釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

地球は氷期に向かっているのか

2017-05-31 19:15:13 | 科学
岩手県は他の東北各県と同様、野生動物が豊富で、北海道に次いで面積の大きい岩手県は特に7割以上が山野であるため、野生動物は人と接触することが多くなる。北上川流域に展開する市街地を除けば、市街地と市街地の間に山野があり、そこを通過しなければ、他市町村へ行けない。岩手県にもキツネはいるが、路上で轢かれる動物は猫かタヌキが多い。北海道では圧倒的にキツネが轢かれている。猫もタヌキも夜間、自動車のヘッドライトに照らされると、その場に立ちすくんでしまう。キツネや鹿は比較的早く横切る。しかし、北海道では車のスピードが早いためにキツネも犠牲になるのだろう。岩手県では今、イノシシが増えている。2007年に岩手県では初めて奥州市でイノシシが目撃されて以来、2011年には一関市と北上市で、2012年に平泉町、釜石市・大槌町で、2013年には大船渡市・花巻市・盛岡市まで北上している。山形県や隣接する秋田県でも既に出没している。以前は宮城県南部がイノシシの北限とされていた。イノシシの北上は、一般には温暖化が主因とされている。岩手県や秋田県の人に聞くと、何十年か前に比べて降雪量がずっと少なくなっていると言う。氷床や氷河の融解により、海面上昇が地球規模で起きていると報告されている。しかし、米国海洋大気庁(NOAA)のデータによると、過去1万年のグリーンランドの氷床で観測された地球気温は紀元前8000年から紀元前1000年までは現在の気温より高い状態が安定して持続し、紀元前1000年以降に急激に気温が低下していることが明らかとなっている。過去45万年の氷床コアのデータによると、地球は、約10万年間の氷河期と、約1万年間の温暖期を繰り返している。つまり、今の地球は 1万年の温暖期の「完全な最後の時期」であり、次の氷河期が迫っていると言う。20世紀後半からの気温の急上昇は、過去3000年以上にわたる比較的急速な気温低下期間の長期的な進展の中では、小さな変動の一部でしかないのだそうだ。人為的な要因による地球温暖化の環境への悲惨な影響が警告されているが、その気温変動の規模を考えると、その最高の転換点とされる+ 2℃は、結局は、紀元前1000年の頃の暖かい期間と似通った気候の水準に近づくというだけだと言う。南極のボストーク基地の氷床コアの酸素温度の解析でも、グリーンランドと同じような結果が示されている。いつか北上して来たイノシシが再び南へ帰って行くだけでなく、人間も南下せざるを得なくなるのかも知れない。
敦盛草

最悪の法案

2017-05-30 19:15:47 | 社会
政官財の凋落ぶりはほんとうに目に余る。国民、人を見ておらず、権力者自らの立場を優先する。中でも先日衆議院を通過したいわゆる「共謀罪」は最悪の法案だ。2000年に国連総会で採択された国際組織犯罪防止条約の締結のために必要な法案だとするが、同条約はマフィア対策の条約であり、テロ対策のための条約ではない。政府はテロ対策のための法案だとして、一般人は対象ではないとしていたが、昨日の参議院での審議では、法務大臣は環境や人権の保護を掲げる団体でも、実態が組織的犯罪集団と認められれば構成員が処罰対象になる可能性があると述べている。団体が組織的犯罪集団に該当するかどうかは捜査機関が判断し、恣意的に運用される危険性を残す。国連さえもが、プライバシーについての特別報告者Joseph Cannataci氏が「『計画』と『準備行動』を構成するものの定義の曖昧さゆえに、法案が恣意的に適用されるリスクに対する懸念」を5月18日付の日本政府宛の書簡で表明している。また、法案により訴追出来る277の犯罪リストには、テロリズムとも犯罪ともいかなる関係も見られないものが含まれており、同氏は「プライバシーと表現の自由の保護に対する不適切な抑圧」のリスクも指摘している。リストの多くは知的財産権侵害や許可なしの競艇参加、国有林での植物伐採のようにテロリズムとは全く関係がない。刑法が専門の京都大学大学院の高山佳奈子教授は「ますます異様なのは、今般の共謀罪法案が、『テロ等準備罪』を処罰するものだと宣伝されているのにもかかわらず、テロのための条文を一つも含んでいないことです」 、「テロのための国際条約や国連安保理決議は多数作られており、日本は国内立法をすませてこれらをすべて実施済みです」と述べ同法案を批判されている。憲法学が専門の名古屋学院大学飯島滋明教授はフランス、ル・モンド紙のインタービューで、この法案には憲法の三大原則、人権の尊重、平和主義、国民主権に対する脅威が含まれ、1925年の治安維持法を想起させると述べている。治安維持法採択の前にも政府はこの法律は共産主義者だけを対象にするものだと言明していたが、1930~40年代において治安維持法は全国民に対して厳格な監視を行い、軍国主義の勃興に反対する人々を沈黙させるために活用されたことを指摘している。
山藤

充実した週末

2017-05-29 19:11:25 | 文化
27日土曜は釜石では小雨から曇天であったが、住田町の赤羽根峠にある産直で、「かっこ花祭り」があるため、娘と出かけた。住田町ではカッコウが鳴く頃に咲く敦盛草(あつもりそう)を「かっこ花」と呼ぶ。毎年5月最後の土曜日に開かれている。住田町が力を入れている敦盛草の保護繁殖の一環で、敦盛草の直売と育て方の実践講習が行われる。旧居で育てていた敦盛草が4年目で芽を出さなくなってしまった。株分けを怠ったためかも知れない。新たな敦盛草を購入し、再度挑戦することにした。小さな産直だが、娘はむしろこちらを楽しんでいた。住田町側へ少し下った所の山野草専門店にも立ち寄った。そこでも2~3の山野草を購入し、釜石へ来て初めて住田町の滝観洞へ向かった。洞窟はあまり好きではないが、娘のたっての希望で付き合うことになった。滝観洞は通路が狭く、水滴がかなり落ちても来るため、洞窟へ入る前にヘルメットと長靴、合羽を貸し出してくれる。奥行きが700mほどで、地下の水路が長い時間をかけて、岩を侵食して洞窟となった。何億年前かの化石もいくつか出ている。最奥には「日本一」とされる洞窟内の滝がある。実際にはさらに奥が続いているが、大震災時の地震で崩れてしまった。そこは再開の目処が立っていない。途中の岩場に何度もヘルメットをぶっつけてしまった。滝は、しかし、思ったほどには大きくはなく、寒さが応えて、帰路は早足で歩いた。洞窟を出て、ヒグラシがもう鳴いている清流をしばらく眺めていた。名物の「流しそば」を食べることにしたが、水の流れる筒が金属であるのが、興ざめであった。以前は竹の筒だったそうだが。ここはそうめんではなく、以前から蕎麦が使われているようだ。昨日28日は、平泉の毛越寺へ出かけた。毛越寺で午後1時から行われる「曲水の宴」の前に、毛越寺近くのいつもの曲水亭で娘の好物である「前沢牛の柳川定食」を食べた。昼食後、毛越寺につくと、すでに多くの観客と報道陣が詰め掛けていた。東北で発掘された貴重な「曲水の宴」遺構だが、残念ながら、そこでの衣装は京の平安貴族のそれであった。奥州藤原氏の遺構として、当時の奥州藤原氏の衣装が京と同じとは思えなかった。京よりもはるかに国外との取引が盛んであった藤原氏は京とは異なる衣装ではなかったろうか。金の産出を背景に京と並ぶ都市を築いていた。「曲水の宴」の後、毛越寺に近い、娘がお気に入りの達谷窟(たっこくのいわや)へも立ち寄った。坂上田村麻呂によって、断崖の洞窟に毘沙門堂が建立されたとされる。洞窟には悪逆を尽くした蝦夷の悪路王が住み、それを田村麻呂が成敗し、鎮魂のために清水寺と同じく、支柱を使った高床式の毘沙門堂が建立された。おそらく悪路王とは阿弖流為(あてるい)であったと思われる。京の朝廷側に立って、悪者扱いされたのだろう。
敦盛草の育て方を講習してくれている

小さな赤羽根産直

滝観洞

滝はさらに上から落ちて来ている

流し蕎麦

対岸で行われる毛越寺の「曲水の宴」

「曲水の宴」

十二単の女官

達谷窟の毘沙門堂

岩をくり抜いて建てられている

近くの断崖にも仏像が彫られている

杜若(かきつばた)と弁天堂

老犬

2017-05-27 19:21:02 | 文化
2002年9月に生まれた我が家のベルギーシェパードは今年2月に入り、急激に後足が弱ってしまった。今は自力では立ち上がれない。腰を持ち上げてやると、ようやく立って、歩くことが出来る。立ち上げてやると、朝晩の散歩は可能なので、まだ良い方なのかも知れない。人も動物も加齢とともに足が弱まるのは同じようだ。一度は獣医に見せたが、効果は何もなかった。いつまでも立った姿勢ではいられないので、楽な姿勢で横になると、もう自力では立ち上がれない。こちらが家にいる間は良いが、いない時は悲しい声で啼いている。夜間も水を飲むために動こうとするが、やはり立ち上がれない。毎晩、夜中には吠え声で起こされる。今朝も3時半に起こされてしまった。そんな時間に起こされると、もう眠気も失せて、そのまま起きてしまった。いつものように腰を持ち上げて、立たせてやると、水をたくさん飲んでいた。しかし、しばらくすると、また横になって、休んでいる。動物も長く飼っていると、もう家族の一員だ。悲しく啼く声を聞けば、放置は出来ない。人の場合は、家族が介護出来ない状況だと、介護施設がある。とは言え、本当は本人にとって、そうした施設よりも、自分の住んでいた家で家族に介護されるのが一番良いのだろうが。ここ数年、米国をはじめ、「老化」の研究が急速に進んで来てはいる。遺伝子レベルで老化の原因も明らかになりつつある。マウスの実験での若返りも観察されている。何年か後には人も若返りが可能になるのかも知れないが、仮にそれが可能だとすると、それはそれでまた人類は大きな問題を抱えることになる。地球は人口の増加による食料問題が解決されていない。エネルギー消費にも問題がある。そして何よりも人の生き方を大きく左右するだろう。急速にやって来た犬の老いに戸惑いながら、自分の老いや人の老いを考えてしまう。
犬と同じ目線で接する娘

胆澤の荒覇吐五王、阿弖流爲(あてるい)

2017-05-26 19:19:21 | 歴史
和田家文書の『北鑑』第五巻「日本繪巻 二」に「延暦壬戌年、胆澤の五王に阿弖流爲(あてるい)が継君し、その副王に母禮(もれ)が任ぜられたり。」とある。「延暦壬戌年」は延暦元年で、西暦782年になる。胆澤は岩手県南部の北上川以西の地である。荒覇吐王国では王国内に五王を配して、統治した。阿弖流爲もその一人であった。朝廷は「丑寅(東北)の幸を掌握せん」として、養老庚申年、西暦720年には上毛野廣人を、神亀甲子年、724年に佐伯兒屋麻呂を「遣したるも、何れも荒覇吐五王らに討たれり。」とある。「丑寅日本国への侵駐は、尋常なる手段にては叶はざる」ため、「物々交換驛處」として、神護景雲己酉年、769年に桃生の驛を、寳亀庚戌年、770年には伊治驛を設置し、「荒覇吐族との和睦を謀りて交はふも、物交の相互に價等せず、此の驛に警羅せる宇屈波宇が倭人の品を換ふを禁じたり。」そこで朝廷は、もともとこの地の出身で、朝廷に仕えた道嶋嶋足を荒覇吐五王である宇屈波宇の説得に当たらせたが、 寳亀甲寅年、774年7月道嶋嶋足は追われて「命からがら遁げ去」った。宇屈波宇の居城は胆澤であったため、朝廷は角別の地に紀廣純に柵を造らせたが、「呰麻呂に攻められ道嶋大楯らと倶に討たれた」。朝廷は天應辛酉年781年にも「藤原継縄、藤原小黑麻呂を征夷討伐に當らし」たが、敗散した。翌年、阿弖流爲が胆澤の五王となると、朝廷は大伴家持を任じたが、8月に若死した。そこで朝廷は、延暦戊辰年、788年に多治比宇美、続いて多治比浜成、佐伯葛城、入間廣成らを副將に任じ、さらには兼春宮大夫、紀古佐美を追補した。延暦己巳年、789年「全軍挙げて胆澤に向ふる途中にありき手向いなき邑々を燒き、兵糧を民家保有の糧を奪いたり。」これに怒った阿弖流伊は母禮とともに一気に官軍を攻めて、破った。万策尽きた朝廷は坂上田村麻呂を任じたが、田村麻呂は軍によらず、一計を案じて、貢物を阿弖流伊に届け、朝廷との和睦を勧め、上洛を要請した。阿弖流伊は母禮とともに田村麻呂の要請に応じ、同道した。しかし、朝廷は打ち首を命じ、阿弖流伊と母禮は河内社山で斬首される。文正丙戌年(1466年)八月廿日、物部出雲の記録である。
菖蒲

紫波町

2017-05-25 19:16:18 | 歴史
室町幕府を開いた征夷大将軍足利尊氏の高祖父、足利泰氏は足利宗家4代当主であり、清和源氏(河内源氏)の流れを汲み、13世紀、鎌倉時代前期の鎌倉幕府の御家人であった。その長男、足利家氏は足利尾張家の初代当主であり、陸奥国斯波郡を領したことから、その子孫である尾張足利氏4代当主の斯波高経の長子家長が斯波郡に奥州管領として、居城を構えた。高経は後醍醐天皇を立てて、鎌倉幕府倒幕に動いた足利宗家の足利尊氏の下で、重鎮として従った。斯波家は室町幕府の有力な守護大名であった。斯波家長に始まる現在の紫波町の高水寺城(こうすいじじょう)は正式名は郡山城と言われる。1189年の秋の奥州平泉攻撃に源頼朝の本陣に従軍し、功を立てたことで、陸奥国糠部五郡の土地を給された南部三郎光行が奥州南部氏の祖となり、勢力拡大とともに後には斯波氏の領地を侵略し、幾度かの戦いが行われ、江戸初期についに斯波氏が滅亡する。南部氏は富士川西岸の南部郷、現在の山梨県南巨摩郡南部町出身であり、甲斐源氏の流れとされる。高水寺城跡は小高い丘陵が残るのみで、建物は失われており、頂上には愛宕神社が祀られているだけだ。桜がいたるところに植えられており、春には桜の名所の一つとなっているようだ。晴れていれば、雄大な岩手山を一望出来る。岩手県を縦断し、東京へ続く国道4号線沿いは大型店をはじめテンポが並ぶが、国道を少し離れると紫波町ではいくつもの丘陵地の間に展開する田園風景が広がる。東部の山裾には縄文後期から晩期に縄文人が住んだ船久保洞窟がある。国道4号線沿いの市街地を除けば、長い歴史の中で、紫波町の風景はずっと変わらないで来たように思われる。そして平安から江戸時代まで、この田園が広がる地帯で、繰り返し戦乱が見られた。
高水寺城跡の愛宕神社

高水寺城跡からの眺望 中央やや左に岩手山の輪郭が少し見える

釜石の地質的由来

2017-05-24 19:16:17 | 科学
三陸の沿岸部は地質的には南北二つで異なる。北部北上山地と南部北上山地に分かれるが、その境界線は海岸沿いの両石あたりから、斜めに北西方向になる早池峰山方向に走る早池峰構造帯である。釜石のある南部北上山地は5億年前、赤道よりも南で超大陸ゴンドワナを形成していた大陸の北縁部が赤道付近にあって、現在の南中国を形成する陸地とともに超大陸から分離し、北上したものだ。と言っても、5億4200万 - 2億5100万年前までの古生代は完全な陸地ではなく、暖かい浅い海になっていた。3億2000万年前、赤道付近で超大陸から分離し、北上した南部北上山地の陸地の南側の深い海底が隆起して北部北上山地の原型となり、恐竜がいた1億4000万年前に両者が合体した。従って、北部北上山地は海底の堆積物が陸地化したもので、南部北上山地は超大陸の一部が分離したものだ。超大陸ゴンドワナ大陸は6億年前から分裂が始まっており、2億年前に再び超大陸パンゲアとしてまとまった。この時、南北北上山地が南北の位置が変わった状態でユーラシア大陸と合体する。地殻変動や海水面の変化、海水による侵食により、北部北上山地の海岸は切り立った海食崖となり、南部北上山地の海岸はリアス海岸となった。同じ三陸沿岸でも地質や波の違いで、景観は異なる。現在の北上山地では火山活動は見られないが、1億4500万年前から6600万年までの白亜紀には北上山地でも活発な火山活動が見られた。地質的には岩手県の土台となっている基盤岩類は、北上山地の南半部、南部北上山地だとされている。岩手県では岩泉町で1億年前の、久慈市で8500万年前の恐竜化石が発掘されている。これらの恐竜がいた時代はユーラシア大陸と北アメリカ大陸が一つとなっていたローラシア大陸が形成されていた。ローラシア大陸が分裂するのは6000万年前である。釜石のある南部北上山地は赤道付近から北上し、後にローラシア大陸に衝突して、その一部となり、ローラシア大陸の分裂で、ユーラシア大陸として、さらに後にそのユーラシア大陸から分離して行った。
エビネ

初夏

2017-05-23 19:12:28 | 自然
日が経つのは本当に早く、長い冬が終わって、春になったと思う間もなく、もう緑の中で初夏の日射しになってしまった。鶯は梅や桜の時期と思い込んでいたが、東北ではむしろ緑のこの時期の方が声をよく聞く。今朝も姿は見えないが、家の近くで鳴いていた。霞の立つ晴天が続き、日向では日射しを熱くさえ感じるが、日陰に入ると、清々しい風が吹く。気仙沼でのゴスペルコンサートのために、大阪から来ている娘も東北の山菜には惚れ込んでおり、空いた時間には、近隣の産直を回って、山菜あさりをしている。東北の山菜は今が旬だ。先日、知人からもたくさん手料理の山菜をいただき、山菜の独特の味を楽しんだ。一部はスーパーなどでも売られているが、やはり山に入って、わざわざ採られた山菜はさすがに味が違う。釜石では今ホヤの季節になったようで、一昨日、娘は生まれて初めて新鮮なホヤを食べた。ホヤも癖があり、好き嫌いがはっきり分かれる。お酒の好きな人には欠かせないもののようだが。この時期の風景も都会からやって来た娘には心を和ませてくれているようだ。先日、遠野の上郷の産直へ行った際、産直の裏手の、田植えを前に水が引かれた田園風景をしばらく堪能していた。新鮮な山海の幸や、溢れる緑の風景を楽しみながら、震災直後に釜石で知り合った人たちとの再会をもまた毎日楽しんでいる。自然は四季それぞれの姿を見せてくれるが、やはり冬が去り、春が来て、こうして緑が溢れるようになると、なおさら自然を生き生きとしているように感じるようになる。東北の素晴らしさの一つだ。世の中は大きな変動期に向かいつつあるが、周囲の自然を見ていると、一時そんなことを忘れさせてくれる。職場近くの甲子川にはもう水鳥たちの多くがいなくなってしまった。オオバンとわずかなカモがいるだけで、葦の生えるところでは夏のオオヨシキリが鳴くようになった。しばらく前からは、夜には近くの川から今年もカジカガエルの清らかな声が聴こえて来るようになった。
イチハツ

AI(人工知能)研究の遅れ

2017-05-22 19:18:01 | 科学
1990年代にパーソナルコンピュータ、いわゆるパソコンが普及し、情報化社会が加速した。2020年代からはIoT(Internet of Things)、AI(Artificial Intelligence)の時代だと言われる。IoT、物のインターネットとは、家電製品、自動車、住宅や都市部の道路までもがインターネットでつながって生活やビジネスまでが変わるとされる。またAI、人工知能は学習機能を有したコンピュータで、人に代わって情報収集と判断を行う。IoTはしかし、利便性の裏側で、企業や国家に個人情報が集積される危険性もはらんでいる。マイナンバーで個人の金融情報は確実に国家に把握され、IoTで個人の行動情報まで把握される可能性が高くなる。すでにインターネットに繋がった洗濯機が発売されているが、洗濯機の稼働状況をメールなどで知ることにどれほどの利便性があるだろう。今月12日に始まった世界中に被害を及ぼした大規模なコンピュータウイルス攻撃は、パソコンの基本ソフトの脆弱性を利用したものだ。インターネットにはこうした弱点もある。一方、AIについて昨年12月、NHKはビジネス特集で、「AIビジネスの2017年 主戦場は日本」と題する番組を報じ、AI先進国の米国が次に日本をターゲットにしており、迎え撃つ日本側の富士通やNECの戦略を紹介した。しかし、マイクロソフトにも勤務歴のある人工知能の研究開発が専門のUEIのCEOである清水亮氏によれば、学会としての取り組みは日本は米国に30年の遅れをとり、AIは初期の神経細胞(ニューロン)間のあらゆる相互接続を模した「ニューラルネットワーク」から、第二段階の記号処理や知識情報処理を主流とするものが中心となり、現在はコンピューターの計算能力が飛躍的に向上したことで、第三段階のかつては上手く学習できなかった多層のニューラルネットワークに大量のデータで機械学習をさせる、深層学習(ディープラーニング)が中心となった。インターネットやGoogleの検索機能は第二段階のものだ。ところが、現在もなお世界のAI研究者の90%以上が第二段階の研究者であると言う。数少ない深層学習の大家たちは、米国Google、Facebook、Microsoftや中国のBaidu(百度)と言った企業の研究所に集まっており、日本では、深層学習専門の研究者がどの大学にもどの研究機関にも、ほとんど存在しない、と言う。昨年秋のGoogleが発表した「ニューラル翻訳」は日本の人工知能研究者に大きな衝撃を与えた。日本では自然言語解析と機械翻訳が研究の主流で、深層学習による「ニューラル翻訳」の抜きん出た精度に太刀打ち出来なかった。昨年3月、Google傘下のDeepMind社の「アルファ碁」が韓国のプロ9段に完勝したことも深層学習の優位性を示した。遅まきながら、日本でもトヨタをはじめいくつかの新興企業も深層学習に注力を注ぐようにはなったが、出遅れを挽回出来るか。何れにせよ、IoTやAIが日本の労働年齢人口の減少や日本の産業の弱点である労働生産性の低さを補う形になるか、が問題だろう。
桐の花

草食恐竜の完全な化石

2017-05-20 19:17:17 | 科学
今月12日、カナダ、アルバータ州のロイヤル・ティレル古生物学博物館で、1億1000万年前の、「4つ足の戦車」と呼ばれるほどの鎧のような皮膚を持つ草食恐竜ノドサウルスの化石が公開された。両肩からは50cmほどの牛のツノのような突起物がそれぞれ1本ずつ突き出している。恐竜が生きていた当時の外見が、ほぼ完全な状態で残されている。消化管の内容物まで保存されていた。体長は平均5m、体重は最大1300Kgもあった。餌を食べている時に、何らかの理由で命を奪われ、洪水で海まで流されて海底に沈み、膨大な時間をかけてミネラル分が皮膚や装甲板にしみこんだことから、生きていた当時の状態が保たれたと考えられている。2億5000年前、地球にはパンゲアと呼ばれる超大陸が形成され、2億1000年前にそれが、ほぼ現在の赤道を境に、南北二つに分かれた。北側ではユーラシア大陸と北米大陸は一つの大陸を形成し、南側ではアフリカ大陸と南米大陸が繋がり、インド大陸と南極大陸が繋がっていた。1億4000年前になると、南側の大陸では現在の南極とインド大陸が分かれ、インド大陸が北上する。恐竜が絶滅した6500万年前には北側ではまだ北米大陸とユーラシア大陸は一つの大陸であり、南側では南米大陸とアフリカが分離し、インド大陸はさらに北上していたが、まだユーラシア大陸とは衝突していなかった。ノドサウルスは北側の北米大陸とユーラシア大陸が繋がっていた超大陸を闊歩していた。恐竜は2億2500万年前から6500万前まで生息していた。恐竜が生きていた時代は、地球全体が現在よりずっと気温が高く、平均気温が10~15度は高かったと言われる。海水面も現在より200m以上高かった。巨大恐竜が出現した頃は酸素濃度も現在より高かった。しかし、6500万年前、現在のメキシコ、ユカタン半島の北西端でユリの花が咲き乱れていた現在のメキシコ、ユカタン半島の北西端に、直径10Kmの巨大な隕石が衝突した。衝突によって、直径100Kmを超える巨大なクレーターが形成された。衝突の破壊力は米ソ冷戦時代に両国が保有していた核弾頭約2万5000発分の1万倍に近いと言われる。衝突によって巻き上げられた大量の塵やガスが成層圏に達し、全地球を覆い、太陽光を遮り、地球は急激に寒冷化した。冷えた水蒸気と蒸発した岩石の成分が変化した濃硫酸が混ざり、強い酸性雨となって、地球に降り注いだ。植物が枯渇し、動物は食料を失って行く。海と陸で多くの生物が死滅した。
鈴蘭