岩手県は他の東北各県と同様、野生動物が豊富で、北海道に次いで面積の大きい岩手県は特に7割以上が山野であるため、野生動物は人と接触することが多くなる。北上川流域に展開する市街地を除けば、市街地と市街地の間に山野があり、そこを通過しなければ、他市町村へ行けない。岩手県にもキツネはいるが、路上で轢かれる動物は猫かタヌキが多い。北海道では圧倒的にキツネが轢かれている。猫もタヌキも夜間、自動車のヘッドライトに照らされると、その場に立ちすくんでしまう。キツネや鹿は比較的早く横切る。しかし、北海道では車のスピードが早いためにキツネも犠牲になるのだろう。岩手県では今、イノシシが増えている。2007年に岩手県では初めて奥州市でイノシシが目撃されて以来、2011年には一関市と北上市で、2012年に平泉町、釜石市・大槌町で、2013年には大船渡市・花巻市・盛岡市まで北上している。山形県や隣接する秋田県でも既に出没している。以前は宮城県南部がイノシシの北限とされていた。イノシシの北上は、一般には温暖化が主因とされている。岩手県や秋田県の人に聞くと、何十年か前に比べて降雪量がずっと少なくなっていると言う。氷床や氷河の融解により、海面上昇が地球規模で起きていると報告されている。しかし、米国海洋大気庁(NOAA)のデータによると、過去1万年のグリーンランドの氷床で観測された地球気温は紀元前8000年から紀元前1000年までは現在の気温より高い状態が安定して持続し、紀元前1000年以降に急激に気温が低下していることが明らかとなっている。過去45万年の氷床コアのデータによると、地球は、約10万年間の氷河期と、約1万年間の温暖期を繰り返している。つまり、今の地球は 1万年の温暖期の「完全な最後の時期」であり、次の氷河期が迫っていると言う。20世紀後半からの気温の急上昇は、過去3000年以上にわたる比較的急速な気温低下期間の長期的な進展の中では、小さな変動の一部でしかないのだそうだ。人為的な要因による地球温暖化の環境への悲惨な影響が警告されているが、その気温変動の規模を考えると、その最高の転換点とされる+ 2℃は、結局は、紀元前1000年の頃の暖かい期間と似通った気候の水準に近づくというだけだと言う。南極のボストーク基地の氷床コアの酸素温度の解析でも、グリーンランドと同じような結果が示されている。いつか北上して来たイノシシが再び南へ帰って行くだけでなく、人間も南下せざるを得なくなるのかも知れない。
敦盛草