釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

中国、ロシアの接近

2022-09-16 19:18:14 | 社会
米国Insider Paperは、15日、「Russia says pipeline to China will replace Nord Stream 2 (ロシア、中国向けパイプラインをNord Stream 2に置き換えると発表)」を報じている。ロシアはプーチン政権が成立すると、陸続きである欧州との経済的結び付きを強めて行った。その表れが4本の主要なロシアから欧州へのパイプライン敷設であった。ノルドストリーム2はドイツへのパイプラインで、完成したばかりであったが、ドイツのロシアへの経済制裁発動で、ドイツは自らそのパイプラインの使用開始を止めた。パイプラインで分かるように、ロシアが進めて来た欧州との経済的結び付きが、ロシアへの経済制裁により途絶した。このため、ロシアは欧州を諦め、中国、インドとの結び付きを強めている。天然ガス、石油をはじめとする資源を欧州からアジアへ転換している。6月の北京で行われた第14回BRICSサミット、今月初めの極東のウラジオストクで行われた東方経済フォーラム、14日から今日までウズベキスタンで行われている上海協力機構SCOなど、ロシアと中国の経済協力と相互の立場の承認などロシアと中国は一層緊密な関係を築いている。昨日のロイターは、「米上院委、台湾政策法案を可決 軍事支援強化や対中制裁盛り込む」を報じた。米国政府のサイトには、今も「中国は一つ」と明記されている。にもかかわらず、現実は、台湾を一独立国であるかのように台湾支援を強化している。米国外交政策メディアthe National Interestは、昨年10月4日の段階で、「America Cannot Take On China And Russia Simultaneously(米国は中国とロシアを同時に相手にすることはできない) U.S. concerns about the risks of fighting a coming war with Russia and China are well-grounded, given it is unprepared to fight even a purely conventional war with them.(米国は、ロシアや中国と純粋な通常戦争さえ戦う準備が出来ていないことから、来るべき戦争を戦うリスクについての懸念は十分に根拠のあるものである。)」を報じていた。記事では、中国共産党の公式動画チャンネルが昨年7月投稿した内容「台湾を解放するとき、もし日本が武力介入する勇気があれば、たとえ一人の兵士、一機の飛行機、一隻の船でも・・・まず核爆弾を使用する。日本が2度目の無条件降伏を宣言するまで核爆弾を使い続ける・・・ロシア、北朝鮮と手を組む。3本の矢(国)が一緒になって、日本本土を徹底的に、深々と射抜く。」を伝えている。記事の筆者は「この中国政府の日本に対する威嚇は、米国の指導者に対する微妙な警告でもあったのだろう。米国の指導者が台湾をめぐる戦争に軍事介入すると脅せば、中国はロシアや北朝鮮の同盟国とともに米国本土に対して同じように連携して攻撃する可能性が高いからだ。」と書いている。ウクライナでのロシアとの戦いは、すでにロシア対米・NATOの戦いに変わりつつある。ウクライナ側の武器も旧ソ連製のものから米・NATOの武器に変わって来た。しかし、米国とNATOの特にドイツやフランスの足並みも同時に乱れ始めて来た。昨日のドイツのメディアDIE WELTは、「Die USA zweifeln immer mehr an der Verlässlichkeit von Olaf Scholz(米国はオラフ・ショルツの信頼性をますます疑っている)」を報じている。「ワシントンはドイツ首相のキエフに対する基本的な忠誠心を疑問視し、ベルリンに明確な要求を突きつけている。」とある。ある意味でこれは当然の成り行きでもある。NATOの一員であるドイツは、米国主導でロシアへの経済制裁を始めたが、そのしっぺ返しが最も強かったのがドイツである。エネルギー資源の枯渇はドイツの産業と国民生活を直撃している。日本のメディアは報じないが、ドイツ国内の多くの都市で、市民の抗議運動が続いている。シュルツ首相の政権自体が脅かされかねない状態になっている。米国もインフレが高まってはいるが、エネルギーはドイツ以上に確保されており、民主党政権は、捜査当局FBIを使って、反対勢力であるトランプなど共和党系の人々を抑え込もうとしている。ドイツのシュルツ政権より少しは有利な状態にある。14日のベルリンのニュース誌『FOCUS』のインタビューで、ドイツ連邦軍のエーバハルト・ツォーンEberhard Zorn総監は、「ウクライナ側が本当に反撃する力があるのか、ドイツ連邦軍最高位の軍人であるツォーン氏は疑問視する。「少なくとも3対1の優位が必要だろう」」と述べている。そして、これ以上の武器提供に警告を発している。ドイツの負担が大きすぎるのだ。米英は欧州を巻き込んで、ロシアをウクライナ侵攻に引き入れ、今また台湾支援を公然と表明し、中国を台湾侵攻に引き込もうとしている。それらによってロシアと中国を弱めようとしているのだ。凋落する米国にとって、勢いを増すロシアや中国はまさに「脅威」なのだ。米国を超える大国の存在を認めない。同盟国である日本さえ、米国を超える存在になった時、潰されたのだ。今の米国はこの時の米国以上に衰退している。しかし、そのためになお、米国の焦りは強い。ウクライナや台湾を通じたロシアと中国との間接的な戦いであっても実際には戦いを維持することは米国にとって極めて厳しい。武器と資金の供給を二面で維持することが可能なほどの経済的余裕はもはや米国にはない。しかも国民がそれを支持しなだろう。中国からの物資が途絶えれば、米国内のインフレはさらに高まる。これまで米国は新自由主義の名の下、グローバリズムを推進して来た。それにより米国は他国から大きな利益を得て来た。しかし、それも余地がなくなり、ロシアを潰して、ロシアの資源を手に入れようとした。軍需産業はそれを大いに支持した。同じ手を台湾で打とうとしている。残念ながら、ことは米国の思惑通りには行っていない。むしろ、ロシアや中国を敵視することで、自らの経済を疲弊させている。軍需産業すらロシアや中国との貿易が経たれれば、原材料・部品の調達不足に陥る危険性があるのだ。米国の核兵器や原発のウランはロシアに依存している。経済制裁の強化拡大は、極端な保護貿易以上に自国経済の破壊をもたらす。保護貿易では物資は途絶えないが、制裁ではそれが途絶えてしまい、自滅を招く。米国も欧州もあまりにも愚か過ぎる。日本は台湾問題を口実に軍備拡大を打ち出したが、経済では、欧米ほど態度を明確にせず、ロシアからの天然ガスを確保し、中国への制裁もさほど明確ではない。
花園衝羽根空木