こころのたね

ここでまく種が、どこかで花を咲かせてくれたらいいな(*^_^*)
2018.8月より再開!母になりました✨

『あなたはそこに』

2007-02-18 15:11:29 | 
『あなたはそこに』は、谷川俊太郎さんの詩のタイトルです
この1つの詩に田中渉さんが挿絵を描き、1冊の本になっています
帯に書いてあった、「世界でいちばん短い恋愛小説」という言葉が気になって、私はこの本を手に取りました



人と人が出逢い、知り合いになり、時を重ね、絆を深め、別れが訪れ、更に時が経ち、思いを抱きしめる・・・
そんなに長い詩ではありません。
けれどこの1つの詩の中には、こんな物語があります

一瞬の出逢いと、永遠の別れ。
身近な温もりと、彼方の冷たさ。
それぞれに背中合わせの二つ。けれど決して切り離すことの出来ないこの二つ。
出逢いの喜び、別れの悲しみ、人を思う優しさ、一歩を踏み出す強さ・・・
それらすべての儚さ、尊さを感じました



この詩は、こうして結ばれています。
“ほんとうに出会った者に別れはこない
 あなたはまだそこにいる
 目をみはり私をみつめ くり返し私に語りかける
 あなたとの思い出が私を生かす
 早すぎたあなたの死すら私を生かす
 初めてあなたを見た日からこんなに時が過ぎた今も”


言葉が、心にスッと染みて込んできました
少しだけ、ほんの少しですが・・・この言葉の意味が分かる気がしています
こんな風に言葉にはできないけれど、私も同じように思っています


どんなに泣いても叫んでも願っても、訪れた永遠の別れに逆らう術はありません。
「出逢わなければよかった」「いっそ忘れてしまえたら」と、悲しみや苦しみが襲ってきます。
でも止まることなく流れる時間、暗い闇の中で、それでも自分は生きていかなくてはなりません。
受け入れがたい現実が、想像もできなかった状況が、やがて日常となります。
その無理やりの日常の中で、優しさを受け、喜びを知り、たくさんの出逢いがあり・・・そのうちに再び差す光。

楽しく幸せな思い出は、心を苦しめたり引き裂いたりする為にあるわけじゃない。
笑って振り返られるようになった時、ようやく気付くこと。
出逢わなければよかったはずがない、忘れてしまえるわけもない。
一緒に居られた思い出、別れに打ちのめされた自分、乗り越えた心。
すべてかけがえのないもの。
二度と会えなくても・・・その人の存在も、思い出も、気持ちも、私の中から消えることはないんですね。
どれだけ時間が経っても、どれだけ新しい世界が広がっても・・・一緒に歩き続けているんです。
これが“ほんとうの出会い”ということなら――それはとても意味のあること



“ほんとうに出会った者に別れはこない”
初めて詩を読んだ時に、この言葉がすごく心に響きました
生きている限り、あらゆる場所で色々な出会いが待っていると思います
けれど、その出会いの中で「ほんとうの出会い」は、どれだけあるでしょう。
私は出来るだけたくさんの人と、ほんとうの出会いをして、ほんとうの絆を深めて、ほんとうの気持ちを大切にしていきたいなぁ・・・


人と人との繋がりを問いかけてくる、美しくせつない詩です