釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

古代から続く隠蔽の体質

2013-11-30 19:22:44 | 社会
今日は雲が比較的多かった。昼頃から少し日が射すようになり、午後は一時青空も広がってくれた。その青空の出ている時に、職場によるついでに、八幡神社のモミジのところへも立寄った。風がいつもより少し強めで冷たかった。それでもそこの山道を健康のために歩いている人たちを何人か見かけた。風でやはりモミジの枝先はかなり散って来ていた。しかし、日が強く射して来ると、透けて見える紅葉はさすがに素晴らしい。一人で見ているのがもったいなく感じた。 釜石の街の中を見ていると、何事もないように日常が流れて行く。しかし、日本全体を考えた時、社会全体が着実に変化している。自然と同じく、留まることがない。釜石へ来て、何もないと地元の人が嘆く、その釜石にこれほど豊かな自然があることに驚いた。東北の自然はとても豊かだ。しかし、その自然の豊かな東北は社会的にも歴史的にも少し軽視されて来た。近代以後はともかく、それ以前は社会的な差はそれほど他の地域と比べてなかったはずだ。しかし、歴史では、あくまでかっては蝦夷の住む未開の地のように描かれて来た。釜石という東北の地にいると、そこに疑問が湧いて来る。東北の歴史を調べていて、最初は奥州藤原氏や安倍氏の事蹟に触れたが、そのうち例の『東日流外三郡誌』に出会い、さらに古田武彦氏を知るに及んで、日本の歴史そのものに隠されていた部分があることを知った。柿本人麻呂のような秀でた万葉歌人の素性が曖昧であることに以前から疑問は感じていたが、ただそれは記録が消失したためだと単純に考えていた。記録は確かに消失した。「禁書」の令により、重要な大和王朝以前の記録がことごとく抹殺されていた。中国の史書にも「阿蘇山」の見えるところに王朝があったことがしっかり記されている。大和王朝以前に九州には九州王朝があり、白村江の戦いを戦ったのは九州王朝であった。文献だけでなく、考古学的な九州の遺跡も天孫降臨の地が九州であったことを示している。宮内庁が何故天皇陵を発掘させないのか。発掘すれば、天皇陵とされたものが違っていたことが分かってしまうからだ。日本と言う国は歴史を偽り、史実が秘匿され、今なお、多くの秘密に包まれて国政が行なわれている。今後もますますその秘密のベールを広げようとしている。隣国の秘密国家とどこが違うのだろう。敗戦以来、大国に従属し、「改革」と称してこの国を売り渡して来た。TPPで、それをさらに上塗りしようとしている。明治維新は列強に食いつぶされないよう、独立を堅持するために「富国」を目指して教育や研究者の育成に力を入れた。しかし、今やそれら教育、研究は財政難を理由に削られる一方だ。製造業の熟練労働者により成し遂げられた経済成長も、その熟練労働者を次々に切り捨てることで、傾いてしまった。ただ国費の浪費でしかない軍備をいまさら増大させて一体何をしようと言うのだろう。経済大国かつ軍事大国が大国の証しとでも考えているのであろうか。足下が崩れ始めているにもかかわらず、一層、重い荷を背負い込もうとしているようにしか見えない。先日、広島高裁岡山支部は7月に行なわれた参議院選挙は「違憲」であり、「無効」だとの判決を下した。常識的にとても分かりやすい判決であった。この参議院選挙では有権者のわずか35%の得票で与党は過半数の議席を獲得している。こうした茶番が最高裁段階で維持されてしまうのだ。調査報道をせず、広告費のために企業にすり寄り、官僚からのおこぼれ情報にすがることを覚えたメディアは「社会監視」という本来の機能を失ってしまった。「民主主義」のシステム自体がもはや崩壊しているのが今の日本だ。
見頃を迎えた11月最後の日の八幡神社のモミジ

機能不全のメディアが国を暴走させる

2013-11-29 19:13:14 | 社会
今朝、雪を冠った愛染山に朝日が照りつけ、南側の斜面が白く輝いていた。神奈川あたりから見た富士山に似ていた。勝手に「釜石富士」と名付けている。午前中は曇り空であったが、昼休みにまた八幡神社へ出かけた頃から日が射して来て、青空も広がった。しかし、西の空は相変わらず雲で覆われていた。予報では夕方あたりから雨になるようだ。内陸では昨日すでに雪が降っている。沿岸部は東北でも別世界だ。隣の遠野はもう雪だ。 各国は12海里を領海と定め、その上空を領空としている。しかし、領空侵犯されてから対応したのでは間に合わないので、領空より広く防空識別圏を設定するようになった。11月23日に中国が新たに設定した防空識別圏を公表した。これに伴い、中国は、この空域を飛行する航空機が中国に通告すること、双方向の無線通信を維持すること、機体に国籍を明示することを求めた。中国の防空識別圏は尖閣諸島を含む東シナ海上空の広い範囲に及び、米軍が射爆場で使っている島も含まれている。このため米国も反発をしており、韓国は防空識別圏の変更を中国に要求したが拒否された。26日には米軍のB-52爆撃機2機がこの防空識別圏を飛行し、米国の意志を示したが、中国からは特に反応を見せなかった。日本の自衛隊機と海上保安庁の航空機も28日までに同様にこの空域を通告なく飛行したが、やはり、中国は反応をしなかった。中国は日本の防衛予算の2倍以上にあたる11兆円の国防費を投じており、性能を別にして、艦艇数は1080隻、戦闘機数は2070機と、日本の戦力の5~8倍も保有する。兵員数では米国をも凌ぐ。中米ともに本格的な衝突はしない。ある種の駆け引きとして互いに示威行動をとっているだけである。両国は大国同士が戦えば、現代戦では互いに壊滅状態になることを知っている。しかし、メディアによってはさも大きな軍事的衝突に発展するかのような報道ぶりがなされている。国民に軍事的衝突の危険を煽っている。だから、現在の安倍政権の歩もうとする軍事国家への道は必然なのだと言おうとしているかのようだ。15日には自衛隊法が改正され、自衛隊が海外で邦人輸送する際の携行武器も拡大する形で閣議決定されている。11月20日、田原総一朗、鳥越俊太郎、江川紹子、田勢康弘(日本経済新聞)、岸井成格(毎日新聞)らの著名なジャーナリストが呼びかけ人となって130人以上が参加して、特定秘密保護法案に反対する集会が開かれた。田勢氏は「これほどひどい法案が出てきたことはかつて経験がない」、岸井氏は「『秘密保護法は必要なのか』と取材で政府に聞くと、『それは秘密です』と答える。冗談じゃない」と怒りを示した。田原氏によれば、「(呼びかけ人の)鳥越俊太郎さんが『(特定秘密保護法案反対の)呼びかけ人になってほしい』と頼んだら、10名以上(のキャスター)が『全く賛成なのだけれども名前は出さないでほしい』と言った。2002年の個人情報保護法案のときは『とんでもない法案だ』と全キャスターがそろったのに」という。メディアの当事者が腰が引けてしまっているのだ。田原氏によれば、現場の記者も政府に法案の疑問点を問いただすことがないと言う。田勢氏は「新聞もテレビも、いかに首相はじめ重要閣僚を自社に呼ぶのかを考えている結果がこうなったのではないか。自らも反省をしながら思っています」と語っている。米国のニューヨーク・タイムズ紙などは「大統領の(単独)インタビューなんて下品なものできるか」という気風があるのだという。メディアがチェック機能を失った時、政治は暴走を始める。安倍氏はこの好機を利して、「日本を取り戻す」。昨日、二人のノーベル賞受賞者、物理学賞の益川敏英名古屋大特別教授、化学賞の白川英樹筑波大名誉教授を含む31人の学者が「特定秘密保護法案に反対する学者の会」を結成し、「特定秘密保護法案は憲法の基本的人権と平和主義を脅かす立法で、直ちに廃案とすべきだ」と声明を出した。益川名誉教授は「社会というのはなし崩し的に変わる。安倍晋三首相の施策からは「日本を戦争ができる国にする」という意図が透けて見えます。」と語っている。
紅葉の密林

官僚たちの独走が加速する

2013-11-28 19:13:50 | 社会
今朝は空全体を雲が覆い、愛染山も見えなかったが、昼休み頃から青空が広がって来た。昨夜遅く、2年ほど前に釜石から大阪に移った我が家の雌のホワイト・テリアが亡くなった。獣医も腫瘍に手を打てなかったようだ。9月に亡くなったシェパードと1歳だけ年下だった。小型犬なので寿命には早い。明るく、自分を犬ではなく人のように思っている節のある犬だった。よく慕ってくれたので、シェパード以上に喪失感を感じた。夕方、家族で焼却、納骨している場面を娘がメールで送って来た。 予想通り、一昨日の衆議院本会議で特定秘密保護法案が強行採決された。日本はいつか来た道に突き進んでいる。当日の抗議デモの影にひっそりとノーベル文学賞を受賞した大江健三郎氏が立っていた。日蓮宗の妙法寺の僧侶たちもデモに参加していた。今後、日本では、さらに、国家安全保障会議(日本版NSC)、武器輸出三原則の見直し、集団的自衛権行使を認めるための憲法解釈の見直し、憲法改正へと進んで行く。憲法改正では国防軍が明記され、公式に軍隊を認める形になる。米国の政権内部からさえ危惧されている日本の特定秘密保護法案が十分な審議も行なわず、曖昧な点を多々残して強行に採決されてしまった。毎日新聞によれば、この特定秘密保護法案の骨格はすでに2009年、麻生太郎政権下で内閣官房が秘密保護法制の報告書として検討していたものだという。政治家の中では安倍晋三氏は、自ら米国を訪れた際、「軍国主義者」だと言うだけあって、最も戦前回帰志向が強い一人だろう。しかし、これらの流れで最も危惧されるのは官僚の独走である。こうした流れのお膳立てはすべて官僚が行なっており、偶然、政権についた政治家が同じ志向である時に、一気に、その流れが表へ出されているだけであり、背後の官僚の思惑こそが最も重大である。一連の法が改定されれば、官僚の裁量権は大幅に拡大され、しかも、公表されることがない。まさに、戦前と同じことが進行し得る。今日の共同通信は「陸自、独断で海外情報活動/首相や防衛相に知らせず/文民統制を逸脱/民主国家の根幹脅かす」と題して、「陸上自衛隊の秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(別班)が、冷戦時代から首相や防衛相(防衛庁長官)に知らせず、独断でロシア、中国、韓国、東欧などに拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせてきた」ことを報じている。文民統制の効かない事態はすでに始まっている。現在の法規上はこうした活動は本来の自衛隊の在り方から大きく逸脱するものだ。現実は、現在の自衛隊は世界各国の軍隊と比較しても、もう立派な軍隊としての装備を持っており、憲法をなし崩しにして、軍隊に変容させてしまっている。その軍隊からすれば、国外での情報活動は当たり前の行動となるのだろう。しかし、問題は、こうした活動を自衛隊内部だけで密かに行なっていたことであり、政府が把握していなかったことである。こうした事態は特定秘密保護法案の成立、国家安全保障会議(日本版NSC)の設置により、ますます拡大して行くだろう。政治家のコントロールのないところで、官僚たちが独自の活動を行えるよう認めてしまったのだ。何が秘密で、どんな活動をしているかさえが、政治家にも分からないという事態になってしまった。政府批判を続けて来たあるブロッガーは特定秘密保護法案の成立を機に、ブログを閉じてしまった。戦前の治安維持法以上に悪法だと言われる特定秘密保護法案が衆議院を通過したことに衝撃と危惧を覚えたのだろう。日本はもはや確実に民主主義が崩壊したと言えるだろう。そして、いつの日にか、現在を機に日本が大きく舵を切ったことを後悔する日が訪れるだろう。かっての軍国主義はドイツでも日本でも経済的な低迷状態の中で芽を出して来た。そして、メディアが本来の役割を放棄した状態も同じである。歴史はまさに繰り返されている。
今日の八幡神社のモミジ

黄葉と紅葉、「かえで」と「もみち」

2013-11-27 21:17:52 | 文化
昨夜も釜石へ来て初めて経験した地鳴りの後に襲って来る地震があった。地鳴りを伴う地震はいつもさほど強い地震ではないが、初めて経験した時には、その地鳴りに不気味さを感じて、さも異変が起きているという感じであった。慣れて来ると、地鳴りのある時の方が、揺れは大きくないことが分かって来た。地下の岩盤が固いために地鳴りがあるのかも知れないが、これまで、全国各地で体験して来た地震では、地鳴りを伴うことはなかった。 岩手の自然はとても美しい景観を毎年見せてくれる。春の桜は四国ではほとんどが染井吉野であったが、東北には枝垂れ桜が多い。秋は紅葉の名所も岩手県内だけでもたくさんある。内陸と沿岸部で気温が違い、そのために同じ種類の木が時期をずらせて花を咲かせてくれる。紅葉も同様で、釜石の市街を比べただけでもその紅葉の時期の違いがある。残念ながら一昨日の風と雨で周辺の山々の葉がかなり落ちてしまって、例年の綺麗な周辺の山々の紅葉を今年はほとんど見ることが出来なかった。住田町から毎日来られている方の話でも今年の山の紅葉は芳しくなかったそうだ。紅葉には黄色と紅があり、「もみじ」と言ってみたり、「かえで」と言ってみたり、様々だ。植物分類上はいずれも「カエデ」になる。園芸品種上で両者が区別されているだけだ。赤ちゃんやカエルの手のようになった、その切れ込みの深さで、深いものが「もみじ」、浅いものが「かえで」とされる。「かえで」の呼び名はまさに「カエルの手」から来ているのだと言う。「もみじ」は草木の葉が色付く意味である古語の「もみつ」という動詞がその連用形の名詞化した「もみち」から来ているそうだ。そして、平安時代に入り、「もみち」は「もみぢ」と濁音化され「もみじ」へと変化したとされている。万葉集では「かえで」が多く歌われ、「もみじ」は少ない。また、万葉集では「紅葉」よりも圧倒的に「黄葉」の字が使われている。「紅葉」の字が使われているのは1首だけだと言う。「妹許跡 馬桉置而 射駒山 撃越来者 紅葉散筒」(妹(いも)がりと、馬に鞍置きて、生駒山、うち越え来れば、黄葉(もみち)散りつつ)。妻のところへ行こうと、馬に鞍をつけて生駒山を越えて来ると、もみちが散っています。ここで歌われている生駒山は、奈良県の山である。とすれば、奈良地方では当時「紅葉」の字を使っていたのかも知れない。そして、圧倒的に多い「黄葉」の字はひょっとすると九州王朝で使われた可能性もあるのではないだろうか。呉音は奈良時代以前に伝えられたと言われる。九州王朝は中国南朝に服属していた。呉はまさにその南朝である。唐は、漢音の漢と同じ北朝系になる。その漢音は奈良・平安初期に伝わったとされる。「黄」は呉音では「オウ」であり、「紅」は「グ」である。これに対して、漢音ではいずれの字も「コウ」だ。漢音が伝わったとされる奈良時代(710年から)はすでに701年を境に九州王朝から大和王朝へ政権が移っていた。北朝系である唐と接近していた大和王朝は当然呉音ではなく漢音を使っている。漢音であれば「黄」も「紅」も「コウ」であり、「黄」から「紅」へ変えたのではないか。柿本人麻呂をはじめ、万葉歌人の多くは九州王朝の人々であった。それが万葉集では多くが「黄葉」の字を使っていた理由ではないだろうか。実際、「紅葉」と書くようになったのは平安期以後だと言われる。同じような問題が「もみじ」と「かえで」にもある。万葉集で多い「かえで」が九州王朝の呼び名で、少ない「もみち」が大和王朝になってからの呼び名ではないか。科学的には、緑の葉はクロロフィルという葉緑素によるもので、葉の老化とともにクロロフィルが分解され、その結果残った成分がアントシアンであれば紅に、カロチノイドであれば黄に、タンニンであれば茶に色付くことになる。
八幡神社の黄葉と紅葉

国際的な流れにも逆行する特定秘密保護法案

2013-11-26 19:16:55 | 社会
昨夜は風と雨で、今朝起きると庭のモミジがさらに散って、玄関前には綺麗なモミジがたくさん散っていた。愛染山を含めて西の空は雲が覆っていたが、釜石上空には青空も見えていて、西の空の雲から青空にかけて大きな虹が出ていた。夜半には地震もあったが、釜石は震度3で、この程度だともうすっかり慣れてしまった。昼休みには、また、八幡神社へ出かけた。ちょうどタイミングよく日が射して来た。しかし、結局また見ている間に雲で日が遮られてしまった。 特定秘密保護法案を担当する礒崎陽輔首相補佐官によれば、同法案が成立した場合、秘密指定について外部からのチェックが困難で、秘密の拡大に歯止めがかからなくなる可能性がある。ただ、同氏は、特定秘密保護法の最大の目的は、秘密が漏れないようにすることであるため、秘密指定の手続きに第三者が関与することは認めにくいとする。現在、防衛や外交に関する秘密は「特別管理秘密」として、約42万件指定されており、これを基本に内閣官房、外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁の各省庁が保有する情報を秘密指定し、件数が30万件台になる見通しだと言う。ところで、日米の公文書管理を比較すると、公文書館職員数は日本がわずか47人であるのに対して、米国は2670人おり、年間予算も日本25億円に対し、米国は390億円である。共同通信がニューヨークでインタビューした米国の核戦略の専門家で、国防総省や国家安全保障会議(NSC)の高官を務めたモートン・ハルペリン氏は日本の特定秘密保護法案は政府の裁量が広過ぎ、知る権利と秘密保護のバランスを定めた国際基準を逸脱していると批判している。過剰な秘密指定は政府自体が管理出来なくなることを指摘している。「世界の基本原則では、政府が持つ情報はその国の市民のものだ。安全保障など特別な目的で情報の秘匿は可能だが、非常に狭く精密な限定をかけねばならない」、また「運用には司法の監視が必要で、開示による公益が勝る場合は秘密にできないという決まりも要る。法案にそれらの規定が全くない。秘密指定が解けた後に廃棄されれば『情報の所有者は国民』の原則に反する」と述べている。そして、米政府の一員であった経験から、「秘密を指定しすぎると真の秘密を保護するのが実は難しくなる。どこにでも『最高機密』と書かれているのに慣れてしまい、本当に重要なものが分からない。真の秘密を保護する立場からも、秘密の大量指定につながる制度は間違いだ」とも言う。最後に、「情報を秘密指定できる条件を具体的に定め、公益が勝れば秘密にできないと規定し、国民が異議を申し立てる監視機関を置くことが必要。そうでなければ、美しい言葉の条文があっても、政府は秘密にしてはならないものを次々に秘密指定する」とも述べている。本年6月、南アフリカ共和国の首都、ツワネでアメリカの財団(Open Society Justice Initiative)の呼び掛けの下、国際連合、人及び人民の権利に関するアフリカ委員会、米州機構、欧州安全保障協力機構など70カ国以上、500人以上の専門家が集まり、秘密保護法の国際規準、「ツワネ原則」が策定された。そこでは国家機密と情報の公開原則のバランスを保つことを勧告し、対象を国防計画、兵器開発、情報機関の作戦や情報源などに限定した上で、(1)国際人権・人道法に反する情報は秘密にしてはならない(2)秘密指定の期限や公開請求手続きを定める(3)すべての情報にアクセスできる独立監視機関を置く(4)情報開示による公益が秘密保持による公益を上回る場合には内部告発者は保護される(5)メディアなど非公務員は処罰の対象外とする、などとしている。米国では秘密情報が増え過ぎて、かえって、管理が不十分となり、機密漏洩の危険性が高まったため、2010年には「過剰機密削減法」を成立させるまでになっている。英国でも同じ年、秘密情報公開までの期間を30年から20年に短縮し、議会監視委員会の権限を本年から強化している。日本の今回の法案はこうした世界の秘密法案の流れもまったく無視している。
わずか1日でも紅葉のさらに進んだ八幡神社のモミジ

ここ1日、2日でさらに紅葉が進みそうだ

風で散るものも多そうだ


原敬(はらたかし)

2013-11-25 19:16:43 | 歴史
朝から空を雲が覆い、今にも降りそうな気配であった。案の定、昼頃から小雨が落ちて来た。周囲の山々の紅葉も今年は不揃いのまま、もう葉が散り始めている。裸になった木を見ると、もう冬だと感じさせられる。小雨が少し降る中、昼休みに八幡神社へ出かけた。思った通り、紅葉がまた一段と進んでいた。晴れていれば、とてもきれいに見えただろう。もう表面は全体が紅く、枝先の一部は風で散っている。真下から見上げるとまだ緑の葉も少しあるようだ。明日は晴れてくれるといいが。 東京駅にはレンガ造りの建物がある。明治時代の日本の建築学の土台を造った東京帝国大学の辰野金吾の設計し、1914年に完成したものだ。唐津藩士の息子である。辰野金吾の息子も同じく東京帝国大学の仏文学の教授である辰野隆でやはり仏文学の著名な弟子をたくさん育てた。小林秀雄、伊吹武彦、渡辺一夫、森有正、三好達治、中島健蔵、中村光夫、鈴木力衛など。辰野金吾は自分の希望であった日本銀行本店、国会議事堂、中央停車場のすべてを手がけた。岩手県盛岡市には東京駅と同じく赤煉瓦と白の線が入った、いわゆる「辰野式」と言われる辰野金吾の設計した岩手銀行本店が現存している。辰野金吾が建てた東京駅では岩手から出た平民宰相と言われた原敬が1921年に18歳の青年により暗殺された。暗殺者の青年は大塚駅転轍手であったが、この暗殺やその後の裁判については多くの謎がある。予審や裁判関係の資料が一切残されておらず、裁判も十分に審理が尽くされないまま判決を下している。原敬は祖父が盛岡藩の家老職の家に生まれ、次男であったために20歳で分家し、平民となった。15歳までは藩校で漢学を学び、16歳で東京へ出て、漢学や英学を学んだ後、神学校や司法省法学校、中江兆民塾などで仏学を学んでいる。司法省法学校在学中には待遇改善運動に参加し、退学となっている。新聞社に勤めた後、外務省に採用され、官僚の道を進み、農商務大臣であった陸奥宗光の目にとまり、外務次官にまでなったが、大隈重信が外務大臣になるとともに、外務省を辞めてしまった。大阪毎日新聞社に入り、1898年に42歳で社長となる。1900年伊藤博文が立憲政友会を設立すると、誘われて、幹事長に就任する。1902年に初めて衆議院議員に当選する。1918年には首相となった。原敬は西欧列強に対して、日本を産業国家として国力を強めることを目指した。また、藩閥であった官僚の中で、その弊害を感じ、官僚も藩閥を脱した近代的な官僚機構を作ろうとした。産業を強めるには教育が重要であるとして、首相となってすぐに総予算の4分の1を投じて教育機関を増設した。しかし、原敬は一方で、産業国家の育成に力を入れるあまり、政党による利益誘導を生み出し、汚職事件も党内で発生し、一部からの反発も招いている。さらに天皇直属であった軍部を内閣の下に置こうとして軍部からの反発も強かった。皇后の反対にもかかわらず皇太子を外遊させるなども一部の右翼的な国民からは怒りを買っている。こうした反発は本人も意識しており、暗殺の危険も承知していたようだ。すでに遺書もしたためていた。1882年には自由民権運動の板垣退助が暴漢に襲われており、1909年には伊藤博文が暗殺されている。幕末から戦前にかけて多くの有志の人々が命を奪われているが、時々、こうした人たちが存命であったなら日本はどう変わっていただろうと考えることがある。
紅く染まった八幡神社前のモミジ

「自分の神」

2013-11-24 19:21:48 | 文化
今日も一日穏やかな秋のいい天気だった。岩手の自然は長く楽しむことが出来るのでとても気に入っている。唯一の不満は交通事情だ。自分で勝手に「大名行列」と名付けた渋滞だ。岩手は四国4県の広さがある。昨日出かけた盛岡には片道2時間かかる。大部分が山間部を走る道路で、80Kmのスピードで走る人がいる一方で、地元の人の多くが50Kmから60Kmくらいで走る。そうした地元の人の車の後に延々と車が繋がる。誰も追い越そうとはしない。せめて70Kmくらいでも出してくれれば助かるのだが。 来月13日、釜石でゴスペル・シンガーのアルフィ・サイラスAlfie Silasのクリスマスコンサートがある。アルフィ・サイラスは4オクターブの声域を持つと言われ、クインシー・ジョーンズ、ホイットニー・ヒューストン、マイケル・ジャクソンらとともに歌って来た。「ホーンテッドマンション」「愛は静けさの中に」「ツインズ」、最近では「ライオン キング」の映画音楽なども歌っている。世界的な歌手となったサイラスは、本来であれば、釜石のような地方小都市ではコンサートなど行なわない。しかし、サイラスは子供の頃からキリスト教会で歌を歌っていた。その教会の関連で東日本大震災後は東北各地でコンサートを開き、被災者に歌をプレゼントして来た。残念ながら、当日は職場の忘年会と重なり、コンサートには行けない。娘や息子もゴスペルをやっているので、本来なら是非聴きたいところなのだが。ゴスペルはアフリカ系の人々の賛美歌のようなものだ。神への賛美だ。従って、多くはキリスト教徒である。欧米、特に米国は神への祈りというものを大統領すら公然と行なっている。自分の実家は神道だ。その意味では子供の頃から「神様」は身近にいた。しかし、現在、神を信じるかと言われれば、信じてはいないと答えるしかないだろう。神や仏はいるかも知れないが、いないかも知れない。神や仏の概念は人が創り出したものだ。人が亡くなれば、仏教では仏となり、神道では神となる。東北にはいたるところに大小様々鳥居が見られる。山神を祀った石碑もとても多い。神社の祭礼も毎年決ったように行なわれている。その大部分は信仰と言うより伝統として行なわれているのだろう。欧米の神は絶対的に人間を超越した存在であるが、日本の神は、あるいは仏は超越した絶対的な存在であったことはほとんどない。神が絶対者であったのは、おそらく唯一縄文時代だけであっただろう。しかも、唯一の神ではなく、神々がいた。弥生時代からは時の権力者が亡くなると神として崇められるようになり、「ご利益」が生まれたのだろう。この時から、神は絶対者ではなく、現世的になった。数少ない絶対的な存在として仏があったのは親鸞に於いてであろう。天草四郎の「ゼウス」もそうだったのかも知れない。欧州でもゲルマンの時代には神ではなく、神々であった。宗教裁判はその「神々」を駆逐し、キリスト教のみを神とした。何百年かにわたりたくさんの人を処刑することで達成した。イスラム世界を攻撃する根はすでにそこにあった。米国の統治者は神の名で兵士の無事を祈り、無人機での殺戮を指示する。飢餓に喘ぐ人も、巨万の富を有する1%の人も同じ神を信仰する。日本では神も仏も消えかかっている。現世でのご利益が得られなくなって来ている。僧侶も徳を積むことより金を積むことに関心を寄せている。宮司や僧侶が彼岸的ではなく此岸的になれば、もはや絶対者である神や仏など存在し得なくなる。日本の神や仏の消失は宗教内部の崩壊に起因するところが大きい。隣国の韓国は今や6割がキリスト教徒になっている。キリスト教徒でなければ肩身の狭い思いをするほどだと言う。自然との同化傾向の強い東アジアで、果たしてどれほどキリスト教が心の奥まで浸透し得るものなのだろうか。人は所詮、「神」ではなく「自分の神」しか持たないのではないだろうか。
日射しを浴びた庭のモミジ

貧困を抱えた先進国

2013-11-23 19:11:44 | 社会
先日初冠雪のあった愛染山はその後一旦雪が消えていたが、今朝見てみるとまた雪を冠っていた。そのせいか、今朝は2度まで下がっていた。風も少し冷たい。しかし、空は青空が広がった。いい天気にはなったが、残念ながら、今日は仕事の絡みで盛岡まで片道2時間かけて行かねばならなかった。山や鮭の遡上する川のある盛岡ではあるが、人口が30万ともなると、もううんざりしてしまう。やはり、車の流れを見ているだけで疲れてしまう。釜石に馴染み過ぎてしまったのだろうか。盛岡駅近くのビルで2時間過ごした後は、どこへも立寄らずにさっさと帰路についた。 10月1日の国連食糧農業機関FAO発表によれば、世界の飢餓人口は8億4200万人いる。世界人口の12%にあたり、8人に1人が飢餓状態にある。アフリカ、アジア、南米の順で深刻だ。これまで確かに飢餓と言えばこれらの地域に注目されて来た。しかし、先進国と考えられている米国で今、この飢餓が進行している。米国は製造業が廃れ、金融経済に大きく舵を取り、お金がお金を生み出す魔法の仕組みを創り出した。物を造るために資本が投じられていた構造から、賭けに資本を投じる仕組みに変わった。この仕組みではお金をたくさん保有している者がさらにお金を多く保有出来る。こうした社会では普通の国民は以前の工場のような働く場を失ってしまう。国が発表する失業率には仕掛けがあるため、実際の失業率が反映されない。失業者の定義は職を求めているのに得られていない人を指す。長期失業者は、職を求めていない、として失業者にはカウントされない。職がなければ当然収入もない。最初に困るのは食べ物だ。現在、米国には補助栄養支援事業であるフードスタンプ利用者が5000万人近くいる。5年前より2000万人ほど増えている。今月からオバマ政権はこのフードスタンプ予算を削減した。野党の共和党の圧力もあって。米国商務省の統計によれば、貧困層は国民の16%、4970万人に達する。6人に1人は貧困層に陥っている。リーマンショックのあった2008年にジャーナリストの堤未果氏がすでに『ルポ貧困大国アメリカ』を著している。ニューヨーク市立大学で学んだ後、米国野村證券に勤務していたが、9.11事件をきっかけに、自分の目でもう一度米国を見つめ直そうとした。そこで見えて来た米国の「経済的徴兵制」、「戦争の民営化」を先ず指摘した。堤氏は現在の米国の姿は5年後の日本の姿だと言う。日本は米国を後追いしている。米国は中央銀行にあたる連邦準備銀行FRBが大量にドルを印刷し、米国債を買い取っている。大量に印刷されたドルは製造業や研究開発に向かうのではなく、金融市場と言う賭博場に向かう。競馬や競輪と同じく、コンピュータがはじき出した予想に賭けるのである。株式市場も同じだ。実際に造られた物がよく売れている企業に投資するという古い投資は姿を消して、政府や中央銀行などが発表する政策や数字で経済の動きを予想して投資する。日本はまだ現在、製造業が健在である。しかし、その製造業もこれまでの輸出企業が中心であり、消費税の還付金や円安、株高という政府補助に頼らねば利益を出せない状態になってしまった。その政府補助で得た利益は社内留保に積み上げられ、就労者の所得増には向かわないどころか、正規雇用を削り、非正規雇用を増々拡大しているため就労者の所得は減少する一方だ。米国ほどには金融経済がまだ幅を利かせてはいないが、就労者の置かれている状態は急速に米国に近づきつつある。アベノミックスも大量の貨幣を注ぎ込んでいるが、それは日本の将来を見据えた投資として使われるのではなく、単に旧来の産業の延命と株式の上昇、円安を将来するためにのみ浪費されている。まして、来年からは消費税が増税され、そうした流れまでもが急ブレーキをかけられることになる。米国ほど露骨ではないにしても、日本も着実に貧困層を増大させる方向に動いている。貧困を抱えた先進国はもはや先進国とは言えない。米国も日本も崩壊が始まっているのだ。
日を浴びる庭の柏葉紫陽花

緊迫している南海トラフ地震の可能性

2013-11-22 19:12:03 | 自然
今日は朝から曇り空で、朝にはわずかに雨も降った。雲の多い中、昼休みに職場近辺を歩くと、枯葉が道にたくさん落ちていた。落葉樹が多い東北は風が吹くと枯葉がたくさん宙に浮く。風が多いか少ないかでその年の紅葉の見え方まで変わって来る。今年は葉が十分紅葉し切らないうちに散ってしまったものも多い。家の近所の例年見事な紅葉を見せてくれる山裾も今年は早々と散ってしまった。ごく一部が残っているだけだ。昨日見た裏山の桜の葉も1日違いでずいぶん少なくなった。自然も生きていて定まることがない。 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震で最も衝撃を受けたのは地震学者たちかも知れない。予想もしなかった巨大地震だった。多くの地震学者たちは地震の予知は極めて困難だと考えるようになった。一方で、いつ起きてもおかしくないと言われる南海トラフの巨大地震について、地震が切迫して来ていると考える研究者もいる。南海トラフは駿河湾から四国、九州沖に伸びる海溝で、深さは4000mに達する。西南日本が乗るユーラシアプレートとその南のフィリピン海プレートの境界にあたる。フィリピン海プレートの境界で10月15日、M7.2の地震が起きた。フィリピン南部のボホール島付近を震源とする地震であった。10月31日には台湾でM6.3の地震が起きた。いずれもフィリピン海プレートの動きに起因した地震だ。今年6月にも台湾とフィリピンでは地震が発生している。今月20日、小笠原諸島の西之島付近で海底噴火により新しい島が誕生し、現在も噴火が続いている。ちょうど太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に潜り込む境界にあたる。立命館大学環太平洋文明研究センター、歴史都市防災研究所の高橋学教授はユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界にストレスが溜まって来ていることを指摘し、南海トラフ地震を誘発する可能性があると言う。測量学の世界的権威である村井俊治東京大学名誉教授は国土交通省が1995年の阪神・淡路大震災を契機に全国1243か所に配備したGPSデータを測定する電子基準点を活用して、地震前兆を捉える研究を行なって来た。村井名誉教授は2000~2007年に起きたマグニチュード6以上の162の地震の追跡調査を行なった。そして、そのすべてで前兆現象を見出した。電子基準点の三次元の動きと三カ所の電子基準点を結んだ面積変動率を解析して、地震の前兆現象として地殻の微小な変動を見出した。東日本大震災の場合も「前兆現象」はあった。しかし、地震学者ではないため公表をためらったそうだ。その結果、大変な被害の状況を見させられてしまった。その反省から、今、南海トラフの地震が迫っていることをためらわず警告されている。今年6月末に九州・四国・紀伊半島で異常変動を見出し、9月初めには全国で異常変動が観測された。その後4週間ほど落ち着き、10月前半に再び広範囲に変動があり、特に、九州、四国では変動が大きく、それまで高知県、愛媛県、紀伊半島に出ていた異常が香川県、徳島県など瀬戸内海側に移ってきていると言う。東日本大震災の前にはこうした変動と静穏が半年に3回繰り返された。こうした状況から同名誉教授は今年12月から来年3月頃の間に南海トラフの大地震が起きる可能性が高いと考えておられる。内閣府の中央防災会議の報告では、南海トラフ巨大地震の被害は死者32万3000人、被災者950万人、経済的損失は220.3兆円となっている。大阪府がその後出した犠牲者予測は中央防災会議の予測の10倍にもなる13万人である。東日本大震災でもそうであったが、やはり、海溝型地震で脅威であるのは津波だろう。誰もが津波への警戒を持っていない。特に身体の不自由な人の犠牲は倍になる。この予測が当たらなければ幸いだ。しかし、少しでも可能性を指摘されているのであれば、それは無視しない方がいいだろう。避難場所確保や食料その他の備蓄を怠らないようにしなければならない。
職場近くの紅白の山茶花

予想通り後退した最高裁判決

2013-11-21 19:15:22 | 社会
朝少しだけ小雨が降ったが、東の空には青空が見えていた。西の高い山には雪が降っているようだった。しかし、その西の空には大きな虹が出ていた。雲が流れていたが、昼には日も射し、また、菅原神社と八幡神社へも行ってみた。甲子川のそばを通ったが、キンクロハジロが何羽かやって来ていた。これからたくさん渡りの水鳥たちがやって来るだろう。今年も白鳥が来てくれるといいのだが。八幡神社の紅葉も少しだけ進んで来ていた。菅原神社のモミジはほとんどが赤味を帯びたオレンジ色に変わっていた。午後の4時頃には夕焼け雲が流れ、カラスたちが今日も海岸近くの寝ぐらに向けて飛んで行っていた。 昨日、最高裁は2012年に行なわれた衆議院選挙の「1票の格差」について、予想通りの後退した「違憲状態」の判決を下した。日本は三権分立を唱いながら実質的には司法は独立していない。国会や行政の下に位置している。今回の判決文の中にも「国会での合意の形成にはさまざまな困難が伴い、段階的な見直しを重ねて実現していくことも許容される」と現状を追認する文言が含まれている。同選挙については、本年3月、全国の高裁・支部16カ所ですでに判決が出ており、そのうち12カ所までもが「違憲」という厳しい判決を下していた。2カ所ではさらに最も厳しい選挙「無効」との判決まで出していた。今回の最高裁と同じ判決である最も軽い「違憲状態」はわずか2カ所である。これを見ただけでも、最高裁の今回の判決がいかに政治に譲歩したものであるかが分かる。最高裁は2011年3月に下した2009年の選挙についての判決ですでに「違憲状態」と下していた。そこでは、実質的に1票の格差を生み出す一因である「1人別枠方式」を廃止するよう求めた。「1人別枠方式」はあらかじめ各都道府県に1議席ずつ配分し、残りの議席を最大剰余式という式を使って比例配分するもので、結果的に、人口が少ない県に多くの議席が与えられる。2011年3月の最高裁判決後、法律上は「1人別枠方式」を廃止ししたが、実際は、それが残った形になり、本年3月7日の札幌高裁判決でもその事実を指摘し、批判している。今回の最高裁判決ではこの点でも甘くなっている。これまで何年もの間、「1票の格差」は放置され続けて来た。小手先の改革だけでお茶を濁し、最高裁もそれを結果的には追認する判決しか下して来なかった。毎日新聞によれば、広島高裁で「選挙無効」の判決を導き出した金尾哲也弁護士は今回の最高裁の判決について「司法権の独立が本当に守られているのか。国民の参政権の救済は果たされているのか。絶望的な気分だ」とまで述べている。下級審の多くが「違憲」判断をしている中で、最上級審である最高裁が何故一歩後退した「違憲状態」という判決を出すのか。最高裁は裁判官の任命権が内閣にある。内閣が任命し、天皇が認証する。政府に不都合な判決は最高裁の裁判官には出せないのだ。そもそも法律自体が「解釈」の問題である。解釈が異なればいくらでも異なる判決を下せるところがある。憲法が武力による解決を否定していても、「解釈」で実質的な軍隊を持っている。これは科学ではない。政治である。あるジャーナリストは「社会科学」を科学とは認めない。経済学も法学も現実にはある種の意図により、いくらでも「科学」の体裁を持ち得る。ある意味で統計と似ている。一見、数字と数式ではじき出されたデータは科学的に見えるが、抽出する元の数字の範囲で、異なった結果はいくらでも導き出せてしまうところがある。戦後の日本はこの「解釈」により、国民は煙に巻かれて来た。そしてこの「解釈」は官僚によって行なわれて来たのだ。「頭のいい」官僚は「曖昧さ」を利用して、政治家をコントロールし、実質的な国家運営を行なって来た。「特定秘密保護法案」は一層、官僚たちに都合のいい環境を与えることになるだろう。この法案が成立すれば、官僚たちの独走は一層強まることになるだろう。そして、こうしたブログでの批評までもが処罰の対象となる。14日の衆議院国家安全保障特別委員会で官僚である防衛省からの鈴木良之内閣官房審議官は「秘密保護法案の解釈上、新聞・出版等の関係者以外の者が、何万人も来場者があるブログにて時事評論をすることは処罰対象となる」と答えている。これほど怖い答弁内容もメディアはほとんど報じていない。「官僚の解釈」次第で何とでもなる最たる例だ。
職場の裏山の桜と少しだけ色付き始めた銀杏

菅原神社

菅原神社境内

色付き始めて来た八幡神社前

遠くに釜石観音の白い像が見える