四国ではほとんどの桜が染井吉野で関東以西で江戸彼岸桜に属する枝垂れ桜が比較的多く見られるのは京都位ではないだろうか。北海道は山桜が多かった。岩手に来てから驚いたのは東北には枝垂れ桜が非常に多いことだ。日本三大桜と言うのがある。最古の桜とされるのが樹齢1800年の山梨県武川村の山高神代桜で、次いで継体天皇(507~531年)の手植えとされる樹齢1500年の岐阜県本巣市の根尾谷淡墨桜になる。いずれも品種的には江戸彼岸桜である。三番目は樹齢1000年を超す福島県三春町の三春滝桜だ。唯一の枝垂れ桜なのだ。しかもこの三春町には他にも樹齢数百年になる枝垂れ桜が何か所かにある。日本の桜の原種の一つが江戸彼岸桜だが、枝垂れ桜や紅枝垂れ桜はその突然変異から生まれたもので江戸彼岸桜の亜種に属するそうだ。長野県にも枝垂れ桜は比較的多いそうで、長野県、東北に枝垂れ桜が多いというのも何か古の歴史的な背景が伺えるような気がする。秋田県の角館の武家屋敷の通りには圧倒的に枝垂れ桜が見られることから最初は江戸時代から東北に広がったものかと単純に考えていたがどうもそれよりはるか以前から枝垂れ桜が東北で見られたもののようだ。角館の枝垂れ桜はしかし京都に起源があるという。このあたりは歴史的に明確なものがないので今ひとつ定かではない。ともかく岩手でこれまで訪れた寺社の半数以上は間違いなく枝垂れ桜が植えられており、農家をはじめ通常の民家でも関東以西に比べずっと多くの枝垂れ桜が見られる。以前いた愛知県などではほんとうに特定の場所でしか枝垂れ桜を見ることができなかった。それだけ京都の枝垂れ桜の印象が強かったものだが、岩手に来てみるとあちこちで枝垂を見られることに驚いたものだった。染井吉野の並木の美しさも好きだが紅枝垂の青空に映える姿も何とも言えないものだ。
蕾がのぞく吉里吉里の吉祥寺の枝垂れ桜
蕾がのぞく吉里吉里の吉祥寺の枝垂れ桜