なだれ込み研究所の一日

物語作家を目指すもの書きが、ふとしたことから変な事務所で働くことに!
日々なだれ込んでくる人や仕事、モノやコト観察記。

通過点

2007-09-30 21:02:36 | ビジネスシーン
28ページものの記念誌の制作、編集の仕事に携わっている。先週から撮影をスタートさせたのだが、ブログの更新が滞っているせいか、カメラマンのO川さんからこんなことを言われた。
「あなたはこのなだれ込み研究所で何がしたいの?」

今、私が理解できるなだれ込み研究所の仕事は、以下のものだ。
①商いをどうしていけばいいのか、そのための商品開発計画に関わる仕事。
②その計画推進のために、どう動き、何をどう表現していくかの企画提案。
③それが形になって表れたものとしての、イベントの企画運営、印刷物やホームページなどの表現物の制作編集。
④地域プロデュースとしての、地域資源の顕在化、地域発信型メニューの開発、地域活性化のコンサルティング。

私が使えるものは「言葉」であり「文章」だ。議事録や報告書の作成、下準備としての情報のまとめから商品コピー、そうしたもののほかに、人と人をつなぐ場としての「つなぐ言葉」「やりとりの文章」も必要だ。
私はここで、自分の持つ道具を使い、使うことで道具を磨き、一人ではできない、関わることさえできないコトに関わっている。私の能力や理解の幅を超えた仕事を与えられ、接することさえないと思われる人たちと関わることで、自分の幅を広げている。

今回のような記念誌の編集の仕事は、文章を書くこともあれば、撮影に同行したり、デザイナーに依頼したり、様々な得意分野を持つプロ達の橋渡しの役目をし、一つの方向に持って行くことが求められる。クライアントの意向を聞き、企画構成を考えるディレクターとの調整、全体を統括するプロデューサーとの調整も必要だ。ものを創り上げる仕事は、私の好きな仕事でもある。信頼するこれらの人たちとの仕事は、その都度、たくさんの発見もある。

こうした、自分だけでは関わることのできない仕事や人と関わり。自分の能力を活かしながら、高めながら幅を広げることができる。私はここで、そんなことをしたいのだと話した。すると、O川さんは言った。
「もしかしたら、なだれ込み研究所は、通過点なのかもしれない。あなたにとってもオレにとっても、もしかしたらS藤にとっても」

みんな、どこへ向かい、どこへ行きたいのだろう。





長唄という文化

2007-09-07 22:55:40 | まちづくり
第二回掛川邦楽ライブ「掛川神明氏子のにぎわい」に行ってきた。
掛川大祭で塩町が神明宮に奉納する「浦島」を、杵屋勝彦先生が長唄、三味線で生演奏(という言い方が正しいのかどうか?)し、塩町の子どもたちが手踊りを披露する生ライブである。

まずは杵屋先生の言葉から。
「地元の人はそうは思っていないかもしれないが、掛川の祭りは実はとても素晴らしい。各町内には、それぞれ神社に奉納する手踊りがあり、当たり前のように大人も子どもも長唄の手踊りを踊っているが、実はこれは全国的に見てもほとんど例がない。東海道筋で島田と藤枝に長唄を踊る祭りが残っているくらいだが、どちらも東京から家元クラスの人材を呼んでいる。それはそれでクオリティの高い長唄を披露し、祭りの価値を上げているが、地元の人が当たり前のように踊っているのは掛川だけ。日常生活の中に長唄が生きている。生活の中に長唄が生き、伝えられているのはここだけ。保存会の唄ではなく、生きている唄」

子どもの頃に踊った「浦島」が、長唄、という音楽のジャンルだということも実は知らなかった。長唄の声も、三味線の音色も、小さい頃から慣れ親しんでいる。でもそれは「うちの町の踊りの唄」くらいの認識しかない。それが、実は日本の伝統文化だよ、実はそうして慣れ親しんでいることが素晴らしい価値なんだよと、外からの人に教えてもらったような感じだった。

長唄とは、江戸歌舞伎の伴奏曲として発達した三味線音楽だそうだ。文政(1818~1830)頃には鑑賞本位のお座敷長唄も生まれている。そうした曲は、俗曲、端唄とも呼ばれているそうだが、そういう短い唄、テンポのいい唄も演奏して下さった。
本当に、お座敷にいるような気分だった。
三味線の音色は潔く、一人で立っているイメージだ。そして、甘くないのに艶っぽい。
端唄を演奏しているとき、着物をきちんと着て、踊り出したい気分になった。踊りや三味線を習い、芸事を習い、そうした芸事の世界に身を置く、という人生の選択肢もあったのだと、自分のこととして実感した。
不思議な感覚だった。

「初めて掛川に来たとき、宴会で、祭り青年の若者が、酔っぱらって普通に長唄を唄っているのを見たとき、本当に驚いた」
「掛川は、地元の旦那衆が支えた、芸事の盛んな町だったのだと思う」
そうしたDNAが、私たちの中にきっとある。

長唄が、庶民の祭りの中にきちんと受け継がれているのが価値なのだとしたら、価値を価値として顕在化させなくてはいけない。私自身、知らずに、気づかずに育ち、今こうして教えてもらったように。
地元の人たちが、自分たちの祭りを、手踊りを、「すごいもの」だと気づくことからすべてははじまる。そうして、盛り上がっていく中で、杵屋先生のような「本物」がさらに力を与えてくれる。先生は、年に一度でも二度でも来る、とおっしゃって下さっている。
私ができることは、今日、感じたことを情報発信すること。
心からそう思った。


杵屋勝彦プロフィール 
小学生の頃より「三味線」に興味を持ち、中学一年の時より民謡・端唄の三味線を通信教育の教材にて独学。
高校二年にて「長唄三味線」を、杵屋勝雄師に師事。
東京藝術大学音楽学部邦楽科長唄三味線専攻に、昭和57年入学。
在学中より「長唄」を、東音福田克也師に師事。
芸大卒業後、正式に唄方に転向。「杵勝会」「東音会」に所属。
長唄演奏会、歌舞伎公演、舞踊会、放送等へ随時出演。
平成元年以降主宰の「彦音会」を国立小劇場等で開催。
東京・横浜・熱海・京都にて稽古場を持つ。


建築展が始まる

2007-08-25 07:30:31 | スローライフ
24(金)25(土)26(日)の三日間、「スローな住まいの建築展in掛川」が開催される。ハウスメーカーという選択肢のなかった生活者が、建築家紹介システムと出会い、一人の建築家を選び、地域の工務店とともに建てた木の家を会場としている。
完成見学会としなかったのは、こうした「生活の器」としての住まいづくりを大切に考え、地域の人たちと手間ひまかけた家づくりをしてきた姿勢が、そのままスローライフ掛川の提案する豊かな生活と一致する部分が多かったこと、そして多くの方が様々な形で協力してくれる体制が整ったからである。

今回の建築展では、つくり手側の想いが聞ける。建築家だけでなく、現場監督、職人といった普段は裏方に徹する人たちの生の声が聞けるのである。
この建築展開催までのプロセスに最初から関わり、みんなの想いを聞き、家づくりに関わった多くの人の話を聞く中で、驚いたこと、知らなかったこと、たくさんの発見があった。そんな様々な発見を、来て頂く方々とも共有したい。

トークで一部進行を任された。人前で話すのは苦手だし、緊張するし、進行なんて初めてだ。でも、プロセスを知り、様々な方に取材し、驚きや発見に感動したことを多くの方に感じてもらいたいし、そうした想いを引き出すことが私の役割なのかな、と思った。

キーワードは、
・あいまいさが心地よさを生む
・収まりの良さとは何か
・小さな差を大きな差と感じる感性

緊張して引き出すどころか、真っ白になっちゃったらどうしようとか不安はあるが、なんとか頑張ってきます。皆さん、ぜひ来て下さい。

http://slowhouse.seesaa.net/

第1回掛川市景観市民講座(語録)

2007-08-18 21:51:11 | スローライフ
8/5(日)に実施された掛川市景観市民講座「第1回 河口と海岸の景観を考える」。あれこれ語るよりも、講師、参加者の語録を読んで頂くことで、この講座がどれほど有意義で面白かったかがわかって頂けると思う。

[講師:鉄矢悦朗氏]
・景観はつくっていくもの。
・植生が豊富という日本的である事をもっと大事にして、景観のデザインも考えていけばいい。
・景観にとって何が主役か考えること。
・景観は、隠されたエピソードをその土地の人が語れるかどうかで魅力が出てくる。
・プロセスを経ることで、エピソードが生まれる時間ができる。語れる時間がある。語れる景観になる。
・見慣れる怖さを感じて欲しい。見慣れたら、「やばい」と思った方がいい。
・目立たなくては売れない状況が、デザインをペテンにする。消費者の質も問われている。
・「海へ走って行きたい」「砂の上を転がりたい」、そういった期待感がある景観を。
・畑や茶畑も景観として捉えるような仕組みを取り入れることが大切。
・世界遺産があるように、市民が勝手に「掛川遺産・子どもたちに語り継ぎたい景観」「掛川遺産100選」を選んでしまえばいい。

[講師:小川博彦氏]
・遠州の海は山から砂が運ばれてくるから波が幾重にも来る。遠浅の海でなければない。砂がなくなればこの風景はなくなる。
・流されている砂の大事さ。砂が上流から流れてこなくなる現実。海辺の景観を考えるとき、背景としてきちんと考えなくてはいけない。
・人は水際を歩きたい。水にさわってみたくなる。海と人がつながる場所。海と人との交流が、人の作法がなくなったことで規制だらけになってしまった。
・「弁財天海浜公園」と書かれた木の看板の後に、注意書きだらけの看板がある。大事なことが書かれているのはわかるが、海へ走り出したくなる気持ちにストップをかける。

[参加者より]
・今まで、観光パンフレット的な見方しかしていなかった自分に気がついた。色々な見方で景色を見ることの大事さを感じた。
・昔は弁天も国安も賑わいがあった。人のいぶき、交流があった。
・海は命が継承される場。生命を育む場。そういう場所が減っていることは驚異である。
・菊川は一級河川、国の管轄。弁財天川は二級河川、県の管轄。どっちがいいかはそれぞれの価値観だが、弁財天川の橋の安普請が妙にほっとさせる。
・「日本一」ということよりも、地域にとってどうなのか、住む人、訪れる人にとってどうなのか、ということが大事なのではないか。

スローな住まいの建築展in掛川

2007-08-17 20:15:43 | スローライフ

8/24(金)25(土)26(日)の3日間、NPOスローライフ掛川主催の「スローな住まいの建築展in掛川」が開催される。地域の素材、地域の人材を生かした住まいづくりの実例として、完成した新築のお宅を会場に、様々なプログラムが行われるのだ。

8/24(金)と25(土)の進行はS藤さん、26(日)の進行はなんと私の予定。人前に出るのはとっても苦手なのだけれど、S藤さんが出られないのだとしたら、企画、打ち合わせから同席している私が進行役になるのが、どう考えても一番いいと思った。こうしてだんだん逃げられなくなるのね……。

さて、今回の建築展。建築家との出会いを求め、オリジナルな建築を志向する生活者が、建築家紹介システムと出会い、シルエットの美しさと機能美を現代に活かす建築家と出会い、日本の伝統建築の技術を持ち合わせる地域の工務店と出会うことで、ありたい生活のための住まいづくりを実現した一例としての紹介である。
建築家に設計を依頼した生活者、建築家、現場監督や職人さんなど、様々なトークを聞くことができる。開催時間帯ならいつでも入場可能。実際の建築空間を体感しながら、常設コーナーやトークイベントを見学することができるというわけだ。
K-mixが後援なので、ラジオでCMを聞いた方も多いかもしれない。

今日もちょうど現場に行ってきたのだが、今回の建築家の設計らしい、すみずみまで生活者のための建築だなあと感じた。そのあたりの話も、「建築現場を談義する」の中で引き出せたらと思う。
気持ちのいい家です!
ぜひ、ご来場下さい。

ということで、久々の記事は、リハビリも兼ねてNPOスローライフ掛川の事業の紹介でした~。
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「スローな住まいの建築展in掛川」
日時=8/24(金)25(土)26(日)
会場=掛川市下垂木 <入場無料>
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質的豊かさ。自然との共生感覚。生活における地域の再認識。風土を活かし、味わいのある豊かな生活を志向するとき住まいはどうありたいですか。NPOスローライフ掛川は、地域の素材、人材、技術を活かした木の家のつくり方を提案します。
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詳細をblogでご紹介しています
http://slowhouse.seesaa.net/
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8/24(金)17:00~20:00
8/25(土) 9:00~20:00
8/26(日) 9:00~17:00
●見学
 3日間の上記開催時間帯なら、いつでもご入場・ご見学いただます。

●常設コーナー
 地域の建築家14名の詳細ファイル、建築模型をご覧いただけます。
 建築家と工務店による、住まいづくり事例紹介パネルを展示します。

●トーク
 テーマによってゲスト(施主ほか)、建築家(フロムフォー登録建築家)
 をはじめ、鈴木建設、フロムフォー、NPOの担当者が登場。住まいづ
 くりに関する興味深いトークを繰り広げます。(各回約30分)
 24(金)
  18:00 オープニング
  19:00 トーク「建築家との住まいづくりへの第一歩」
 25(土)
  10:00 トーク「どのようにしてこの建築ができたか-1」
  13:00 トーク「建築家と工務店との住まいづくりを検証する-1」
  15:00 トーク「建築現場を談義する-1」
  17:00 トーク「木の住まいづくりと工務店の役割」
 26(日)
  10:00 トーク「どのようにしてこの建築ができたか-2」
  13:00 トーク「建築現場を談義する-2」
  15:00 トーク「建築家と工務店との住まいづくりを検証する-2」

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主催/NPO法人スローライフ掛川
http://www.slowlife.info/
協賛/株式会社 鈴木建設
http://www.cs-suzuki.jp/
住まいづくりレシピ館 フロムフォー
http://www.fromfor.com/
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※お施主様のご厚意により、限定3日間のみ会場として使用させて
  いただきます。作法と節度と持ったご来場をお願い申し上げます。
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NPO法人スローライフ掛川 連絡事務所 
〒436-0091 掛川市城下5-10.1F
TEL.0537-22-0654 FAX.0537-22-0786
E-MAIL: project@slowlife.info

清楚な建築、正直な建築

2007-08-03 23:31:42 | ビジネスシーン

8/4(土)、8/5(日)、株式会社鈴木建設の完成見学会が行われる。
コンセプトは、
生活デザイン+清楚な建築
=現代の民家
である。

建築家のO澤氏が設計監理を担当し、日本の伝統建築を得意とする鈴木建設の施工。
様々な人に取材する中で浮かび上がってきたキーワードは、
・当たり前に建っている清楚な家をつくろう。
・地域の景観に対して正直にやった正直な建築。
・あなたの住みたい家は隣のうちみたいな家じゃないのか。
・自分の家を知っていくプロセスが、自分の家を愛するプロセス。
・本物、作法を知った上でのデザイン。
である。

8/4(土)の新聞折り込みとして、印刷物が折り込まれる。
そのデザイン、写真、仕立て、つくりを、すみからすみまで見て下さい。
文章表現担当として、私は裏面の構成、編集に特に心をくだいた。
建築家と家を建てようなどと思ってもみなかった生活者が、建築家と出会い、どう変わったか、何に気づいたか。
工程会議のレポート。取材した私自身の驚き。
建築家と現場監督の何気ない会話。
棟梁の職人としての発言。

そんな様々な人の想い、人と人との出会いを通じて、ひとつ「家」というものができていくストーリーを、私なりにランダムに並べることで、何かが浮かび上がってくるような表現物にしたかった。
真剣に「家」に考えてくださる方に、ぜひ、実際に足を運んでいただきたい。住まいづくりに関わったすべての人の想いが、何も語らず、静かに迎え入れてくれる。


景観について何ができるか

2007-07-30 19:18:28 | スローライフ

8月5日(日)、掛川市とNPO法人スローライフ掛川が主催する掛川市景観市民講座が行われる。
マイクロバスに乗って、専門家のアドバイスや視点を見聞きしながら、「河口と海岸の景観について」考えるというものである。講師はなんと、掛川ライフスタイルデザインカレッジ講師陣の中でも人気の高いお二人、東京学芸大学准教授の鉄矢悦朗氏とプロカメラマンの小川博彦氏である。

事前の打ち合わせでの鉄矢氏の言葉がいい。

「景観とは何か。景観に似た言葉に『風景』『景色』『佇まい』などがある。『景観』は人が意識を持つことで変えることができる。景観は人が関わり、人が育てるもの」

「日本人とヨーロッパ人の景観に対する意識の違いを考えたとき、歩道と建物の際(きわ)で『公』と『私』に分かれるのだとしたら、日本人の場合、『私』の部分はあくまで『私』であり、自由にしていいのだという意識がある。ヨーロッパ人は、『私』であっても『公』に接している面はあくまでパブリックだという意識がある。だから作法に則って外観を決めようという意識がある。日本の方が民主的だが、逆にそのせいで景観を悪くしているのも事実」

「景観について、自分のこととして関わる意識が大切。エピソードを持つことが大切である」

建築家であり、デザイン教育の専門家であり、市民の視点でまちづくりに関わる鉄矢氏のアドバイスが今から楽しみである。

さて、もう一人の講師小川氏は、たぶんベラベラはしゃべらないだろうが、何に対してどんなふうにカメラを向けるのか、そのものの見方、見るためのポジションの取り方が楽しみである。よく私は、仕事で一緒に撮影に行くと、小川氏がさっきまで写真を撮っていたポジションにこっそりと立ち、「なるほど、ここからこう見て、こう撮っていたのか」と納得する。同じように撮れないのが不思議ではあるが。

この景観市民講座は全3回の講座であり、秋に里山、冬にまちなかのフィールドワークを予定している。1回ごとの参加も可能である。
景観とは何か、まちの見方、景色、風景、景観の見方。自分の暮らすまちのことを知る、あるいはものの見方を広げる、そんな様々な楽しみ方のある講座になればいい。
お申し込みは、NPO法人スローライフ掛川連絡事務所までどうぞ。


平成19年度 掛川市景観市民講座 
第1回 「河口と海岸の景観を考える」

■開催日時/2007年8月5日(日)
      7:30~12:30 (掛川市役所集合・解散)※雨天実施
■参加条件/高校生以上、定員30名 (参加費無料)

【プログラム】
マイクロバスを利用し、海岸と河口の景観を2箇所を巡り(フィールドワーク)、大東支所にてゲスト講師による座学(ワークショップ)を実施します。

【スケジュール】
7:15 掛川市役所玄関集合(市役所駐車場をご利用ください)
7:30 マイクロバスにて移動
8:15 フィールドワーク:菊川の河口と海岸(掛川市国安)
9:45 フィールドワーク:弁財天川の河口と海岸(掛川市沖之須)
10:30 ワークショップ大東支所会議室にて
11:45 マイクロバスにて移動
12:30 掛川市役所に到着・解散

≪ゲスト講師≫
鉄矢悦朗(てつや えつろう)氏
建築家、東京学芸大学准教授、NPO法人「調布まちづくりの会」理事。掛川との関わりは、2004年に「掛川ひかりのオブジェ展」に学生有志と参加して以来。NPOスローライフ掛川主催「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」のフォーラム講師を務める。東京都調布市在住。

小川博彦(おがわ ひろひこ)氏
小川写真事務所主宰、プロカメラマン。掛川市市勢要覧の撮影を手がけるなど、掛川周辺での撮影は多い。NPOスローライフ掛川主催「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」のフライフィッシングとネイチャーフォトグラフィーの講師を務める。共著に『サイトフィッシングの戦術』。富士市在住。

≪お申込み・お問合せ先≫ 
NPO法人スローライフ掛川連絡事務所 掛川市城下5-10.1F コンセプト株式会社内
 TEL.0537-22-0654  FAX.0537-22-0786  E-MAIL: project@slowlife.info

講演の聞き方

2007-07-29 19:55:20 | スローライフ

7月28日(土)、掛川ライフスタイルデザインカレッジ7月フォーラムが行われた。講師は国立民族学博物館・民族社会研究部准教授の横山廣子氏、講演のタイトルは『中国人・中国文化との出会い-文化人類学的理解の醍醐味-』である。

横山氏とは、昨年のフォーラムで初めてお会いした以後も、掛川大祭のフィールドワークで何度かお会いしており、自分でずんずん歩き、見て、聞く、まさに「現場の人」だなあと感じていた。
今回の講演も、「似ているけれどちょっと違う日本と中国の行動様式の根幹を、わかりやすく紹介したかった」の言葉通り、まさに現場から生じた感覚が出発点になっている講演であり、心に響くことが多かった。

横山氏は冒頭、中国の人と接触する中で「あれ」と思うことが、調査研究していく上でヒントとなることが多かったという話をされた。昨年のフォーラムでもおっしゃっていたように、自分の感覚を大事にし、感性をとぎすませ、「あれ」と感じたことをそのままにしない好奇心が大事なのだ。

小説好きの私にとって印象的だったのは、名前の付け方だった。中国では男系(父系)の親族のつながりが強く、伝統的に大家族で暮らすことが理想となっていた。男系親族内では同世代(兄弟、いとこ)の名前には、必ず同じ漢字を付けるという風習もあった。だから、関係が離れていたり、初対面の場合でも、名前を聞けば「誰と同世代の人か」がすぐわかったという。
なるほど、浅田次郎の『蒼穹の昴』を読んだとき、主人公は「春雲」。『中原の虹』で主人公となる兄は「春雷」だった。

もう一つ、ぺー族のお盆の風習が面白かった。
お金や服や靴を紙でつくり、燃やすと、あの世で祖先がそのお金や服や靴が使えると信じられている。
中国で子どもがいないことはとても怖いことだと思われるのは、老後の暮らしのこともあるが、自分が祖先供養してもらえないことに対する恐怖があるからだという。紙のお金を燃やしてくれる人がいないと、あの世で生活できない。成仏できない。さまよえる魂になってしまう。それを中国では「鬼(グゥイ)」になるという。「鬼(グゥイ)」にはなりたくない。だから、祖先供養してくれる子孫がほしい。
これはまさに、ファンタジーの核となりそうなモチーフである。

フォーラム後の懇親会がさらに面白かった。それぞれに感じたことを話し、横山氏が質問に答える形で補足説明をされたのだが、より自分たちのライフスタイルや生き方に関わるような議論ができたように思う。

私が話したのは次のようなことである。
「講演の中で、おごり、おごられる関係は、そのまま、頼り、頼られる関係であり、それによって関係性が深まるとも言える、というお話があった。さらに、割り勘は平等のように感じられるが、そこで関係性がいったん断ち切られることにもなる。精算されることになる。おごり、おごられる関係を『良し』とするのは、関係性を連続されるための知恵かもしれない、というお話が印象的だった。
その場で精算することは楽かもしれない。言い換えれば、白か黒かはっきりさせることは、次に引きずらなくて楽かもしれない。しかし、そこで関係性を断ち切ることになる。グレーゾーンにいることは、色々な意味ではっきりせず、苦しいかもしれないが、そこにとどまることも大事なときもある。『おごり、おごられる関係性』のお話から、私はそんなことを考えた」

これをS藤さんは「リセットしない文化」「曖昧な関係性は機会を与える」と言っていた。

もう一つ、印象的だったのは、横山氏のこんなお話。
「何かを決めるとき、自分が慣れ親しんだものから選ばなくてもいい。自分がいいと思っているものの中かから選ばなくてもいい。異文化を知る時、よくよく裏を考えてみれば、道理もあるし、理由も納得できる。そんなふうに、自分が納得できるものを増やし、選択の幅を広げ、その上で自分で選べばよい。決めるのは、自分」

近いようで遠い中国のお話として聞くもよし、身近な自分の生活に引き寄せて聞くもよし。様々な考えようのできる、考えるきっかけを与えてくれる、そんな講演だった。
横山先生、ありがとうございました。

K造語録

2007-07-20 18:22:46 | ビジネスシーン
大切なのは、

あなたが人にどう見られるかではなく、
あなたが人をどう見るかだ。

面白がって、勝手に

2007-07-15 21:29:03 | ビジネスシーン
先日、ふいにI森さんがやってきた。
彼は東京から菊川に移住して、今年の初め頃からスローライフに関わっているプロデューサー(?)ディレクター(?)だ。なだれ込み研究所と同じ仕掛けづくりとプロセスに関わる仕事だが、話を聞くと、より建築、内装、デザイン寄りの仕事をされているようだ。

先日のフォーラムで、浜野安宏さんから「金次Kinjiro book & cafe」の提案を受けてから、あれこれ考えていたらしい。
I森さんとS藤さんのやりとりの中で、面白かったことをいくつかメモしておく。

「報徳の『経済と道徳の両立』の話を聞いて、今、道徳と法律がどんどん離れてしまっていると感じた。まず法律ありきになってしまった。法律に触れてないからいいじゃないか、と政治家まで言うようになってしまった。決まり事の前に、こんなことをしちゃいけない、という道徳観があったはずなのに」

「たとえば、金次郎カフェでは、そんなことも考えたらどうだろう。道徳を守ることを発信するカフェがあったっていいじゃないか。その方がオシャレなのだとイメージできれば、それが当たり前にできる。『川をきれいにしなさい』と言うのではなく『川で遊ぼうよ』と言えるNPOならできるはずだ」

「廃校になった小学校の椅子をカフェに置くだけで絵になる。昔の校長室にあったようなソファーを置くだけでレジェンド、ストーリーが生まれる。報徳図書館とその周辺には、それだけの雰囲気と価値がある。どこを切り取っても絵になる風景であることは、非常に大事」

「金次郎カフェに置く本は『金次郎カフェ書籍選定委員会』の了承がないと置けない、などの枷をかける。委員会のメンバーには、大日本報徳社社長である榛村純一掛川前市長であったあり、浜野安宏さんであったり。売り上げの何パーセントは文学を育てるために使う、とするなど、付加価値をどんどんつけていくのも面白い」

「カフェの顔、カフェの正面がどこなのかも考えている。その場所へ行くためのアプローチ、プロローグが大切だから。ネーミングについては、みんなで意見を出し合い、様々なプロセスを経る中で、自然とにじみ出てくる名前がいい。きっと、本質を拾い上げられるはずだ」

I森さんの話を聞きながら感じたのは、「考えることが面白いから、勝手に考え、勝手にしゃべりにきた」というI森さんの姿勢だ。「面白い」という前提だけで、ある意味プロが、カフェ構想のプロセスについて「勝手に」「面白がって」関わり始めてくれたということだから。

「金次Kinjiro book & cafe」構想が一歩一歩前進していくのだとしたら、様々な人が「面白がって」「勝手に」関わっていくそのプロセスをきちんと蓄積していくことが、私の役割なのだとも感じた。もちろんこれは、私が、面白がって、勝手にやっている。