釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

モルヒネ化した金融緩和

2018-03-01 19:12:55 | 経済
明け方から強い雨と風があり、庭の凍った雪を溶かしていた。台風並みの低気圧のようだ。昼過ぎには雨が上がり、青空が広がり気温は4月の気温まで上がった。週末も暖かい晴れの日が予想されている。それでも毎年3月は一度まとまった雪が降る。湿った雪になるので、長くは積もってはいないが。先日、内陸にある白鳥の飛来地で知られる赤堤へ行って見たが、白鳥は全く来ておらず、カモ類がいるだけであった。人が白鳥を見るために設けられた観察場所には雪が降り積もったままになっていた。ここでも鳥インフルエンザのために餌やりが禁じられて、白鳥が来なくなったのだろう。 昨日、政府の2018年度予算案が衆議院で可決された。一般会計総額は97兆7128億円で、これまでの最大の予算となった。高齢化で増え続ける社会保障費が32兆9732億円と過去最大となっただけでなく、北朝鮮の脅威への対応名目で防衛費も過去最大の5兆1911億円に膨らんだ。日本の政府債務はあまりにも巨額であるために、借金を返すための借金を繰り返して久しい。これほど債務を抱えると政府は支出を抑えて、少しでも借金の返済に努めなければならないが、そんな考えは全くなく、むしろ支出を増やし続けて、借金を積み増している。政府の税制調査会会長などを務めて、財政再建に尽くして来た一橋大学石弘光学長が、週刊東洋経済3月3日号で、政権の放漫な財政運営を批判している。「私が最も問題だと思うのは、政治家という人たちは景気がよくなって税収が上振れると、それを何かに使い切ってしまうことだ。・・・だからカネはまったく貯まらない。税収が増えたのならば、借金返済に回そうという発想はないのかな。」「今、国債を平気で増発し続けているのは、まさに超金融緩和で金利を劇的に引き下げたから。それによって国債残高はこの30年で何倍にも増えたのに、年間の利払い費はむしろ下がるという、異様な状況が生まれた。まさにモルヒネの打ち続けだよ。これからどうするのだろう。・・・「成長による税収増」で財政再建が達成できるというのは、まったくの虚構だったというのが、この30年ではっきり示された。」。日本銀行は、現在の金融緩和を続けて行くだろう。政府の発行する国債を買い取り、超低金利を維持する。欧米の中央銀行のように金融緩和からの離脱は不可能だろう。政治の圧力が強過ぎる。まるで日本銀行の黒田総裁は太平洋戦争当初の山本五十六海軍大将のように見えてくる。短期決戦で臨んだ戦いが、泥沼化して行った。もはや引き返すことが出来ない地点まで来てしまった。今後は行く着くところまで行くしかないだろう。チェコのプラハに本拠を置く、150か国439の新聞によって構成される世界最大の言論組織Project Syndicate(プロジェクト・シンジケート)に、先月、ドイツの中央銀行であるドイツ連邦銀行 Deutsche Bundesbank のユルゲン・シュタルクJürgen Stark副総裁が、「The Irresponsible ECB(無責任なECB)」と題する記事を寄稿している。本来、2008年のリーマン・ショック後の危機対応策として、金融緩和が先進国の中央銀行により導入されたが、危機を超えてからも延々と金融緩和が行われて来た。「これら政策が長引くほど、世界の金融安定への脅威が大きくなる。事実とは、超金融緩和がはるか昔に適切に終了すべきだったということだ。」超金融緩和の効果には疑問がある一方で、コストは甚大であり、深刻なコストをいくつか上げ、その一つに「債券市場が完全に歪められ、財政健全化がないがしろにされた。」ことを上げている。ECB(EUの中央銀行)の現在の政策を「単純に無責任」だと言い放っている。「今日、金融政策は財政政策に従属するようになり、各国の中央銀行はますます強まる政治的圧力によって金利を人為的に低くするよう求められている。最近の株式市場の混乱が示すように、これは劇的に金融不安定化のリスクを増加させる。もっともっと厳しい市場の調整が起これば、おそらく実体経済に影響する。その時、各国の中央銀行にはどんな手段が残っているのだろう?」
カイツブリ