釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

一般メディアが伝えないこと

2020-05-30 19:15:22 | 社会
日本の新型コロナウイルス対策はオリンピックありきで始まったため、最初から医療原則を外れて始まった。専門家会議も名ばかりで、全く医療的には意味をなさない非科学的な存在である。それ故に、「議事録」すら存在しないと言う呆れるばかりの体制である。まあ、議事録を録るまでもない議論しかなされていないのだろうが。自粛要請や自粛解除もいずれも科学的根拠に基づくものではなく、感染もいつでも増加し得る状態である。初感染者が出て半年にもなろうとしている現在でも、日本の感染の拡大状況がどうなっているのか何も掴めていない。もはやPCR検査で現在の感染者を見出すより、中国武漢市が1100万人全員に抗体検査をやったように、日本も国民全員に抗体検査をやるしかないのかも知れない。科学的根拠のないこれまでのような「対策」ばかりを続けていれば、感染は延々と続いて行くことになる。そして、何よりも早く、早期発見・早期治療の大原則に立ち戻ることである。世界の感染者はついに600万人を超えた。死者は366000人を超えた。相変わらず米国がズバ抜けて多く、感染者179万人、死者10万人である。感染者ではブラジル46万8000人、ロシア38 万7000人、スペイン28万5000人、英国27万1000人、イタリア23万2000人、フランス18万6000人、ドイツ18万3000人、インド17万3000人、トルコ16万2000人などと続いている。現在、人口で世界一は中国の14億3378万人で、次いでインドの13億6641万人であるが、3位の米国3億2906万人とは大きな開きがある。米国の4倍もの人口を抱える中国やインドが経済発展するためには、やはり貧困の問題が大きい。中国はソ連の崩壊に学んで、共産主義に資本主義を国のコントロール下での導入に踏み切った。しかし、インドは古い身分制度を残したままの資本主義のため、多くの貧しい層を抱えたままで、解決策が見えていない。中国は地方の貧しさの解決法として、ITの活用を推進しており、今回のコロナ禍がむしろそれに弾みを付けている。今月3日のデジタル朝日は、「「飢え死にする」 コロナで解雇、150キロ歩いて帰郷」と言う記事を載せている。「新型コロナウイルスの大流行により、世界中で4億人以上が貧困状態に陥り、貧困問題は10年前に逆戻りする恐れがある」と言う国連大学の研究所の報告書を紹介している。事態の深刻さは「まるで貧困の津波だ」と言う。インドではコロナ禍で3月25日に全土封鎖がはじまり、解雇された出稼ぎの地方の貧しい人たちが、一斉に、生きるために地方の我が家を目指して何キロもの道を歩いて帰郷した。中には途中でなくなった12歳の少女もいたようだ。また、歩けなくなった父親を迎えに1000キロ離れた地方から15歳の娘がやって来て、借金で自転車を買い、父親を乗せて、その1000キロの道を再び故郷に向けて出発した。無事に故郷にたどり着いたようで、米国大統領の長女も「この忍耐と愛情による美しい偉業はインド国民の心をつかんだ」とツイートしたと言う。コロナ禍の中で、中国では動画配信の「YouTube(ユーチューブ)」とEC(電子商取引)の「アマゾン・ドット・コム」を足して2で割ったようなライブコマースが地方の農村部と都市の商取引を仲介し、コロナ自粛の間に1兆5000億円を大きく超える市場規模に発展している。アリババグループのネットショップ「天猫(Tモール)」も今年の参加店舗は昨年の2倍、販売商品の量は、60%増となった。4月16日には米国の電気自動車(EV)の「テスラ」までが出店している。中国ではコロナ禍でも日本や欧米のような個人や企業への補償はない。それだけに事業者はむしろ危機の時ほど前向きの姿勢になると言う。経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、2018年の中国のEC市場は、160兆円に達した。米国の3倍、日本の14倍の規模である。自粛期間にさらに大きく業績を伸ばしている。中国のインターネット人口は9億人で、日欧米の合計に匹敵する。それが今年度中に11億人に達すると予測されている。アリババグループのニューヨーク証券取引市場での株式時価総額は5826億ドル(約63兆円)で、「トヨタ自動車」の3倍で、「フェイスブック」に次ぐ世界7位(4月末時点)である。今年3月期決算で1兆3646億円の巨額赤字を計上した孫正義氏のソフトバンクグループが信用不安を起こさないのは、アリババ株を29%保有しているからだ。米調査会社「センサー・タワー」によると、「北京字節跳動科技(バイトダンス)」が運営する動画アプリ「抖音(ティックトック)」の2月の世界ダウンロード数は、前年同月のほぼ2倍の1億1300万件に達し、フェイスブックの「ワッツアップメッセンジャー」「インスタグラム」といった米国勢を抑えて首位に立った。インドやブラジルでの伸びが顕著だと言う。騰訊控股(テンセント・ホールディングス)も、このコロナ禍中に1~3月期決算は売上高が前年同期比26%増の1080億7000万元(約1兆6300億円)、純利益は同6%増の289億元(約4360億円)に達している。特にスマホゲームの「王者栄耀(オナー・オブ・キングス)」は世界中でファンを獲得し、2億ダウンロードを突破したと言う。現在、中国では、駅や空港、タクシーでは、アリババグループの電子決済サービス、アリペイが導入したコロナ対策アプリ「アリペイ健康コード」の入ったスマホを提示しなければならない。どこへ行き、誰と一緒にいて、何にお金を使ったかが、リアルタイムで把握され、感染の可能性がある人物が近づくと、警告が鳴る。「完璧な監視」が行われている。しかし、アリババは銀行口座を開けず、クレジットカードを持てない低所得層でも、信用のスコアが一定以上ならローンのサービスを提供する。このため、信用を獲得するため多くの人が喜んで自分のデータを差し出すと言う。新型コロナの深刻な局面で、中国では「データを差し出すことが身の安全につながる」ことを学習したのだと言う。
牡丹

国家と選挙のための中国叩き

2020-05-29 19:18:38 | 社会
米国の現大統領は、2016年に「忘れられた人々」と称されていた中西部の白人ブルーカラーの予想以上の支持を得て選挙に勝利した。そのため、大統領となった後は、これら支持者のための政策を展開させることになった。それが2018年から開始された中国に対する貿易戦争である。この「戦争」には二つの意味があった。一つは選挙時の支持者のための製造業の復活のためであった。もう一つは、政党を超えた米国覇権の維持である。米国は決して自分と並び立つ脅威となる相手を容認しない。日本は高度経済成長を経て、瞬く間に米国と肩を並べ、1970年代からは自動車摩擦が繰り返され、1981年には「ジャパン・バッシング」が高じて、トヨタ・カローラが米国労働者によりハンマーで打ち壊される抗議行動まで登場した。米国は脅威となった相手をそのまま受け入れることはない。本格的な日本潰しが画策された。1985年のプラザ合意である。この時のドル切り下げによる経済打撃が大きかったために、経済回復させるために日本銀行は、後のバブルの原因となる低金利を導入せざるを得なくなり、バブル崩壊後は失われた30年で、瞬間的にでも達したGDP世界ナンバー1の座から現在の3に転落した。今年は11月に大統領・議会の選挙の年である。何もなければ、現職の大統領に有利であったが、突然の新型コロナウイルスの発生である。しかも、大統領は4月後半までは、その深刻さに気付かず、対策に遅れを生じたために、現在も世界最大の感染者数と死者数を出している。経済の落ち込みも1929年からの世界大恐慌を上回る規模である。何としても国民からの支持を維持するためには、共和党・民主党関係なく支持の得られる中国叩きが最も容易である。中国への様々な攻撃は選挙が終わるまで今後も継続されて行くだろう。しかし、歴史的には、国家間の対立が経済的に自国を豊かにした例はない。良くも悪くもむしろ逆である。コロナ禍がもたらしている経済的打撃はこれまで米国経済が経験した範囲を遥かに超える。それだけにウイルス対策のための追加予算も民主・共和揃って賛成した巨大な追加予算となり、対GDPでの債務額はついに第二次大戦時を超える規模となった。死者数で見ても、第二次大戦の291557人は別とすれば、それに次ぐベトナム戦争の58220人を遥かに上回っている。経済活動の停止は、企業や個人の収入を停止させた。このため、家計の暮らしを支えるために、現金給付が実施された。これはまさしく民主党の予備選挙でアンドリュー・ヤン氏が主張していたユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)である。また、使途を賃金の支払いなどに限定した融資に政府保証を提供し、雇用の維持を条件に融資の返済を免除する給与保護プログラム(PPP)などは、米国経済の根本である市場原理と矛盾するものである。世界大恐慌時、民主党のフランクリン・ルーズベルトは大きな政府を掲げてニューディール・政策を打ち出した。共和党は本来、小さな政府を目指して来た。しかし、現大統領はどこかの国と同じく毎年予算を膨らませ、このコロナ禍では圧倒的な追加予算規模となっている。そのために発行された借金である国債3兆ドルがすでに中央銀行FRBによって買われている。もはや米国は民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏らが主張していたMMT現代貨幣理論そのものである。自国通貨での借金はいくらでも可能だと言うのだ。米国はすでにコロナ禍以前から中央銀行によるバブルが形成され、その崩壊を目前にしていた。コロナ禍は崩壊の衝撃を倍化させる。数年前から米国の凋落を予想していた世界三大投資家の一人、ジム・ロジャーズ氏は、日本人投資家のインタンビューで、今回の危機からいち早く立ち直るのは中国だと述べた上で、「中国は何年もの間、7%~10%を超える高度成長を続けてきた。こうした社会では、人の質ははものすごく強くなるものだ。実際、私が初めて中国を訪れた頃に比べて、今の中国は別の国に見えるほど、人材のレベルは上がっている。豊かになったことで子供の教育にも投資するし、企業も研究や開発に多額のお金を投じている。いま世界でもっとも研究者・技術者を輩出している国は中国だ。アメリカではない。この事実が重要だ。中国はますます豊かになる。多くの企業もまだまだ拡大する。(『民主主義国家なのか』などという人がいるが)、国の体制、政治制度は関係ない」と述べている。同氏は米国イェール大学卒業後、英国オックスフォード大学で歴史の修士号を取得した米国・シンガポール二重国籍の世界的な投資家で、歴史をとても重視している。
紫蘭

とても複雑なウイルス

2020-05-28 19:17:06 | 科学
27日の朝日新聞は、26日に日本感染症学会ホームページで藤田医科大学が発表した、全国の患者2158人にアビガン(一般名ファビピラビル)使った観察研究の結果を伝えている。軽症者の約9割が回復しているが、元々軽症者の8割がそのまま回復することと、アビガンを使わない患者の治療結果ないため、有効性を比較出来ないのだと言う。しかし、データのそろった1282人の分析では、14日目に症状が改善した割合は、軽症で88%、中等症が85%、重症が60%となっている。軽症とは「酸素吸入が不要」な状態で、中等症とは「酸素吸入が必要」な状態、重症とは「人工呼吸器などが必要」な状態を言うそうだ。そもそもアビガンは遅くとも発症から6日以内に使わなければ効果を発揮出来ない。ウイルスの増殖を抑える薬である。すでにウイルスが増殖をしている中等症や重症では効果を発揮出来ない。にもかかわらず、中等症で85%、重症で60%が回復するのであれば、むしろ素晴らしいとさえ言える。以前にも書いたように、このアビガンを日本感染症学会は、呼吸不全が現れることを使用条件としていた。こんな条件を付けると言うことは、感染症学会がアビガンの作用を全く無視していたと言うことに他ならない。厚生労働省に批判されて初めて訂正している。日本の今回の専門家集団は、ともかくこれまでの医学的常識を尽く無視している。早期発見、早期治療こそが全ての病の大原則である。未だに検査制限に対して口を閉ざし、とんでもない治療指針を設定する。米国で製造販売するレムデシビルを、米国自体でまだ治験結果が出されていないにもかかわらず、早々と国が認可したことも黙認している。それでいて、一部の「専門家」はアビガンはまだ治験が終わっていない、とアビガンに対して否定的にコメントする。今の日本はダブル・スタンダードの得意な国であるが、ことは人命に関わるのだ。今回の新型コロナウイルスは、想像以上に病気が複雑なようだ。23日、英国BBCは「Coronavirus: 'Baffling' observations from the front line」なる記事で、集中治療室で新型コロナウイルス患者の治療に忙殺されている医師たちの苦闘を伝えている。重症の診る患者がみんな状態が異なり、初めて遭遇する状態ばかりだと言う。治療の基準が全くなく、状態も一人一人が異なると言う。「感染者の数が増えるに伴い、イギリス中の医師たちは、中国の同僚たちによる現場の報告を読んでいた。次に、イタリアの同僚たちの報告を。さらには、学術誌やソーシャルメディアで。このウイルスによる感染症がいかに重篤か。」「冬が春に変わるころにイギリスに押し寄せたものは、どれだけ経験豊富だったとしても、集中治療室(ICU)の専門医を驚かせた。」「重症化して危篤になる大勢の患者にとって、COVID-19は恐ろしく複雑な病気だ。」。中部バーミンガムの複数の病院で集中治療にあたるロン・ダニエルス医師は「現代医学で前例がないほどの、大量の症例数だ」、「それと同時に実に特徴的な病気で、これまで経験してきた病気の患者とはまったく違う症状が出る」。「重症化する患者の体内でこのウイルスは、激しい炎症を起こし、たくさんの血栓を作り、複数の臓器を攻撃し、生命を脅かす症状のカスケード(症状の連鎖)を全身で引き起こす。」とある。ロンドンの主要病院で集中治療に当たるベヴァリー・ハント医師(血栓専門)は、「医者として、本当に恐ろしいと思うことがある」「全身で一気に深刻な変化が大発生する、本当にひどい重症の患者さんが、あまりに大勢いるので」、「どういう病気なのかもっとちゃんと理解しようと、誰もが大変な思いをしている。いったい何が起きているのか理解するには、何としてももっと研究を進めなくては」。ロンドン北部のウィティントン病院で集中治療にあたるヒュー・モンゴメリー教授は「血中の酸素濃度が極端に低くなっていても、自覚症状としては特に具合は悪くないという患者がいる。どうしてそうなるのか、まだよく分かっていない」と言う。「酸素不足と血管の損傷が、明らかに関係している。しかし、ウイルスが複数の臓器を直接攻撃しているという証拠が積みあがりつつある。しかも、COVID-19と特に多く関係する基礎疾患が、ぜんそくなど呼吸器系の病気ではないことも、特に注目されている。むしろ、COVID-19に結びつく基礎疾患は、循環器系のものが多い。静脈や動脈に影響する、高血圧や糖尿病や心臓病だ。性別や肥満度、そして高齢かどうかも影響する。」日本のメディアではこうした感染治療の現場の実態を伝えることはない。いかに世界と比較しても日本の検査や治療薬の体制が異常であるか、主要メディアは一切触れない。
石楠花

ウイルスをめぐる昨年の米国の

2020-05-27 19:16:52 | 社会
2019年8月5日、米紙The New York Timesは、「Deadly Germ Research Is Shut Down at Army Lab Over Safety Concerns(致命的な病原菌研究は安全性の懸念のために陸軍研究所で閉鎖された)」と題する記事を配信した。記事によると、米国疾病予防管理センターCDC(the Centers for Disease Control and Prevention)は、7月、メリーランド州フォートデトリックにある米陸軍感染症研究所the United States Army Medical Research Institute of Infectious Diseasesに対して、「センターには、最高のセキュリティラボから「廃水を浄化するための十分なシステム」がなかったため」フォートデトリックでの研究に対して「中止命令」を発行することを決定したと伝えている。同研究所のスポークスマンCaree Vander Linden氏は同紙へのインタビューで「閉鎖は数か月続くと見られる」と答えている。この研究所では「エボラウイルスなどの危険な微生物を含む研究research involving dangerous microbes like the Ebola virus」が行われていた。この記事が出された翌月の9月から米国では「インフルエンザ」が流行し始めた。2019年10月18日、メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンズ大学の主催で「EVENT201」が行われる。「未知のコロナウイルス」によるパンデミックに備えた訓練と討論であった。このイベントはビル・ゲイツの財団が経費の多くを負担している。ちょうど同じ頃2019年10月17日から27日まで中国武漢市で「第7届世界軍人運動会」が行われていた。1995年から開催されている世界の軍人だけのオリンピックのようなものだ。武漢には世界の109ヶ国から9,000人を超える軍人が参加した。中国は金メダル133、銀メダル64、銅メダル42で、断トツのトップであったが、米国はらしくない金メダル0、銀メダル3、銅メダル5と言う成績であった。2019年7月12日、米国abcNEWSは「'Respiratory outbreak' being investigated at retirement community after 54 residents fall ill(54人の住人が病気になった後、退職者の施設で呼吸器疾患の集団発生が調査されている)」と言う記事を出した。結局米国では、200を超えるこうした呼吸器疾患が発生し、CDCは電子タバコによる肺繊維症であると発表した。今年2月27日、台湾の東森財経新聞台と言うTVに登場した国立陽明大学医学院の潘懐宗教授は、「アメリカでは6月末以降、原因不明の肺疾患にかかる10代から20代の若者が多発し、8月末までに215人にのぼっています。多くが入院し人工呼吸器などを使っての治療が必要な重い症状だったとのことで、その中でイリノイ州の30歳の男性が死亡しました。」として、これらの呼吸器疾患を肺線維症で説明することは出来ないと主張した。また、同教授は、ウイルスの遺伝子解析で、世界に広がる新型コロナウイルスの全ての遺伝子ファミリーが見られるのは米国だけであり、しかも、それが今年の2月段階の早い時期であり、ウイルスは米国から出たとしか考えられないと匂わせている。今年2月21日、日本のテレビ朝日が米国でのインフルエンザによる死亡例の多くはCOVID-19が原因である可能性があると述べたことについて、翌日すぐに米国CDCはそれを支持する証拠はないと反論している。この時点で、米国のインフルエンザ感染者は2600万人で、死者は14000人を超えていた。新型コロナウイルスの発生が中国発なのか米国発なのか、いずれも疑われる要因があり、いずれさらにウイルスの変異株を遺伝子解析により辿ることで明かにされるのかも知れない。
ツツジ

覇権国の凋落は債務が兆しとなる

2020-05-26 19:16:16 | 歴史
16世紀の世界は西のスペインと東の中国の明が覇権国であった。当時オランダはスペインの支配を受けており、盛んであった毛織物工業や商工業の利益はスペインに吸い上げられていた。1581年には北部ネーデルラント7州が独立を宣言した。1602年に史上初めて株式会社制度を導入したオランダ東インド会社を設立し、経済力を一挙に増大させ、1621年にはオランダ西インド会社も設立した。1625年にはスペイン、明を追い越し、以来、大英帝国に破れる1780年まで世界最大の覇権国として君臨する。世界最初のバブルと言われるチューリップ・バブルは1637年に起きている。オランダは世界を回る優秀な船舶を造り、17世紀の発明品の4分の1を生み出した。世界中から集めた富で軍事力も強化していた。通貨ギルダーは史上初めての基軸通貨となった。しかし、そのオランダも国家債務を抱えるようになり、軍事力が弱体化し、政治的内部対立も生まれ、台頭して来た英国との何度かの英蘭戦争に敗れ、破産してしまう。英国は次いでナポレオン率いるフランスと戦い、ナポレオンを敗り、戦勝国(英国、ロシア、オーストリア、プロイセン)会議である1814年9月〜15年6月のウィーン会議で、覇権国として出発する。オランダ東インド会社に代わって英国東インド会社が登場し、政府よりも強大な軍事力をも保持した。この英国の基盤は18世紀半ばからのいわゆる産業革命であった。英国はオランダを真似て、さらにそれを産業革命による土台で強化し、富を築いて行った。しかし、第一次、第二次世界大戦により英国は覇権国として多大の戦費を負担せざるを得ず、国家的債務を膨らませ、基軸通貨ポンドの地位を大戦後、国力を付けた米国の通貨ドルに譲らざるを得なくなる。米国はエジソンの発明などの第二次産業革命や国土が戦場にならなかったこと、軍事品を生産し、欧州に売ったことで富を蓄積していた。歴史上の覇権国家は全て自国通貨で債務を抱え、最後には凋落している。現在、日本も米国も自国通貨での膨大な債務を抱えている。このウイルス禍はその債務をさらに膨らませている。MMT(現代貨幣理論)は、自国通貨での債務はデフォルト(債務不履行)しない、とする。確かに、今の中央銀行は日本でも米国でも際限なく債券を購入するとしている。政府がいくら借金である国債を増やしても、みんな中央銀行がそれを買ってくれる。中央銀行は何もないところから、ただ通貨を印刷すればいいだけである。しかし、それをいつまでも続けることが可能なのか?それが可能なら、何故、国民は税金を払うのか。本当にそれが可能なら、最初から政府は税金など国民に課さないで、国債発行だけで予算を立てられるはずである。それも制限なくである。しかし、さすがのMMTも「インフレの可能性がなければ」と但し書きを用意している。この世に貨幣、通貨が出来てから、どんな借金にも必ず何らかの「返済」が付きまとう。経済にただ飯はない。政府債務の返済方法には3つある。そのうち国民負担が極端ではない方法は一つしかない。経済成長による税収増である。当然これは今のような経済成長率では、どんな先進国も不可能な方法である。残り二つはデフォルトとインフレである。どちらも国民には大きな負担となる。敗戦直後の日本は後者を選択した。財産税と言うおまけが付いたが。時の大蔵大臣は「払うものは払う」として、借金の返済を断行するために、国民から財産を奪って、返済に当てた。同時にインフレも生じていたため、政府債務額の実質的な引き下げにもなっていた。戦争により生産設備が破壊され、生活必需品の生産量がわずかで、それを欲しがる人の数が多く、通貨は戦中に大量に発行されていたためインフレとなっていた。コロナ禍は今後も続き、政府は何度も補正予算を追加しなければならなくなるだろう。経済が落ち込んでいる以上、税収は減りこそすれ、増えることはないため、全て赤字国債の発行で賄うことになる。コロナ禍は全ての生産活動を抑制するため、生産量は減少する。一方で、中央銀行は大量の通貨を発行している。実物量が少なく、通貨が大量となれば、どこかでインフレのリスクが生まれて来る。返済は不可能であった債務額がコロナ禍でさらに増額される。デフォルトを避けるならば、インフレしかないだろう。日米政府は共にインフレで債務を「チャラ」にと考えている。米国などは基軸通貨の地位にあぐらをかき、政府債務だけでなく、30兆ドルを遥かに超える対外債務まである。債務まみれの覇権国家の通貨が過去どんな運命を辿ったか。日本の科学的根拠の全くない緊急事態宣言とその解除は、ウイルス感染の減少とは何も関係しない。そもそも感染の実態そのものが誰にも分からない、とんでもない状態なのが今の日本である。
自生する一輪草

日本は東アジアの新型コロナウイルス対策劣等生

2020-05-25 19:10:47 | 社会
日本では、オリンピック延期が決まった途端に、検査数が一気に増え、感染者数も増えた。今回はまた自粛解除に向けて検査数が一気に減らされ、それに応じて感染者数も減った。もはや日本の感染者数は全く意図的にコントロールされた数値でしかない。ここまで露骨にコントロールする国はないだろう。もっとも、それを言えば、「検査を増やせば医療崩壊する」などと言う医学的根拠の全くないことを述べる「専門家」がいること自体、他の国ではあり得ないことである。今日の「worldometer」を見ると、世界の新型コロナウイルス感染者は550万人を超え、死者は34万人を超えている。しかし、その中身を見ると、地域により大きな差があることが分かる。100万人あたりの死者数で見ると、東アジアが1桁で、中東から東欧にかけてが2桁、西欧と米国が3桁となっている。東アジアでもシンガポールは3月初めまでは世界でも優等生として、その対策が注目されていた。しかし、シンガポールには経済の底辺を支えるインドやパキスタンからやって来た外国人労働者がおり、彼らは1部屋10人以上が共有する劣悪な環境で生活しており、3月末より、こうした外国人労働者での感染爆発が生じた。現在シンガポールは感染者数31,616人で、100万人あたり死者数は4である。日本は感染者数16,550人で、100万人あたり死者数は6である。今では東アジアの優等生はタイだと言われるようになった。タイの感染者は3,042人で、100万人あたり死者数は何と0.8人である。中東の富豪たちがタイでの治療を希望していると言う。人口7000万人のタイは、1980年からの40年間で5回も軍事クーデターが起きている国であるが、そんな国に日本からの企業も6000近くが進出している。軍事クーデターは経済へはほとんど影響しないと言う。輸出依存の国で、中国・米国・日本との貿易量が多い。やはり高齢化問題を抱える中で、産業構造を大きく転換しようとしている。2015年から重工業や工業製品の輸出から次世代自動車・スマートエレクトロニクス・医療・健康ツーリズム・農業・バイオテクノロジー・ロボット産業・デジタル産業 ・医療ハブ へのシフトを盛り込んだ「タイランド4.0」が推進されており、そんな中で、医療体制も充実されて来た。今回のウイルス対策も民間病院も含め、院内感染をも避ける周到な対策が敷かれ、医療に余裕を持ちながら感染拡大を防いでいる。医療制度上も日本と違って、民間病院は70%のベッドの満床率を確保していれば経営可能だと言う。日本は90%確保しなければ民間では維持出来ない。また国民の医療負担はわずか100円である。IMFによる一人当たりGDPは、日本が39,304ドルでタイは7,187ドルである。医療設備は欧米並みで、従来からアジア一円の富裕層らがメディカルツーリングしていたと言う。日本では2月22日に累積感染者が100人を超えて以降、1000人を超えるまでに30日、1万人を超えるまでに60日しか要していない。タイでは、3月15日に100人目が観測されて以降、1000人目は日本より早い11日目の3月26日だったものの、以降は急速にペースダウン。60日目となる5月14日で3018人であった。チュラロンコーン大学のウイルス学者は、タイでは毒性が弱いと言われるS型が多いのではと言う仮説を立てている。また首都バンコクのウィチャイユット病院に勤務する呼吸器科のマノーン医師は、タイ人の多くが生後間もなく接種するBCGが新型コロナウイルス感染の防御を果たしているのではないかとして、欧米で注目された。同じBCGでもタイでは生後4ヶ月までの接種で、日本の1年以内より早い。3月24日に米国ニューヨーク工科大学の研究者たちは「Correlation between universal BCG vaccination policy and reduced morbidity and mortality for COVID-19: an epidemiological study」なる論文を発表している。これによればBCG接種の有無により100万人あたりの死者数は大きく異なっていることが分かる。今も接種している台湾と30年以上接種のないスペインでは0.3人と615人と言う大きな差が出ている。ただ、BCG接種も可能性としてはもちろん考えられるが、まだBCG接種の詳細な世界的な調査が行われなければ、やはり現時点では仮説でしかないだろう。検査も治療薬も限定されている限り、いつまでも感染拡大の可能性は続いて行くだろう。いかなる感染も検査と治療薬がどんな医療機関でも自由に使える環境になって初めて落ち着くのだ。毎年、1万人が亡くなるインフルエンザも容易に検査と治療が可能だから、院内感染や集団感染を一定レベルで抑えられているのだ。ドイツを始め世界50カ国以上が求めたアビガンを何故未だに承認し、全国に配布しないのか。治験を行っている藤田医科大学はすでに安全性が確認出来たと公表している。
石楠花

広域移動と都市化がパンデミックをもたらして来た

2020-05-23 19:18:31 | 社会
パンデミックpandemicとは感染爆発とか感染症大流行を表すが、語源はギリシャ語の「pan-全て・ dēmos人々」に由来すると言う。地域や国の全ての人を巻き込むと言うことなのだろう。歴史的に知られている1000万人以上の犠牲者を出した最初のパンデミックは西暦200年前後の中国三国志の時代の腸チフスが疑われる疫病の流行である。次いで541年-542年東ローマ帝国時代の地中海でのペスト流行である。1347年-1352年のアジア・欧州に広がったペストでは7500万人以上が亡くなったとされる。1518年-1568年には欧州からメキシコに天然痘・麻疹・腸チフスが持ち込まれアステカ帝国の崩壊を早めた。1556年-1560年には欧州でインフルエンザが猛威を奮い2500万人が犠牲になっている。致死率は20%であったとされる。1855年-1896年のアジアでのペストでは1000万人が亡くなっている。1918年-1920年のよく知られるスペイン風邪(インフルエンザ)では5000万人〜1億人が亡くなったとされる。過去のパンデミックも現在のパンデミックも、広域の人々の移動、都市化、貧困が共通要因となる。特に現在は前世紀後半からのグローバリゼーションがちょうど終息に向かう気配を見せ始めていたところである。米国内でもニューヨーク市は特に感染が集中し、中でも貧困層の感染率・致死率が高かった。欧州も主要国は軒並み100万人あたりの死者数が3桁になっているが、不思議とドイツだけはギリギリだが2桁を維持している。他の欧州主要国と異なり医療体制の削減を行わず、医療制度が維持されて来たこともあるが、もう一つの要因として、都市化の問題がある。ウェンデル・コックスWendell Cox南カリフォルニア大学客員教授らは毎年Demographia World Urban Areas(世界の都市地域の人口統計)を公表している。この統計では建物が連続する都市地域を一つの単位として見ており、日本だと東京と横浜が一つの都市地域単位となっている。この2020年版を見ると、世界の1位はまさに日本の東京・横浜であり人口は37,977,000人となっている。50位内には多くのアジアの都市地域が入り、欧米の主要都市部も入っている。しかし、そこにはドイツは見られず、ドイツはようやく73位でEssen-Dusseldorf6,125,000人が登場するが、人口377万人の首都ベルリンは登場しない。隣国フランスのパリは33位で人口11,020,000人となっている。ドイツの人口は8302万人である。ドイツは都市が欧州の中でも分散されている。日本では大阪・神戸・京都が一つの都市地域となっており、人口14,977,000人で23位となっている。ドイツも労働人口を補うために他の欧州主要国同様に外国人労働者を増加させて来た。今回、日本でも外国人労働者が差別されているように、ドイツでもやはり何らかの形で外国人労働者が犠牲になっている可能性がある。弱者・貧困者が最も犠牲となる構図はドイツでさえも変わらないだろうと思われる。そもそもが医療保険制度にどの程度外国人労働者が加入出来ているかだ。米国では多くの外国人労働者がPCR検査を拒否した。陽性で入院すると高額の医療費が請求されるためだそうだ。ほとんどの外国人労働者は医療保険には未加入である。医療費を考え医療機関を受診することを拒否すれば、犠牲者が出ることは避けられないだろう。人類はこれまでもパンデミックを何度も経験しており、人の移動が広範囲であれば、なお、その危険は増加する。また、都市集中や貧困もそれを増長させる。東日本大震災は、あり得ないと思われることも、歴史を振り返れば、何度も同じことが起きて来たことを知ることが出来ると、改めて教えてくれた。日本の都市集中は世界的にも最悪である。東京付近で地震や津波・噴火が発生すれば、全ての行政機能・経済機能が麻痺する。まして、コロナ禍は易々とは終息しない。
Demographia World Urban Areas(16th ANNUAL EDITION April 2020)

「戦時経済」

2020-05-22 19:16:46 | 社会
1955年創刊の山口県の地方紙、長周新聞の4月30日のコラムの表題が「頑なにPCR検査をしない理由とは…」となっている。OECD経済協力開発機構が調査した加盟36カ国の人口1000人当りのPCR検査数は、平均が22.9であるが、日本は1.8で、35位であった。「医療関係者や科学者たちが口を揃えて「PCR検査を拡大せよ」と求め、各国にできることが、なぜ日本にはできないのだろうか。」「かたくなにPCR検査を拒否しているのはなぜなのか? できるように動かないのはなぜなのか? その理由が理解できない。」「アビガンの使用しかり、守れる生命を守るために、PCR検査の保険適用であれなんであれ、早急に手を回して対応しないのはなぜなのか? 霞ヶ関にあれだけの頭脳集団が揃っていながら危機対応がまるで機能していないのはなぜなのか? それほどまでに落ちぶれているのか? むしろ感染拡大するにまかせて医療費削減(老人たちが新型コロナウイルスによって淘汰される)や米製薬会社のドル箱にするためのショックドクトリンでも敢行しているのか? だからわざとモタモタしているのか? 等々、まともでない対応の裏側に何があるのかを考えてしまうのである。」とある。この記事から3週間経つが、基本的に状態は何も変わっていない。NHKや朝日新聞はアビガンに薬効ないと治験を行っている藤田医科大学が発表したと報じたが、それは誤報であると昨夕藤田医科大学が発表したにもかかわらず、そちらの発表は一切報じていない。少なくとも結果としては恣意的な報じ方となってしまっている。しかも、同大学はアビガンの安全性が確認されたとまで発表しているのだ。今日の昼のあるTV番組で、中国の全人代や中国経済の落ち込みなどを報じていたが、その日本への影響にはわずかしか触れていない。重要なのは、中国の問題をただ取り上げることではなく、日本への影響であるはずである。その意味では、中国よりも遥かに米国経済の影響の方が巨大である。今月16日の米誌「TIME」は、「Welcome to the First Global Economic Depression of Our Lifetimes(私たちの生涯の最初の世界的な経済恐慌へようこそ)」なる記事を載せている。ちなみに1929年からの世界大恐慌は英語では「the Great Depression」と呼ばれる。2008年のリーマン・ショック後は「Great Recession」と呼ばれる。戦争では生産が軍需品中心に行われ、通常の生活品は限られてしまう。一般的な経済活動も行えないため、経済は落ち込み、政府は税収がないため、「戦時国債」を発行し、買うための余力のない民間に代わって中央銀行がそれを買い取る。民間経済活動が落ち込み、中央銀行が政府発行の新たな国債を大量に買い取る戦時のこの構図は、まさにコロナ禍の現在そのものである。米国の労働者1億6000万人のうち5000万人が職を失っている状態は、それだけ生産活動が失われていることでもある。民間で失われた経済を補うため、米国政府は4月だけで1兆ドルの財政支出を行った。外国中央銀行は米国債を300億ドル売り、外国公的機関も60億ドルの米国債を売り、外国個人投資家は記録的な2.4兆ドルの米国債を売っている。そして、売られた米国債を一手に中央銀行FRBが買い支えた。5兆ドル以上の通貨発行で賄っている。日本のメディアはこうした事実を一切報じない。4月20日にマイナス価格となった原油も、1バレル当たり30ドル台に回復しているが、それでも米国シェール・オイル産業の採算レベル50ドルを大きく割り込んでいる。債券発行による債務で生きながられて来たシェール産業もかなりが倒産して行くだろう。米国大統領はシェール産業を守るために、サウジアラビアに対して、原油の減産を要求したが、拒否され、サウジアラビアから米国のミサイルを撤去した。しかし、その後、サウジアラビア自身が経済的に追い詰められ、ようやく12日にロシアと減産の合意に達し、原油価格が上昇して来た。現在、米国では新たな感染はカリフォルニア州とアラバマ州くらいで、感染は減少している。それでも162万人がこれまでに感染し、9万6000人が亡くなっている。経済活動が次第に再開されることで、再びどこかで感染が再燃するだろう。経済的打撃はまだまだ今後も増えて行く。日本は、中国よりもずっと米国の在り様に左右される。
米国連邦政府支出

Treasury Issuance will shatter Records in 2020(国債発行は2020年に記録を打ち破る)ー投資会社グッゲンハイムによる

東アジアには一部抗体があるのかも知れない

2020-05-21 19:10:12 | 科学
昨日書いたように東京高等検察庁黒川弘務検事長は、自ら法規を無視して、定年後も在職を続けて来た。法規を無視する検察官が賭け麻雀をしたからと何故メディアは騒ぐのか。法に反する行為はすでに先に行われているのだ。しかもそれは賭け麻雀以上に重い法規違反であり、そのことを持ってすでに黒川検事長は検察官として失格である。法を守らない検察官などあってはならない。賭け麻雀ではなく、定年後も在職を続けたことが、もはや司法官僚としての資格を失っているのである。法を遵守する検察官を自認するのであれば、自らとっくに辞職していたはずである。新型コロナウイルス感染についても、行政の公表数値をそのまま伝えるだけで、メディアは何ら検証しようとしない。日本は医療の基本を無視して一貫してPCR検査を制限して来た。にもかかわらず、感染者も死者も欧米に比べると極めて少ない。実際には感染者も死者も公表された数値よりも多いだろう。死者も国立感染症研究所のインフルエンザ関連死亡迅速把握システムが5月4日に公表したグラフを見ると、2019年の49週から2020年1週、2020年8ー13週に「超過死亡」が出ている。暖冬でインフルエンザ感染者が例年より遥かに少なくなっている中でだ。PCR検査がなされないため、インフルエンザ関連死にされている。恐らく感染者も死者も公表数よりはずっと多いはずであるが、それでもなお、日本の感染者数や死者数は欧米よりも少ない。日本だけでなく、中国、韓国、台湾も欧米より少ない。5月15日に東京大先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が、東京大や慶応大、大阪大などでつくる「新型コロナウイルス抗体検査機利用者協議会」の大型プロジェクトの一環として、東京都内の医療機関で5月1~2日に採血し検査に使った500人分の残余検体を使って抗体検査をおこない、0.6%が陽性だったことを書いたが、同じ15日に、4月に東京都内と東北6県で採血された献血の中から無作為に抽出した各500検体のうち東京で3件(0.6%)、東北で2件(0.4%)の陽性反応が出たと加藤勝信厚生労働大臣も発表している。つまり、両方の抗体検査で、東京都は同じ0.6%と言う結果になっている。これを人口に当てはめれば、約8万3880人が感染していると言うことであり、公表数よりは遥かに多い。それでも欧米との比較では、何故、日本を含む東アジアの死者が少ないのか疑問が残る。昨日、午後2時から、児玉龍彦名誉教授は外国特派員協会で会見を行った。そこで児玉名誉教授は日本を含む東アジアでは、2003年のSARSウイルスなどを含め、4種の風邪のコロナウイルスも発生しており、それらが何らかの変異を経て、すでに多くの人が感染し、抗体を持っている可能性があるのではないかと言う仮説を発表されている。今日の「worldometer」の新型コロナウイルスによる各国の人口100万人当たりの死者数は、米国287人、英国526人、フランス431人、ドイツ99人で、東アジアでは、中国3人、韓国5人、台湾0.3人、香港0.5人、日本6人である。桁が違うのだ。BCG接種の違いも言われるが、世界を見ると、BCGだけでは感染者や死者の違いを説明出来ない。一般的にウイルス感染ではIgMと言う抗体が最初に増加し、少し遅れてIgGと言う抗体が増加する。児玉名誉教授によれば、東京大学の研究で、感染者を調べると、一般のウイルス感染と同様に最初にIgMが増加した人は重症化しており、重症化していない人は、最初にIgG抗体が増加し、次いでIgM抗体が重症者より少ない増加となっていることが見出された。このことから、同名誉教授は「SARS-X」が何らかの形ですでに東アジアで感染していたのではないかと考えられておられる。SARSウイルスは2003年であったので、それから17年の間に変異して感染が広がっていた可能性もあると言うのだ。ただ多くはやはり未感染者であり、今後も感染は終息するのではなく、必ず第2波、第3波が襲って来る。特に病院の院内感染、老人施設などの集団感染は要注意であり、これらを守るためにもPCR検査の制限は早く改めるべきである。韓国のようなしっかりとした体制を早く築くべきである。今月8日にCanadian Medical Association Journalにオンライン公開された「Impact of climate and public health interventions on the COVID-19 pandemic: A prospective cohort study.」なる論文によると、144の地政学的な領域(オーストラリア、米国、カナダおよび世界中のさまざまな国々)を調査し、合計で375600人を超えるCOVID-19症例を確認したところ、「緯度または温度とCOVID-19の流行性増殖との関連がほとんどないか、まったくないこと、および湿度と感染率の低下との関連が弱いことを発見した」と言う。夏になれば終息するなどと期待出来ないと言うことだ。検査だけでなく、日本は治療薬についても世界がすでに使っているアビガンの使用が遅れている。厚生労働大臣や東京都知事を務めた舛添要一氏によれば、アビガンについて、「早期投与こそが救命につながるのである。ところが、日本感染症学会は、呼吸不全の出現を投与の必要条件としていたのである。厚労省は、3月17日に都道府県に対して発出した「新型コロナウイルス感染症、診療の手引き」の中で、これを批判し、早期投与の必要性を強調した。」その結果、ようやく学会も4月20日になり早期投与を認めたそうだ。しかし、「世界ではインフルエンザ治療薬のアビガンが、すでに広く世界で活用されており、私は早期承認を求めてきた。しかし、5月19日、厚労省は「有効性判断には時期尚早」として、まだ臨床研究を継続するという。」と述べている。米国内での治験結果も出ていない米国産のレムデシビルを早々と承認し、世界がすでに使っている日本産のアビガンをいまだに承認しない。児玉名誉教授によると、アビガンを早期に使った場合は4日でウイルスが消えると言う。診断がつけばすぐにアビガン を飲むのがいいとされ、免疫が暴走すればアクテムラ点滴だと言われる。
木蓮

リーダー不在の日本

2020-05-20 19:18:51 | 社会
黒川弘務東京高検検事長の定年延長に法的根拠を与えるための検察庁法改正案は今の国会での成立が見送られることになったが、メディアは今なお黒川検事長自身が退職していないことを全く問題にしない。すでに法で定められた定年を過ぎている。黒川検事長の定年延長は単なる閣議決定であり、法の方が優先される。憲法でも内閣の法の遵守は謳われている。つまり、検察自らが法を無視しているのが現在の黒川検事長自身である。黒川検事長は法を守る検察官であるなら辞任すべきである。それがなされないのであれば、国民に向かって法を遵守せよと言えるのか。また、自家採種が出来なくなる種苗法の改正はそのまま続けられている。日本の農業の基本が破壊されようとしている。米欧巨大企業に日本の農業がコントロールされることになる。現政権は成立とともに円安政策により、一貫して日本を主に米国企業に売り渡して来た。今では日本の主要企業の大株主は実質米国巨大資本になっている。大株主が変われば、当然企業経営は大きく変わる。特に米国流経営は目先の株主利益が優先され、長期的な視点は無視される。未来に向けて大きく投資して、新たな産業を生み出すことなど全く考えず、今の体制の中で、いかに利益を生み出すかしか考えない。バブル崩壊後の金融危機を経て、日本銀行は他国に先駆けて超低金利と国債購入を常套手段とするようになり、2008年のリーマン・ショック後は、米国中央銀行FRBを助けるためにもそれらの手段をさらに深化させて行った。現政権が成立すると、「異次元」金融緩和の名で、マイナス金利と国債の大量購入を堂々と実行し始めた。かっては日本銀行は「通貨の番人」と言われた。その日本銀行が自ら通貨を貶める行為を行っているのだ。コロナ禍は日本経済へも大きな傷を負わせている。政府の財政出動は何度も修正加算されて行くことになる。その財源は当然赤字国債の新規発行である。日本銀行が全て買い取る。日本銀行はただ輪転機を回すだけで済む。日本も米国もやっていることはアルゼンチンや崩壊したソ連と同じことをやっているのだ。それがいつまでも続けられる保証は何もない。今回のコロナ禍のような事態は官僚には未経験のことであり、日本型官僚は未経験の事態には上手く対処出来ない。マスクにしろ、10万円の配布にしろ、全てが上手く処理されていない。今後もこうした後手後手は続く。適切な時期に適切な対処が取られない。その意味でも結果は悲惨にならざるを得ない。これまでのウイルス感染への対応を見ればいかに日本のリーダーが危機対応出来ないリーダーであるか容易に分かるだろう。そのリーダーがこれからもしばらくは日本のリーダーであり続けるのである。米国中央銀行議長はコロナ禍による経済悪化は2021年末まで続く可能性を指摘している。仮にそうだとすれば、日本も少なくともその期間は、困難な生活状況が続く可能性があるだろう。産業の衰退も加速するだろう。ライフラインさえ確保されていれば、IT産業はかえって伸びる可能性はある。ただ、日本のIT産業はGDP第3位でありながら、1位・2位の米中と比べるとあまりにも惨めだ。規模が一桁も二桁も違う。こうした面からも、このウイルス禍は元々進んでいた日本の産業の衰退をただ加速させるだけである。日本のGDPに匹敵する内部留保を有しながら、それを国民や企業の未来の育成のために使おうとしない。大赤字を抱えたソフトバンクがマスクや人工呼吸器を手配しても、他の巨大企業がそう言った手配をした話は聞かない。自動車産業は人工呼吸器生産の一部に手助けするだけである。政治リーダーだけでなく、今の日本は官僚トップも財界トップも全てが「無能」レベルに成り下がっている。