釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

人と動物の住環境

2012-04-30 19:12:44 | 文化
今日は青空が見えない薄日の射す一日になった。どこへ出かけても、庭先に立っても、どこかから必ずウグイスの声が聞こえて来る毎日になった。これから夏まで釜石ではこの声が聞かれる。他の小鳥たちもこうして気温が上がって来ると、賑やかなさえずりを聞かせてくれる。近所を歩くだけで様々の色合いの花が目に入って来る。昨年の今頃はさすがにこうした春を味わう気分にはなれなかった。と言うより、余裕がなかった。むしろ、気が付けば春はいつの間にか過ぎていた、と言った感じだった。釜石の仮設住宅では、この連休中もいろいろとイベントが行われるようだ。都会へ出ている人たちも、今はたくさん釜石へ戻って来ているようで、食事のために入った店では、帰省した人たちを伴った家族連れでどこも一杯だ。他府県ナンバーの車もいつも以上に多いし、ちょっとした事故までいつもより多い。交通量が多くなったせいか、車の犠牲となったタヌキも多く見かける。北海道だと北キツネが車の犠牲になるが、釜石近辺ではタヌキが犠牲になる。タヌキはキツネに比べても動きが敏捷ではない。先日赤羽根峠下の山野草店へ行った時、峠を下って間もなく、車の中で娘と息子が「あ、猪だ」と叫んだ。通り過ぎた車を戻らせて、見てみると、日本カモシカだった。道路そばの崖にコンクリートを吹きかけた、その中間に作られた足場用のスペースにまだ若い日本カモシカがこちらを向いて立っていた。少しの間様子を見ていたが、すぐに姿を消した。日本カモシカを見たのはこれで二度目だ。以前は岩泉に片栗の花を見に行った時に、その片栗の群生する林の中に立っている日本カモシカを見た。その時は、家人が急に「こんなところに馬がいる」と言った声で振り向いてみると日本カモシカだった。春になって新芽を求めて道路際まで出て来ていたのだろう。ウィキペディアを見ると日本カモシカの分布域は京都府以東の本州、四国、九州となっている。しかし、東北にも日本カモシカは結構棲息している。少なくとも岩手県の人たちにとっては日本カモシカは珍しいものではない。比較的よく見かける動物だ。鹿も五葉山が北限だと言われるが、実際にはそれよりさらに北にも棲息している。むしろ鹿の場合は、数が増えているためさらに広く分布しているようだ。猪の方は北限が太平洋側が宮城県まで、日本海側が新潟県と言われていたが、近年はこちらも北上しているようで、山形県や岩手県南部でも捕獲された個体がいるようだ。温暖化のためもあるのかも知れないが、最も影響を与えているのは開発ではないかと思う。青森県の縄文時代前期中頃からはじまる三内丸山遺跡でも猪の骨が発掘されており、縄文時代の猪形土製品は北海道から近畿地方に分布していることからも、当時は北海道まで猪がいたものと思われる。その後の気候変動により、生態系が変わり、現在の分布になったのだろうが、昆虫類の北上のように気温の温暖化も一因ではあると思うが、動物の場合はそれ以上に開発による環境変化が大きく影響しているのではないかと思う。東北は開発が関東以南に比べてずっと少なく、植物や小動物もたくさん分布している。動物たちの環境はある意味で整っている。昨日も福島県沖や岩手県沖でM4以上の地震があった。こうした天変地異の現れる時期こそ人間の生き方をもう一度考える必要があるのだと思う。
庭の白花白根葵(しろばなしらねあおい)