釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

免疫力による癌治療

2016-10-29 19:25:59 | 科学
動物には自分の体ではない「異物」が体内に侵入すると、それを攻撃、排除しようとする「免疫」のシステムが備わっている。それが時にはアレルギーとして障害をもたらすこともある。しかし、本来は自分の体を守るためのシステムである。人間の死をもたらす最大の問題は癌である。今や日本人の二人に一人が癌を患う。三人に一人がその癌で命を落としている。癌の治療には現在、手術と放射線、抗癌剤の三つが主体となっている。しかし、手術は体への負担が大きく、放射線や抗癌剤は副作用も強く、それで癌が治ることも少ない。今の医療では早期に発見する以外には癌に打ち勝つことは難しい。人の体内では毎日5000個の癌細胞が発生していると言われる。それらは正常な免疫力によって癌細胞の成長を抑えることで健康が維持されている。免疫力が低下すれば、癌細胞が増殖し始める。そして最近の研究では一旦癌細胞が増殖し始めると、癌細胞自身が免疫細胞を抑える仕組みがあることが分かって来た。従って、癌を宿した体内は免疫力が極端に低下する。癌細胞は大手を振って成長を続けられる。そんな癌細胞の実態になんとかブレーキをかけられれば、治療に道が開ける。如何に免疫力を強化するかだ。今や多くの研究者がこの問題に取り組むようになった。2011年11月6日医学専門誌Nature Medicineに注目される論文が発表され、2012年の一般教書演説でオバマ大統領は「米政府の研究費によって、癌細胞だけを殺す新しい治療法が実現しそうだ」と述べた。米国の国立保健研究所の小林久隆主任研究員らが発表した「光免疫療法」と呼ばれるものだ。癌細胞は「自分を攻撃する免疫細胞」を抑えるために、その「免疫を抑える働きを持つ免疫細胞」を自分の周りに集める。つまり免疫細胞と言っても二種類ある。異物を攻撃する本来の免疫細胞と、そうした本来の免疫細胞を抑える免疫細胞の二つがある。小林研究員らは後者に取り付く薬(抗体)とその薬に付着する赤外線を当てると発熱する物質を開発し、両者が癌細胞に寄り添った状態で、赤外線を当てることで、熱によって「免疫を抑える働きを持つ免疫細胞」を抑えることで、本来の「攻撃する免疫細胞」に力を与えて癌細胞が死滅する仕組みを考え出した。マウスを使った実験では複数個所に転移した癌も一箇所の癌に赤外線を当てるだけで、他の転移癌までも消失している。当てられる赤外線は波長700nmの近赤外線と呼ばれるもので、普段我々が使っているテレビのリモコンでも使われているものだ。癌細胞だけに影響し、他の治療手段のように健康な細胞には影響しないため、今のとこ副作用はなく、マウスでは8割の確率で癌が治癒出来ている。費用も一般の抗癌剤よりも安く、治療期間も数日で済む。米国では実際に治療に利用されるのが5〜6年先とのことだが、こうした人の免疫力を使った癌の治療こそが副作用もなく、本来人にふさわしい癌の治療法だと言えるだろう。
泡立草

秋田の方言

2016-10-28 19:17:00 | 文化
先日秋田市へ行った。秋田県は岩手県に比べると方言を耳にすることが多い。岩手県は高齢者で方言を話す人に出会うが、比較的方言を耳にすることが少ない。しかし、秋田県に行くと、年齢や場所に関係なく方言が耳に飛び込んで来る。ある産直に寄った時に、店の入り口には「おざってたんせ」と書かれていた。秋田大学のよろず相談室によれば「どうぞおいでください」と言う意味だと言う。岩手では耳にしたことがない。東北は他の地域から見ると同じように見てしまうが、実際に住んで見ると、やはり同じ東北でも地域により違いがあるのが分かるようになった。無論、岩手と秋田で共通の方言もある。牛のことを「べこ」と呼ぶのは共通だ。日本の方言は地域によって区画分けされており、主に国語学者の東条操の区画に従っているようだ。それによると、東日本方言の中の東北方言に分類され、さらに南北の奥羽方言に分けられている。秋田方言は青森県、岩手県中北部、山形県沿岸部、新潟県阿賀北地域の方言とともに北奥羽方言に含められる。岩手の大部分は南奥羽方言に含まれる。同じく国語学者の金田一春彦は近畿地方を中心として同心円状に内輪方言、中輪方言、外輪方言、南島方言と区画し、近畿から離れるほど新しい変化だとしている。近畿が日本語の原型だと考えたようだ。歴史における近畿一元主義と同じく、国語学の近畿一元主義とも言える。しかし、東北の方言はとても近畿の言語が派生したものとは考え難い。「おざってたんせ」や「べこ」などは元になる近畿の言語とはかけ離れている。言語は歴史とも関連していることから、むしろ東北の方言は和田家文書にあるように縄文時代に北方からやって来た阿曽辺(阿蘇部)族や津保化族の使った言葉が遺残したものではないだろうか。東北の方言や地名にはアイヌ語があるとも言われるが、そのアイヌ語自体もまた縄文の二つの部族の影響を残しているように思われる。言語や民俗は歴史と密接であり、近畿一元主義ではかえって本来の姿が見えなくなってしまうだろう。江戸時代に東北に残された伝承や古文書を収集した和田家文書を無視することは出来ない。勝者の記録でしかない古事記や日本書紀には隠された史実がある。その隠された史実の片鱗はその土地の伝承や古文書から丹念に紐解いて行けば明らかになって行くだろう。岩手の古老の言葉は「通訳」が必要だが、秋田ではどの世代の言葉も「通訳」を要する。それだけ秋田では岩手よりも方言が顕著に生活に残されている。
秋田市久保田城趾のある千秋公園の秋

報道の凋落

2016-10-27 19:13:06 | 社会
ここしばらく秋晴れのいい天気が続くが、今朝は久しぶりに職場の裏山で親子3頭のクマを見つけた。駐車場から30mほどの距離であった。人が集まって来たため親クマが誘導して、峰の向こうに消えた。後で聞くと、どうやら昨夜からずっとその辺りにいて、駐車場までも降りて来ていたようだ。柿の木やクルミの木があるので、餌を求めてやって来たのだろう。昨日は自動車道でタヌキが轢かれているのを見た。野生動物が沢山いることは好ましいが、動物と人間双方に犠牲が出ることがある。 1972年に沖縄の施政権が日本に返還されて、すでに44年が経つが沖縄の置かれた状況に大きな差異はないように思える。米軍基地の大半が沖縄にあり、米国に従属的な立場も改善されていない。沖縄に犠牲を強いる日本の姿勢は相変わらずである。基地の移設に反対する住民を「土人」と呼び、80過ぎの高齢者が暴力を振るったとして逮捕される。そうした状況を取材していた記者も排除される。先日NHKはその記者が排除された件につき、「国境なき記者団」が沖縄で報道の自由が脅かされたと声明を出したことを伝えた。「国境なき記者団」は今年度の報道の自由について日本が過去最低の72位となったことをすでに発表している。「公」の名で「私」の自由を奪う流れはすでに始まっている。特に報道については現政権になって、極めて深刻になっている。かっては左寄りだと言われて来た朝日新聞などは今や、すっかり政権に擦り寄り、単なる広報機関となってしまっている。インターネットの普及で、新聞は購読者数が激減した。広告収入で成り立つ新聞社やテレビ局は広告への圧力に負け、様変わりしてしまった。そのことがさらに購読数の減少に拍車をかけてもいる。朝日は特に減少が大きい。今や新聞は地方紙の方が的確な記事を書くようになっている。地元密着型の取材と論評がむしろ購読の支えとなっているのかも知れない。いずれにしろ、今後はさらに国民が知るべき情報が規制されて、ますます報道の自由は狭められて行くだろう。秘密保護法などと言う悪法まである。日本と言う国は四季の美しい素晴らしい国であるが、社会としてはとても住みづらい国になって行っている。もともと先進国としては高すぎる衣食住費であった上に、格差が拡大し、さらに生活が脅かされて行く。様々の自由の制限も増して行く。こうした現況を国民に知らせるべき報道が、その役割を放棄している。
コスモス

格差が成長を妨げている

2016-10-26 19:12:27 | 経済
先進国と言われる欧米や日本は揃って、経済が行き詰まっている。特に2008年のリーマンショック以来、米国は金融機関を救済するために金融緩和に走り、日本やEUにも同じく金融緩和を求め、日本もEUも求めに応じた。しかし、金融よりも製造業がいまだ主体の日本では産業構造の異なる米国とは違って、金融緩和は何ら解決策にはならない。日本銀行の「2%の物価」上昇目標も、今月末の政策決定会合では5度目の先延ばしとなる予定だ。しかも皮肉なことに仮に物価が上昇し、金利がそれに伴って上昇すれば、国債価値が大きく下がることが財務省によって17日に明らかにされている。金利が1%上昇すれば、金融機関などが保有する国債の価値が67兆円も失われると言う。他の先進国に比べて日本は長期国債の比重が高いために金利の影響を受けやすい。国内総生産(GDP)の13.5%が消失することになる。19日の日本経済新聞によると、上場企業による自社株買いが1~9月に4兆3500億円と過去最高を記録している。企業は利益を内部留保に回すことを優先し、景気の低迷のため設備投資を控え、賃金を抑えている。日本銀行の株支えに便乗して、株で少しでも含み利益を得ようとしている。今や上場企業は100兆円超の過去最高水準の手元資金を保有している。政府は円安を誘導し、輸出企業を保護し、さらに日本銀行を動かし、株の買い支えを行わせ、大企業に利益をもたらせたが、その大企業は得た利益を従業員へは回さず、内部留保を蓄積させただけである。賃金が上昇しなければ、消費は増えない。消費が増加しなければ、生産も低迷する。失われた20年は要するに賃金上昇を阻んだ政府と企業がもたらせたものだ。それだけでなく、雇用の規制緩和と称して、非正規雇用を拡大させることで、格差の拡大までもたらせた。昨年8月、OECD(経済協力開発機構)は『格差縮小に向けて(In It Together: Why Less Inequality Benefits All)』と題した報告書を公表し、主要各国の所得格差を所得上位10%と下位10%の差異で比較してみると、日本が10.7倍(2009年)、イギリスが10.5倍(2012年)、フランスが7.4倍(2012年)、ドイツが6.6倍(2012年)、アメリカが18.8倍(2013年)となっているとして、米英日がOECD平均より格差が大きいことを示した。日本の現在は格差はさらに大きくなっているはずだ。日本については、OECDは税や給付による所得再分配の取り組みがOECD諸国と比較して進んでいないことを指摘し、非典型労働に関して、正社員などの典型労働者よりも賃金が低く、女性の占める割合が多いことが指摘し、所得格差を縮めるためにパートタイム労働者の社会保険加入の拡大や正社員転換を促す施策の必要性を指摘し、格差が成長を妨げているとしている。
秋晴れの日のススキ

憲法改正案の怖さ

2016-10-25 19:16:12 | 社会
先日、現行憲法は連合軍に「押し付けられた」ものではなく、日本の当時の首相が発案したものであることを書いたが、その憲法を政府与党は現在改正しようとしている。憲法では9条が話題にされることがほとんどだが、自民党が出した憲法改正草案では最悪の改正案が組み込まれているとして、巨費を投じてその危険性を新聞広告で情報提供されている方がいる。以前このブログでも記した2014年にノーベル賞を受賞された米国カリフォルニア大学中村修二教授と日亜化学との青色LEDの特許権をめぐる訴訟で、中村教授を支えた升永英俊(ますなが ひでとし)弁護士である。企業法務に長け、数々の訴訟で巨額の収入を得たが、その私費を憲法改正案の危険性を知らしめるための新聞広告費に当てられている。今月17日名古屋高裁金沢支部が下した今年7月の参院選の「一票の格差」が「違憲状態」であるとした訴訟にも大きな役割を果たされている。自民党の改憲草案98条、99条では戦争や内乱、大規模災害が発生した場合に首相は「緊急事態宣言」を出せるとしており、9条改正とは比べものにならないほど怖いものだとされる。かってドイツでヒットラーの独裁政権が成立したのは国政選挙での多数決によるものではなかった。2回にわたる緊急事態宣言により、報道や言論の自由を停止し、国会議事堂放火事件に関連して、5000人を逮捕・拘束し、周りに銃を手にした突撃隊や親衛隊を配置したクロル・オペラハウスで、全権委任法を成立させて、独裁政権を樹立している。同弁護士は、緊急事態宣言がそうした異常事態を可能にしたとされる。今年7月のトルコのクーデター未遂事件でも、その直後に「非常事態宣言」を発令され、3万5000人以上を逮捕・拘束し、8万人以上が免職や停職処分され、報道の自由が制限された。自民党は自然災害に備えるために緊急事態宣言条項を定めた改憲草案98条、99条が必要だと主張しているが、地震や津波といった自然災害などへの対処は、現憲法で十分に対応可能だ。さらに改憲草案21条1項は表現の自由を認めているが、2項で「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」として、1項を全否定している。これはまさに中国の憲法と同じだと言われる。中国憲法35条は「国民は、言論、出版、集会、結社、行進、示威行動の自由を有する」として、言論の自由を保障しているが、51条で「国民は、自由と権利を行使する時は、国家、社会、集団の利益および他の国民の合法的自由や権利を害してはならない」と、35条を否定している。自民党改憲草案も中国憲法も「公」を優先して「表現の自由」を否定しているとされる。「緊急事態宣言」こそが首相の目指すかっての「美し日本」に逆戻りさせるだろう。
色付いて来た街路樹

南海トラフの巨大地震の前兆か

2016-10-24 19:20:54 | 自然
21日午後、鳥取県中部の倉吉市や湯梨浜町でM6.6の内陸地震があった。九州や四国、中国地方はフィリピン海プレートが沈み込むユーラシアプレート上にあり、内陸にある断層へは歪みが蓄積されている。今回の地震の瞬間的な揺れの強さを示す最大加速度は1494ガルで、4月14日の熊本地震の最大加速度1580ガルと同程度であった。鳥取に隣接する島根原発の基準値振動は現在わずか600ガルでしかない。中国電力は耐震設計の見直しを検討しているが、それも600から800への変更でしかない。熊本に近い川内原発も基準値振動は620ガルである。愛媛県の伊方原発は基準値振動が650ガルとなっている。いずれの原発も熊本地震や今回の鳥取中部地震のような地震が直近で起きれば、とても耐えられない構造になっている。日本列島には活断層の数が2000あると言われており、いずれの原発も付近には断層がある。しかも未知の断層もある。ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界にある台湾は日本と同様地震が多発する国であり、毎年のようにM5以上の地震が発生していて、2006年には同じ日にM7の地震が二つ続いた。台湾政府は福島第一原発事故後、2025年に原発をなくすことを決め、今年度内に法改正を行う。すでにドイツは2022年に原発を廃止することを決めている。ドイツでは倫理委員会の報告を元に決定が下された。その倫理員会は、「原子力発電所の安全性は高くても、事故は起こりうる」「事故が起きると、ほかのどんなエネルギー源よりも危険である」、「次の世代に廃棄物処理などを残すのは倫理的問題がある」としている。地震学の鳥取大学西田良平名誉教授によれば、南海トラフの巨大地震は過去を振り返ると、「その数十年前から近畿から西日本にかけて地震が多くなる」とされ、1943年のM 7.2の鳥取地震の前に1925年のM6.8の兵庫県北部の北但馬地震が、1927年には京都府丹後半島のM7.3の北丹後地震が発生し、その後鳥取地震が起きて、翌年1944年にM7.9の東南海地震が、1946年にM8.0の南海地震が発生している。鳥取県では2000年にM7.3の鳥取県西部地震も発生しているのだ。立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学教授も、4月の熊本地震、9月12日の韓国の釜山―慶州―ポハンで発生したM5.1、M5.7の地震、10月8日の阿蘇山の爆発的噴火などは「フィリピン海プレート(間接的には太平洋プレート)の圧力によって、ユーラシアプレートに歪みが集積」したもので、これらの動きは、ユーラシアプレートがはね上がって生じる南海地震の前兆であると言われる。2011年3月11日の東北地方・太平洋沖地震の前に起きた2008年6月14日に発生した、岩手・宮城内陸地震に類似すると言う。噴火や地震の直接の被害は無論だが、過小評価で建設し、故障隠しを重ねる原発を思慮なく再稼働を進めることが最大の危惧である。
地震雲?

秋を感じさせてくれる自然

2016-10-19 19:20:28 | 自然
平日は職場の裏山を眺めるのが日課になっている。アザミがまだ咲いており、クルミや名前の分からない木に実がなっている。小山の上には秋晴れの青空が広がり、とても気持ちがよく、それだけでも癒しを感じられる。職場の匠の話では、今年は山の木々の葉がまだ揃って落ちていないと言う。例年だと、今頃はすでに葉が落ち始めているそうだ。そんな中で、今年は山で熊に出会うことも多いと言う。秋田県では熊のために4人がすでに犠牲になっている。豊かな山は人間にも多くの山菜や木ノ実を与えてくれるため、どうしても人が熊に遭遇する機会も増える。山間を走る道路では必ずと言っていいほど狸や鳥たちが轢かれてもいる。同じように見える自然も年ごとにやはり違いがある。今年は紅葉が遅くなるのかも知れない。山間地の丘陵部ではリンゴや梨、ぶどうが植えられ、今の時期は産直や直売所でそれらが売られている。スーパーなどよりよほど新鮮で美味しい。東北の自然はある意味では今が一番いい時かも知れない。カジカガエルや鮎やヤマメがいる清流の土手を散歩していると、とても市街地に入るようには思えない。土手では鹿たちの糞もよく見かけ、夜には鹿の鳴く声も聞こえて来る。沿岸部にある釜石は内陸のより産業の盛んな所に比べて、隔絶された陸の孤島のようだが、それだけ海と山の自然を身近に感じることが出来る。日中の晴れた日は赤トンボがたくさん飛び交っている。北海道にいた頃もやはりたくさんの赤トンボが飛ぶのを見た。昆虫好きの人によれば、釜石にも珍しいトンボがいるそうだ。庭の地面を見ていると、釜石へ来て初めて見る虫たちも多い。植物や昆虫がいつかは地面に栄養となって帰って行き、また豊かな植物が育つ。こうした自然の循環が行われているのがよく分かる。日本列島はほぼ全域で山に覆われているが、同じ山でも四国の山とはかなり違っている。本当に東北の山の豊かさには感心させられる。豊かな山はまた季節ごとに美しさも見せてくれる。甲子川にはもう冬の渡り鳥が来始めている。鮭の遡上防止柵ももう設けられており、おそらくすでに鮭もやって来ているのだろう。住んでいる家のあたりでは川の流れも早く、流れの音も癒しを感じられる。渡りの水鳥たちの多くいる下流では流れも緩やかで、のんびり流れに任せている鳥たちの姿が同じく癒しになる。秋は夕暮れの空もまた癒しと言えるだろう。
市街地で見る夕焼け

日本が発案した現行憲法

2016-10-18 19:14:43 | 社会
安倍晋三首相はこれまで現在の憲法について、「GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に押し付けられた」、「日本人の精神に悪い影響を及ぼしている」、「憲法前文はアメリカへの詫び証文」、「(立憲主義に対して)古色蒼然」などと発言し、憲法改正を目論でいる。あたかも独立国としての堅持を示しているようにも受け取れるが、実際にやっていることは対米従属そのものだ。首相が欲しているのは戦争の出来る国になることだ。そのためには何としても憲法を改正する必要がある。特に戦争の放棄を明記した9条は改正したいのだ。その理由として、「押し付けられた」憲法であると、主張する。しかし、実際には決して現憲法は占領軍により押し付けられたものではないことは明らかになっている。憲法9条は当時の幣原喜重郎首相がマッカーサー総司令官に発案したものであることが言われていたが、本年8月にマッカーサーから高柳賢三憲法調査会会長宛の書簡が発見されたことが公表され、さらに事実がはっきりして来た。書簡ではマッカーサーが幣原首相の発案によるもので、連合軍としてそれを否定する理由はなかったことを明らかにしている。憲法ではなく、自衛隊の創設は占領軍の要請による。自衛隊は、世界情勢が大きく変わり、東西冷戦が始まり、特に1950年に朝鮮戦争が勃発したため、連合軍は日本にも警察とは異なる軍隊要素を望んで、警察予備隊が組織されたのに始まる。以後は政治家や官僚のお得意の曖昧さと既成事実の積み重ねで、肥大した組織に成長して行った。今や軍事分析会社グローバル・ファイヤーパワー(Global Firepower)の「世界の軍事力ランキング2016年版」では世界第9位の軍事国である。自衛隊の存在は専守防衛に徹する限りは憲法に触れないとされていた。さらに、そこから1歩踏み出し、海外派兵が可能とされ、集団的自衛権さえ保持すると主張されるようにまでなった。次々に既成事実を作り出し、その現実と憲法が不整合になって来ると、現実と不整合な憲法の方を改正しようとする。立憲主義を非難する立場からはそうせざるを得ないのだろう。しかし、日本はあくまで立憲主義に立つ国家であり、法に不都合な現実をこそ改めなければならない。全くの本末転倒である。自衛権を主張する立場は、いつの間にか拡大解釈され、海外派兵まで行われるようになった。今や海外派兵で攻撃を受けた場合は「自衛」のための交戦権まで主張されている。派兵がなければそうした主張さえしなくていいものを。今だに自衛隊は軍隊ではないと言う人までいる。他国から見れば、立派な軍隊であるにもかかわらずだ。交渉下手な日本の政治家や官僚は武力に頼りたいのだろうか。そうすれば、再び同じ轍を踏むことは明らかなのだが。
藤袴(ふじばかま)

表明された再稼働を認めない住民の意志

2016-10-17 19:19:50 | 社会
昨日の新潟県知事選で、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働反対を掲げた野党統一候補が当選した。7月の九州電力川内原発の再稼働に反対する鹿児島県知事の誕生に続く。政官財こぞって原発の再稼働を進めているが、福島第一原発事故以来、原発を抱える地元住民は原発の安全性への不信を感じ取っている。安全性より経済性を優先して来た推進派の姿勢も住民には見えて来た。柏崎刈羽原発は7基の原発合わせて821.2万kWの出力を持つ世界最大の原発だ。現在日本には43基の原発があり、そのうち稼働中の原発は川内原発1号機・2号機と伊方原発3号機の3基である。福島第一原発事故を契機に世界的に脱原発の機運が高まり、日本も当初は脱原発に方向転換するかに見えたが、その後、一気に再稼働に走った。もっとも真剣に脱原発に舵を切ったのはドイツであった。ドイツは現在原発を8基までに減らしている。米国やフランスなど日本よりも保有原発の多い国々さえ原発の比重を減らして来ている。一人日本だけが原発に邁進している。あれだけの大事故を起こしながらである。巨大地震や火山噴火の歴史を無視して、原発を全国展開した推進派は福島の教訓を何ら考慮せず、安易な審査のまま再び稼働に向けて、地道を上げている。東京電力は柏崎刈羽原発の再稼働に向けて、4700億円を安全対策工事に投じている。海抜15mの防潮堤や火災の延焼被害を防ぐ全長4Kmの防火帯、代替電源や冷却システムのほか、放射性物質を除去するフィルターを備えた排気設備など。廃炉や損害賠償の費用が拡大する中で、東京電力にとって、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働は最大で年2400億円の収益改善効果をもたらし、再稼働は社運をかける重要事項だ。しかし、柏崎刈羽原発は2007年7月16日のM6.8の新潟県中越沖地震で火災事故と放射線漏れ事故を起こしている。その記憶は住民にもまだ消えてはいない。2014年8月26日政府の有識者検討会では日本海の大地震で最大23mの津波が発生し得るとの調査報告書を公表している。しかも、日本海の地震は断層が陸地に近く、数分で津波が到達する場所が多く、また、太平洋側で起こる同規模の地震に比べて海底の隆起や沈降が大きく、津波が高くなりやすいと言う。通常はこうしたデータが示されれば、安全対策は何割か増しで、講じられるが、原発の場合はむしろ過少な対策しか取られていない。我が身に降りかかるかも知れない被害に住民が真剣になるのは当然だ。ひたすら再稼働を推進している政府も2度にわたって地元住民に再稼働反対を示されてしまった。
夕暮れの常盤山査子(ときわさんざし)

稲作

2016-10-15 19:14:58 | 歴史
現在、世界最古の稲作は中国長江中流域の玉蟾岩遺跡(ぎょくせんがんいせき)で発見された7粒の稲もみにより、1万4000年前にこの地で始まったと考えられている。中国では稲作はその後の発掘で、次第に長江の下流域へも伝播し、7000年前の河姆渡遺跡(かぼといせき)では大規模な稲作が行われるようになっていた。日本での最古の稲作は今のところ岡山県の彦崎貝塚で、6000年前のものになる。同じ岡山県の6400年前とされる朝寝鼻貝塚でも稲作の痕跡が見出されている。しかし、中国の河姆渡遺跡とは異なり、水田稲作ではなく、焼畑のような形の畑作であった。縄文時代草創期にあたる1万2000年前から5,000年前まで居住された福井県の鳥浜貝塚や5500年前~4000年前の縄文時代の集落跡である青森県の三内丸山遺跡からの出土物が中国の河姆渡遺跡から出土された物と酷似しており、明らかに中国長江流域の文化が日本へ伝播されている。にもかかわらず、稲作が水田ではない。この時期の日本列島では稲以外の食料が豊かであったために、稲も本格的に栽培されるのではなく、食料の一部として考えられていたのかも知れない。鳥浜貝塚では2艘の丸木舟も発見されている。6000年前にはすでにこうした丸木舟のようなもので大陸と交易が始まっていたものと思われる。おそらく大陸から日本列島に渡って、住み着いた人々もいただろう。この時期に東北に定住していた人たちは、従って、水田稲作についてもすでに知っていたはずである。日本では紀元前930年頃とされる佐賀県の菜畑遺跡が最古の水田稲作とされている。東北では紀元前500年頃の青森県の砂沢遺跡が最古になるが、九州北部から次第に東に伝播されて、最後に東北に至ったものではなく、関東を飛ばして、独自に関東よりも早く伝播されている。紀元前500年頃から紀元後初頭にかけては日本列島は寒冷期に入っている。従って、それまで東北では稲に頼らなくても豊かな自然の実りが食を満たしてくれていたと考えられる。しかし、寒冷化は植生を大きく変えたに違いない。そのため、食料の確保の必要性が生まれ、計画的な水田稲作を取り入れたのだろう。ちょうどその頃、中国の晋では内乱があり、それを逃れて、津軽へやって来た人々によって水田稲作が伝えられた、と和田家文書にはある。東北への水田稲作の伝播は北部九州への伝播とは明らかに異なっている。
一部で紅葉を見かけるようになった