釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

今やまぶし過ぎるほどの理念

2011-09-23 19:26:25 | 文化
午後から曇って来て夕方には小雨も降ったが今朝は久しぶりに晴れてくれた。白雲がゆっくりと東へ流れて行く。家の中に迷い込んだコオロギを何匹か外へ逃がしてやったが、その後もまた別のコオロギが迷い込んで来る。今日も家の中の2カ所からコオロギの鳴く音が聞こえて来た。庭のコオロギたちの鳴くのに呼応しているのだろう。日が刺す庭で秋風に揺れる葉影は一層すがすがしさを感じさせてくれた。作者不明の万葉歌「秋風の寒く吹くなへ我が屋戸の浅茅が本に蟋蟀鳴くも」が我が家の庭に自然に溶けあって来た。この数日間の雨で庭では逞しい雑草が生気を取り戻してあちこちで伸びている。そこには花を咲かせた雑草も多い。できるだけ邪魔にならないものは抜かないでそのまま花を咲かさせている。オダマキや朝顔までどこかから飛んで来たのか枝を伸ばしている。以前藤を植えたプランタンに月見草が咲いていたが、大阪からやって来ていた植物好きの息子が知らずに抜いてしまった。今年は我が家では月見草の花を見ることができない。新しく出た「アメイジング・グレイスAmazing Grace」のDVDを見た。娘や息子たちもゴスペルで歌っていた。この映画では日本人の本田美奈子が歌っている。18世紀末の英国の奴隷貿易の廃止が描かれている。帆船ものの小説が好きでたくさん読んでいるが、そうした中でも英国の帆船が米国やフランスの国旗を掲げた奴隷貿易船を拿捕する場面がよく出ていた。考えてみればリンカーンの奴隷制度の廃止より早く、英国の奴隷貿易の廃止が行われていたのだ。アメイジング・グレイスの歌もかって奴隷貿易船の船長であった英国人が教会牧師となった時に作詞した賛美歌だった。今は英国より米国でよく歌われている。スコットランドやアイルランドの民族楽器であるバグパイプで演奏されることも多い。「Amazing grace how sweet the sound That saved a wretch like me. I once was lost but now am found, Was blind but now I see.」という歌詞を考えているとまるで親鸞の「善人なおもて往生をとぐ いわんや悪人をや」を思い出す。罪深い奴隷貿易に携わった私のような人間をも救って下さる神なのだ、という感謝から生まれた歌だ。今日の東京新聞によると経済産業省の官僚古賀茂明氏が昨日辞表を提出し26日付で正式に退職するという。少し前にも退職するという誤報が流れていたが、今回はひょっとすると本当かも知れない。古賀茂明氏は今月19日の北海道文化放送「U型テレビ」で「官僚って何なのか、・・・公僕、・・・自分より国民のため、人のため」でなければならないと言われている。しかし、現実の官僚は政策に付け込んで必ず自分たちの省益を追及している。18世紀の英国人も現代の一官僚も理念の原点に立って、まぶしいくらいに見えてくる。電力会社や政治家、財界、報道や一部の学者を見ているとその腐敗の構造があまりにも行き過ぎており、古賀茂明氏の著書名の如く、『日本中枢の崩壊』が現実的に思えて来る。番組の中でも具体的に安定した利益を元に電力会社が政・官・財・報道・学者を支配した構図が描かれている。資材調達で高額の取引により財界も頭が上がらない。報道は800億円の広告費で、学者は研究費名目で多額の金銭が投じられる。それら全てがコストに組み込まれる。電気料金の算定はその全てのコストの3%の利益が自動的に得られる仕組みになっている。コストがかかればかかるほど利益が大きくなる総括原価方式がとられている。1400億円かかる火力発電所より、3000億円の建設費がかかる原子力発電所の方が事業固定資産が大きくなるためコストが大きくなり、その分コストの3%利益も大きくなる仕組みのため、電気料金は絶対的に下がらない。効率の悪い原発が増えれば増えるほどコストが重み、3%利益はさらに大きくなる。電気料金に含まれる税金は一般会計ではなく特別会計扱いのため国会のチェックが働かず、経済産業省の官僚たちの裁量下におかれ、省益の追及に利用されて行く。一般会計80兆~90兆円に対して、官僚たちがほとんど自由に使える特別会計は400兆円近い。こうした構図が温存される一方でろくに除染も行われないまま福島第一原発周辺の緊急時避難準備区域の解除が今月中に行われさらなる被曝にさらされ、農産物や観光業への補償が十分でないため生業が成り立たない状態に置かれた人たちがいる。
茅萱 (ちがや)