釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

先人たちの恩恵

2012-04-05 19:18:43 | 文化
昨日は風の被害が東北各県でも出ていたようだ。釜石では仮設住宅の屋根が飛ばされたり、仮設診療所のガラスが割れたりした。国道283号線では大型トラックが横転し、一時交通が渋滞した。停電も地域によっては見られた。夜に入り雪がまた降った。今朝は晴れたが愛染山はじめ周囲の比較的高い山が雪で真っ白になり、そこから運ばれて来る風なのか、風も冷たい。昼休みに所用で職場から車で出かけた時に、増水した甲子川で釣りをする人を見かけ、個人の庭先では梅が開いているのが目に入った。その近くの空き地には蕗のとうも顔を出していた。これからは釜石でも様々な花が見られるようになるだろう。写真を撮ることが趣味の一つなので、出かけることも多くなるだろう。花は季節によって、形や色の異なるものが次々に目を楽しませてくれる。この形も色も光の反射で人は認識出来る。赤い花は赤以外の光を吸収し、赤だけを反射する。その反射された赤の色の光を目に受けている。カメラの原理は子供の頃作ったピンホールカメラと基本的に変わらない。カメラに画像が映し出されるのは光による。この光を調節するのはシャッタースピードと絞りによる。一般的な「バカチョン」と呼ばれるコンパクトカメラはカメラ側でこのシャッタースピードと絞りを自動的に処理してくれている。コンパクトカメラでも高級機になるとレンズを交換出来るいわゆる一眼レフと呼ばれるカメラと同様に自分でシャッタースピードや絞りを調整出来るようになっている。スポーツや飛んでいる鳥、流れる水など動きのあるものを撮る場合はシャッタースピードを優先して決定しなければならないが、普通の景色や動かない花などを撮る時には一般的にはむしろ絞りを優先して決定する。一眼レフカメラではカメラ本体もさることながら、レンズの方がいいレンズと言われるものほど高価になる。そしていいレンズと言われるものはほとんどレンズにより決まって来る絞りの値が小さい値になる。絞りが小さい値のレンズほどたくさんの光を取り込むことが出来る。この値はF値と呼ばれる数字で表現され、人間の目が基準になっている。人間の目はF値が1だ。この人間の目に近い値のF値を持つレンズほど高価になる。F値が小さいと写りがどう違ってくるか。F値は簡単に言えばピントの合う範囲の広さを表す。従ってF値の小さい、人の目に近いレンズほどピントの合う範囲を狭く出来る。それによって、ピントの合っていない他の部分をぼかすことができるので、ピントの合っている部分をより強調することが可能になる。F値の小さいレンズではカメラを調整することでF値を大きく、つまり絞りを大きくして光の取り込み量を少なくすることは可能だ。しかし、もともとF値の大きいレンズではいくらカメラを調整してもF値をさらに小さくすることは出来ない。結局F値がもともと小さいレンズほど自由度が高くなり、様々のシチュエーションに対応しやすくなる。1950年代に日本では各社がこのF値の小さいレンズの開発を競い合い、人の目に近いF値が1.1というレンズも現れたが、1961年にキャノンは0.95という人の目より小さいF値のレンズを開発した。現在でもこれを超えるレンズは開発されていない。F値の小さいレンズは光をたくさん取り込むことができることから、一般的には「明るいレンズ」と言われることが多い。ただF値が0.95ともなるとピントを合わせるのが難しくなるようだ。現在市販されているレンズでは最高級のレンズでもF値は1.2くらいで留められている。古いレンズなどではかえってF値が3.5くらいのレンズの方が味のある描写が得られたりする。レンズの構成そのものは従ってほとんど何十年か前にすでに開発し尽くされていると言っていい。現在の我々は先人たちのなみなみならぬ努力の結果を享受させてもらっているのだ。
望遠レンズでもF値の小さいレンズと同様に背後をぼかすことができる