れてはいない」と発言している。米国大統領は選挙中から保護貿易を訴えていたが、それを実際に実行しはじめた。中国に対する貿易戦争が開始された。ジム・ロジャーズ氏はこの貿易戦争を最悪のものと見ている。第二次世界大戦に結び付いた世界大恐慌と貿易戦争を想起するからだ。1930年代の貿易戦争も同じく米国が仕掛けた。当時のフーバー大統領は1930年にスムート=ホーレー法を制定して、農産物・工業製品に幅広く高関税をかける保護貿易主義を採り、国内産業を保護しようとした。しかし、各国もこれに対抗し、米国からの輸入品に関税をかけ、貿易は縮小し、各国ともに経済はさらに厳しくなり、そこから脱するために戦争への道を突き進んだ。歴史は繰り返す、と言う。ジム・ロジャーズ氏は「貿易戦争は常に大惨事になる」と言い、「中国がだまっていると思うかい?中国は米農産品の大口顧客だから、反撃はそこに向かう。そうすれば一番トランプ大統領にとって打撃になるからだ。」。引き金はあくまで米国大統領が引いた。中国が米国債の大量購入国でもあることを忘れなければいいが。「米国株は史上最高値圏にあり、世界の歴史上、これほど莫大な債務を抱えた国はない。」とも語っている。絶対額では米国の政府債務は日本の2倍の額に達する。大統領になる前に、ドルの崩壊を訴えていた人だから、見方によれば、自らそれへ向かっているとも見えなくもない。
隠していたクルミを食べるリス

現代でも身近にいる寄生虫

2018-03-22 19:18:27 | 科学
昨日は関東で雪が降り、箱根などでは交通が麻痺したようだ。岩手では雪も降らず、今日は雨が降る。この時期になると、職場周囲の山の藪椿がたくさん咲くようになる。花が咲くと、花粉を運ぶのは一般的に昆虫だが、今の時期は岩手ではまだ昆虫は活発には活動していない。藪椿の場合は、昆虫に代わって、蜜を吸いにやって来るヒヨドリたちが花粉の運び役になっているようだ。 今月16日付けの米国NATIONAL GEOGRAPHIC誌オンライン版は「Why You Shouldn't Eat a Slug (In Case You Need Reasons)」と題する記事を載せている。ナメクジを食べないように警告している。若者の中には、冗談半分に生のナメクジやカタツムリを食べる人がたまにいるようだが、これは命取りになることがあるのだと言う。地球全体で見ると、必ずしも地球温暖化の確たるデータはなく、傾向的に寒冷化に向かっているとする科学者もいる。そんな中で、例えば岩手だと昔に比べて雪の量は確実に少なくなっているようだし、イノシシも県内で北上して来ている。ナメクジやカタツムリには広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)と言う寄生虫がいることがあり、これが人の体に侵入すると、髄膜脳炎や髄膜炎を引き起こし、場合によっては命を落とすこともある。同誌によると、この寄生虫の分布が現在広がって来ており、緯度的に北上して来ていると言う。日本の国立感染症研究所によると、沖縄県、奄美大島を含む南西諸島、鹿児島県、福岡県、広島県、愛知県、静岡県、神奈川県、小笠原父島を含む東京都、北海道など、各地で捕獲され たドブネズミやクマネ ズミに自然感染が認められている。アフリカマイマイ、スクミリンゴガイなどの貝や数種のナメクジ、ヒキガエルなどからもこの寄生虫が見つかっている。広東住血線虫は英語では rat lungworm(ネズミ肺線虫)と言われように一時期をネズミの肺で過ごす。ネズミが咳をして、肺から喉に幼虫が吐き出されると、それが飲み込まれて腸を通り抜け、糞と一緒に排出される。カタツムリやナメクジがこの糞を食べ、幼虫が体内に取り込まれ、しばらくの間、新たな宿主の中で成長する。カエルや淡水性のカニやエビにも寄生していることがあると言う。沖縄に旅行した京都の13歳の少年の場合は、直接にナメクジやカタツムリを食べた形跡はなく、沖縄で食べた生野菜が原因だと考えられている。実際、同誌でも生野菜はよく洗ってから食べるよう注意している。野菜の発育中に、ナメクジやカタツムリが野菜を這い登り、その這った跡には寄生虫がいることがあるのだと言う。野菜には酵素やビタミンなど人の体に重要なものが多く含まれているが、加熱しない生の出来るだけ新鮮なものがいい。それだけに、生野菜はしっかり洗って食べるようにしておかなければならない。
白木蓮の蕾も膨らんで来た

やめられない金融緩和

2018-03-20 19:14:19 | 経済
今朝は少し曇っていたが、庭の水槽は今日も凍ってはいなかった。ただ日中の気温は昨日より低く、寒さを感じた。今日は珍しく内陸の方が沿岸部より2度くらい気温が高いようだ。一昨日、いつもコースを歩いていると、ナナカマドの並木があるところで、歩道を跳ねている小鳥を見つけ、よく見るとキレンジャク(黄連雀)であった。とても驚いたが、すぐに手持ちのカメラをポケットから出して、道に落ちているナナカマドの実を食べている鳥を撮った。愛知県にいた時は、黄色の部分が緋色になっているヒレンジャク(緋連雀)の群が宿り木の実を食べに集まっているのを撮りに出かけたが、キレンジャクは一度も見たことがなかった。釜石へ来て間も無くの冬に庭に1羽のキレンジャクがやって来たが、その時は手元にカメラがなく、その時以来のキレンジャクとの遭遇であった。 企業の合併や買収など企業向け業務と投資業務を行っている米国の銀行バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ Bank of America Merrill Lynchは、日本銀行と欧州中央銀行(ECB)が政策正常化で、米連邦準備理事会(FRB)より約3年遅れている、と見ていることを昨夜のロイター通信が伝えている。利上げ時期はECBが2019年以降、日本銀行は2020年以降と予想している。2008年のリーマン・ショック以後、米国のFRB、欧州のECB、日本銀行など各中央銀行は大規模な金融緩和を実施した。国債や社債、株式などを購入して、市中にマネーを流し、金利を限りなくゼロに抑え込んだ。この金融緩和からいち早く脱しようとしたのが、米国のFRBで、2015年から金融緩和からの離脱を開始している。金利をわずかずつ上げて行き、購入した債券を売ることで保有金融資産を減らそうとしている。しかし、先月上旬のような株式の下落があったため、金融緩和からの離脱=出口政策は慎重にならざるを得ない。日本が金融緩和からの離脱が遅くなると予想されているのは、実体経済とは無関係に、政府債務が巨大だからだ。第二次安倍内閣が発足した2012年12月から「緩やかな景気回復基調」が昨年9月まで続き、高度成長期である1965年11月から1970年7月までの景気拡大期である「いざなぎ景気」を超え、日本経済は戦後2番目の長期景気拡大傾向にある、とまで言われているにもかかわらず、何故、いまだに異常な金融緩和を続けるのか。金融市場分析などで知られるエコノミストの東短リサーチの加藤出氏は、最新の週刊ダイヤモンドの「金融市場 異論百出」で、「新日銀法20周年を機に考える 改正の教訓は今も生きているか 」と題する記事を書いている。旧日本銀行法は太平洋戦争開戦直後の1942年に制定された。戦時下で急拡大する財政赤字を日本銀行に調達させるためであった。この旧日本銀行法はバブル崩壊後の1997年まで施行されており、1998年には新日本銀行法が施行されている。新法では日本銀行の政府からの独立、具体的には赤字国債増発の受け皿として日銀が利用されることを防ぎ、為替のコントロールのために金融政策を行わないと言うことを目指した。しかし、新法成立から20年経った現在、新法は安倍政権によりすっかり骨抜きになってしまった。加藤氏は財政赤字への日本銀行の関与について、「日銀が保有する長短国債の名目GDP比は、終戦前の44年時点で13%だったが、現在は80%だ。」とし、現在の異常さを浮き彫りにしている。19日付け日経電子版では、同氏は「実は、日銀は太平洋戦争中に引き受けた長期国債の約9割を民間金融機関のほか、郵便貯金の資金運用を担う預金部(後の財務省資金運用部)、さらには郵便局に売却していた。日銀が国債をそのまま保有していると「ハイパーインフレ」が起きると政府も日銀も恐れたからである。」としている。今は日本銀行が政府の国債を買い続けており、金利も超低金利であるため、政府は財政を切りつめようとするインセンティブに欠けている。超低金利はそれだけではなく、本来潰れるべき企業や産業を延命させてもいる。日本の現況は実際にはとても厳しい状況である。「そういったことを多くの人がうすうす感じるようになると、これまでなんとか保たれてきた財政の信認がどこかでプチッと切れる。ひとたびそれが起きると、中央銀行にはなす術(すべ)がなくなる。」。政府が承認する4月からの日本銀行の新たな体制はこれまで以上に政府のための金融緩和の継続を容認する人事体制となっている。敗戦時よりはるかに規模の大きくなった財政負債であるにも関わらず、政治家も官僚も敗戦当時よりもあまりにも慎重さがなさ過ぎる。
キレンジャク(黄連雀)