日本政府観光局が公表している資料によると、2003年から2012年までの訪日外国人旅行者は、2010年の861万人が年間の最大訪日人数であった。2013年からの現政権の本格始動後は「円安」政策で2013年の1036万人から年を追って増え続けて来た。2019年には3188万人にもなっている。これが一気に今年は減少し、その穴埋めに、1兆6794億円もの国費を投じて「Go to キャンペーン」が打ち上げられた。「円安」は自国通貨の評価を自ら下げることである。そして、それは国内の財やサービスの価値を下げることになり、それらのコストである賃金を低く抑える方向に働く。英国の世界的な金融大手HSBCホールディングスは、毎年、海外駐在員の生活調査レポートを発表している。その昨年の発表では「駐在員が住みたい国ランキング」で、日本は調査対象33カ国中32位である。日本より低いのがブラジルであった。日本は賃金・労働時間・教育で評価が低く、全体の評価を下げた。またスイスのIMDは、いくつかの視点からの世界競争力ランキングを毎年公表しているが、日本は何と1989年から1992年までは1位である。以後、順位を落とし続け2019年には30位となった。1位はシンガポール、2位は香港、3位は米国、4位はスイスで、日本は中国(14位)やドイツ(17位)に大きく引き離され、タイ(25位)や韓国(28位)よりもランクが下である。人口が減少し、労働力を補うために日本は研修生名目で、実質的な移民政策を行って、ベトナムやフィリピン、インドネシアからも期待しているが、これらの国は、「駐在員が住みたい国ランキング」では日本より高い。ベトナム(10位)、フィリピン(24位)、インドネシア(31位)。いずれ遠からずこうしたアジアの国々も日本へは来てくれなくなるだろう。日本より豊かなアジアの国へ行く。まだ新型コロナウイルス感染が世界的に広がっていなかった2月20日、国際通貨基金IMFは、日本の経済情勢を分析した対日報告書を公表した。日本は少子高齢化という長期的リスクを抱えており、今の政策を続けた場合、40年間でGDPは25%も減少すると予測している。経済成長のための3要素、資本、労働、イノベーションのいずれにも日本は問題を抱えている。特に後の2つは顕著である。日本の現在の生活レベルはノーベル賞と同じで、あくまでも過去の遺産でしかない。そんな現在の日本をさらに深刻にさせているのが、米国と同じく膨大な政府債務である。対GDP比では日本はダントツでである。そこへ今回のコロナ禍が襲い、それがさらに政府債務を積み上げさせ、その行き着く先を見通せなくさせているのが現在の感染状況である。日本より遥かに南にあって気温が高いインドやインドネシアで、今、ウイルスは感染を拡大させ続けていおり、インフルエンザのように夏になれば、治るなどと期待出来ない。米国では第2波のような規模の拡大した感染が見られており、中国でも北京の市場で先頃新たな感染が見つかった。このウイルスはとても早く変異するが、中国武漢のウイルスと欧州や米国で猛威を奮うウイルスは異なる株であることが注目されている。D614G変異と呼ばれる変異により欧州や米国では感染力が10倍にもなっている。6月20日にbioRxiv(THE PREPRINT SERVER FOR BIOLOGY)に投稿された「The D614G mutation of SARS-CoV-2 spike protein enhances viral infectivity and decreases neutralization sensitivity to individual convalescent sera」なる中国の論文によると、重慶医科大学のHuang Ailong教授らは、北京の市場で感染した最初の3人のウイルスを分析した結果、3人全てがD614G変異株であった。つまり武漢のウイルスとは異なった株であった。そして、以前中国で広まったウイルスの患者から収集した41の血液サンプルから抗体を抽出し、D614G変異体に対して反応を見たが、全ての抗体が変異株に対して無力であった。つまり、武漢で感染した人もこの変異株に感染すると再び感染してしまうと言うことだ。最初の感染の抗体が効かないと言う事実が明かになった。D614G変異をもつ株は2月初旬に欧州で広がり始め、5月までに世界中で優勢な株となり、欧州と北米の70%に現れた。現在、インド、イラン、中東、ブラジルにも存在する。5月初旬に英米の研究ではすでに数百もの変異株が見出されていることが英国BBCが伝えていた。下の図は4月29日に米国ロスアラモス国立研究所が発表した「Spike mutation pipeline reveals the emergence of a more transmissible form of SARS-CoV-2」と言う論文で示されたもので、各国の中国武漢株とD614G変異欧州株の割合いが示されている。日本にも感染力の強い変異株はすでに入っている。感染者が少ないのはあくまで検査数が少ないためであり、水面下で感染は広がっており、今後、さらに日本国内でこの変異株が暴れる可能性は十分ある。
オレンジ色:中国武漢株 青色:D614G変異欧州株