釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

債務国の通貨切り下げ

2022-06-24 19:16:27 | 経済
戦後世界の覇権国となった米国は、1980年代のレーガン政権下で巨額の貿易赤字と財政赤字が発生し、いずれもが現在まで膨らみ続けて来た。米国は世界最大の借金国だ。海外に対する債務は23兆ドルで、政府債務はついに30兆ドルを超えた。1971年に金本位制を放棄した米国の通貨ドルは、本来、価値が低下したはずだが、1974年に当時の国務長官キッシンジャーがサウジアラビアのリアドへ赴き、石油をドルで販売するとのサウジアラビアとの間で密約を交わした。これにより、世界は石油を購入するためにドルを手に入れなければならなくなった。世界は自国通貨をドルに交換するため、ドルを買わねばならず、ただの印刷紙幣であるドルの価値が維持された。米国は、輸入の支払いもドルで行うため、ただドルの輪転機を回し続ければ良かった。巨大な内外の債務を抱えても、通貨ドルの価値が維持されて来た。しかし、北アフリカのリビアの最高指導者カダフィ大佐は、リビア中央銀行の143トンの金地金およびほぼ同量の銀地金を利用したリビア・ディナール金貨を発行してアフリカ通貨体制を築こうとした。しかし、2000年末に殺害された。また、イラクのサダム・フセインは、イラク産出石油の取引をドルからユーロに変更した。準備金100億ドルをユーロに替えた。その後、イラク戦争で囚われ、2006年12月30日死刑が執行された。米国は基軸通貨ドルを揺るがす事態は看過出来ない。ロシアは広大な国土に豊富な資源を有する大国であり、米国はロシアを米国の望むグローバル経済に巻き込みたい。ロシア国内に自由に米国資本を投じ、巨大な利益を得たい。ソ連崩壊後の9年間は、それが可能であったが、プーチンが登場するや、事態が大きく変わってしまった。プーチンは重要な石油などの資源を国有化し、ロシアの産業を守る姿勢に出た。米国民主党政権は、こうしたプーチンを潰そうとした。ロシアに隣接するウクライナに米国は資金を投じ、革命を起こさせ、米国寄りの政権を樹立させ、ロシアをウクライナ侵攻へ誘い込んだ。ウクライナ侵攻で、プーチンが国内で窮地に立たされ、自滅すると考えた。しかし、事実は、プーチンは国内の80%の支持を受け、欧米による経済制裁の中でも、貿易黒字は最高となり、通貨ルーブルも最強となってしまった。米国の思惑は大きく外れた。外れただけではなく、政権の支持率はむしろ米国で最低に落ち込んだ。米国に同調したイタリア、フランス、ドイツも政権の支持率は低下している。経済制裁がむしろ、制裁国で急激なインフレをもたらし、国民の生活の圧迫と、産業の資源不足による生産の停滞を生み出した。各国中央銀行のインフレ対策としての金利引き上げが、株式、債券、不動産など資産市場を直撃した。金融経済が主体の米国がその最も大きな影響を受けている。そして、金利上昇は債務者に最大の打撃を与える。その最大の債務者は米国政府でもある。戦後、政府債務が積み上がると、政府は通貨の切り下げで、表面的な債務不履行(デフォルト)を避けて来た。日本の1946年の「円切り替え」も実際は円の切り下げであった。米国は1970年代と1985年にドル切り下げを行なっている。ドルの切り下げは、部分的な借金の踏み倒しである。巨大な債務を抱えた米国や日本の政府にとって、金利上昇は耐えるには限界がある。しかし、金利上昇の原因であるインフレは容易には治らず、むしろ、今後さらに高まって行く。今日のNHKは、「BRICS首脳会議 中国とロシアは対欧米で結束強化を呼びかけ」を報じている。現在、オンライン形式でBRICS首脳会議 が行われている。BRICSはロシアへの経済制裁には参加していない。ロシアは経済制裁により石油の販路を欧州から中国、インドに切り替えた。欧州がロシアに依存していた天然ガス、石油、肥料、農産物などが欧州には入らなくなって行く。希ガスやレアメタルもロシアから得られなくなるため、半導体も欧米では入手しにくくなり、産業全体が大きな打撃を受けることになる。インフレと景気後退が同時にやって来るスタグフレーションがまさに起きようとしている。いずれにしろ、インフレは広範な分野に及ぶ。つまり金利上昇も続いて行くことになると言うことだ。その何処かで、米国は金利負担の限界に達する。経営・情報コンサルタント、吉田繁治氏は、遅くとも2024年には、米国はドルの切り下げを行うと見ている。世界196カ国中148カ国はロシアへの経済制裁には加わっておらず、ロシアや中国は国際決済システムをすでに立ち上げており、ドルからの離脱を始めている。裏付けのないただの紙でしかないドルよりも資源や金に紐づけられたルーブルや人民元が台頭する下地はすでに出来ている。世界は間違いなく大きな転換期にある。中国への経済制裁は、眠れる獅子を目覚めさせ、ロシアへの制裁は眠れる熊を目覚めさせた。米国にとって、もはや引き返すことは出来ない。米国も欧州も地盤沈下は避けられなくなった。ロシアや中国は米国にとって、リビアやイラクとは異なる。武力対抗は出来ない国だ。そのためにウクライナ紛争へは直接介入しなかった。経済制裁が唯一の対抗手段と考えて、経済制裁に踏み切ったが、結局は、それがブーメランのように我が身に飛び帰って来た。恐らく、11月の米国中間選挙では、現在の政権党である民主党は大きく議席を失うだろう。そして、その後の政権運営は厳しいものになる。経済制裁でインフレが高じた国は全て、政権の支持率を落としている。そんな中で、日本だけは、変わらないように見える。恐らく、来月の参議院選挙でも自公多数は変わらないのだろう。国内のインフレがさらに進み、米国発の金融崩壊の津波がやって来て、生活が困窮して初めて、何をすべきだったか、に気付くのかも知れない。日本も遠からず、円の切り下げをせざるを得ないだろう。2024年には20年ぶりの新札発行があったように思うが。
ハマナス

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