釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

日本の桜

2012-04-14 19:17:13 | 文化
今日は曇っていて少しいつもより寒い。相変わらずイソヒヨドリが可愛い声で鳴いてくれる。今日はカワラヒワの声も聞こえて来た。冬には枯れていた植物も新しい芽を次々に出して来た。よく見ると杏の木にも赤味を帯びた蕾が出ている。先日職場の方から裏山には自生するカタクリの花も見られることを聞いたが、裏山は春になると熊も冬眠から目覚めて、裏山にも徘徊するようになる。裏山のカタクリの花も見てみたいと思うが、ちょっと躊躇する。釜石ではカタクリの花は八雲神社のある大天場山で見ることが出来る。礼ケロ町の日高寺の境内でも少し見ることが出来る。震災前には鵜住居の常楽寺の境内にもたくさん咲いているのを見かけたことがある。しかし、ここは津波が襲ったので、今でも咲いてくれるかよく分からない。釜石の桜は今月末頃にならなければ咲かないが、先日日本三大桜の一つで、日本最古と言われる樹齢2000年にもなり、日本武尊が植えたと伝えられる山梨県北杜市の日蓮宗の寺、実相寺の山高神代桜が咲いたことが報じられていた。三大桜である岐阜県本巣市の樹齢1500年の淡墨桜とこの山高神代桜は品種が江戸彼岸桜で、樹齢1000年以上の福島県田村郡三春町の滝桜は江戸彼岸系の紅枝垂れ桜だ。日本は桜を愛でる国になっているが、花を愛でる文化は最初は宮廷に始まり、中国の文化が入ることで、奈良時代は梅が主に貴族たちによって愛でられていた。平安時代に入り、嵯峨天皇が南殿に桜を植えたのがいわゆる花見の始まりとされているようだ。万葉集でも桜は詠われており、その頃の桜はあくまでも野生の桜を見ていた。日本の野生種では山桜、大山桜、大島桜、霞桜、豆桜、高嶺桜(嶺桜)、丁字桜、江戸彼岸桜、寒緋桜の9種類ほどが知られており、中国では野生種に33種類があると言われる。桜を愛する日本人はこの野生種を利用して、その後300種類にもなる桜の品種を生み出している。吉野の山桜は古くから人々の目を楽しませて来た。三春の滝桜に見られるように東北は中でも枝垂れ桜を見ることが非常に多い。関東以南は江戸時代の染井吉野の作出で広まったが、東北はむしろ古くから江戸彼岸系の枝垂れ桜が人々に愛されて来たのではないかと思う。確かに何本も咲き誇る染井吉野を見ているときれいだが、情緒的には東北の枝垂れ桜の方がいいように思う。品種改良を受けた染井吉野は寿命も短い。100年近くにもなるとせっかく植えた桜並木が駄目になってしまったりする。時代の変化の影響が比較的少ない東北には長く変わらない田園とその傍らに咲く桜を見ることの出来るところがたくさんある。東北ではまさしく未だに「美しい日本」と言える風景が残されている。これから北上して来る桜前線によって、今年もその風景を楽しむことが出来る。
庭の桜はまだ小さく蕾が出て来たばかりだ