なだれ込み研究所の一日

物語作家を目指すもの書きが、ふとしたことから変な事務所で働くことに!
日々なだれ込んでくる人や仕事、モノやコト観察記。

提言から実験、そして事業へ

2007-06-16 21:57:59 | スローライフ
本日、掛川市市民活動団体推進モデル事業の提案審査会があった。NPOスローライフ掛川は、「金ちゃんカフェ実験~報徳図書館と市民をつなぐオープンカフェ~」を提案し、500満点中430点で採用された。

今回、このプレゼンに出席するにあたり、提案書作成段階だけでなく、発表原稿においてもたくさんの方のアドバイスをいただいた。直しに直した原稿で、伝えたいことをきちんと伝えることができたと思う。
総評の中で「目指しているものが明快かどうかが高評価につながっている」というお話があったが、アドバイスをもらうたびに書き直したことで、自分自身、目指しているものがどんどん明快になっていったように思う。

たくさんの人に支えられた今回のプレゼン。
どんなふうに発表したか、「なだれ込み研究所の一日」をご覧の皆さんにこっそり披露します。ほとんどこの通りにしゃべっているので、私のドキドキを感じながらお読み下さい。
皆さん、本当にありがとうございました。

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NPO法人スローライフ掛川のK住と申します。今回、掛川市市民活動推進モデル事業として「金ちゃんカフェ実験~報徳図書館と市民をつなぐオープンカフェ~」を提案します。どうぞ、よろしくお願い致します。

まず、私ども、NPOスローライフ掛川ですが、平成16年7月の設立以降、生活提案NPOとして、「スロー」というキーワードで人と人、人と地域をつなげ、地域資源を生かしたまちづくりをすすめています。

昨年度の、掛川市市民活動推進モデル事業では、「あるものさがしの風景コミッション」として、里山や田園風景、路地やローカル線沿いの一本道も魅力ある地域資源なのだという「あるものさがし」の視点で「掛川・みち、ふうけいサイクリングマップ」を作成しました。このマップは、毎月定例的に行っている早朝サイクリングでも活用しています。
今年度は「カフェ」を媒体に、地域資源を面として繋げたいと考えています。店の名前は「金ちゃんカフェ」。場所は、集客力のある中央図書館の正面、報徳図書館の庭先です。報徳図書館は、1929年に建てられたアールデコ調の建築様式をしています。

先ほどから、私は「金ちゃんカフェ」と言っておりますが、この「金ちゃん」というのは、二宮金次郎、二宮尊徳のことです。

掛川市には、二宮尊徳の「報徳」の教えを広めるための本社があります。二宮尊徳というと、薪を背負って本を読む「勤勉」や「勤労」のイメージが強いのですが、あと二つ「分度」と「推譲」という考え方があります。
「分度」とは、適量、ほどほどのよさ、という意味で、分をわきまえる、足るを知る、ということです。
「推譲」は、譲る心であり、余ったものは他者へ、地域へ、そして次の世代に譲るということです。
尊徳は「経済と道徳の調和」と説いていますが、報徳社の正門は「経済門」と「道徳門」が同じ高さで建っています。

こうして、改めて知れば知るほど、報徳という文化は、少しも古めかしくなく、今の時代にぴったりだし、とても必要なことだと私など思います。しかし、この「報徳」という文化を市民がきちんと知っているかといえば、知られていないのが現状です。掛川駅からも近く、中央図書館の正面という好立地にあるのに、若い世代の市民にはほとんど知られていません。文化というものは、ただそこにあるだけではだめで、「なるほど、報徳とはこういうものだったのか」というように共感し、自分のライフスタイルの中に息づき、自分の住むまちの文化として誇りを持ってこそ、輝きを増すものだと思います。

さらに、この中央図書館、報徳図書館の周辺は、掛川城があり、掛川城御殿があり、明治の豪商の住まいであった竹の丸があり、蓮池がありというように、ロケーション的にも素晴らしいのに、周辺に、誰もが気軽に利用できるカフェなどの施設がありません。中央図書館で本を借りた後も、地下にある自動販売機で紙コップのコーヒーを飲むか、周辺を散策することもなく早く家に帰るとか、というのが現状です。
「報徳」の文化をもっと知ってもらいたい、周辺にある多くの地域資源を繋げ、面としての魅力を向上させたい、そうすることで豊かな時間やライフスタイルを提案したい。そのとき、繋げる媒体として、また商いとしても「カフェ」は非常に有効ではないかと考えたわけです。これは、掛川のお茶の文化、茶室とは違ったジャンルとして必要とされていることでもあります。また、こうした商いは、私たちスローライフ掛川が自立したNPOを目指すためにも必要なことです。

この画像は、昨年4月に開校しました「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」の一コマ、「浜野安宏と歩く―掛川ストリートワークショップ」を実施したときのものです。浜野さんは、日本を代表するライフスタイルプロデューサーとして、また、青山のストリートをはじめとする多くのまちの仕掛け人としても著名な方です。一緒に街歩きをしたとき、中央図書館から出て、報徳図書館を正面に見たときに、報徳のこと、商いのことなど話しましたら、「それなら、『金ちゃんカフェ』をやったらええ」という発言が飛び出したわけです。

今回のカフェ実験は、7月6日からの3日間ということで、ちょうど「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」のフォーラムで浜野安宏さんをお招きする時期と合わせましたが、準備期間が短いこともありますし、秋口の気候の安定したときに、とも考えています。
公開フォーラムでは、浜野安宏さんに「なぜ、金ちゃんカフェなのか」も含めて、オープンスペースやストリート、界隈の魅力を語っていただきます。日本を代表するプロデューサーの「掛川」に特化したまちづくりのアドバイスや、先駆性のある提言が聞けるものと思われます。

カフェ実験の機能として、
①まちなかの、文化、歴史、教養ゾーンに、市民、観光客など、誰もが気軽に立ち寄れるフリースペースをつくる。
②カフェを媒体とすることで、豊かな時間、ライフスタイルを提案する。
③報徳社の魅力だけでなく、周辺資源の情報の発信の仕方を工夫する。
④周辺の地域資源が相互に連動する仕掛けをつくり、面としてつなげる。
といったことを、考えています。

オープンカフェの場所は、報徳図書館の蓮池側に面した庭先ですが、周辺の状況としまして、報徳社の大講堂は、来年、修復を完了しますし、明治の豪商の住まい「竹の丸」も、耐震工事がはじまります。こうして、掛川の資源がハード的に整備され、資源としての価値を増していく中で、それらを繋ぐソフト面での仕組みづくりやストーリーづくりがより大切になってくると思います。
そのためにも、まちづくりをすすめる行政と、「まちの使い方」や「あるものさがし」という視点を持つ市民とが協働で、まちの資源を繋げ、情報発信し、資源としての価値を高めいくことが大切だと考えます。ただ文化として、ただ建物としてあるのではなく、共感し、誇りに思い、ライフスタイルの中に息づいてこそ、まちの資源は輝きを増すものですし、「地域の豊かな生活」に繋がっていくものだと考えます。

私たちが「スロー」や「ライフスタイル」といキーワードで様々な活動をしていますと、今まで「まちづくり」や「市民活動」というものに全く関わってこなかった層の人達とつながりができ、今、スローライフ掛川の活動を支えてくれるようになっています。今回、楽しそう、面白そう、「金ちゃんカフェって何?」という感覚で「カフェ」に入った若い世代の人たちを巻き込む、新しいまちづくりの可能性になりはしないか、ということも同時に検証したいと思います。そして、多くの意見や結果を検証しながら、次のステップ、実際の商いとしての事業につなげていきたいと考えます。

これで、「金ちゃんカフェ実験~報徳図書館と市民をつなぐオープンカフェ~」の提案を終わらせて頂きます。ありがとうございました。

さあ、「金ちゃんカフェ」実験が実現します!

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9 コメント

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いい! (K1)
2007-06-17 00:30:55
 以前から聞いていた「金ちゃんカフェ」ですが、実にナイスなプレゼンだと思います。言いたいこと、やりたいことが実に良く表現されています。

 良いプレゼンができるのは、そもそもやりたいことのコンセプトがはっきりして具体的だからです。良い戦略なら一言で他人の共感を得られるものです。だからプレゼンも実にスマートに感じられます。

 K住さんもうまくなったなー、と感心しています。

 まちづくりを語るなら、三つの視点をちりばめてはいかがでしょうか。まちづくりの三つの視点とは、「まちづくり」「まち育て」「まちの再生(リニューアル)」です。

 まちを作ったら、それを育て、陳腐化したものや衰えたものは再生を図って価値を再び高めるのです。

 こうした視点でまちを考えるとまた新しいテーマも見えてくるかも知れませんよ。

 金ちゃんカフェに期待しています。蕎麦は…でないよね
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Unknown (小鷹町者)
2007-06-18 08:46:41
おめでとうございます。

なくてはならないものとして、最終的にはあの界隈に
グレードの高い本格的なカフェが必要だとおもいます。
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Unknown (ひさちゃん)
2007-06-18 20:39:28
伝えたい事が胸に響いてきましたよ!
なんて素晴らしいの!!

「金ちゃんカフェ」が、
「なだれ込みカフェ」になったらいいね。

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Unknown (たけし)
2007-06-18 21:10:12
会場で拝聴させていただきました。どの団体からも真剣さが伝わってきましたね。
皆さんの「発表前」と「発表後」の表情がいきいきしていて良かったですね。
個人的には、金ちゃんカフェと風呂敷の発表が面白かったです。「へぇー」っと活動内容に感心したのはCAPでした。小笠山の案内板は分岐点にもっと欲しいなぁとも思いました。
なにはともあれ、『金ちゃんカフェ』の大成功をお祈りしております。
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カフェ実験は秋口に (管理人)
2007-06-24 22:25:30
皆さん、コメントありがとうございます。金ちゃんカフェ(仮称)実験は、準備期間が少ないこともあり、秋口になりそうです。提言から実験へ、そして事業へ。一歩一歩、実現させていくそのパワーがすごい。そうした周囲の「力」を感じながら、面白がって進めていけたらいいなあと、日々感じています。
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金ちゃんカフェ応援 (後藤 ミツル)
2007-06-27 22:44:58
金ちゃんカフェいいネーミングですね。
想像が膨らみます。
チャ茶の店番もご協力させていただきたいです。

金ちゃんグッズが欲しい
おしゃれなカフェで作っているような(Tシャツ、エコバック、ミニ銅像?)など
すみませんハシャギ過ぎました・・・
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金ちゃんグッズ (管理人)
2007-06-28 20:37:06
後藤さん。
金ちゃんカフェの実験時期は、10月後半になりそうです。ぜひぜひご協力をお願いしますね。
ところで、金ちゃんグッズ。
児童文学出身の直木賞作家、森絵都の『風に舞いあがるビニールシート』(文藝春秋刊)の中に「守護神」という短編があります。なんと二宮尊徳の携帯ストラップが重要な小道具になっているのですよ。報徳、あるいは金次郎がブレイクしそうな予感がしません?
……それより何より、チャ茶に早くおじゃましなくちゃ!
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人がにぎわうマチが素敵 (ことぶき)
2007-07-03 01:06:19
「金ちゃんカフェ」素敵なプランですね。
掛川に居を構えた頃から、何で掛川の人は報徳思想をもっと活かさないのかなって思ってました。
金ちゃんカフェから、自然に根ざした産業が生み出されてくることを期待しています。都会っぽい消費財の組合せのMDではなく、自然を愛でることのできる財が素敵ですよね。
楽しみにしています。
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いいこと言うなあ~。 (管理人)
2007-07-04 08:36:28
ことぶきさん、「自然に根ざした産業」「自然を愛でることのできる財」、いいですね。7/7(土)の浜野安宏さんのフォーラムも、そのあたりまで言及されそうです。またご報告します。
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