日本の新型コロナウイルス対策はオリンピックありきで始まったため、最初から医療原則を外れて始まった。専門家会議も名ばかりで、全く医療的には意味をなさない非科学的な存在である。それ故に、「議事録」すら存在しないと言う呆れるばかりの体制である。まあ、議事録を録るまでもない議論しかなされていないのだろうが。自粛要請や自粛解除もいずれも科学的根拠に基づくものではなく、感染もいつでも増加し得る状態である。初感染者が出て半年にもなろうとしている現在でも、日本の感染の拡大状況がどうなっているのか何も掴めていない。もはやPCR検査で現在の感染者を見出すより、中国武漢市が1100万人全員に抗体検査をやったように、日本も国民全員に抗体検査をやるしかないのかも知れない。科学的根拠のないこれまでのような「対策」ばかりを続けていれば、感染は延々と続いて行くことになる。そして、何よりも早く、早期発見・早期治療の大原則に立ち戻ることである。世界の感染者はついに600万人を超えた。死者は366000人を超えた。相変わらず米国がズバ抜けて多く、感染者179万人、死者10万人である。感染者ではブラジル46万8000人、ロシア38 万7000人、スペイン28万5000人、英国27万1000人、イタリア23万2000人、フランス18万6000人、ドイツ18万3000人、インド17万3000人、トルコ16万2000人などと続いている。現在、人口で世界一は中国の14億3378万人で、次いでインドの13億6641万人であるが、3位の米国3億2906万人とは大きな開きがある。米国の4倍もの人口を抱える中国やインドが経済発展するためには、やはり貧困の問題が大きい。中国はソ連の崩壊に学んで、共産主義に資本主義を国のコントロール下での導入に踏み切った。しかし、インドは古い身分制度を残したままの資本主義のため、多くの貧しい層を抱えたままで、解決策が見えていない。中国は地方の貧しさの解決法として、ITの活用を推進しており、今回のコロナ禍がむしろそれに弾みを付けている。今月3日のデジタル朝日は、「「飢え死にする」 コロナで解雇、150キロ歩いて帰郷」と言う記事を載せている。「新型コロナウイルスの大流行により、世界中で4億人以上が貧困状態に陥り、貧困問題は10年前に逆戻りする恐れがある」と言う国連大学の研究所の報告書を紹介している。事態の深刻さは「まるで貧困の津波だ」と言う。インドではコロナ禍で3月25日に全土封鎖がはじまり、解雇された出稼ぎの地方の貧しい人たちが、一斉に、生きるために地方の我が家を目指して何キロもの道を歩いて帰郷した。中には途中でなくなった12歳の少女もいたようだ。また、歩けなくなった父親を迎えに1000キロ離れた地方から15歳の娘がやって来て、借金で自転車を買い、父親を乗せて、その1000キロの道を再び故郷に向けて出発した。無事に故郷にたどり着いたようで、米国大統領の長女も「この忍耐と愛情による美しい偉業はインド国民の心をつかんだ」とツイートしたと言う。コロナ禍の中で、中国では動画配信の「YouTube(ユーチューブ)」とEC(電子商取引)の「アマゾン・ドット・コム」を足して2で割ったようなライブコマースが地方の農村部と都市の商取引を仲介し、コロナ自粛の間に1兆5000億円を大きく超える市場規模に発展している。アリババグループのネットショップ「天猫(Tモール)」も今年の参加店舗は昨年の2倍、販売商品の量は、60%増となった。4月16日には米国の電気自動車(EV)の「テスラ」までが出店している。中国ではコロナ禍でも日本や欧米のような個人や企業への補償はない。それだけに事業者はむしろ危機の時ほど前向きの姿勢になると言う。経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、2018年の中国のEC市場は、160兆円に達した。米国の3倍、日本の14倍の規模である。自粛期間にさらに大きく業績を伸ばしている。中国のインターネット人口は9億人で、日欧米の合計に匹敵する。それが今年度中に11億人に達すると予測されている。アリババグループのニューヨーク証券取引市場での株式時価総額は5826億ドル(約63兆円)で、「トヨタ自動車」の3倍で、「フェイスブック」に次ぐ世界7位(4月末時点)である。今年3月期決算で1兆3646億円の巨額赤字を計上した孫正義氏のソフトバンクグループが信用不安を起こさないのは、アリババ株を29%保有しているからだ。米調査会社「センサー・タワー」によると、「北京字節跳動科技(バイトダンス)」が運営する動画アプリ「抖音(ティックトック)」の2月の世界ダウンロード数は、前年同月のほぼ2倍の1億1300万件に達し、フェイスブックの「ワッツアップメッセンジャー」「インスタグラム」といった米国勢を抑えて首位に立った。インドやブラジルでの伸びが顕著だと言う。騰訊控股(テンセント・ホールディングス)も、このコロナ禍中に1~3月期決算は売上高が前年同期比26%増の1080億7000万元(約1兆6300億円)、純利益は同6%増の289億元(約4360億円)に達している。特にスマホゲームの「王者栄耀(オナー・オブ・キングス)」は世界中でファンを獲得し、2億ダウンロードを突破したと言う。現在、中国では、駅や空港、タクシーでは、アリババグループの電子決済サービス、アリペイが導入したコロナ対策アプリ「アリペイ健康コード」の入ったスマホを提示しなければならない。どこへ行き、誰と一緒にいて、何にお金を使ったかが、リアルタイムで把握され、感染の可能性がある人物が近づくと、警告が鳴る。「完璧な監視」が行われている。しかし、アリババは銀行口座を開けず、クレジットカードを持てない低所得層でも、信用のスコアが一定以上ならローンのサービスを提供する。このため、信用を獲得するため多くの人が喜んで自分のデータを差し出すと言う。新型コロナの深刻な局面で、中国では「データを差し出すことが身の安全につながる」ことを学習したのだと言う。
牡丹