釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

格差が成長を妨げている

2016-10-26 19:12:27 | 経済
先進国と言われる欧米や日本は揃って、経済が行き詰まっている。特に2008年のリーマンショック以来、米国は金融機関を救済するために金融緩和に走り、日本やEUにも同じく金融緩和を求め、日本もEUも求めに応じた。しかし、金融よりも製造業がいまだ主体の日本では産業構造の異なる米国とは違って、金融緩和は何ら解決策にはならない。日本銀行の「2%の物価」上昇目標も、今月末の政策決定会合では5度目の先延ばしとなる予定だ。しかも皮肉なことに仮に物価が上昇し、金利がそれに伴って上昇すれば、国債価値が大きく下がることが財務省によって17日に明らかにされている。金利が1%上昇すれば、金融機関などが保有する国債の価値が67兆円も失われると言う。他の先進国に比べて日本は長期国債の比重が高いために金利の影響を受けやすい。国内総生産(GDP)の13.5%が消失することになる。19日の日本経済新聞によると、上場企業による自社株買いが1~9月に4兆3500億円と過去最高を記録している。企業は利益を内部留保に回すことを優先し、景気の低迷のため設備投資を控え、賃金を抑えている。日本銀行の株支えに便乗して、株で少しでも含み利益を得ようとしている。今や上場企業は100兆円超の過去最高水準の手元資金を保有している。政府は円安を誘導し、輸出企業を保護し、さらに日本銀行を動かし、株の買い支えを行わせ、大企業に利益をもたらせたが、その大企業は得た利益を従業員へは回さず、内部留保を蓄積させただけである。賃金が上昇しなければ、消費は増えない。消費が増加しなければ、生産も低迷する。失われた20年は要するに賃金上昇を阻んだ政府と企業がもたらせたものだ。それだけでなく、雇用の規制緩和と称して、非正規雇用を拡大させることで、格差の拡大までもたらせた。昨年8月、OECD(経済協力開発機構)は『格差縮小に向けて(In It Together: Why Less Inequality Benefits All)』と題した報告書を公表し、主要各国の所得格差を所得上位10%と下位10%の差異で比較してみると、日本が10.7倍(2009年)、イギリスが10.5倍(2012年)、フランスが7.4倍(2012年)、ドイツが6.6倍(2012年)、アメリカが18.8倍(2013年)となっているとして、米英日がOECD平均より格差が大きいことを示した。日本の現在は格差はさらに大きくなっているはずだ。日本については、OECDは税や給付による所得再分配の取り組みがOECD諸国と比較して進んでいないことを指摘し、非典型労働に関して、正社員などの典型労働者よりも賃金が低く、女性の占める割合が多いことが指摘し、所得格差を縮めるためにパートタイム労働者の社会保険加入の拡大や正社員転換を促す施策の必要性を指摘し、格差が成長を妨げているとしている。
秋晴れの日のススキ