釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

国家戦略のワクチン

2020-11-30 19:19:19 | 社会
米国での新型コロナウイルス感染者数は1375万人を超え、死者は27万3000人を超えた。米国のCDC疾病予防管理センターによれば、2019年から2020年のシーズンのインフルエンザ感染者数は3800万人で、1800万人が医療施設で診察を受け、40万人が入院、2万2000人が死亡している。米国では医療保険に加入していないと、インフルエンザでも極めて高額の診療費を請求されるため、感染者数はさらに多い可能性がある。米国の過去10年で、インフルエンザによる死者数が最も多かったのは2017年から2018年にかけてのシーズンの6万1000人である。日本ではコロナ感染であれば、医療費は国から出るため、コロナ感染関係の数値が多少増える可能性はあるが、米国も補助金の関係でやはりコロナ感染とされるケースが増えることは考えられる。しかし、それでも実際の感染者が多いことは間違いない。日本でも米国でも感染者や死者が見落とされている場合がある。岩手県のような地方でも、心肺停止寸前で運び込まれ、死亡後に念のためにPCR検査をして陽性であった人がいた。たまたま検査をしたから感染が分かった例である。軽症や無症状、急変などで見過ごされている例は予想以上に多いのかも知れない。PCR検査を制限したまま、「GO TO」キャンペーンの多くを継続する日本では、いずれ1日の感染者が5000人を超えると考えていたが、癌遺伝子治療の東京大学・シカゴ大学中村祐輔名誉教授は、最近の自身のブログで、「このまま放置して、厳しい措置をしなければ単純計算で年内にも国内1日10,000人を超える可能性も考えられる。」と書かれている。感染者数、死者数世界一の米国さえ、感謝祭で連休中に数百万人が移動したため、「全50州で同時に自然災害が起きているような状況だ。十分なベッドもなければスタッフも足りない。国家的な備えが欠如しているために、まだ供給も不十分だ」とブラウン大学の専門家で救急医のミーガン・レニー氏が米国メディアCNNに語っている。米国ほどではないが、日本でも週末は各地で人出が多く見られていた。今日の英国BBCは、米国のNIAID国立アレルギー感染症研究所アンソニー・ファウチ所長の昨日発した「こんご数週間で新規感染が「急増に次ぐ急増」となる」との警告を伝えている。新型コロナウイルスに感染したミンクは、オランダやデンマーク、イタリアなど7カ国で確認されているが、米国でもユタとミシガン、ウィスコンシンの3州に続いてオレゴン州のミンク農場でもミンクや作業員の間で新型コロナウイルスの感染が見られた。米国のCDCや農務省は「動物が新型コロナウイルスを人間に感染させるうえで大きな役割を果たしているとの証拠は見つかっていない」とするが、危険性があるために殺処分されているのではないか。日本では感染が拡大していてもなお、人の移動を促す「GO TO」キャンペーンが停止されていない。空港検疫の緩和にしてもまるでオリンピック に向けての実験を行なっているようだ。昨日の東洋経済ONLINEは「日本が「ワクチン開発競争に負けた」納得の理由 あまりに鈍感すぎたこの国の感染症対策」と題するニューズウィーク日本語版ウェブ編集部による記事を載せているが、そこでも「健康被害の賠償責任を免じることでより多くの供給を海外製薬企業から引き出す、という内容は、来夏の五輪に向け地ならしを急ぐ政府の観測気球と見えた。」と書かれている。記事によれば、日本が新型コロナワクチンの開発に遅れを取ったのは、国の安全保障への姿勢の違いによると言う。米国では派兵地で感染症が起きたらすぐに兵士に接種させるために、mRNAワクチンが、軍が関与して多額の補助金を出し、開発されて来たと言う。そこへ、新型コロナウイルス感染が発生した今年は、米国製薬企業モデルナだけで、保健福祉省の生物医学先端研究開発局(BARDA)経由で9億5500万ドルの補助金が出されている。ワクチンはワクチン同盟が形作られるほどに、国家戦略的なものでもある。日本も2009年に新型インフルエンザ 感染の危機に直面し、一時的には、ワクチン開発体制の重要性が認識されたが、結局は政治家によりその後無視されて来たようだ。いずれにしてもワクチンに関しては、慎重でなければならない。特に海外のワクチンはこれまでにない遺伝子操作による開発であり、従来のワクチン開発のような長期の治験が行われていない。国産ワクチンでも、旧来の不活化ワクチンを開発しているのは明治HD傘下のKMバイオロジクスの開発しているワクチンだけである。日本政府が契約する遺伝子操作の米国ワクチンや英国ワクチンは早く入手は出来るが、日本人での治験ではなく、長期の副作用についても不明である。新型コロナウイルス感染での危険を避けるためのワクチンで別の危険を抱えると言う矛盾に陥る可能性もある。政府のオリンピックありき、が全てのコロナ対策を、また、経済対策をも歪めてしまっている。

無症状感染者の存在に気付いても

2020-11-29 19:16:19 | 社会
WorldoMetersによると、日本の検査数は100万人あたり2万7421件で、世界の220の国・地域の中で、151番目と言う少なさである。中南米のエクアドル、ボリビア、グァテマラよりも少ない。厚生労働省のHPには、11月26日時点で、1日のPCR検査の最大能力は8万5680件となっているが、これまでで1日で行われた最大の検査数は今月20日の4万3081件が最大で、最大能力の半分である。最も厚生労働省の公表する最大はいつも各所の申告に基づく理想であり、現実ではない。日本の検査は主要国では稀に見る少なさだけでなく、行政検査が主体のため、行政が休日となる土日には検査数が少なくなり、感染者数まで減少する不思議な国である。ウイルスも日本では土日には活動を休むようだ。なお、日本の主要都市では検査結果は翌日公表されているため、行政が休日である土日の検査が少なくなり、その結果は日月で公表されるために日月の感染者数はそれまでよりも減少し、火曜日の公表から再び増え始めるパターンを繰り返している。PCR検査は、遺伝子の断片を温度を変化させることで、何倍にも増幅させる検査方法で、生物系の大学院生などが最初に学ぶ検査方法で、今では様々な分野で行われている検査である。食材の品種を見分けたり、犯罪捜査のDNA鑑定などもPCR検査が使われている。ただ、PCR検査は通常の顕微鏡でも見えない小さなものを増幅させるため、陰圧室のクリーンな環境が整備されなければならない。わずかでも混入を許せば、偽陽性が発生する。9月12日の米国メディアWIREDの英国版の、「The big problem with Operation Moonshot? False positives」と題する記事では、バーミンガム大学the University of Birminghamの生物統計学のジョン・ディークスJon Deeks教授のPCR検査偽陽性率2.3%が紹介されている。PCR検査をすれば、感染していない1000人の人のうち、23人が感染していると判定されると言うことになる。ただ日本では、PCR検査の感度は70%、特異度は99%とされているようなので、日本での偽陽性率は1%と見ていると言うことになる。そして偽陰性率は30%と言うことだ。PCR検査制限を主張する人たちは、この偽陽性、偽陰性の問題を取り上げる人が多い。しかし、そのことを考えても、結局は他には有効な検査方法がない。昨日の産経新聞は、「第3波「見えにくい」クラスター、感染拡大か」と題する記事を載せている。厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織のメンバーである東邦大の舘田一博教授(感染症学)は「症状がほとんどない若い人たちの間で広がっているのではないか。彼らがウイルスを持ったまま動き回り、例えば高齢者が多いところで感染させれば、その中でクラスターが起きる。若い人同士でぐるぐるとつながっていることもある。発生源を特定しづらく、コントロールが難しい」と述べている。続いて記事では「10月に大規模クラスターが発覚したさいたま市の劇団のケースも、東京都内で感染者と接触した役者の男性が無症状で稽古に参加したことがきっかけとみられる。同市が同10日に公表した時点で劇団関連の感染者は62人に上り、その後、70人を超えた。全員が軽症か無症状だったという。」と書かれている。こうした認識があるにもかかわらず、最後はやはりこれまで通り、「舘田氏は「市中感染の蔓延期に入りかかっている」と指摘。「誰もがいつどこで感染してもおかしくない。近距離で話すときは必ずマスクをつけるなど濃厚接触の機会を減らせば、感染リスクをかなり下げられる」と強調している。」となる。無症状者への検査拡大ではなく、あくまで「自粛」要請である。自粛要請が強制となっているのが、欧米のロックダウン都市封鎖であるが、それも一時的な効果しか上げないことはすでに第1波で明らかであった。残念ながら封鎖中に徹底検査をしなければ、終息に近づけない。しかも、それを徹底してもなお、散発的な発生は防げないのだ。中国を見ればそれがよく分かる。しかし、少なくとも多くで日常生活に復帰出来、経済も回復させられる。このことも中国を見れば明らかである。昨日の日本経済新聞は「チャートは語る」で、「中国輸出シェア、再び増勢 2020年は過去最高ペース」と題する記事を載せた。「世界経済の「中国頼み」がまた鮮明になってきた。トランプ米大統領による対中分断政策と新型コロナウイルス感染拡大で物流が滞り、いったんサプライチェーン(供給網)の脱・中国依存の機運が高まった。しかし足元では世界主要国の輸出に占める中国のシェアが上昇し、過去最高を上回るペースだ。このほど合意した東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定がさらに中国の存在感を高めるとの見方も出ている。」「中国依存をさらに加速させる要因になりそうなのは自由貿易圏の拡大だ。米ピーターソン国際経済研究所によると、RCEPの関税削減の効果で世界の輸出額は30年に今より約5千億ドル増える。その半分の2480億ドルは中国が手に入れる。「アジアの供給網で相互依存が強まる」(同研究所)結果、もっとも恩恵を受けるのは中国だ。RCEPに加わらないインドや台湾から輸出の需要を奪う。」とある。感染症であれ、他の病気であれ、早期発見、早期治療が良好な回復の最良の手段であり、それを示しているのが良くも悪くも中国であることは事実だ。日本ほどこれまでの歴史で他国から優れた点を取り入れ、日本流にうまく適応させた国はないのではなかったか。それさえもがもはや今の日本には期待出来なくなったのか。現在の日本の新型コロナウイルス感染の拡大は、しかし、いずれにしろ、どこかで無症状者へのPCR検査の拡大に繋がらない限りは、波となって何度でも押し寄せるだろう。

科学をフル活用しない日・欧・米のコロナ対策

2020-11-28 19:18:09 | 科学
新型コロナウイルス感染者数が世界最多の米国では、感染の勢いが治らず、27日の新規感染者は20万3013人と過去最多を更新し、ロサンゼルスは30日から新たな外出禁止措置を講じる。ニューヨーク州でも4月以来の8000人越えの8176人の新規感染者となった。ニューヨーク州のコロナ検査陽性率は3.72%である。東京都や大阪府の陽性率は15%以上であり、20%を超える日さえある。いかに日本の検査数が少な過ぎるか。米国では昨日、新型コロナウイルス感染による入院者数が初めて9万人を超え、入院患者数は過去1カ月で倍増し、病院の対応能力は逼迫しているとロイターが報じている。しかし、感謝祭の移動で、状況はさらに悪化する懸念がある。欧州では優等生であるドイツさえもがAFPによれば、昨日、感染した人が新たに2万2000人以上確認され、累計感染者がついに100万人を超えた。ドイツ全土で集中治療室に入っている重症患者は、10月初めは360人余りだったが、先週には3500人以上になった。日本では、共同通信によると昨日の死者は31人となり、5月2日と並び最多となった。東京都の新規感染者も570人で過去最多を更新した。26日には、重症者も「第2波」のピークである8月23日の259人を超えて、435人となった。昨日の衆議院厚生労働委員会で、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は「人々の個人の努力に頼るステージは過ぎた」と強い危機感を示し、政府が拡大防止策を取るように訴えたと各メディアが伝えているが、検査を抑え、実態把握が出来ないまま、現在まで感染拡大を許して来たのは、まさに専門家である尾身会長自身である。科学的なデータに基づいて政府を説得出来ないのだ。PCR検査が極端に少なく、国内で感染しているウイルスの遺伝子解析もないため、国内でのウイルス変異の状況が分からない。古いPCR検査機器のままで、人力負担を重ねるだけである。3度目の補正予算が検討されているのに、なぜ、全自動のPCR検査機器の採用を訴えないのか。危機感を訴えたいのは国民であり、専門家の国の代表は、これまで何をしていたのか。日刊ゲンダイDIGITALによれば、25日の衆議院予算委員会で、厚生労働大臣は、英国の著名医学誌「ランセット」の掲載論文を引用して、無症状者にまで検査を拡大しない理由について、「(新型コロナウイルス感染の)蓋然性が高いところで定期的に検査をやると、当該集団から感染を29~33%減らすことができるが、一般の集団に広く検査をした場合には、接触者調査とこれに基づく隔離以上に感染を減らす可能性は低い」と述べたことを伝えた上で、医療ガバナンス研究所上昌広理事長の指摘を載せている。同氏によれば、大臣の引用論文は今年6月の古い論文であり、同じ論文の著者らが10月に発表した論文では、結論が180度変わっていた。「コロナ対策において、日本は東アジアの劣等生です。医学誌の最高権威である米『NEJM』に掲載された米海軍医学研究センターの臨床研究によると、有症状者を中心に検査するだけでは、ほとんどの感染者を見落とす恐れがあるといいます。この研究結果を、日本政府の専門家は分かっているのでしょうか」と同氏は述べている。厚生労働大臣には同省の医務技官が医学的な助言をしたのだろうが、この医務技官たちは国立感染症研究所と共に、データの独占のためにPCR検査を制限していおり、その観点から、有利な論文だけを引用したのだ。しかし、その論文の著者らが、その後、180度違った結論を出した論文までは見ていないのかも知れない。もし見ていたとしたら、まさに悪質な対応である。しかし、とても官僚的ではある。なお、10月に発表された論文の表題は「Estimating the effectiveness of routine asymptomtatic PCR testing at different frequencies for the detection of SARS-CoV-2 infections(SARS-CoV-2感染を検出するためのさまざまな頻度でのルーチンの無症候性PCR検査の有効性の推定)」である。

変異と可視化

2020-11-27 19:13:10 | 科学
NHKの昨夜0時前の集計では、クルーズ船での感染を除く日本国内の感染者累計は14万290人で、死者は2065人である。昨日は釜石でもまた1人感染者が発生し、釜石市は累計3人となった。心配なのは岩手県が今月に入り、9日以後連日感染者が発生していることだ。岩手県は4月の第1波では感染者は出ず、第2波の7月29日に初めて感染者を見た。以後は散発的な発生しかなかった。日本の新型コロナウイルス感染は、仮に今、「GO TO」キャンペーンを中止しても、今後増加して行くだろう。気温がますます下がり、湿度も下がるために、インフルエンザや風邪のウイルスと同じく新型コロナウイルスも夏場以上に活発になる。行動制限は一時的な感染抑止にはなっても終息には不十分で、春のような「緊急事態宣言」を出しても、単に一時凌ぎに過ぎず、その期限が終われば、再び感染が広がって行く。何度も波が押し寄せるだけである。日本以外の東アジアが行っているような、感染の早い段階での徹底したPCR検査と隔離をやる以外には、本来の経済活動へは復帰出来ない。その場合でも、今の日本の空港での水際対策ではただのざるでしかなく、海外から新たな変異ウイルスを持ち込むだけである。検査が精度の低い抗原定性検査に変わっただけでなく、公共交通機関を利用することも監視されておらず、2週間の待機期間も外出が可能であるなど、とても抜穴だらけである。釜石市での初めての感染者も、海外から帰国し、空港からマイカーで釜石の自宅へ戻るまではいいとしても、その後は、自宅から買い物に自由に出かけられる状態であった。そんな状態で2週間の待機中に発症した。空港での検査は陰性であったのだ。根本的な検査拡大をやらないままに経過すれば、経済の本格的な回復が出来ないだけでなく、その前に、まさに医療崩壊することになる。重症化が増加して行くと、人工呼吸器や人工心肺ECMOに数の限りがあることと、それらに慣れた訓練されたスタッフにも限りがあるため、他の病気で重症となった人や、機器の数を超えた重傷者の死亡が増えて行く。見かけ上は機能しているように見えても、実際には選別が行われ、死亡者が増えて行く。それが今、欧米で起きていることである。医療費削減の一環で、重症病棟を減らして来た日本は、想像以上に、医療体制は貧弱になっているのだ。American Heart Journal誌オンライン版11月9日号に掲載されたニューヨーク大学の研究者の論文では、2002~14年にウイルス性呼吸器疾患で入院した95万4521例のうち、動脈または静脈の血栓症の発生率は5.0%であった。これに対して、2020年にニューヨークにおいて新型コロナウイルス感染で入院した3334例では、16.0%に血栓症が発生していた。この血栓症が肺で生じることで、呼吸困難が発生し、人工呼吸器やECMOが必要になる。これまでに1万2000株以上の新型コロナウイルスの突然変異種が報告されているが、25日にNature Communicationsに掲載された英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究によれば、7月末までに99カ国の感染者4万6700人超から集められた新型コロナウイルスの遺伝子を分析したところ、ウイルスは当初、人体に十分に適応しておらず、突然変異によってウイルスの感染能力が高まった可能性があると指摘している。ただし、感染「速度」の上昇につながったものはないと言う。昨日、フランスのAFP通信は、デンマークで新型コロナウイルス感染が疑われた大量のミンクが殺処分されたが、その殺処分されて埋められたミンクが腐敗ガスの発生で、埋められた地下1mの深さから地上へ浮上して来たことを報じていた。米国ジョージ・メイソン大学の研究者らは、ミンクから採取した新型コロナウイルスの新しい4つの変異種を見出した。そして、研究者らは通常よりもはるかに多くの人に感染を広げてしまうスーパー・スプレッダーをこの新しい変異種が増加させる恐れがあると考えている。新型コロナウイルス感染流行の当初に完治した人々の血清中の抗体が変種ウイルスに効力がないことを見出したのだ。新型コロナウイルスは人や動物にも感染し、動物に感染した後に変異して、再び人に感染すると、人の中では感染力や毒性が大きく変化する可能性が高まる。それを恐れて、欧州では多くのミンクが殺処分されたが、感染するのはミンクだけではなく、飼われている犬や猫も同じく感染することが分かっている。ただ、それがミンクのように再び人に感染するかどうかは不明である。いずれにしろ、このウイルスは変異が早く、感染が長引けば長引くほど多くの変異を生み出す。それが開発されているワクチンを無効にする可能性すらある。そこを楽観視する研究者もいて、ワクチンもすぐに修正可能だとするが、修正後には副作用の検証もある。スウェーデンのIpsos社の行った世論調査では、スウェーデン国民の82%が自国の保健システムが感染を克服できるかどうか、疑わしいと考えており、政府が十分な措置を講じていないと考える国民はすでに44%に達している。集団免疫を目指した人口1023万人のスウェーデンは、今や感染者累計が23万6000人を超え、死者は6600人を超え、北欧で最多の国となった。新型コロナウイスルは、検査でしか可視化出来ない。可視化出来なければ感染拡大は抑えられない。欧米流のロックダウンもまた可視化は出来ないため、やはり感染は続いて行く。

コロナ敗戦

2020-11-26 19:11:46 | 社会
世界の新型コロナウイルス感染者数は6000万人を超え、死者は142万人を超えた。日本は感染者が14万人を超えるところまで来ている。日本では2012年まで訪日外国人は1000万人を切っていた。しかし、第2次安倍政権が力を入れるようになり、以後、毎年増え続け、2018年にはついに3000万人を超え、昨年の2019年には過去最高の3188万人を超えた。これだけの訪日外国人を迎えるだけのホテルや移動手段が確保されて、それらを営む企業が維持されていた。そこにコロナ禍が襲った。外国人観光客で潤って来た観光業界は、突然の停止に襲われたわけだ。業者と政治家の絆はこれまでに固く結ばれて来ていたため、政治は「GO TO」キャンペーンで業界の期待に答えた。コロナ禍で落ち込んだのは観光業や飲食店に限らないが、最大与党への政治献金のあり方が「GO TO」キャンペーンをもたらしたのだろう。しかし、「GO TO」キャンペーンは、政府がコロナ対策として国民に求める3蜜などの「自粛」とは真逆である。自粛は動きを抑えるものだが、「GO TO」キャンペーンは動きを促すものだ。動きが出れば感染が拡大するのは誰でも分かることだ。自粛を求める所以もそこにあるからだろう。政府や自治体は科学的な対策を限定し、国民への自粛だけを求める。新型コロナウイルス感染症は感染症と言う病気である。そして、病気の大原則は早期発見・早期治療に尽きる。感染が主に東京に限局し、しかも感染者が少なかった時点で、無症状者を含めた徹底検査をやるべきであったのだ。いまだに有症状者中心の検査しか行っていない。何も感染症専門家でなくとも無症状感染者がいる限り、無症状感染者を含めた大量検査体制を整えねばならないことくらいは十分理解出来ることだ。自粛や仮に都市封鎖を一定期間行っても、再び日常が戻れば、感染は必ずまた拡大する。無症状感染者が温存されるためだ。若い世代が広い範囲で行動し、無症状で感染を広げ、次第に高齢層に感染を拡大して行く。現在の第3波では重傷者も過去最多となっているが、実態は発表されている以上に多く、また悲惨でもある。東京都では重症基準を国とは違った独自の基準を設け、重傷者数を見かけ上少なく見せている。人工呼吸器や人工心肺ECMOを装着した人だけを重傷者とし、国の重傷者基準であるICU集中治療室は対象から外している。従って、東京都は国基準の重傷者は発表の3倍はいるのであり、その意味でも東京都もすでに医療は逼迫して来ている。昨日の日刊ゲンダイによれば、大阪府は重症者数は今月24日、103人となり、大阪府知事は「重症者の病床使用率が50%に達した」と述べたが、大阪府では10月10日~11月19日の間で41人の死亡が確認され、「このうち、重症病床の患者が死に至ったのはわずか6人。約85%にあたる35人は、軽症・中等症の患者が入院する通常病床で亡くなっているのだ。」とある。これは別に大阪府だけに限ったことではないはずである。第1波の時にすでに軽症・中等症から急激に重症化・死亡する例は報告されていた。メディアが報じなくなっただけである。やはり昨日の日刊ゲンダイで、ジャーナリストの立岩陽一郎氏が米国での取材を終えて、日本へ帰国した際の検査や2週間のホテルでの待機について書いている。検査で陰性であれば、2週間のホテル待機が中国の知人の中国のホテルでの2週間の待機などよりはるかにいい加減である。昨日の東洋経済では、医療ガバナンス研究所上昌広理事長が「コロナ第3波「日本に決定的に足りてない対策」 無症状者への検査と院内感染への備えは不十分」と題する記事で、やはり「コロナ第3波対策の肝は、無症状感染者を早期診断し、隔離することだ。」とごく当たり前のことを書かれている。当たり前を書かねばならない現状が問題である。政府や都道府県のアドバイザーとなっている感染症専門家が科学を捨てて、忖度を優先する限り、日本の新型コロナ感染は決して終息せず、経済も回復することはない。米国の物量の圧倒的な優位を知りながら、誰もそれを語らず、太平洋戦争を続けた日本は、今もまた、「無症状感染者を早期診断し、隔離」の必要を語らず、PCR検査の制限を続ける。コロナ敗戦は明らかである。

中央銀行への期待で膨らむ株価

2020-11-25 19:15:16 | 経済
世界の新型コロナウイルス感染者はついに6000万人を超えた。死者は141万人を超えている。感染者が世界最多の米国は感染者で世界の21.6%を占め、死者では18.8%を占める。米国の人口は世界人口78億人のわずか4.2%に過ぎないが。コロナ禍で、失業率は7%近くになり、航空大手3社は存続の危機にあり、多くの小売店が倒産・閉鎖した米国で、昨日は株式市場で、ダウ工業株30種平均が初めて3万ドル台と言う未曽有の株高となった。第2波以上に感染者と重傷者が多くなった日本でも、米国株につられて株価が上昇している。しかし、世界の債務も史上最高になっている。そして、資産が10億ドルを超える世界の富裕層が保有する総資産は、7月時点で10.2兆ドルとなり、これまでの最高だった2017年の8.9兆ドルを上回る。コロナ禍は、コロナ禍以前にあった世界経済の歪みを一挙に拡大させた。コロナ禍による景気の悪化に対して、米国の中央銀行であるFRB連邦準備制度理事会は、2023年までゼロ金利を続けるとして、「あらゆる手段を講じる」と表明している。昨年までの中央銀行頼みの株式市場が、コロナ感染が拡大しているにもかかわらず、いや、だからこそ、さらに中央銀行への期待を膨らませた。コロナ禍は日本でも多くの人の職を奪い、中小企業や大企業さえもが苦境に陥った。それを補うためとして政府は大規模な追加予算を国債発行により賄った。その国債を買うのは日本銀行である。今や日本銀行の資産は699兆円にもなり、そのうち国債が536兆円を占める。貸付金が107兆円にもなっている。株式には35兆円が投じられている。中央銀行が政府発行の国債を大量に買い込むのは戦時だけであった。平時に中央銀行が政府の発行した国債を直接引き受ければ、政府が簡単に予算を膨らませてしまうため、戦後、日本では財政法5条により、中央銀行による直接の国債買い取りを禁じた。しかし、日本銀行は一度市中銀行により国債を買い取らせた後、すぐに市中銀行から買い取ると言う「姑息」な手段で、形式上は財政法5条に違反しないとして、国債の買い取りを増やして来た。間接的に買い取れば、「直接」にはならないとする。まさしく日本の官僚流の言い逃れである。情けないのはそれを誰も追及しないことだ。小学生でも分かることをどのメディアも問題にしない。第1波に見舞われていた今年4月27日の日本銀行の金融政策決定会合では、「国債買い入れ枠を無制限に拡大」すると決めた。日本銀行は打ち出の小槌ではない。政府が発行した国債は、債務であり、たとえ一時的に日本銀行が通貨に換えても、膨大に積み上がった債務は政府が返さねばならないものだ。そして、政府にはそれを返済するだけの税収はない。最後には、ハイパーインフレや資産税のような形で、国民にしわ寄せが来る。事情は米国でも同じである。1971年に実質的な金本位制から離脱した以上、日本や米国の通貨は単に政府への信頼で維持されているに過ぎない。その政府が返済のあてのない借金を今、積み上げている。GDP比で世界最大の政府債務を負う日本政府が、コロナ対策の名で、通年の予算とは別に、すでに第1次補正予算25.7兆円、第2次補正予算31.9兆円を注ぎ込み、さらに今第3次補正予算20兆円が検討されている。コロナ対策と称しながら最新のPCR検査機器は整備されず、PCR検査も拡大されない。窮迫する医療現場へは予算が廻らず、政治献金される業界へのみ予算が使われている。しかも、感染を広げるだけの業界である。中央銀行が直接、国債を買い取ることを、財政ファイナンスあるいは国債のマネタイゼーション(国債の貨幣化)と言うが、現在の日米ではまさにそれが当たり前のように行われており、そんな異常な状態の中で、さらに異常な株式の上昇があるのだ。もはや物を作り、売る基本的な実体経済は崩壊し、中央銀行の通貨印刷だけが支える経済になってしまった。株式市場も企業の適切な資金調達の場ではなくなってしまった。もはや資本主義経済そのものが構造的に維持出来ない状態になってしまった。コロナ禍で、中央銀行によって極端に歪められた株式市場は、遠からず大きな修正を迫られることになる。この時、やはり資本主義国ではまた中央銀行が前面に出るしかない。株式市場はじめ金融市場が暴落し、一瞬でマネーが失われる。中央銀行はさらに大量の通貨を印刷し、市場に流し込む。通貨は簡単に印刷可能だ。問題は通貨への信頼だけである。

遅きに失する

2020-11-24 19:12:09 | 社会
世界の新型コロナウイルス感染者は累計で5950万人を超えた。すぐに6000万人を超えるだろう。死者は140万人を超えた。これまで21世紀に入っただけでも、2002年~2003年のSARS重症急性呼吸器症候群、2009年の新型インフルエンザ、2012年~現在も断続的に発生しているMERS中東呼吸器症候群、そして今回の新型コロナウイルス感染と、感染症は5~10年の間隔で必ず発生している。ウイルスではなく、細菌も抗生剤が効かない耐性菌が多くなり問題になっている。人体は1万年前に現在の身体の仕組みを獲得したと言われる。以来、体内へ侵入するウイルスや細菌と闘って来たが、現代には急速に自然環境を変え、ウイルスや細菌を攻撃するための様々な「武器」を創り出した。ウイルスや細菌も、それらの「武器」から防御するための変身を繰り返すようになった。こうした人とウイルスや細菌との関係は今後も科学の発展とともに何度も繰り返されて行く。日本では2009年の新型インフルエンザで、ウイルス感染の問題に直面した経験があるにもかかわらず、それが生かされず、何らその後、ウイルス感染への国としての対策は形作られなかった。2009年に厚生労働大臣として新型インフルエンザ 対策に当たった舛添要一氏は、その時も、国立感染症研究所や尾身茂氏の対策に不信感を抱いたと言う。別の組織を立ち上げ、そこで対策を立てた。少子高齢化も1990年代後半には明らかで、同じく失われた30年に突入した1990年代には日本の生産性の低さは明かであった。それらいずれの問題も、どの政権も真剣に取り組むことはなかった。ここまで感染が全国に広がっていても、政府や東京都はなおオリンピック開催に執着している。ワクチンへの期待が大きいのだろう。しかし、現在、世界で開発されているワクチンは、感染予防は出来ない。ワクチンによる集団免疫などは期待出来ない。開発中のワクチンは、あくまで重症化を防ぐものでしかない。ただし、副作用も定かではないのだ。今日のロイター通信が「焦点:コロナ「集団免疫」、ワクチンでの獲得期待に潜む落とし穴」と題して、ワクチンの限界を書いている。一方で、米国のように重傷者や死者が多く、医療崩壊寸前に追い込まれている国では、ワクチンへの期待が高まっている。今日のブルームバーグは「【新型コロナ】重症化防ぐワクチン効果に期待-米の死者さらに増加か」と題してそれを伝えている。日本では北海道の旭川市のように、集団感染が発生した医療機関で一般医療での崩壊が目前になっている。現在の医療機関には高齢者が多く入院しており、高齢者の多い老人施設や医療機関は、職員が感染しても無症状であれば、すぐに対応出来ず、感染を施設内で広げてしまう。そうなると、職員の不足を生じ、日常業務が滞る形に陥る。旭川市の2つの医療機関ではまさにそれが今起きている。欧米のように感染者が急増すれば、増加した重傷者の選別が行われる。人工呼吸器や人工心肺ECMOの台数が限られるからだ。当然選別から漏れた人は死亡する。これが欧米の死亡増加の要因である。日本でも現在重傷者数が過去最多となった。いずれ地域によっては、欧米と同じく重傷者の選別が行われることになるだろう。ワクチンが感染を防げない以上、このウイルス感染はここ数年続くことになる可能性が出て来る。無症状感染者を無視する現在の日本の対策である限りは、日本の感染も治ることはない。最も危惧されることは、長期に感染が持続するほどウイルス変異が多くなることだ。それにより、感染力が強まったり、重症化しやすくなることも十分あり得る。いずれにしろ、この新型コロナウイルス感染は思った以上に長期化することになる。そうさせているのは日本の中途半端なコロナ対策である。先日、釜石市で始めての新型コロナウイルス感染者が発生したが、この人は海外から日本へ戻って来た人で、空港での検査は陰性であった。空港では精度の低い抗原定性検査が行われている。幸い2週間の待機期間中に発症したため、他へ感染を広げることが防げたが、中国・韓国など11カ国は入国時の検査だけで、2週間の待機が省略された。空港で見逃される感染者が出る可能性が大いにある。外からの水際対策を甘くし、内では無症状感染者を無視し続ける。これで感染を終息させられるわけがない。日本と言う国は、もはや根本的な問題から目を逸らし、目先の都合だけを優先するその場限りの国策しか打ち出せない国になってしまった。経済評論家の加谷珪一氏は、昨日の東洋経済で、「日本人が即刻捨てるべき「経済大国」という幻想  確実に「小国」になる未来がやってくる」と題する記事を書かれている。記事では昨年12月24日、内閣府宇宙政策委員会基本政策部会で、日本経済研究センター岩田一政理事長が示した「2060年の世界および日本経済の行方」を紹介し、2018年には世界第3位のGDP4.7兆ドルであった日本が、2060年にはインドやドイツよりも少ない4.6兆ドルで、40年後もGDPが全く変わらないことが述べられている。中国は3倍近く、米国は2倍近くになっているが。日本が抱える基本的な問題に手を付けるにはもはや遅過ぎる。新型コロナウイルス感染も同じで、よほど基本的な対策を改めない限りは、もはや感染を終息させることは出来ない。

アジアでの日本の凋落ぶり

2020-11-23 19:10:14 | 社会
もはや今の日本の新型コロナウイルス感染拡大は止めようがないだろう。特に大阪府と北海道は厳しい状況を迎える。今月初めに都構想などに費やしている暇はなかったのだ。北海道では医療機関の集団感染が深刻だ。医療機関は他よりは感染対策がしっかりしているはずだが、それでも新型コロナウイルスは防げない。東京の世田谷区などがやっているように、介護施設や保育所の他医療機関も定期的なPCR検査が必要だ。感染症の鉄則は、早期発見・早期隔離・早期治療に尽きる。特にこの新型コロナウイルス感染では無症状感染者が感染力を持つため、なおさら検査の拡大が必要になる。イタリアの「COVID-19 deaths in Lombardy, Italy: data in context」と題する論文でも無症状感染の増加と重傷者の増加が相関していることを示していた。本来であれば、東京が感染の中心であった頃に、その鉄則を東京に適用しなければならなかったが、政府も東京都も何もせず、結局は「GO TO」キャンペーンで全国に感染を拡大させた。「GO TO」が拡大を促した科学的根拠を問う人がいるが、感染は基本的には人の移動でしか広がらないのだ。物流も無関係ではもちろんないが、人の移動が主である。釜石のような人口3万5000人足らずの小さな街にも何台もの観光バスが来ている。どの地域も経路不明が多くなってもいる。隣国韓国は人口が日本の4割で、国土は4分の1である。現在、韓国の感染者は日本の4分の1で、死者もやはり4分の1である。韓国は第3波を迎えているが、波を重ねるごとにピークが低くなっている。昨日の感染者は330人である。その韓国では2月の終わりから3月初めにかけて第1波が襲った。宗教法人中心に集団感染が発生した。首相が即座に現地に入って、たちまち検査、隔離、治療が実施された。感染者の総数がまだ20人にも達していなかった2月初旬に、韓国政府は民間の検査会社が開発したPCR検査用の試薬を承認しており、民間の検査機関やドライブスルー方式の検査が全国展開され、100万人あたりの検査数は日本の倍である。日本でPCR検査が制限され続けるのは、国立感染症研究所が、保健所などの行政検査のみを通じて感染者データを独占しようとするためである。民間で検査が行われると研究所にはデータが入らない。民間の検査を抑えるために民間検査は保険の敵用から外す。国民の健康ではなく、データの独占のための検査体制である。韓国は2015年にMERSの経験があり、1万7000人近くが隔離対象となり38人が亡くなった。このために、韓国では疾病対策予防センターが中心になって新たな感染症に対応する体制が出来上がっていた。大量検査に対する事前準備、病状に応じた対応医療体制、IT技術を駆使した感染経路追跡など、しっかり整備された。医療では主に3つに区分され、重篤・重症・中等は感染症指定病院で、軽症は自宅ではなく、政府の設置した「生活治療センター」へ、一般患者は呼吸器系症状のある人が別に院内で分離されている「国民安心病院」を受診する。追跡では、クレジットカードの利用履歴や防犯カメラの記録、スマートフォンのGPS機能などを使って、感染者の行動履歴を遡って追跡し、匿名でホームページ上に公開され、誰もが自分の行動範囲とそのデータを比較し、近くに感染者がいるかどうかが分かるようになっている。このITを使った感染経路追跡は、東アジアでは顕著になった。しかし、個人情報がどこまで守られるのか不安もある。ただ、それを言えば、すでにスマートフォンを使う限りは、スマフォ業者やGoogle、FaceBook、Twitterなどには情報が掴まれ、米国ではCIAなど政府機関へもすでに情報が流れていると言われる。しかも、日本でもいよいよマイナンバーカードがそうした個人情報の政府への提供に使われることになりそうだ。来年3月から「健康保険症」と合体し、再来年中にスマートフォンに搭載され、2026年までに「運転免許症」まで合体される。すでに全国隅々まで監視カメラは装備済みである。ITを使った「全体主義化」はもはや共産主義国の特権ではなくなった。日本のようなIT後進国で、心配なのは政府に個人情報が握られることもあるが、海外に情報がハッキングされて流出することもある。あまりに日本のセキュリティが脆弱である。政治家や官僚はほとんどこの点を理解出来ていない。この新型コロナウイルス感染では、感染者情報を集約するために新しいシステム「HER-SYS」が導入されたが、これすらも入力データの誤りが相次いで見つかり、その原因の一つが、入力するための患者情報がFAXで送られることにあった。コンピュータへのデータを直接末端保健所や医療機関からは入力出来ないのだ。情報技術の浸透が中途半端なために、その情報技術そのものが無駄になっている典型的な悪例である。官僚の根深い情報非公開の意識がこうした「システム」につながっているのだ。PCR検査の全自動化や検査所の拡大、医療体制の整備などもお隣の韓国に比べてもずっと日本は遅れている。もうすぐ1年になろうとしているのに、政府は何も整備しないし、分科会の専門家などは、むしろそれを妨害すらしている。科学のない感染症対策であるのなら、もはや相当厳しいロックダウンでもなければ、感染は終息しないだろう。しかし、それをやれば、日本経済は間違いなく歴史上最大の落ち込みになる。今の日本には責任を持ち、対策を実行出来る人材がいない。その意味でもアジアにおける日本の凋落ぶりは顕著になった。

早期発見を妨げ続ける「専門家」

2020-11-21 19:12:18 | 科学
昨日は日中に23度まで上がったが、今日は一気に8度も下がった。最低気温は6度の予想だが、1週間後には0度前後になるようだ。11月としては気温の高い日が続いたが、それでも新型コロナウイルスの感染拡大は連日最多を更新し続けた。気温が下がればなお拡大は止まらないだろう。政府は今頃になって、「GO TO」キャンペーンの一部制限を検討しているが、ほとんど効果は期待出来ないだろう。東京大学先端科学技術研究センター児玉龍彦名誉教授によると、現在の感染の波の原因となっているコロナウイルス株は4番目の株のようだ。4月の第1波とされる波の直前に武漢型ウイルスの感染があり、いわゆる第1波はD614G株と言われる欧米型ウイルスに変わり、8月の第2波とされる感染では日本国内で変異した東京・埼玉型ウイルスとなり、現在の第3波は遺伝子解析が行われていないため、まだ分からないが、これまでのウイルス株とは異なると考えているようだ。現在、欧州で猛威を奮う第2波も欧州の第1波とは異なる20A.EU1株中心の感染力の強い変異株であり、従来のマスクや距離を保つ防衛策だけでは防げないタイプになってしまったと言われる。欧州では規律に比較的厳しいドイツですら感染拡大を抑えられなくなっていると言われる。米国のリベラル系ニュースサイトThe Daily Beastは「Bill Gates Shoots Down COVID Vaccine Implant Conspiracies(ビル・ゲイツはCOVIDワクチンインプラント陰謀を否定する)」と題する昨日の記事で、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツとのインタビュー記事を載せている。ゲイツは、人間にマイクロチップを埋め込むためにパンデミックを利用していると言う陰謀論をあらためて否定した上で、これからは、寒くなるため、今後6ヶ月から8ヶ月の間に流れるニュースは基本的に悪い内容となると述べている。一昨日には世界保健機関WHOのハンス・クルーゲ欧州地域事務局長も、「新型コロナウイルスの感染がまたも急拡大しているヨーロッパについて、今後6カ月は「厳しい」状況が続くだろうと警告した」と英国BBCが昨日報じていた。日本でも、感染が拡大しているため、Google予測もさらに拡大し、12月16日までに現在よりもさらに感染者が6万8894人、死者が701人増えるとされる。一昨日、新型コロナウイルス対策担当の西村康稔経済再生相は、記者会見で「感染がどうなるかって言うのは、本当に神のみぞ知る……」「これはいつも、尾身先生も言われています」と述べている。日本の感染症専門家のトップとされる政府コロナ対策分科会尾身茂会長がいつも「感染がどうなるかって言うのは、本当に神のみぞ知る」と言っていると言う。10月2日の日経バイオテクは、「新型コロナ、第2波で年齢にかかわらず死亡率が低下したワケは?」と題するる記事を載せている。東京都の新型コロナ対策のアドバイザーで、「検査をすれば医療崩壊する」として検査制限を提唱した国立国際医療研究センターの国際感染症センター大曲貴夫センター長らの「研究」の中間解析結果を載せている。2020年9月4日までに登録された345施設の6070例を対象に中間解析したものだそうだ。「その結果、第1波の入院症例に比べ第2波の入院症例では、(1)高齢者の割合が低下した、(2)入院時に重症だった症例が減った、(3)発症から入院までの日数が短くなった──ことが明らかになった。」と言う。さらに、年齢層別の解析では「(1)あらゆる年齢層において、入院時に重症だった症例の割合が低下した、(2)あらゆる年齢層において、入院後の死亡率が低下した、(3)入院時に軽症または中等症だった症例のみを対象としても、あらゆる年齢層で入院後の死亡率が低下した(0歳から29歳は0.0%で同率)、(4)入院時に重症だった症例のみを対象としても、あらゆる年齢層において入院後の死亡率が低下した──ことが分かった。」。そして、「第1波に比べ、第2波で入院した症例では、重症度にかかわらず、あらゆる年齢層において死亡率が低下したことが明確になった。その理由について、大曲センター長は、「発症から診断までの時間が短縮していることが大きいと考えている。軽症のうちに見つかれば、重症化率は下がり、医療的な介入も早期に実施できる。その結果、重症化率や死亡率が下がる可能性はあるだろう」と結論付けている。早期発見・早期治療は医療の大原則であり、それを妨げて来たのは、まさに尾身氏や大曲氏ではないのか。日本では早くからPCR検査の対象に、37.5度以上・4日間を条件とした。このブログでも3月9日には、それを批判的に書いた。この条件が正式に外されたのは5月9日である。第1波より第2波の方が、早く検査を受けられるようになったのだ。それにより「発症から診断までの時間が短縮」したのだ。あまりに当たり前のことを、しかも自らが課した条件のために第1波では、無駄な死をもたらしたのである。しかもこうした分析をしながらも、今なお無症状感染者を無視して、検査を制限し続けている。日本の「専門家」がいかに無責任か。児玉名誉教授の言われるように日本の新型コロナウイルス対策には科学がない。科学がない以上は感染は収束しない。新型コロナウイルスの特徴で厄介なのは、無症状感染者がいて、変異が頻回で、動物との間でも感染し、そこでもまた変異を起こすことだ。つまりは、副作用を仮に度外視してもワクチンの有効性や自然抗体も限定されてしまうと言うことになる。そんな厄介なウイルスを相手に、日本は「科学」と言う武器を持たないでどうウイルスと闘うのか。児玉名誉教授は、日本はいまだにPCR検査の検体を手で技師の熟練度により検査機器に注入している、と言われている。すでに発展途上国ですら、全自動のPCR検査機器を導入していると言うのに。お金の使い所を間違えているのでは。ウイルスを科学的に押さえ込むことが最も早く終息させる方法であり、それがまた経済をも最も早く回復させる。これほど単純なことを何故やらないのか。やはり、やらないための理由が政府にはあるのだろうか。

「東アジア人のコロナ適応」

2020-11-20 19:12:36 | 科学
釜石の周辺部の市ですでに新型コロナウイルス感染者が出ているので、釜石も時間の問題だと思っていたが、ついに釜石でも感染者が2名出た。釜石にはラグビーチーム、シーウェイブスがあり、そこの海外からの選手が発症した。日本へ帰国後、入国した際のPCR検査では不検出だったが、2週間の健康観察中に症状が現れたと言う。夫婦の感染になった。日本全体の感染拡大は第1波、第2波のそれぞれのピークを遥かに上回っているが、「緊急事態宣言」は無論、「GO TO」キャンペーンの撤回すらなく、むしろキャンペーンをさらに延長する話まで出ている始末だ。今日のブルームバーグにはLisa Duの署名になる「The Scientist Who Saved Japan Once Now Battles a New Virus Surge(かつて日本を救った科学者が新たなウイルスの急増と戦う)」なる題の記事の抜粋が日本語版に載せられている。春の第1波で「3蜜」を提唱した東北大学大学院医学系研究科・微生物学分野の押谷仁教授が欧米では注目されていて、海外からのオンラインインタビューが多いと言う。日本が欧米と比べて、感染者数や死者数が少ないのは、日本流の「対策」が功を奏していると見られているようだ。その対策の中心が「3蜜」にあると見られているようだ。この記事を見て、欧米のメディアも何も見ていないことがよく分かる。記事では「コロナ感染拡大抑制に密閉・密集・密接を避けるべきだとのアプローチの有効性を世界が認識するようになっている。」とある。ロックダウンや3蜜回避を実施した欧米や日本は、何故、今もこれほど感染が拡大しているのか。日本は東アジア最悪の感染状況である。欧米と日本ではなく、欧米と東アジアを比べる必要がある。そして、何故、東アジアは欧米よりも少ないのかを考える必要がある。その東アジアの中では、何故、日本が最悪の状況になっているのかを考えねばならない。今月16日、生物学系の論文掲載サイトbioRxivに掲載されたオーストラリアのアデレード大学や米国のアリゾナ大学の研究者による「An ancient coronavirus-like epidemic drove adaptation in East Asians from 25,000 to 5,000 years ago(古代のコロナウイルスのような流行は、25,000年から5,000年前に東アジア人の適応を促進した)」と題する論文によると、研究者らは五大陸の26のさまざまな人々の個体群のタンパク質を調べたところ、コロナウイルスに強く作用するタンパク質を見出した。そして、東アジアの住民には42のコロナウイルスのユニークな組合せがあり、それらのタンパク質は、攻撃的なコロナウイルスに作用する。つまり、抗体的な役割を持つと言うことのようだ。研究者らによると、地域住民のコロナウイルスに対する適応力がはじめて発生したのは約2万5000年前で、また、コロナウイルスの感染の流行がこの地域で定期的に発生したのは2億5000年から5000年前の期間で、その結果、集団の中にコロナウイルスに対する特別な遺伝的な免疫が形成されたのだとされる。東アジアが欧米に比べて感染者数や死者数が少ないのには、それなりの科学的な根拠があると言うことだ。それでも、感染を防ぐには完璧ではなく、「科学的」な対策をしなければ、感染は持続する。無症状感染者が多く、空気感染があることを無視して、検査を限定し続ける限り、1日の感染者が日本全体で5000人に達するのも時間の問題でしかない。現在、日本の感染者は12万人ほどだが、Googleによる12月15日までの予想では、さらに6万2000人増える。ロイター通信によれば、米国では新型コロナウイルス感染による入院者数が2週間で50%増加したそうだ。欧米の感染拡大も冬に向けてさらに拡大しそうだ。あるところで医師1027人に、日本で新型コロナウイルスワクチンの接種が可能になれば、ワクチンを接種するか、との問いに398人、38.8%が接種しないと答えている。特に神経内科と脳外科、救急科の医師の半数以上は接種しないと答えている。接種したくない理由では安全性などのエビデンス不足を上げる人が最も多い。また、接種すると答えた人では、接種するとすればどこのワクチンを接種するか、との問いに対して、大阪大学発のバイオベンチャー・アンジェスのDNAワクチンが最も多く、接種すると答えた629人中の396人である。英国のアストラゼネカは231人、米国のファイザーやモデルナは222人である。アンジェスはちょうど今日、2022年3月までを目処に、関東・関西にある合計8医療施設において、500人を目標とした第2/3相臨床試験を実施すると発表している。確かに、多くの医師が選ぶだけあって、アンジェスは他の海外のワクチンに比べ遥かに長い試験期間を設け、しかも日本人で試験を行なおうとしている。首相が「マスクで会食を」と訴えたマスクは、昨日のロイター通信によれば、「マスクの新型コロナ感染予防効果、期待より限定的=研究」とある。デンマークのコペンハーゲン大学病院の研究結果である。通常マスクでは空気感染は防げない。感染者が他人に感染させないためにマスクをする意味はあるが。中国、韓国、台湾、シンガポール、ニュージランドは、いずれも科学に基づいた対策をしっかり行なって、感染を抑え込んでいる。単なる「標語」を打ち出すだけの「対策」など素人でも出来る。感染集積地の封鎖と徹底検査、隔離と追跡しか感染は抑えられない。変な先進国意識で、良い見本があっても学ぼうとせず、時代錯誤の対策にこだわり続けているのが、今の日本だろう。