釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

日本の凋落を加速させるか、変異株

2020-06-30 19:13:43 | 社会
日本政府観光局が公表している資料によると、2003年から2012年までの訪日外国人旅行者は、2010年の861万人が年間の最大訪日人数であった。2013年からの現政権の本格始動後は「円安」政策で2013年の1036万人から年を追って増え続けて来た。2019年には3188万人にもなっている。これが一気に今年は減少し、その穴埋めに、1兆6794億円もの国費を投じて「Go to キャンペーン」が打ち上げられた。「円安」は自国通貨の評価を自ら下げることである。そして、それは国内の財やサービスの価値を下げることになり、それらのコストである賃金を低く抑える方向に働く。英国の世界的な金融大手HSBCホールディングスは、毎年、海外駐在員の生活調査レポートを発表している。その昨年の発表では「駐在員が住みたい国ランキング」で、日本は調査対象33カ国中32位である。日本より低いのがブラジルであった。日本は賃金・労働時間・教育で評価が低く、全体の評価を下げた。またスイスのIMDは、いくつかの視点からの世界競争力ランキングを毎年公表しているが、日本は何と1989年から1992年までは1位である。以後、順位を落とし続け2019年には30位となった。1位はシンガポール、2位は香港、3位は米国、4位はスイスで、日本は中国(14位)やドイツ(17位)に大きく引き離され、タイ(25位)や韓国(28位)よりもランクが下である。人口が減少し、労働力を補うために日本は研修生名目で、実質的な移民政策を行って、ベトナムやフィリピン、インドネシアからも期待しているが、これらの国は、「駐在員が住みたい国ランキング」では日本より高い。ベトナム(10位)、フィリピン(24位)、インドネシア(31位)。いずれ遠からずこうしたアジアの国々も日本へは来てくれなくなるだろう。日本より豊かなアジアの国へ行く。まだ新型コロナウイルス感染が世界的に広がっていなかった2月20日、国際通貨基金IMFは、日本の経済情勢を分析した対日報告書を公表した。日本は少子高齢化という長期的リスクを抱えており、今の政策を続けた場合、40年間でGDPは25%も減少すると予測している。経済成長のための3要素、資本、労働、イノベーションのいずれにも日本は問題を抱えている。特に後の2つは顕著である。日本の現在の生活レベルはノーベル賞と同じで、あくまでも過去の遺産でしかない。そんな現在の日本をさらに深刻にさせているのが、米国と同じく膨大な政府債務である。対GDP比では日本はダントツでである。そこへ今回のコロナ禍が襲い、それがさらに政府債務を積み上げさせ、その行き着く先を見通せなくさせているのが現在の感染状況である。日本より遥かに南にあって気温が高いインドやインドネシアで、今、ウイルスは感染を拡大させ続けていおり、インフルエンザのように夏になれば、治るなどと期待出来ない。米国では第2波のような規模の拡大した感染が見られており、中国でも北京の市場で先頃新たな感染が見つかった。このウイルスはとても早く変異するが、中国武漢のウイルスと欧州や米国で猛威を奮うウイルスは異なる株であることが注目されている。D614G変異と呼ばれる変異により欧州や米国では感染力が10倍にもなっている。6月20日にbioRxiv(THE PREPRINT SERVER FOR BIOLOGY)に投稿された「The D614G mutation of SARS-CoV-2 spike protein enhances viral infectivity and decreases neutralization sensitivity to individual convalescent sera」なる中国の論文によると、重慶医科大学のHuang Ailong教授らは、北京の市場で感染した最初の3人のウイルスを分析した結果、3人全てがD614G変異株であった。つまり武漢のウイルスとは異なった株であった。そして、以前中国で広まったウイルスの患者から収集した41の血液サンプルから抗体を抽出し、D614G変異体に対して反応を見たが、全ての抗体が変異株に対して無力であった。つまり、武漢で感染した人もこの変異株に感染すると再び感染してしまうと言うことだ。最初の感染の抗体が効かないと言う事実が明かになった。D614G変異をもつ株は2月初旬に欧州で広がり始め、5月までに世界中で優勢な株となり、欧州と北米の70%に現れた。現在、インド、イラン、中東、ブラジルにも存在する。5月初旬に英米の研究ではすでに数百もの変異株が見出されていることが英国BBCが伝えていた。下の図は4月29日に米国ロスアラモス国立研究所が発表した「Spike mutation pipeline reveals the emergence of a more transmissible form of SARS-CoV-2」と言う論文で示されたもので、各国の中国武漢株とD614G変異欧州株の割合いが示されている。日本にも感染力の強い変異株はすでに入っている。感染者が少ないのはあくまで検査数が少ないためであり、水面下で感染は広がっており、今後、さらに日本国内でこの変異株が暴れる可能性は十分ある。
オレンジ色:中国武漢株 青色:D614G変異欧州株

避けられないウイルス禍の長期化

2020-06-29 19:07:24 | 社会
今月14日に岩手県も梅雨入りした形になっているが、釜石では曇天の日は多いが、雨はさほど降っていない。週末は息子の希望で、遠野の2箇所の産直へ行き、帰りは遠野の農村地帯を抜けて釜石へ向かった。遠野の農家は広い敷地にほとんどが花木を植えている。それらを眺めながらのんびり車を走らせるのが好きである。車の中では、息子と日本や米国の感染状況を話すことが多い。また、新型コロナウイルスについて新しく解明されたことなども互いに共有している。それは毎日の夕食後も同じであるが。日本の政府や自治体が公表する感染状況を信じていないのは息子も同じだ。感染者は発表の何倍もいるはずである。症状の重くなった人を中心に検査をしており、そのため大多数の軽症・無症状者を見逃しており、その人たちが水面下で感染を広げているはずである。政府が感染症指定を外し、どの医療機関でも一定の検査や治療が可能とならなければ、現在のような不安定な状況は延々と続いて行くだろう。11日〜14日毎にウイルスが変異する状態では、安定したワクチンなど期待出来るはずもない。新型コロナウイルスは、人の細胞のレセプター受容体と呼ばれる細胞表面部位に付着することで、細胞内へ侵入出来る。主要な受容体の一つがACE2と呼ばれる受容体であるが、欧米人の白人やアフリカ系黒人は、ACE2受容体が発現しにくく、アジア人は発現しやすいとされる。中でも日本人はより発現しやすいと言われる。このウイルスは今では欧州、米国などで大いに変異し、受容体の種類を増加させてしまっている。これが米国などで感染が拡大している理由であるが、重症化は微小血管での血栓形成や免疫の暴走であるサイトカインストームが原因である。その重症化とACE受容体の発現のしやすさが、何らかの関係があるのではないかと考えている。東アジアや日本で感染者数や死者数が欧米に比べて少ないこととの関連である。世界では感染者は1000万人を超え、死者は50万人を超えた。感染者の半数は欧米である。インドなど南アジアとアフリカでも感染は続いており、感染のピークは7月末以降になると見られている。欧州では移動制限が緩和され、英国などでは浜辺に数千人の人々が殺到している。先週末、WHOの事務局長補佐はイタリアの国営テレビのインタビューで、「「第2波」が発生すれば、さらに数百万人規模が死亡する事態もあり得る」と述べている。1918年からのスペイン風邪の世界的な大流行では、夏季に感染が衰え、9月と10月に激しく勢いを取り戻し、結果的に第2波で5000万人の犠牲者が出たことを指摘している。米国大統領は20日、オクラホマ州の選挙集会で、米国はどの国よりも多くの検査をし、そのため感染者が多く見出されており、検査はより多くの感染者の確認につながる「もろ刃の剣」であり、「検査ペースを減速させるよう指示」したと述べている。今や米国は感染対策も経済対策も日本に倣い始めている。1990年代初頭にバブルが崩壊し、訪れた金融危機の後に、世界に先行して、中央銀行は債券買い入れと超低金利を導入し、政府は財政赤字を拡大した。米国は2008年のリーマン・ショック後、崩落した金融経済を支えるために中央銀行FRBが債券購入と低金利を実施し、株価を支えて来た。今回のコロナ危機は米国実体経済にリーマンショックを遥かに超える規模で打撃を与えた。3月の株価の下落はそれを反映したものだが、中央銀行が速やかに反応し、債券購入とゼロ金利を直ちに実行した。これにより株式市場は再浮上した。今や日米の株式市場は完全に中央銀行依存市場となっている。これは今後の株式のさらなるバブルを予兆させる。FRBは「制限」をなくしたのである。そして、そのさらに巨大化したバブルがいずれ長期化したコロナ禍で疲弊した実体経済を反映せざるを得ない時が訪れる。それがおそらく米国金融経済体制の終焉となるのかも知れない。
世界の感染者数の推移
WHOのパンデミック宣言は3月11日である
(遅いと批判されるほどではない)

ウイルスと主要国の謎

2020-06-27 19:15:46 | 社会
今日の米国メディアCNNによると、昨日の米国の新型コロナウイルス新規感染者数は4万173人となり、2日続けて最多を更新し、ついに1日で4万人を超えた。30州以上で感染者が増加傾向にある。9つの州では経済再開の進行を見合わせることが決定された。昨日のロイター通信では、昨日、フランスでも「新規感染者数が5月30日以来初めて1500人を超えたほか、感染による死者数も過去3日間で最多となった。」と伝えている。1日当たりの新規感染の平均は過去7日間は498人であった。欧州での感染の再拡大についてはWHOも昨日警告を出している。ところで、今月22日に英国BBCが、イタリア のミラノとトリノで昨年12月18日に採取された下水から、新型コロナウイルスの遺伝子の痕跡が見つかったことを伝えていたが、昨日、スペインのバルセロナ大学がHPで、「Detecten el SARS-CoV-2 en aigües residuals recollides a Barcelona el 12 març de 2019」と題して、2019年3月12日にバルセロナ市で採取された下水のサンプルから、新型コロナウイルスが検出されたことを公表した。昨日のスペインプレスが報じている。研究調査はフランス資本のバルセロナ水道局Aigües de Barcelonaの協力の元行われ、2018年1月から2019年12月までの間の、冷凍保存されていた「下水」から発見された。同じことを報じている今日のロシア紙スプートニックでは、スペインウイルス学会のアルベルト・ボスク会長が、流行が始まる前に感染した人はインフルエンザと診断されていたが、そのインフルエンザの症状は新型コロナウイルスと共通していると述べたことを伝えている。これが事実だとすれば、武漢市発生説は大きく覆ることになる。また、米国で昨年秋から流行していたインフルエンザもやはり怪しくなる。英国のエクセター大学、グラスゴー大学、および、ポーランドのルカシビック電子工学研究所とクラクフ農業大学の共同研究である「Risk of SARS-CoV-2 infection from contaminated water systems」と言う論文によると、新型コロナウイルスは「水中で最大25日間、安定して生存し続ける」ことが明かになっている。欧州では、ウイルス感染の広がりを見るためにも下水の調査が有用であると言われていた。日本でも日本水環境学会が協力して、東京都や富山県などでの下水のウイルス検査を開始している。ただ、スペインのバルセロナ市のように、どこでもが古い下水を冷凍保存しているわけではないので、ウイルス感染の発生がいつなのか、やはり感染が落ち着いてからの遺伝子解析を待つしかないのかも知れない。感染はいずれにしても世界中で簡単には終息しない。このため、経済活動の停滞は長期化せざるを得ない。経済の基本は需要と供給であるが、主要国のGDPの多くが消費である。米国は7割が消費で占めている。日本は6割である。コロナ禍はその消費を直撃した。世界最大手の格付け機関であるS&Pグローバル・レーティングS&P Global Ratingsは昨日、新型コロナ感染症により、アジア太平洋地域経済で今年から来年にかけての2年間で、3兆ドル(約322兆円)が失われると発表している。政府と企業、家計が財務改善を目指して貯蓄を増やし債務返済と支出圧縮に取り組むことで不況に陥るとする。ただ、何をおいても重要なのは、やはり米国である。米国の巨大な消費が世界の経済を牽引して来た。欧州も中国も韓国も日本も、多くの国が米国の消費により恩恵を受けて来た。それが今や大きく減少している。米国内での感染拡大は、一層の消費の落ち込みとその長期化を意味し、日本の唐突な陸上イージスの中止も、米国から中国への接近を意味する日本の大きなシフトの表れと見る人もいる。米国経済の停滞が長期化すれば、米国内の抗議や暴動すらもがさらに増加するだろう。政府財政の赤字と中央銀行の異常な金融緩和はまさに泥沼に踏み込む。これほど時が経つのに、いまだに何故、インフルエンザのように全ての医療機関で新型コロナウイルスの検査が出来ないのか。いかなる病も早期発見、早期治療が大原則である。これを徹底する体制が出来れば、このウイルスとの共生が可能となる。治療薬も何種類かすでにある。検査制限が続く限り、決して感染は抑えられないし、むしろ個別の医療崩壊を増加させるだけである。果たして日本を含めた西側主要国は、本気で感染終息を考えていないのだろうか。何らかの形で、このコロナ禍を膨大な政府債務の解消に利用しようとしているのか。
夾竹桃

異常気象と見えない終息

2020-06-26 19:17:04 | 科学
ここのところ毎日気温が20度を切る日が続いているが、さすがに先日の雹には驚かされた。夜半に実際に降った雹を見た地元の方の話では、500円玉の大きさで、付近で路上駐車していた車は軒並み屋根に大きな窪みがたくさん出来ていたそうだ。地元の人にとってもこんな時期に大きな雹が降るのは初めてのことだそうだ。6月8日には、米国のユタ州など5つの州で雪が降り、アイダホ州では40cm以上もの雪が積もっている。5月24日には南半球のオーストラリアのいくつかの市で、ここ100年以上でこの時期としては最も低い気温を記録している。チャータータワー市は最高気温が11.5度Cと言う過去127年間で最も寒い5月の日となった。かと思えば、今月20日には、北極圏に位置するシベリア北東部、サハ共和国のベルホヤンスクで人の体温を超える気温38度の猛暑が記録されている。このベルホヤンスクでは以前、マイナス67.8度という北半球の最低気温記録が観測された極寒の地である。これまでの6月の平均気温は13.5度である。今年はベルホヤンスクだけでなく、シベリア全体が例年よりも7度も気温が高い。この日の記録は、北極圏の史上最高気温だそうだ。シベリア上空では、通常、狭い範囲を流れるジェット気流(偏西風)が、バリアのように北側の冷たい空気と南側の暖かい空気を分断しているが、偏西風が北へ向かって大きく蛇行したため、暖かい空気も一緒に運び込み、本来暖かい空気が流れ込まないはずの地域に異常気象を引き起こしたのだ。昨年の夏は、北半球の396か所で観測史上最高気温を記録したそうだが、今年の夏はさらにそれを上回る可能性が予想されている。こうした異常気温は、単に気温の変化だけでなく、異常な豪雨、台風などにも結びつくことが問題である。地球上で異常気温が発生している中で、ウイルスがさらに猛威を奮っている。米国、ブラジルが際立つが、中でも昨日の米国は感染者増加率が最高になっている。24時間に3万9907人増加し、総計が240万人に達した。ワシントン大学保健指標評価研究所は、24日、米国民のほぼ全員がマスクを着用しなければ米国内の感染死者数は今年10月1日までに17万9106人に達すると発表している。マスクは感染防御には役立たないが、感染者が他人に感染させないようにさせることで有効性がある。昨日の米国メディアCNNは、「マスクを拒む米国人 その歴史的背景とは」なる記事を載せている。「米国人がマスクの着用に抵抗を示す姿は、外国人の目には自分勝手としか見えないかもしれない。だがその背景には、「政府の権力」と「個人の自由」のせめぎ合いという建国当初からの歴史がある。」と言うのだ。米国人にとっては、マスク着用を義務付けるのは「自由の侵害」なのだと言う。シートベルト着用や禁煙、銃規制なども同じ背景があるのだそうだ。米国CDC疾病対策センターは、昨日、抗体検査に基づく推計によると、米国の新型コロナウイルス感染者数は2000万人を超えている可能性がある、と発表した。公式統計の10倍である。抗体検査では平均して10人に1人に抗体が確認された。多くの人が感染しても無症状だったか、症状が出ても軽症だった可能性があると言うことだ。24日の米国NewsWeekは、「Florida Researchers Say Coronavirus Becoming More Infectious in Mutant Form(フロリダの研究者たちは、コロナウイルスが変異株により感染力を強めていると言う)」と題する記事を載せている。現在、米国で猛威を振るうウイルスは感染力を強めた変異株が70%を占めていると言うものだ。「時間が経つにつれ、新型コロナウイルスは細胞により強く結合し、細胞内に入り込むまで離れなくなる能力を獲得した」「変異により、ウイルスの周りのスパイク(突起)タンパク質の安定性が高まり、スパイクタンパク質の数が増えた。スパイクタンパク質は、標的細胞にとりつくために欠かせない役目をするので、より安定したスパイクタンパク質を多く持つよう変異したウイルスは、当然ながらより簡単に標的細胞と結合し、細胞内に入り込む」「ウイルスに淘汰圧が働いた結果、この変異を持つタイプが多くなった」と言うのだ。24日のReuterは、「Chaotic U.S. virus tactics augur sickly economy(混沌とした米国のウイルス戦略は衰弱した経済を予兆する)」なる記事で、「5月の連邦破産法11条適用申請件数は前年同月からほぼ50%増加した。感染の波に繰り返し襲われればロックダウン再導入の可能性が高まり、米経済はさらに衰弱しかねない。」とある。カオス状態のウイルス対策は米国に限らず、日本も同じである。感染は米国同様に日本でもこれからさらに拡大を見せるだろう。
米国の感染者数推移ーさらに規模が拡大した第2波

結局は無策で通す日本

2020-06-25 19:16:09 | 社会
東京都は今月11日に、5月1日現在の人口が1400万人を超えたことを公表した。東京への一極集中が長い間問題とされて来たが、それが是正される気配は全くない。今朝5時前に千葉県沖でM6.2の地震が発生した。日本時間の2時40分には米国カリフォルニア州でもM6.0の地震が発生している。やはりFIRE RINGでつながっている。千葉県沖の今朝の地震は2011年の巨大地震の余震だとされている。千葉県にはフォッサマグナや中央構造線が近接している。1923年の関東大震災では房総半島で10mの津波も発生し、10万人以上の犠牲者を出した。東京大学地震研究所地震予知研究センター長の平田直教授は大地震は過去100年に5回発生しており、それは今後100年で5回発生する可能性があることを示していると言う。政府は首都直下地震が起きる確率を30年間で70%としているが、それもこの100年に5回の大地震が根拠である。いずれにしても、首都直下地震はいつ起きてもおかしくない。2013年12月に政府が公表したM7クラスの首都直下地震による被害予想では、死者2万3000人、経済被害95兆円である。死者の7割は火災によるものだ。同様にいつ発生してもおかしくないのが富士山の噴火である。昨年3月政府の公表したシミュレーションでは、1707年12月の15日間続いた「宝永噴火」と同規模の大噴火が発生した場合、90Km以上離れた新宿区付近では、13日目以降に1時間に最大1mmほど降り、最終的に1.3cmほど積もる。これにより首都圏では道路や鉄道、空港が麻痺し、雨が降った場合は停電が発生する可能性があると言う。送電施設に3mm以上の灰が積もり、さらに雨が降ると、ショートして広範囲に停電が発生する。2016年10月に発生した熊本県の阿蘇山の噴火では、熊本県と大分県の2万7000戸で停電が発生している。2mm以上の火山灰が積もると、浄水場や下水道も機能しなくなりライフラインが断たれてしまう。地震でも噴火でも問題は首都機能が麻痺することであり、経済や政治の中枢が直撃されるにもかかわらず、代替機能が何ら準備されていない。「警告」は発せられていても、結局は無視されてしまっている。これは東日本大震災時の福島第一原発と全く同じ構図である。昨日、WHOは新型コロナウイルスの感染者が急増しており、来週には累積で1000万人に達すると発表した。また、治療で酸素を必要とする患者のための医療用酸素濃縮器の供給が追いつかなくなっているとも伝えた。一昨日は米国のCDC米疾病対策センターのロバート・レッドフィールド所長も議会下院の公聴会で、新型コロナウイルスが「この国を屈服させた」。「たった1つの小さなウイルスのために」、米国は約7兆ドル(約746兆円)を支出しなくてはならなくなるだろうと述べた。米国では現在、全米の半分の州で新たな感染者が急増している。新型コロナウイルスに屈服させられているのは米国だけではない。IMF国際通貨基金は、日本時間の昨夜、2020年の世界経済は4.9%減となり、「類例ない危機」であるとし、2年間での損失額を12兆ドル(約1300兆円)と予測している。世界各国で経済活動が制限され、数億件規模の雇用が喪失し、欧州主要国の経済は10%以上縮小すると予想され、100年前の世界大恐慌(Great Depression)以降で最大の危機であると述べている。IMFは、新型コロナウイルス流行の先行きが不透明なことから、今回の予測と流行収束後の回復見通しには「広範な不確実性」が伴うと付け加えている。日本のコロナ対策は最初から何ら適切な対策が立てられておらず、東アジアの他の国同様に、幸運にも何ならかの原因で、感染者数や死者数が欧米よりも少なくなっているが、同じ東アジアでは人口100万人あたりの死者数は最悪である。根本的な対策を正面から捉えていない点では、地震や噴火の首都対策もコロナ対策も変わらない。それが結果的にいずれの場合も人命と経済の被害を一層膨らませることになる。
山紫陽花

中国は米国に見切りを付けたか?

2020-06-24 19:16:09 | 社会
経済ではどんな時代でも金利がその時の経済状態を反映して来た。実体経済が好調ならば金利は上昇し、悪化すれば低下した。景気がよければ、お金を借りてでも積極的に投資しようとするため、資金への需要が増えるため、貸す側は金利を上げることが出来る。逆に、景気が悪化すれば、資金を借りようとする人が減るため、貸す側は少しでも借り手を得ようとして、金利を下げる。日本の高度経済成長期は今よりずっと金利は高かった。郵貯銀行の通常貯金の金利が1%を割ったのは1990年代後半からである。以来現在まで限りなくゼロに近い金利が続いている。この金利の状態は見事に実質GDPの成長率とも相関している。一見、世の中は何も変化しておらず、何事も上手く行っているかのように見える。しかし、そのように見えること自体が我々の慣れのためである。非常にゆっくりしていて、殆どの人が気付かない環境変化や危機を「ゆでガエル」として説明されることが多い。カエルは、いきなり熱湯に入れられると驚いて逃げ出すが、常温の水に入れて徐々に水温を上げていくと逃げ出すタイミングを失い、最後には死んでしまうと言うものだ。経済における「ゆでガエル」状態は超低金利だけでなく、異常な金融緩和も同じである。いずれもが正常な経済ではあり得ないことだ。しかし、表面上何も変化がなく、見えないところで進んで来たそれらに誰も警戒せず、まさに「ゆでガエル」状態に陥っているのが現状である。中央銀行が印刷した通貨を債券や株式に投じることで、実体経済ではなく金融経済を支え続け、金融危機を重ねる度に通貨発行量を増やし、ついにこのコロナ禍に至って「制限」をなくしてしまった。無制限発行である。今月18日から中国上海で、中国人民銀行、中国銀保監会、中国証監会の共催による「第12回陸家嘴フォーラム」が開かれ、日本からも野村證券株式会社の永井浩二会長やみずほフィナンシャルグループの佐藤康博会長なども出席し、それぞれ発言している。19日には中国保険監督管理委員会の主席で、中国の中央銀行である人民銀行の副総裁でもある郭樹清Guo Shuqing氏が、ウイルス感染が世界で長引く可能性を指摘した上で、それへの経済対策にいくらかの余地を残すよう慎重になるべきであることを指摘した上で、「中国は我々の通常の金融および財政政策を非常に重視している。我々は市場に現金を注ぎ込むことも、財政赤字の貨幣化を採用することもない。負の金利も実施されない」と述べている。しかも、すでに「市場に現金を注ぎ込むこと」や「財政赤字の貨幣化」を行っている米国について「米連銀(FRB)は世界の中央銀行と呼ぶべき機関であるにもかかわらず、世界への悪影響を考えずに米経済に巨額資金を注入している。この行為は、ドルと米国に対する国際信用に大穴を開けてしまう可能性がとても高い」とまで言及している。まるで、この郭氏の言葉は、資本主義の国の者が共産主義国の経済政策を批判しているかのように見える。19日の人民網によれば、今年1-5月の中国の貿易総額ではASEANが1兆7千億元(円換算ではこの15倍)となり、中国の対外貿易総額に占める割合は14.7%で第1位である。次いでEUの13.9%、米国は9.8%も減少して11.1%となり、日本7.3%と続いている。昨年の順位はEU、ASEANの順であったが、今年に入りコロナ禍で、近い距離にあるASEANとの結び付きが一層加速している。米国はこれまでにイランやロシア、北朝鮮に対して経済制裁を行っており、現在は中国へ貿易戦争を仕掛けている。中国は今や経済政策を大きく転換しようとしているように見える。これまで人民元はドルに一定程度リンクさせて来たが、ドルへの不安が生まれて来た現在、ドルから離れ、いわゆる一帯一路を初め、ASEANなど、ユーラシア大陸の交易をさらに増強しようとしているのかも知れない。
アザミ

喜んでいられない「首位奪還」

2020-06-23 19:10:19 | 科学
昨日、半年ぶりに発表された世界のスーパーコンピューター 性能で、日本の理化学研究所と富士通が開発した「富岳」が計算速度や消費エネルギーなど6部門のうち4部門でトップとなり、2011年の「京」以来総合で9年ぶりに1位となったことが主要メディアで今日報じられている。「日本製として久々の首位奪還」など、スーパーコンピューターの性能として1位になったことだけが報じられている。世界のハイパフォーマンスコンピューティングの性能評価を行うための、ドイツのマンハイム大学、米国のテネシー大学、ローレンス・バークレイ米国立研究所による共同プロジェクト「TOP500」が立ち上げられ、1993年以降、毎年6月と11月に評価結果が公表されて来た。このプロジェクトでは、単に最高性能のスーパーコンピューターを決定しているだけではなく、各国のスーパーコンピューター保有台数や、スーパーコンピューターを使ったシステム構築企業のシェアなども同時に公表している。しかし、こちらは殆どのメディアは報じない。スーパーコンピューターのトップ10を見ると、2位・3位が米国のIBMとIBM / NVIDIA / Mellanox共同で、4位・5位が中国の中国国家並列計算機工程技術センターNRCPCと国防科技大学NUDTで、6位イタリアのDell EMC、7位米国Nvidia、8位米国Dell EMC、9位イタリアIBM、10位スイスCray/HPEとなっている。2011年6月に日本の「京」が1位となったが、翌年には米国が、さらにその翌年の2013年には中国の「天河2号」が2015年まで1位で、2016年には同じ中国の「神威太湖之光」が2017年まで1位で、2018年から2019年11月までが米国「サミット」が1位であった。富士山を意味する「富岳」は、2位の米国「サミット」の2.8倍の計算速度であり、高性能のスーパーコンピューターを開発した日本の技術は確かに優秀である。しかし、社会は一人抜きん出た存在があっても全体としてうまく機能するとは限らないのである。「TOP500」では、各国のスーパーコンピューターの保有台数も発表しており、中国はここ数年一貫して最多で今回は226台でトップであり、2位の米国114台を大きく引き離し、3位の日本29台など比較にならない開きである。中国は世界のスーパーコンピューターの45.2%を保有している。これをシステム構築企業で見ても、1位から3位までが中国企業である。1位聯想集団Lenovoの180システム、2位中科曙光Sugonの68システム、3位浪潮集団Inspurの64システムで、10位内では日本は富士通が7位で13システムである。これをシェアで見ると、これら3企業だけで中国は世界のシステムの62.4%を占めている。富士通のシェアは2.6%である。スーパーコンピューターが注目されるのは、これによって、産業・技術・科学研究・軍事などあらゆる分野での複雑な計算やシュミレーションが容易に可能となり、優位性が増すためである。通信の5Gと並んで主要国が凌ぎを削るのも当然なのだ。何事も、特に技術・研究ではトップだけでなく裾野がいかに広いかが重要である。そしてそれは1個人や1組織ではどうしようもなく、国が政策として打ち出す他はない。日本の現在の問題の一つはまさにこれである。技術や研究の予算を年を追って削って来た。現代はいかに研究者個人が優秀でも、その研究者が使える武器であるコンピューター性能が低ければ、時間勝負の研究には打ち勝てない。富士通はロイターのインタビューで「ソサエティー5.0の実現を担うスーパーコンピューターとして広く活用されることを期待する」とコメントしている。ソサエティー5.0とは、内閣府主導の5年ごとに改定される科学技術基本法の第5期(2016年度から2020年度の範囲)の科学技術政策を指し、内閣府の説明では、「IoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータ等の新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出し、一人一人のニーズに合わせる形で社会的課題を解決する新たな社会を「Society 5.0(ソサエテイ 5.0)」」とする。日本の政府も題目だけは官僚が作成するため立派であるが、その内実は極めてお粗末である。感染者の全国集計、個人や中小企業への給付金処理、接触アプリなどスムーズなIT活用とは程遠い。IT関連の出遅れは、ASEANにすら後塵を拝していることがコロナ禍で明かになって来た。

拡大が続く感染が世界経済を破壊する

2020-06-22 19:18:08 | 社会
日本は一貫して検査制限をしているため、ほとんど無症状・軽症の人たちを見逃してしまっており、そのため感染がどこまで広がっているのか誰も把握出来ていない。検査を少し多くすれば、新たな陽性者は増え、検査を少なくすれば減る、毎日がこれの繰り返しでしかない。一見治って来ているような最近の感染者数ではあっても、その数は何も意味していない。検査数が少ないため意味付けが出来ない。国内のこんな曖昧な状況とは関係なく、世界では毎日10万人を超える数で新たな感染者が増え続けている。未だにそのピークすら見えていない。感染者は900万人を超え、死者は47万人を超えた。米国が235万人を超え、次いでブラジルが108万人を超えて増え続け、両国共に増加の一途を辿っている。世界でも増え続けている以上、日本の国際空港でもやはり来日者、帰国者で感染者が毎日のように見つかっている。世界が、そして特に米国が感染拡大を抑え込まない限り、日本での感染爆発の可能性はなくならない。13日に明かになった中国北京での新たな感染では、約1週間で20万人を超える検査が行われ、230人を超える感染者が見つかったが、中国疾病対策予防センターによると、今回の北京で見られたウイルス は、これまで中国国内で見つかったウイルスとは異なる株であることが分かったそうだ。いくつかの研究で明かになっているように、この新型コロナウイルスは変異スピードが早く、およそ11~14日で変異している。そして、米国の研究では、現在、世界で見られるウイルスの70%は、当初武漢で見られたウイルスよりも感染力が10倍も強まっていると言う。あくまでも感染力であり、重症化率ではないが。この世界的なウイルス感染の拡大、特に米国での感染拡大は、世界経済に深刻な影響を与える。IMFによる2018年のGDPで見ると、世界一の米国は日本の4倍の規模であり、第二位の中国は2.7倍の規模であり、日本経済はいずれの国の経済状況にも左右される。新型コロナウイルス感染の前から、米国は中国に貿易戦争を仕掛けており、そこへ新型コロナ感染が加わり、世界の生産とサービスが止まってしまった。現在の工業製品の多くは、いくつもの部品生産が個別の企業で行われ、互いに連携して初めて製品が出来上がる構造になっている。いわゆるサプライチェーンと呼ばれるものだ。貿易戦争もウイルスも、どちらもがこの構造を破壊している。生産とサービスで構成される実体経済は、極めて深刻であり、本来その指標となるべき株価が、今では指標の役割をしなくなっているため、日本のウイルス感染の実態を表すものがないのと同じで、とても危うい状態になっている。株式が実体経済の指標としての役割を果たさなくなったのは、特にリーマン・ショック後に顕著になった。リーマン・ショック前の2007年8月の米国中央銀行FRBの資産は8700億ドルでしかなかった。それがリーマン・ショック後の2015年の初めには4.5兆ドルにまで拡大した。FRBは以後、「正常化」のために少しずつ資産を減らし、2019年8月には資産は3.8兆ドルとなっていた。しかし、翌月の株価下落で、逆戻りし、資産を増加させて来た。今年6月には、ついに7兆ドルを超えるまでになってしまった。ゼロ金利と債券買い入れによる通貨発行により株価が支えられている。実体経済の悪化とは確実に乖離してしまっている。これまでの日本や現在の米国のような中央銀行の大量の通貨発行があれば、インフレがすぐにも起きそうであるが、大量に発行された通貨は、両国ともに実体経済へは流れず、金融経済の中に止まっているために、現在までのところはインフレにはなっていない。今月16日のCNNは米国著名投資会社グッゲンハイム・パートナーズGuggenheim Partnersのスコット・マイナードScott Minerd氏へのインタビューを載せた「Star investor: Markets may crash so badly the Fed has to start buying stocks(スター投資家:市場が暴落する可能性が非常に高いため、FRBは株式の購入を開始する必要がある)」なる記事を公表している。マイナード氏は、現在の米国の株価水準は、利益の30倍もの高さであり、バブルであることを指摘した上で、1990年代終わりのインターネット・バブルと同じであり、来月あたりにかけて底に向かうと予想されるが、中央銀行FRBがそれを阻止するために株式の買入れを行う可能性があるとする。中央銀行による株式の購入は、すでに日本銀行が行っており、ゼロ金利で日本に追従した米国中央銀行は、株式購入でも日本を後追いするのかも知れない。資本主義を代表する米国までも、資本主義を象徴する株式に中央銀行の手が伸びて行くことになるのか。
世界の感染拡大推移

米国での感染拡大推移

ブラジルでの感染拡大推移

「ドル急落の足音」

2020-06-20 19:19:56 | 経済
アフリカ大陸の最南端にある南アフリカ共和国の北東に隣接する面積39万km2、人口1400万人の国がジンバブエ共和国である。国土は約38万km2の日本より少し広い。アフリカの他の多くの国と同じく、欧州の白人支配からの独立の長い歴史があり、共和国が成立したのは1980年のことである。この独立以来2017年の軍によるクーデターまでロバート・ムガベが首相と大統領の座にあり、長期政権下で白人から強制的に農地や企業株式を収用した。ジンバブエの通貨はジンバブエドルであり、経済政策のためにジンバブエドルを大量発行し、一方で、白人からの農地収用で農業生産が落ち込み、株式の強制譲渡で外資系企業が逃げ出し、企業生産までが落ち込んでしまった。物がなく、通貨だけが大量にあれば、ハイパーインフレは避けられない。ジンバブエは例え自国通貨の発行であっても、不用意な通貨発行を行えば悲惨な状態を招くと言う教訓である。しかし、この貴重な教訓もコロナ禍にある主要国には無視されている。特に米国は巨大な対外債務と同じく巨大な政府債務を抱えながら、信じられないほどの大量通貨発行を行っている。3月23日の債務は23.5兆であったが、3ヶ月後の現在26兆ドルである。今年の末には28兆ドルになることが予測されている。これまで世界最大の対外債務と政府債務を抱えながら、経済を維持出来たのは、通貨ドルが基軸通貨であったからである。基軸通貨と言う「法外な特権」で,経常収支の赤字を続け,世界中にドルを垂れ流し,今や世界最大の「借金大国」となっても,これまでは破綻せずに首が回って来た。6月10日のBloomberg日本語版は、「【コラム】基軸通貨ドル「法外な特権」終了へ、迫る急落の足音-ローチ」として、元投資銀行モルガン・ スタンレー アジアの会長で、現在の米国イェール大学のスティーブン・ローチ Stephen S Roach教授の記事を載せている。「世界の基軸通貨としてドルが「法外な特権」を享受する時代は終わりを迎えつつある。これは1960年代に米国への不満を述べたジスカールデスタン仏財務相(当時)の言葉だ。あれから約60年がたち、世界は米国の特権に深刻な疑問を抱くようになった。」、「国内貯蓄がない中で投資と成長を続けるため、米国は世界の基軸通貨としてのドルの役割を大いに活用し、外国の貯蓄に深く依存してきた。」、「新型コロナ流行とそれが引き起こした経済危機で、貯蓄と経常収支の緊張は限界に達しつつある。爆発的に膨らむ財政赤字がそれを引き起こしている。」として、最後に「これまでのところ、昔ながらの有事のドル買いといった逃避需要でドルは堅調だ。しかし貯蓄率の急低下で経常赤字は大幅に拡大し、2005年に記録した過去最悪のGDP比6.3%を大きく上回るとみられる。基軸通貨であろうがなかろうが、このような状況でドルは無傷ではいられない。問題は、何がドル急落の引き金を引くのかということだ。」と結んでいる。6月15日には、米国メディアCNBCも「A dollar crash is virtually inevitable, Asia expert Stephen Roach warns(ドルの暴落は事実上避けられない、アジアの専門家スティーブンローチは警告)」として、同教授の指摘を報じている。そこでは「His forecast calls for a 35% drop against other major currencies.」として、具体的ない予想が書かれている。ドルは主要通貨に対して35%下落すると予想されている。教授によれば、「通貨とは、弱い国内貯蓄を背景とした経常収支の過度な悪化のクッションとなるように出来ている。だから、ドルの下落は不可避だと考えている。」と言うのだ。そして、ドル安環境が生まれれば、「(諸外国の)米財政赤字や米経済の貯蓄不足に資金を供給しようという意欲が疑問にさらされてくる」と述べている。現在半分を買っている諸外国が米国債を買おうとしなくなる時がやって来るのだ。単にドル安になることよりも、貯蓄不足の米国にお金を貸す魅力が失われることが重要な問題である。しかもゼロ金利は長期化するのだから。

赤ー連邦債務、緑ー米国国内生産GDP、黄ー中央銀行資産(債券などを買い入れた額)、白ー中央銀行の政策金利


災害も加わるかも知れない

2020-06-19 19:14:41 | 社会
今週月曜の夜半に屋根を叩くような雨で一瞬目が覚めた。翌日、息子の話だと雷も鳴ったそうだが、それには気付かなかった。すぐにまた眠りに落ちたからだ。しかし、今日になって、職場の方から、それが雨ではなくヒョウだと聞いて驚かされた。しかも五百円玉の大きさであったそうだ。路上駐車の車はみんな屋根に窪みがたくさん出来たと言う。降った夜半には10cmも積もっていたそうだ。その方の住んでいる位置が特に酷かったようだ。いずれにしても、この時期にそんな大きなヒョウが降るのは異例である。今日は各地で豪雨が見られたようで、岩手県内でも一部の地域で極端な雨が降ったようだ。今週のそんな異常気象があると、14日未明にニュージランドで発生したM7.8の地震がとても気になる。その後にはM6.3の余震まで発生しており、死者も出ている。2011年3月11日の巨大地震は、太平洋プレートが北米プレートの下に潜り込むことで、大きな歪みが発生し、それが500Kmに渡って解消されたものとして発生した。しかし、その500Kmの南北の両端にあたる地域ではまだその歪みが残っており、当時から研究者は、その残された部分の巨大地震の可能性を指摘していた。昨年あたりから、釜石でも2011年の震災前にあった小地震が頻発するようになっている。しかも、東日本大震災の前の2011年2月22日にはニュージランドでM6.1の地震が発生していた。その前年の2010年9月4日にもやはりニュージランドでM7.0の地震が発生している。ニュージランドはちょうど太平洋プレートとオーストラリアプレートの境界のある位置であり、日本と同じく太平洋プレートが、そのオーストラリアプレートの下に沈み込んでおり、太平洋プレートを通していわゆるFire Ringとして、ニュージランドの地震は日本の地震と無縁ではない。昨年末の12月29日、日刊ゲンダイDIGITALは「太平洋プレート大暴れ 近づく3つの巨大地震を専門家が懸念」と言う記事を出した。3つの巨大地震が考えられる地域は、東日本大震災時の残りの歪み地域、伊豆半島の東西にそれぞれある相模トラフ、南海トラフである。いずれもいつ発生してもおかしくない時期になっている。同じくいつ発生してもおかしくないのが富士山の噴火である。琉球大学の木村政昭名誉教授は2019年までに発生すると予測していた。予測が外れたことは問題ではなく、むしろ発生しなかった分、エネルギーは一層溜まっている。政府では北海道の南東から千島列島にかけての太平洋の断層帯もいつ巨大地震が起きてもおかしくないと見ている。政府は、今後30年以内にM8から9クラスの南海地震が、70%から80%の確率で発生し、最大32万人の死者が出ると想定しているが、立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学教授は、南海トラフに加え、その西南に続くプレート境界をも合わせた「スーパー南海地震」の可能性を指摘している。この地震では死者は津波だけで47万人にもなると予想されている。日本の科学的合理性を欠いたコロナ対策では、いつまでも感染者が絶えることはないだろう。無症状・軽症者が全く野放しである。突然、思わぬところからクラスターが発生する事態が続くことになる。こうした中で、巨大地震や富士山の大噴火のようなことが発生すれば、政府はさらに財源を確保出来ない支出を拡大するしか手立てはない。つまり日本銀行による紙幣の一層の大量印刷である。現在のコロナ禍で、すでに食糧の輸入が制限され、価格が上昇し始めている。日本銀行は国債を買い取ることで、無理やり金利を抑え込んでいるが、物価が上昇すると、金利を上げざるを得ない。そうなれば、まさに日本銀行は窮地に追い込まれることになる。災害が加われば、物価はさらに上昇するのだ。
浜茄子