なだれ込み研究所の一日

物語作家を目指すもの書きが、ふとしたことから変な事務所で働くことに!
日々なだれ込んでくる人や仕事、モノやコト観察記。

建築展が始まる

2007-08-25 07:30:31 | スローライフ
24(金)25(土)26(日)の三日間、「スローな住まいの建築展in掛川」が開催される。ハウスメーカーという選択肢のなかった生活者が、建築家紹介システムと出会い、一人の建築家を選び、地域の工務店とともに建てた木の家を会場としている。
完成見学会としなかったのは、こうした「生活の器」としての住まいづくりを大切に考え、地域の人たちと手間ひまかけた家づくりをしてきた姿勢が、そのままスローライフ掛川の提案する豊かな生活と一致する部分が多かったこと、そして多くの方が様々な形で協力してくれる体制が整ったからである。

今回の建築展では、つくり手側の想いが聞ける。建築家だけでなく、現場監督、職人といった普段は裏方に徹する人たちの生の声が聞けるのである。
この建築展開催までのプロセスに最初から関わり、みんなの想いを聞き、家づくりに関わった多くの人の話を聞く中で、驚いたこと、知らなかったこと、たくさんの発見があった。そんな様々な発見を、来て頂く方々とも共有したい。

トークで一部進行を任された。人前で話すのは苦手だし、緊張するし、進行なんて初めてだ。でも、プロセスを知り、様々な方に取材し、驚きや発見に感動したことを多くの方に感じてもらいたいし、そうした想いを引き出すことが私の役割なのかな、と思った。

キーワードは、
・あいまいさが心地よさを生む
・収まりの良さとは何か
・小さな差を大きな差と感じる感性

緊張して引き出すどころか、真っ白になっちゃったらどうしようとか不安はあるが、なんとか頑張ってきます。皆さん、ぜひ来て下さい。

http://slowhouse.seesaa.net/

第1回掛川市景観市民講座(語録)

2007-08-18 21:51:11 | スローライフ
8/5(日)に実施された掛川市景観市民講座「第1回 河口と海岸の景観を考える」。あれこれ語るよりも、講師、参加者の語録を読んで頂くことで、この講座がどれほど有意義で面白かったかがわかって頂けると思う。

[講師:鉄矢悦朗氏]
・景観はつくっていくもの。
・植生が豊富という日本的である事をもっと大事にして、景観のデザインも考えていけばいい。
・景観にとって何が主役か考えること。
・景観は、隠されたエピソードをその土地の人が語れるかどうかで魅力が出てくる。
・プロセスを経ることで、エピソードが生まれる時間ができる。語れる時間がある。語れる景観になる。
・見慣れる怖さを感じて欲しい。見慣れたら、「やばい」と思った方がいい。
・目立たなくては売れない状況が、デザインをペテンにする。消費者の質も問われている。
・「海へ走って行きたい」「砂の上を転がりたい」、そういった期待感がある景観を。
・畑や茶畑も景観として捉えるような仕組みを取り入れることが大切。
・世界遺産があるように、市民が勝手に「掛川遺産・子どもたちに語り継ぎたい景観」「掛川遺産100選」を選んでしまえばいい。

[講師:小川博彦氏]
・遠州の海は山から砂が運ばれてくるから波が幾重にも来る。遠浅の海でなければない。砂がなくなればこの風景はなくなる。
・流されている砂の大事さ。砂が上流から流れてこなくなる現実。海辺の景観を考えるとき、背景としてきちんと考えなくてはいけない。
・人は水際を歩きたい。水にさわってみたくなる。海と人がつながる場所。海と人との交流が、人の作法がなくなったことで規制だらけになってしまった。
・「弁財天海浜公園」と書かれた木の看板の後に、注意書きだらけの看板がある。大事なことが書かれているのはわかるが、海へ走り出したくなる気持ちにストップをかける。

[参加者より]
・今まで、観光パンフレット的な見方しかしていなかった自分に気がついた。色々な見方で景色を見ることの大事さを感じた。
・昔は弁天も国安も賑わいがあった。人のいぶき、交流があった。
・海は命が継承される場。生命を育む場。そういう場所が減っていることは驚異である。
・菊川は一級河川、国の管轄。弁財天川は二級河川、県の管轄。どっちがいいかはそれぞれの価値観だが、弁財天川の橋の安普請が妙にほっとさせる。
・「日本一」ということよりも、地域にとってどうなのか、住む人、訪れる人にとってどうなのか、ということが大事なのではないか。

スローな住まいの建築展in掛川

2007-08-17 20:15:43 | スローライフ

8/24(金)25(土)26(日)の3日間、NPOスローライフ掛川主催の「スローな住まいの建築展in掛川」が開催される。地域の素材、地域の人材を生かした住まいづくりの実例として、完成した新築のお宅を会場に、様々なプログラムが行われるのだ。

8/24(金)と25(土)の進行はS藤さん、26(日)の進行はなんと私の予定。人前に出るのはとっても苦手なのだけれど、S藤さんが出られないのだとしたら、企画、打ち合わせから同席している私が進行役になるのが、どう考えても一番いいと思った。こうしてだんだん逃げられなくなるのね……。

さて、今回の建築展。建築家との出会いを求め、オリジナルな建築を志向する生活者が、建築家紹介システムと出会い、シルエットの美しさと機能美を現代に活かす建築家と出会い、日本の伝統建築の技術を持ち合わせる地域の工務店と出会うことで、ありたい生活のための住まいづくりを実現した一例としての紹介である。
建築家に設計を依頼した生活者、建築家、現場監督や職人さんなど、様々なトークを聞くことができる。開催時間帯ならいつでも入場可能。実際の建築空間を体感しながら、常設コーナーやトークイベントを見学することができるというわけだ。
K-mixが後援なので、ラジオでCMを聞いた方も多いかもしれない。

今日もちょうど現場に行ってきたのだが、今回の建築家の設計らしい、すみずみまで生活者のための建築だなあと感じた。そのあたりの話も、「建築現場を談義する」の中で引き出せたらと思う。
気持ちのいい家です!
ぜひ、ご来場下さい。

ということで、久々の記事は、リハビリも兼ねてNPOスローライフ掛川の事業の紹介でした~。
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「スローな住まいの建築展in掛川」
日時=8/24(金)25(土)26(日)
会場=掛川市下垂木 <入場無料>
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質的豊かさ。自然との共生感覚。生活における地域の再認識。風土を活かし、味わいのある豊かな生活を志向するとき住まいはどうありたいですか。NPOスローライフ掛川は、地域の素材、人材、技術を活かした木の家のつくり方を提案します。
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詳細をblogでご紹介しています
http://slowhouse.seesaa.net/
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8/24(金)17:00~20:00
8/25(土) 9:00~20:00
8/26(日) 9:00~17:00
●見学
 3日間の上記開催時間帯なら、いつでもご入場・ご見学いただます。

●常設コーナー
 地域の建築家14名の詳細ファイル、建築模型をご覧いただけます。
 建築家と工務店による、住まいづくり事例紹介パネルを展示します。

●トーク
 テーマによってゲスト(施主ほか)、建築家(フロムフォー登録建築家)
 をはじめ、鈴木建設、フロムフォー、NPOの担当者が登場。住まいづ
 くりに関する興味深いトークを繰り広げます。(各回約30分)
 24(金)
  18:00 オープニング
  19:00 トーク「建築家との住まいづくりへの第一歩」
 25(土)
  10:00 トーク「どのようにしてこの建築ができたか-1」
  13:00 トーク「建築家と工務店との住まいづくりを検証する-1」
  15:00 トーク「建築現場を談義する-1」
  17:00 トーク「木の住まいづくりと工務店の役割」
 26(日)
  10:00 トーク「どのようにしてこの建築ができたか-2」
  13:00 トーク「建築現場を談義する-2」
  15:00 トーク「建築家と工務店との住まいづくりを検証する-2」

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主催/NPO法人スローライフ掛川
http://www.slowlife.info/
協賛/株式会社 鈴木建設
http://www.cs-suzuki.jp/
住まいづくりレシピ館 フロムフォー
http://www.fromfor.com/
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※お施主様のご厚意により、限定3日間のみ会場として使用させて
  いただきます。作法と節度と持ったご来場をお願い申し上げます。
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NPO法人スローライフ掛川 連絡事務所 
〒436-0091 掛川市城下5-10.1F
TEL.0537-22-0654 FAX.0537-22-0786
E-MAIL: project@slowlife.info

景観について何ができるか

2007-07-30 19:18:28 | スローライフ

8月5日(日)、掛川市とNPO法人スローライフ掛川が主催する掛川市景観市民講座が行われる。
マイクロバスに乗って、専門家のアドバイスや視点を見聞きしながら、「河口と海岸の景観について」考えるというものである。講師はなんと、掛川ライフスタイルデザインカレッジ講師陣の中でも人気の高いお二人、東京学芸大学准教授の鉄矢悦朗氏とプロカメラマンの小川博彦氏である。

事前の打ち合わせでの鉄矢氏の言葉がいい。

「景観とは何か。景観に似た言葉に『風景』『景色』『佇まい』などがある。『景観』は人が意識を持つことで変えることができる。景観は人が関わり、人が育てるもの」

「日本人とヨーロッパ人の景観に対する意識の違いを考えたとき、歩道と建物の際(きわ)で『公』と『私』に分かれるのだとしたら、日本人の場合、『私』の部分はあくまで『私』であり、自由にしていいのだという意識がある。ヨーロッパ人は、『私』であっても『公』に接している面はあくまでパブリックだという意識がある。だから作法に則って外観を決めようという意識がある。日本の方が民主的だが、逆にそのせいで景観を悪くしているのも事実」

「景観について、自分のこととして関わる意識が大切。エピソードを持つことが大切である」

建築家であり、デザイン教育の専門家であり、市民の視点でまちづくりに関わる鉄矢氏のアドバイスが今から楽しみである。

さて、もう一人の講師小川氏は、たぶんベラベラはしゃべらないだろうが、何に対してどんなふうにカメラを向けるのか、そのものの見方、見るためのポジションの取り方が楽しみである。よく私は、仕事で一緒に撮影に行くと、小川氏がさっきまで写真を撮っていたポジションにこっそりと立ち、「なるほど、ここからこう見て、こう撮っていたのか」と納得する。同じように撮れないのが不思議ではあるが。

この景観市民講座は全3回の講座であり、秋に里山、冬にまちなかのフィールドワークを予定している。1回ごとの参加も可能である。
景観とは何か、まちの見方、景色、風景、景観の見方。自分の暮らすまちのことを知る、あるいはものの見方を広げる、そんな様々な楽しみ方のある講座になればいい。
お申し込みは、NPO法人スローライフ掛川連絡事務所までどうぞ。


平成19年度 掛川市景観市民講座 
第1回 「河口と海岸の景観を考える」

■開催日時/2007年8月5日(日)
      7:30~12:30 (掛川市役所集合・解散)※雨天実施
■参加条件/高校生以上、定員30名 (参加費無料)

【プログラム】
マイクロバスを利用し、海岸と河口の景観を2箇所を巡り(フィールドワーク)、大東支所にてゲスト講師による座学(ワークショップ)を実施します。

【スケジュール】
7:15 掛川市役所玄関集合(市役所駐車場をご利用ください)
7:30 マイクロバスにて移動
8:15 フィールドワーク:菊川の河口と海岸(掛川市国安)
9:45 フィールドワーク:弁財天川の河口と海岸(掛川市沖之須)
10:30 ワークショップ大東支所会議室にて
11:45 マイクロバスにて移動
12:30 掛川市役所に到着・解散

≪ゲスト講師≫
鉄矢悦朗(てつや えつろう)氏
建築家、東京学芸大学准教授、NPO法人「調布まちづくりの会」理事。掛川との関わりは、2004年に「掛川ひかりのオブジェ展」に学生有志と参加して以来。NPOスローライフ掛川主催「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」のフォーラム講師を務める。東京都調布市在住。

小川博彦(おがわ ひろひこ)氏
小川写真事務所主宰、プロカメラマン。掛川市市勢要覧の撮影を手がけるなど、掛川周辺での撮影は多い。NPOスローライフ掛川主催「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」のフライフィッシングとネイチャーフォトグラフィーの講師を務める。共著に『サイトフィッシングの戦術』。富士市在住。

≪お申込み・お問合せ先≫ 
NPO法人スローライフ掛川連絡事務所 掛川市城下5-10.1F コンセプト株式会社内
 TEL.0537-22-0654  FAX.0537-22-0786  E-MAIL: project@slowlife.info

講演の聞き方

2007-07-29 19:55:20 | スローライフ

7月28日(土)、掛川ライフスタイルデザインカレッジ7月フォーラムが行われた。講師は国立民族学博物館・民族社会研究部准教授の横山廣子氏、講演のタイトルは『中国人・中国文化との出会い-文化人類学的理解の醍醐味-』である。

横山氏とは、昨年のフォーラムで初めてお会いした以後も、掛川大祭のフィールドワークで何度かお会いしており、自分でずんずん歩き、見て、聞く、まさに「現場の人」だなあと感じていた。
今回の講演も、「似ているけれどちょっと違う日本と中国の行動様式の根幹を、わかりやすく紹介したかった」の言葉通り、まさに現場から生じた感覚が出発点になっている講演であり、心に響くことが多かった。

横山氏は冒頭、中国の人と接触する中で「あれ」と思うことが、調査研究していく上でヒントとなることが多かったという話をされた。昨年のフォーラムでもおっしゃっていたように、自分の感覚を大事にし、感性をとぎすませ、「あれ」と感じたことをそのままにしない好奇心が大事なのだ。

小説好きの私にとって印象的だったのは、名前の付け方だった。中国では男系(父系)の親族のつながりが強く、伝統的に大家族で暮らすことが理想となっていた。男系親族内では同世代(兄弟、いとこ)の名前には、必ず同じ漢字を付けるという風習もあった。だから、関係が離れていたり、初対面の場合でも、名前を聞けば「誰と同世代の人か」がすぐわかったという。
なるほど、浅田次郎の『蒼穹の昴』を読んだとき、主人公は「春雲」。『中原の虹』で主人公となる兄は「春雷」だった。

もう一つ、ぺー族のお盆の風習が面白かった。
お金や服や靴を紙でつくり、燃やすと、あの世で祖先がそのお金や服や靴が使えると信じられている。
中国で子どもがいないことはとても怖いことだと思われるのは、老後の暮らしのこともあるが、自分が祖先供養してもらえないことに対する恐怖があるからだという。紙のお金を燃やしてくれる人がいないと、あの世で生活できない。成仏できない。さまよえる魂になってしまう。それを中国では「鬼(グゥイ)」になるという。「鬼(グゥイ)」にはなりたくない。だから、祖先供養してくれる子孫がほしい。
これはまさに、ファンタジーの核となりそうなモチーフである。

フォーラム後の懇親会がさらに面白かった。それぞれに感じたことを話し、横山氏が質問に答える形で補足説明をされたのだが、より自分たちのライフスタイルや生き方に関わるような議論ができたように思う。

私が話したのは次のようなことである。
「講演の中で、おごり、おごられる関係は、そのまま、頼り、頼られる関係であり、それによって関係性が深まるとも言える、というお話があった。さらに、割り勘は平等のように感じられるが、そこで関係性がいったん断ち切られることにもなる。精算されることになる。おごり、おごられる関係を『良し』とするのは、関係性を連続されるための知恵かもしれない、というお話が印象的だった。
その場で精算することは楽かもしれない。言い換えれば、白か黒かはっきりさせることは、次に引きずらなくて楽かもしれない。しかし、そこで関係性を断ち切ることになる。グレーゾーンにいることは、色々な意味ではっきりせず、苦しいかもしれないが、そこにとどまることも大事なときもある。『おごり、おごられる関係性』のお話から、私はそんなことを考えた」

これをS藤さんは「リセットしない文化」「曖昧な関係性は機会を与える」と言っていた。

もう一つ、印象的だったのは、横山氏のこんなお話。
「何かを決めるとき、自分が慣れ親しんだものから選ばなくてもいい。自分がいいと思っているものの中かから選ばなくてもいい。異文化を知る時、よくよく裏を考えてみれば、道理もあるし、理由も納得できる。そんなふうに、自分が納得できるものを増やし、選択の幅を広げ、その上で自分で選べばよい。決めるのは、自分」

近いようで遠い中国のお話として聞くもよし、身近な自分の生活に引き寄せて聞くもよし。様々な考えようのできる、考えるきっかけを与えてくれる、そんな講演だった。
横山先生、ありがとうございました。

キーワードは、毛・穴・屁・闇

2007-07-11 20:52:18 | スローライフ

浜野安宏さんをお迎えしたフォーラムの翌日は、恒例の釣りである。しかし私は釣りは行かない。なので、同行された博多からのお客様N田さんに、観光地的でないNPOスローライフらしいオススメの掛川を見ていただこうと、連れ回した。

午前中は、K造さんと私のハブ毛コンビである。
N田さんとははじめの出会いから、なにやら同じ空気感をまとった人だなあと予感めいたものを感じていたのだが、どうやらN田さんの方も、来掛する前から「なだれ込み研究所の一日」を読んで同じ予感めいたものを感じていたという。
目と目が合い、報徳図書館でN田さんがコケそうになった瞬間、私たちは「同じだ!」と感じた。
K造さんとともに「ハブ毛の話」をすると、大いに共感して下さり、
「ハブ毛の話がわかるかわからないかで、価値観がつかめるね。ハブ毛はリトマス試験紙だ」
とK造さんに言わしめた。

さて、N田さんはなだれ込み研究所と同種の仕事をしている。商品のコンセプトづくりから、商いの仕掛け、仕組みづくりなど、表には出てこないけれど、商いの環境整備において重要なポジションで仕事をしている。
背の高い色白の美人なのだが、仕事の話をするときはS藤さんと同じような空気感をまとっていた。

そのN田さんを倉真地区に案内した。なだれ込み研究所では、新東名開通に伴う倉真地区のサービスエリアの商品開発に関わっているのだが、その関連で新しい地域資源をたくさん見つけた。それが、冒頭の画像にある急斜面の茶畑である。

この茶畑は、人の手が加わっているからこそ美しい。しかし、作業は急斜面のキツイ仕事である。この急斜面の作業を高齢の夫婦が二人でやっているという。美しい風景を守る、などとはたぶん考えていないだろう。後継者が見つからなければ、この風景は消える。

N田さんは、この風景の価値をも商品の付加価値として情報発信するべきで、それには、報徳の思想「経済と道徳の両立」をうまくつなげる必要があるとも言った。
好奇心旺盛で常に前向きなだけでなく、鋭い切り口と、アクティブな動きを見せる。

さて、キーワードである。
「毛」はハブ毛。「穴」は粟ヶ岳の地獄穴の価値に共感したこと。「屁」はK造さんと私の「屁話(へばなし:この話の面白さを文章で語るのはめちゃめちゃ難しいので、いつの日か、私の表現力が身についたときにでも)」で同類的なところを見せたから。「闇」は、闇のなさが現代社会に投げかけるものについて話したとき共感を得た部分。

キーワードが「毛・穴・屁・闇」であったことからも、午前中の掛川ガイドが濃密であったことがおわかりいただけると思う。

午後は、メンバーチェンジをして、観光地的な場所ではない、NPOスローライフらしい場所を案内したようだ。午前ほど、ヘンテコなキーワードは飛び出さなかったと思われる。
翌日も、実はS藤、T橋、K住でN田さんを連れ回し、濃~い3日間を過ごされた。
N田さん、これに懲りず、ぜひまた掛川にお越し下さい。

N田さんからのメールの一部を紹介させていただきます。

「今度は、ぜひご一緒に掛川で仕事ができればと思っております。なにかおもしろいことを仕掛けられそうな予感がしています。ぜひ、また近いうちに再訪できればと願っております。交流させていただいた皆様へも、くれぐれもよろしくお伝えくださいませ。なだれ込んで、ほんとうによかった!」

橋渡しをして下さった浜野安宏さん、改めてありがとうございました。


浜野安宏氏in掛川城御殿

2007-07-09 23:10:17 | スローライフ

7月7日の七夕の日に、今年2度目の来掛となる浜野安宏氏の公開フォーラムが行われた。タイトルは、「人間の街を再生、活性化するために」。
平成19年度掛川市市民活動団体推進モデル事業「金ちゃんカフェ(仮称)実験~報徳図書館と市民をつなぐオープンカフェ」のオープニングとしての位置づけもあり、国の重要文化財、掛川城御殿での開催となった。

掛川城御殿のフォーラムは17:30~19:00という、遅い午後から夕方、夜の始まりにかけての時間帯ということで、外の色合いや空気感が一番変化する時間だった。静かで、どこか懐かしい雰囲気の中、時間の変化という不思議な色合いをおびた講演だったように感じた。

今回は、パリ、バルセロナを最近旅されたということで、その画像を紹介しながら、前半の講義が行われた。印象に残った言葉を以下に。

「道に張り出したカフェを見ると、街路や街角に生活があると感じる」

「ヨーロッパの街に全体として共通項があるのはなぜか。日本の場合、公か私か、パブリックかプライベートかに別れるが、ヨーロッパでは『街はみんなのもの』という意識が中世から染みついている。自分たちも提供する代わりに、街を、道を、私たちも使わせてくれ、楽しませてくれという意識がある」

「セーヌに面した道には、日本と違ってフェンスがない。人と川、人と水のつながりがダイレクトに感じられる。なぜそうなるのか。日本は、子どもが滑り落ちたら国のせい、地方自治体のせい、店のせいになってしまう。人のせいにする国民性のせいで、街がどんどんつまらなくなっていく」

金ちゃんカフェ(仮称)についてのアドバイスもあった。

「金次郎カフェについては、報徳図書館を利用したカフェだけ、ここだけで完結したカフェでなく、全国展開できるような仕掛けがほしい。ケンタッキーカーネルサンダー人形のように、二宮金次郎が本を持ち、店には学術書やビジネス書などの本が置いてあり、『難しい本を読むのが面白い』というストーリーやレジェンドを創る。そして、その本店、1号店が掛川なのだ、そこは本物があり、歴史的建築物であり……というように、逆輸入方式で「掛川」というブランドを高める必要がある。各店舗には、本店である報徳図書館のデザイン的なテイストを取り入れる」

電線が、なぜなかなか地中に埋まらないかの理由をこんなふうに語られ、講演を締めくくった。

「見えるものを作った人は評価されるが、見えていたものをなくす人は評価されにくい。電線を埋めるよりも、上物(うわもの)を作った方が簡単だし、手柄を稼ぎやすい。しかし、これからの日本の社会が成熟するためには、真の豊かさとは何かを考えるようにならなければいけない。自分の生活を、世界の中に立って、世界のことに感心を持ち、感じていただきたい。日本という国の誇りを守るために」


ネイチャーフォト、第2回。

2007-06-30 22:45:20 | スローライフ

今日は掛川ライフスタイルデザインカレッジ「ネイチャーフォトグラフィー」の第2回目だった。撮影場所はならここの里。
受講生にまじって撮影をし、撮影した写真をみんなで見て、講評を聞いていると、同じ場所で撮影をしているのに、それぞれまったく見方が違うんだなあと実感する。興味の対象、感性のおもむく先、どこからどう撮り、どう切り取るかが全く違う。

一人一人が、みんなそれぞれなのだ、と金子みすゞの詩の一節「みんなちがって、みんないい」をふと思い出した。
(金子みすゞ『私と小鳥と鈴と』より)

講師小川さんの印象に残った言葉を以下に。

「デジタルカメラのオート機能は親切だから、人が失敗しない方へ失敗しない方へ動いてくれる。作品の美しさよりも、最低限失敗しない方、間違いのない方へ動く」

「自然の風景の中に、ストロボという人工の光が入るのは不自然だと感じる」

「余白があると、その場の空気感を感じる」

「モリアオガエルの卵があると、卵だけを撮ろうとしてしまう。しかし、モリアオガエルの卵が必ず水の上に作られることを知っていれば、写真の中に水辺は必ず入れる」

それにしても、カエルの卵が木につくとは知らなかった。
ネイチャーオンチの私としては、モリアオガエルが木に登ったときのことを想像しただけで、かなりの驚きだった。(それとも、木に登らなくてもできちゃうの……??)
モリアオガエルが何年の寿命があり、この季節にいるのかいないのかさえ知らないが、遭遇しなくてほんとによかった、と心から、こっそり、思ってしまった。

ちなみに冒頭の画像。階段を上がった光の先に何があるのか知りたくて、撮ってみました。

知識の幅と深さ

2007-06-27 00:01:56 | スローライフ

6月23日(土)、掛川ライフスタイルデザインカレッジの6月フォーラムが行われた。講師は掛川市在住の陶芸家 竹廣泰介氏。タイトルは「私を変えた陶芸―金はなくても火・水・木・土―」である。

大学で建築を勉強していた竹廣氏は、卒業後、東京のゼネコンで10年間勤めた。当時は現代美術に興味があり、新しいもの、人がやっていないことに対して目ざとく、常に前のめりの生活をしていた。そんなとき、魯山人のコレクションと出会う。まだ魯山人が無名の頃で、特に色の使い方に惹きつけられたという。
その後、陶芸を志し、東京、多治見、備前、信楽などで学び、「穴釜で信楽の土で焼く」という今の竹廣氏のメインの仕事と出会った。

掛川に縁もゆかりもない竹廣氏が、なぜ掛川に移住することになったのか。
東京―広島間で工房にふさわしい場所を探していたとき問い合わせた一つが掛川市役所であり、偶然電話に出た職員がいくつかの物件を紹介し、一緒にまわってくれたのがきっかけだったという。
今、竹廣氏は、築120年の古民家に工房を構え、土と向き合う日々を過ごしている。

印象的だった言葉を以下に。

「全戸数27軒の集落で暮らしていると、ほんの一世代前、二世代前は、ほとんどが山の仕事、田の仕事をしており、自給自足に近い生活をしていたことが実感できる。ほんのつい最近まで、自然に近しい生活があったのだ」

「陶芸の工程はどれをとっても難しい。大切なのは、1に「焼き」、2に「土」、3に「細工」。工芸品の場合、3の「細工」が一番重要になるが、陶芸の場合は違う。土の持つ存在感を引き出すため、土を変え、窯を変え、様々な努力をするが、大気の変動など人の手ではどうにもならないものに左右される。思い通りにいかないからこそ面白く、予想すらしていなかったものができることもある。焼き物をしていると、つくづく人が関われる領域は少ないのだと実感できる。今私は、自然に寄り添って生活している」

「常に前のめりの生活が、陶芸と出会ったことで、過去へ過去へと興味の領域がさかのぼっている。今は、桃山時代の茶陶が現代社会に与えるものを考えたい」

「中国ではすでに稲作を中心とした都市国家が成立していた頃、日本は1万年にもおよぶ縄文時代があった。なぜ1万年も続いたのか思いを馳せるとき、日本は「狩猟」というその日暮らしの生活が長く続くほど、豊かな国だったのではないかと思うのだ」

「織田信長のすごさの一つは、新しいステイタスを生み出したことだ。当時、新興の武士にはどうにもならない「歌」という存在を「茶の湯」によりくつがえし、城一つにも匹敵する茶陶という価値、ステイタスを創り上げた」

後半は、有名な「器」をスライドで解説しながらの講演だったが、陶芸にまったく無知な私には「この器は好きだなあ。びわ色っていいなあ。色気のある器って先生は言ったけど、どういうところが色気があるのかなあ」という程度の感想しか持てなかった。
しかし、
「千利休は、山里で庵(いおり)をくむことがわびさびの世界だったのを、まちの中に下りてきて、まちの中で虚構の世界に入る仕組みをつくった」
という言葉を聞いたとき、自分の中にある知識のカケラと結びつき「なるほど、そうだったのか」と妙に納得できた。

それは、『利休とその妻たち』(三浦綾子著・新潮社刊)を読んだとき、解説に「千利休は『茶の湯』のプロデューサーだった」と書いてあったことだ。
本来なら、山里で庵をくむところ、利休はそれをまちの中で実現するため、徐々に虚構の世界に入っていくための仕掛け(茶室、茶碗との対面など)を創り上げ、演出したということなのだ。

竹廣氏の知識は、幅広く、深く、難しくもあったが、少しでも自分の持っている知識との共通点や重なりを感じたとき、自分の持っているちっぽけな知識が、別の角度から光を与えられたような、そんな気がした。
フォーラムの冒頭、司会のS野さんが「竹廣氏の存在自体が資源なのだ」と言った言葉が、これまた「なるほど」と自分に返ってきた。


提言から実験、そして事業へ

2007-06-16 21:57:59 | スローライフ
本日、掛川市市民活動団体推進モデル事業の提案審査会があった。NPOスローライフ掛川は、「金ちゃんカフェ実験~報徳図書館と市民をつなぐオープンカフェ~」を提案し、500満点中430点で採用された。

今回、このプレゼンに出席するにあたり、提案書作成段階だけでなく、発表原稿においてもたくさんの方のアドバイスをいただいた。直しに直した原稿で、伝えたいことをきちんと伝えることができたと思う。
総評の中で「目指しているものが明快かどうかが高評価につながっている」というお話があったが、アドバイスをもらうたびに書き直したことで、自分自身、目指しているものがどんどん明快になっていったように思う。

たくさんの人に支えられた今回のプレゼン。
どんなふうに発表したか、「なだれ込み研究所の一日」をご覧の皆さんにこっそり披露します。ほとんどこの通りにしゃべっているので、私のドキドキを感じながらお読み下さい。
皆さん、本当にありがとうございました。

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NPO法人スローライフ掛川のK住と申します。今回、掛川市市民活動推進モデル事業として「金ちゃんカフェ実験~報徳図書館と市民をつなぐオープンカフェ~」を提案します。どうぞ、よろしくお願い致します。

まず、私ども、NPOスローライフ掛川ですが、平成16年7月の設立以降、生活提案NPOとして、「スロー」というキーワードで人と人、人と地域をつなげ、地域資源を生かしたまちづくりをすすめています。

昨年度の、掛川市市民活動推進モデル事業では、「あるものさがしの風景コミッション」として、里山や田園風景、路地やローカル線沿いの一本道も魅力ある地域資源なのだという「あるものさがし」の視点で「掛川・みち、ふうけいサイクリングマップ」を作成しました。このマップは、毎月定例的に行っている早朝サイクリングでも活用しています。
今年度は「カフェ」を媒体に、地域資源を面として繋げたいと考えています。店の名前は「金ちゃんカフェ」。場所は、集客力のある中央図書館の正面、報徳図書館の庭先です。報徳図書館は、1929年に建てられたアールデコ調の建築様式をしています。

先ほどから、私は「金ちゃんカフェ」と言っておりますが、この「金ちゃん」というのは、二宮金次郎、二宮尊徳のことです。

掛川市には、二宮尊徳の「報徳」の教えを広めるための本社があります。二宮尊徳というと、薪を背負って本を読む「勤勉」や「勤労」のイメージが強いのですが、あと二つ「分度」と「推譲」という考え方があります。
「分度」とは、適量、ほどほどのよさ、という意味で、分をわきまえる、足るを知る、ということです。
「推譲」は、譲る心であり、余ったものは他者へ、地域へ、そして次の世代に譲るということです。
尊徳は「経済と道徳の調和」と説いていますが、報徳社の正門は「経済門」と「道徳門」が同じ高さで建っています。

こうして、改めて知れば知るほど、報徳という文化は、少しも古めかしくなく、今の時代にぴったりだし、とても必要なことだと私など思います。しかし、この「報徳」という文化を市民がきちんと知っているかといえば、知られていないのが現状です。掛川駅からも近く、中央図書館の正面という好立地にあるのに、若い世代の市民にはほとんど知られていません。文化というものは、ただそこにあるだけではだめで、「なるほど、報徳とはこういうものだったのか」というように共感し、自分のライフスタイルの中に息づき、自分の住むまちの文化として誇りを持ってこそ、輝きを増すものだと思います。

さらに、この中央図書館、報徳図書館の周辺は、掛川城があり、掛川城御殿があり、明治の豪商の住まいであった竹の丸があり、蓮池がありというように、ロケーション的にも素晴らしいのに、周辺に、誰もが気軽に利用できるカフェなどの施設がありません。中央図書館で本を借りた後も、地下にある自動販売機で紙コップのコーヒーを飲むか、周辺を散策することもなく早く家に帰るとか、というのが現状です。
「報徳」の文化をもっと知ってもらいたい、周辺にある多くの地域資源を繋げ、面としての魅力を向上させたい、そうすることで豊かな時間やライフスタイルを提案したい。そのとき、繋げる媒体として、また商いとしても「カフェ」は非常に有効ではないかと考えたわけです。これは、掛川のお茶の文化、茶室とは違ったジャンルとして必要とされていることでもあります。また、こうした商いは、私たちスローライフ掛川が自立したNPOを目指すためにも必要なことです。

この画像は、昨年4月に開校しました「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」の一コマ、「浜野安宏と歩く―掛川ストリートワークショップ」を実施したときのものです。浜野さんは、日本を代表するライフスタイルプロデューサーとして、また、青山のストリートをはじめとする多くのまちの仕掛け人としても著名な方です。一緒に街歩きをしたとき、中央図書館から出て、報徳図書館を正面に見たときに、報徳のこと、商いのことなど話しましたら、「それなら、『金ちゃんカフェ』をやったらええ」という発言が飛び出したわけです。

今回のカフェ実験は、7月6日からの3日間ということで、ちょうど「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」のフォーラムで浜野安宏さんをお招きする時期と合わせましたが、準備期間が短いこともありますし、秋口の気候の安定したときに、とも考えています。
公開フォーラムでは、浜野安宏さんに「なぜ、金ちゃんカフェなのか」も含めて、オープンスペースやストリート、界隈の魅力を語っていただきます。日本を代表するプロデューサーの「掛川」に特化したまちづくりのアドバイスや、先駆性のある提言が聞けるものと思われます。

カフェ実験の機能として、
①まちなかの、文化、歴史、教養ゾーンに、市民、観光客など、誰もが気軽に立ち寄れるフリースペースをつくる。
②カフェを媒体とすることで、豊かな時間、ライフスタイルを提案する。
③報徳社の魅力だけでなく、周辺資源の情報の発信の仕方を工夫する。
④周辺の地域資源が相互に連動する仕掛けをつくり、面としてつなげる。
といったことを、考えています。

オープンカフェの場所は、報徳図書館の蓮池側に面した庭先ですが、周辺の状況としまして、報徳社の大講堂は、来年、修復を完了しますし、明治の豪商の住まい「竹の丸」も、耐震工事がはじまります。こうして、掛川の資源がハード的に整備され、資源としての価値を増していく中で、それらを繋ぐソフト面での仕組みづくりやストーリーづくりがより大切になってくると思います。
そのためにも、まちづくりをすすめる行政と、「まちの使い方」や「あるものさがし」という視点を持つ市民とが協働で、まちの資源を繋げ、情報発信し、資源としての価値を高めいくことが大切だと考えます。ただ文化として、ただ建物としてあるのではなく、共感し、誇りに思い、ライフスタイルの中に息づいてこそ、まちの資源は輝きを増すものですし、「地域の豊かな生活」に繋がっていくものだと考えます。

私たちが「スロー」や「ライフスタイル」といキーワードで様々な活動をしていますと、今まで「まちづくり」や「市民活動」というものに全く関わってこなかった層の人達とつながりができ、今、スローライフ掛川の活動を支えてくれるようになっています。今回、楽しそう、面白そう、「金ちゃんカフェって何?」という感覚で「カフェ」に入った若い世代の人たちを巻き込む、新しいまちづくりの可能性になりはしないか、ということも同時に検証したいと思います。そして、多くの意見や結果を検証しながら、次のステップ、実際の商いとしての事業につなげていきたいと考えます。

これで、「金ちゃんカフェ実験~報徳図書館と市民をつなぐオープンカフェ~」の提案を終わらせて頂きます。ありがとうございました。

さあ、「金ちゃんカフェ」実験が実現します!