釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

無視され続ける内部被曝

2011-09-08 19:20:52 | 文化
もう釜石はすっかり秋に変わってしまった。何だか夏があっと言う間に過ぎて行ったような感じだ。関東以南と北海道の間にあって気候的には春と秋が長い。それだけに花が長く咲いている。北海道のアイヌの間では江戸時代まで2倍年歴と言うものが使われていた可能性が強いらしい。現在の1年を夏と冬でそれぞれ1年と数えて2年とするものだ。『菅江真澄遊覧記』の「えぞのてぶり」で菅江真澄がアイヌに140歳などの超長寿者がいる割にそれらの人たちがそこまで老けていないことに驚いている様子が書かれている。北海道は東北よりずっと冬が長く、その冬に対して暖かくなった時期を夏として1年を二分した感覚で捉えていたのだろう。太平洋のパラオ諸島でもこの二倍年歴が使われていたそうだが、こちらは北海道とは逆に夏を中心に、それ以外と二分したのかも知れない。聖書では新月と満月を規準とした24倍年歴まであるそうだ。「ノアの箱船」のノアは950歳まで生きていたといのも結局は40歳弱だ。自然の変化と文化が密接に関係しているということなのだろう。報道は視聴率と大きく関係するためか、いつも新しいソースを求め、古いソースが消えて行く。震災や原発事故の記事も日増しに少なくなって行く。しかし、震災や原発事故も決して終息したわけではない。被災者の苦闘は続いており、福島第一原発からの放射性物質も放出され続けている。民主党の鳩山由紀夫元首相は政治家の中ではこの原発事故後、熱心に原発事故の勉強会を開いている。その勉強会の中で鳩山由紀夫元首相の質問に対し、原子力安全委員会の規制課長は福島第一原発からの1日の放出放射線量を「10の14乗ベクレル(/m2)」と答えている。100兆ベクレルというとてつもない放射線量が毎日放出され続けているのだ。ICRP(国際放射線防護委員会)も国も外部被曝だけを問題にして内部被曝を考慮しようとしていない。広島への原爆投下以来ずっと被爆者医療に携わって来た肥田舜太郎医師は、原爆投下直後から米国、日本政府は内部被曝の事実を秘密にして来た、と語っている。内部被曝の事実が公にされると原爆被曝の悲惨さが、それ故に残酷さがさらに倍増し、核実験が不可能となり、原子力発電や劣化ウラン弾の利用へと繋がらなくなるからだ。しかし、チェルノブイリ原発事故と最新のDNA分析の進歩で内部被曝の事実が明らかになっている。そして外部被曝と内部被曝の相違も知られるようになった。外部被曝は単純に線量に比例して、放射線量が大きければ、被曝による障害も大きくなる。しかし、内部被曝は必ずしも線量に比例しない、むしろ、線量が大きければ細胞は死滅するため逆に問題を残さない。かえって線量が少ない方が細胞は死滅せず、傷付いたDNAを遺し、異常に繋がってしまう。飛程が40マイクロメートルのα線は体内組織の中で周辺にある結合した原子を10万カ所で切断するだけのエネルギーを持つ。現在の日本の飲食の規準値はこうした内部被曝については世界のどの規準と比べても全く考慮されていない。従って、たとえ規準値内だとされても内部被曝を受ける可能性が十二分にある。飲み物でみると、米国は0.111、ドイツは0.5、WHOは1、ウクライナ(セシウム137)が2、ベラルーシでも10である。しかも国際法では原発排水基準でさえヨウ素131で40、セシウム137で90でしかない。それが現在の日本の暫定基準では乳児で100、成人ヨウ素131が300、セシウム137が200である。いずれも単位はベクレル/ℓ。原発廃液以上の放射性物質を含むものが乳児にさえ認められている。食べ物でも同じような状態になっている。米国170、WHO10、ベラルーシの子供37、ベラルーシの野菜100、ウクライナの野菜(セシウム137)40、日本の輸入規制値370、に対して現在の日本の暫定基準なるものは野菜がヨウ素131で2000、セシウム137で500にもなっている。食物での単位はすべてベクレル/Kg。それで「ただちには影響ない」と言ってすませられている。いったい事故前の放射線規準値とは何だったのか。あまりにも安易で稚拙な規準値の変更が行われている。歴史的に最悪の規準となるだろう。
秋の訪れ