「カレッジイズビューティフル~!」
と言ってなだれ込んできたSザンヌが、最近、なだれ込み研究所に出入りしている。彼女はアメリカ人なのだが、気づかいや心配りの仕方がとても日本的だ。片手にメモと鉛筆、そして『日本語決まり文句辞典』という本を持ち、一生懸命コミュニケーションを取ろうとしている。
しかし、なだれ込み研究所常勤の3人は英語が話せない。話せないのに、話したいことや思いついたことを全て伝えたいと思ってしまう。身ぶり手ぶりと片言の英語、インターネットの翻訳ソフトを駆使して会話をする。
「あなたはアメリカ人の私に何を聞きたいですか?」
と質問された私は、
「アメリカ人の女性は仕事と家庭をどう両立させているのですか」
を聞いた。
S木君は、お昼ご飯の片付けをSザンヌとしているとき、燃えるゴミとプラスチックの分別の仕方を説明していた。
S藤さんは、日本の祝儀と不祝儀の話から、なぜ黒と灰色の墨を使い分けるのか説明していた。
「Sザンヌと話をしていると、日本の文化というものを改めて考える機会になる」
実はSザンヌには、掛川ライフスタイルデザインカレッジの新プログラム「NIPPON学」のインタープリターをお願いした。NIPPON学は「食(米)」「装い(着物)」「書」「芸」「酒」などの切り口で、日本文化を改めて学ぶ講座である。Sザンヌには、日本人でない視点から、各回の講座で感じたことを話してもらう。中にどっぷりつかっていると気づかないことを、外からの目で見てもらうのだ。掛川の茶畑の風景を、首都圏から来たお客さんが「素晴らしい」と言ってくれて初めてその美しさに気づいたように、彼女のものの見方、感じ方は、たぶん私たちは様々な「気づき」を与えてくれる。
この「NIPPON学」での役割を説明したとき、Sザンヌは『日本語決まり文句辞典』を見ながらこう言った。
「私のような者でお役に立てるなら……」
「他ならぬあなたたちのお頼みですから……」
NIPPON学は、Sザンヌという存在が加わったことで、他にはない、新しい価値観を持つ「和を学ぶ」講座となった。まさに「縁尋の機妙」である。
たとえ英語が堪能ででなくても、上っ面でないコミュニケーションを取ろうとし、なだれ込んできたものを引き受けようとする姿勢は、様々な機会、そして新しい関係性を生み出してくれる。たとえ、机の上が書類の山になろうとも。
事実、Sザンヌには、なだれ込み研究所での新たな役割と、場所が提供された。そして私にたちには、機会が。
明日以降執筆予定の「NIPPON学となだれ込んで来たアメリカ人(その2)」は「This is your desk.」である。
どうぞ、お楽しみに!
と言ってなだれ込んできたSザンヌが、最近、なだれ込み研究所に出入りしている。彼女はアメリカ人なのだが、気づかいや心配りの仕方がとても日本的だ。片手にメモと鉛筆、そして『日本語決まり文句辞典』という本を持ち、一生懸命コミュニケーションを取ろうとしている。
しかし、なだれ込み研究所常勤の3人は英語が話せない。話せないのに、話したいことや思いついたことを全て伝えたいと思ってしまう。身ぶり手ぶりと片言の英語、インターネットの翻訳ソフトを駆使して会話をする。
「あなたはアメリカ人の私に何を聞きたいですか?」
と質問された私は、
「アメリカ人の女性は仕事と家庭をどう両立させているのですか」
を聞いた。
S木君は、お昼ご飯の片付けをSザンヌとしているとき、燃えるゴミとプラスチックの分別の仕方を説明していた。
S藤さんは、日本の祝儀と不祝儀の話から、なぜ黒と灰色の墨を使い分けるのか説明していた。
「Sザンヌと話をしていると、日本の文化というものを改めて考える機会になる」
実はSザンヌには、掛川ライフスタイルデザインカレッジの新プログラム「NIPPON学」のインタープリターをお願いした。NIPPON学は「食(米)」「装い(着物)」「書」「芸」「酒」などの切り口で、日本文化を改めて学ぶ講座である。Sザンヌには、日本人でない視点から、各回の講座で感じたことを話してもらう。中にどっぷりつかっていると気づかないことを、外からの目で見てもらうのだ。掛川の茶畑の風景を、首都圏から来たお客さんが「素晴らしい」と言ってくれて初めてその美しさに気づいたように、彼女のものの見方、感じ方は、たぶん私たちは様々な「気づき」を与えてくれる。
この「NIPPON学」での役割を説明したとき、Sザンヌは『日本語決まり文句辞典』を見ながらこう言った。
「私のような者でお役に立てるなら……」
「他ならぬあなたたちのお頼みですから……」
NIPPON学は、Sザンヌという存在が加わったことで、他にはない、新しい価値観を持つ「和を学ぶ」講座となった。まさに「縁尋の機妙」である。
たとえ英語が堪能ででなくても、上っ面でないコミュニケーションを取ろうとし、なだれ込んできたものを引き受けようとする姿勢は、様々な機会、そして新しい関係性を生み出してくれる。たとえ、机の上が書類の山になろうとも。
事実、Sザンヌには、なだれ込み研究所での新たな役割と、場所が提供された。そして私にたちには、機会が。
明日以降執筆予定の「NIPPON学となだれ込んで来たアメリカ人(その2)」は「This is your desk.」である。
どうぞ、お楽しみに!