なだれ込み研究所の一日

物語作家を目指すもの書きが、ふとしたことから変な事務所で働くことに!
日々なだれ込んでくる人や仕事、モノやコト観察記。

ばらばらだけど繋がっている?

2006-02-27 01:32:00 | ビジネスシーン
週末には森町の自然回帰体験ツアーとクライアントさんの現場見学会があり、印刷物の大詰めと報告書のたたき台の締め切りが一気に押し寄せ、さらに、追い討ちをかけるようにS藤さんの北海道出張が重なる今週。なだれ込み研究所は相も変わらずバタバタである。

午前中、御前崎に取材に行った。
60歳から花の写真を撮り続けている85歳のおばあちゃんである。露草を撮ろうとしてしゃがみ込んで、変な人に見られたこともあると笑う。市販の図鑑の索引では調べにくいからと、自分なりの索引を作成。一文字一文字、丁寧に書かれていた。お話していると、次から次へと花の名前が出てくるのにもびっくり。
印象的な言葉を以下に。
「主人に撮ってもらった写真が、自分の撮りたいものと微妙にずれていたので、自分で撮りたいと思うようになった」
「季節が半月ずれると、全然違う花が咲いている」
「昔はあって、今はない花がある」
「御前崎には、名前に『浜』のつく花が70種類もある。浜には浜の豊かさがある」

事務所に戻ると、S藤さんはお昼ご飯をかっ込むように済ませ、「戻りは4時半!」とバタバタと浜松へ出かけていった。どんな用事か、事務所の誰も知らない相変わらずななだれ込み研究所……。
さて、私の方は机の上のごちゃごちゃを無視して、息をつくようにコーヒータイム。「60歳を過ぎたとき、自分はどこで何をしたいと思うんだろうな」などと考えていたら、目の前でアートディレクターのH岡さんがうなっていた。
「どうしたんですか?」
私の声に顔を上げ、相変わらず浮世離れした微笑みを見せるH岡さん。
「他市の『駅前をどうしたらいいか』のアンケート結果を見ていたんだよ」
「どんな答えがあるんですか?」
「もっと駐車場が欲しいとか、だから不便だとか、そういう意見が多いんだよ。みんな、本来人間が持っている足や歩くという機能のことを、忘れてしまっているのかね」
「歩くという機能……」
「ああ」
「そういえば、インタビューをした陶芸家の竹廣さんが言ってました。『まちとは、道があって、路地があって、界隈があって、映画館があって、空が見えて、そんな中を歩くのがまちなんだ』って」
「ほんとにその通りだよ。駅ビルを作って魅力的なテナントをたくさん入れて欲しいという意見もあった。そんなのでは、地方都市の良さが消えてしまうのにね。中央と地方都市を同じに考えているのかな。その土地、その土地の良さを活かしたまちづくりをしていかないと始まらないのに」

それぞれ、頭の中でばらばらのことを考えているなだれ込み研究所。でも、どこかで何かが繋がっているような気がするのは、私の気のせいかな。

さまざまな出会い

2006-02-24 00:19:40 | スローライフ
昨年、スローライフ会員になった下さったS尾さんは、入会当時愛知県在住だった。
掛川市に引っ越しが決まり、インターネットで掛川のことを調べていくうちにNPOスローライフに行き着き、メールでの問い合わせ後、会員になってくれた。
「掛川には2月に引っ越します」というメールを頂いていたのだが、今日、引っ越し後の片付けも一段落したということで、なだれ込み研究所にあいさつに来てくれた。

話を聞くと、なんと、S尾さんはサイクリストだった。今月開催されたブルベにも参加しようと思ったくらいで、次回の朝のスロサイ(毎月第2土曜日に行われている早朝スロースタイルサイクリング)には是非参加したいし、実はカヌーもやっていたということだった。
ライフスタイルデザインカレッジの話をすると、
「何でも手伝いますから、是非、声を掛けて下さい」
と言って下さった。
なかなか強力な助っ人が現れた。
スローで、なんちゃってなことが多いかと思いますが、今後ともよろしくお願いしますね。

さて、ホームページからの繋がりといえば、先日電話のあった社団法人土木学会からも「土木とスローライフ」について、正式なインタビューの申し込みがあった。聞き手は長崎大学の先生だそうで、話し手はS藤さん。3月になだれ込み研究所にやってくる。どんなお話になるか楽しみである。

ホームページではなく、書籍繋がりの電話もあった。
札幌市在住の84歳の方で、札幌を開拓した報徳の偉人大友亀太郎の子孫だという方である。大日本報徳社の社長である榛村前市長とも札幌で会ったことがあるそうで、偶然にも『掛川奮闘記』を手に取り、報徳の箇所にいたく感激し、「本を買いたいから」と電話を下さった。なんと、3冊のご購入。
「著者は今、札幌にいますよ」
ちょうど電話に出たS藤さんが言った。
「おお~、そうですか」
電話の向こうで微笑まれる様子が、目に浮かぶようだった。その後、私が事務手続きについて話したのだが、84歳とは思えない矍鑠(かくしゃく)とした話しぶり。この方と著者K松さんの出会いがあるかもしれないと思うと、世の中、面白いものである。

一日に、新しい出会いが三つあるなんてことは珍しいが、そういうことが起こりうるNPOスローライフ掛川の存在感・存在意義というものは、もしかしたら、中にいる私たちが思っているよりも、ずっと高いものなのかもしれない。



その自信はどこから来るのか

2006-02-23 00:01:06 | ビジネスシーン
現在、編集している印刷物の第2稿があがり、クライアントのもとに届けに行った。
表紙案を見て、担当者のMさんがうなった。
「う~ん、どうかなあ……」
明らかに納得されていない表情である。こんなとき、業者として、何を言ったらいいのだろうか。
……とりあえず、Mさんほかクライアントの意向を持ち帰ることにした。

事務所に戻り、S藤さんが帰るのを待ちかまえて聞いた。
「クライアントさんが、明らかに満足していないのを感じたとき、私は業者としてどんなことを言ったらいいんでしょうか?」
S藤さんは、さも簡単そうに言った。
「オレとH岡さんが企画して、オレらが信頼するデザイナーが作るんだから、必ず先方が予想している以上のものができる。だから、そう言えばいいの」

自信に満ちた言葉に、モヤモヤが吹っ飛んだ気がした。
私自身、その表紙案がいいのか悪いのか、自分の目が信じられないだけに、自信を持って答えられなかった。でも、自分の目は信じられなくても、S藤さんやH岡さんの目は信じられる。信頼する人たちが、「いいものができる!」と言っているのだから、私も自信を持って対応すればいいのだ。
S藤さんの言葉は、強引な論理のようで、ある意味、本質を突いているのかもしれない。

「表紙は、多少の修正で、見違えるほどよくなるよ」
S藤さんとH岡さん、二人して同じことを言った。
自分の目が信じられないときは、信頼する人の目を信じ、自分の目を磨いていけばいい。
そういえば、この仕事に関わるとき、S藤さんがこんなことを言った。
「オレとH岡さんが企画して、O川さんが写真を撮り、H岡さんとあなたが文章書いて、K出さんがデザインして、オレが最終的に品質管理するんだから、必ずいいものができる。このキャスティングができた段階で、いい仕事ができるって自信を持って言えるね」

この自信は、一体どこから来るのだろうか。
ちょっと誇らしいような、恐いような、複雑な気持ちになる。
だから毎日、自分の120パーセントの力を引き出そうと、頑張れるのかもしれない。


ものの見方あれこれ

2006-02-22 22:17:42 | ビジネスシーン
午前中、なだれ込み研究所の面々で、グランドホテルにレンタサイクルを届けに行った。行きは自転車、帰りは歩き。いっしょに歩いていると、S藤さんが様々なものを見ていることがよくわかる。歩きながら、ものの見方について議論した。

午後は、編集中の印刷物の第二稿を取りに静岡に行った。苦労した12人のインタビュー記事が、4ページに亘りレイアウトされ、デザインされ、形になっていた。
ちょうど昨日、
「デザインされた印刷物と、デザインされていない印刷物の違いがわかる?」とS藤さんに聞かれ、私は「わかります」と答えられなかったのだが、今日、この第二稿を見てよくわかった。
苦労が報われたようなページだった。デザイナーが入った印刷物と、入っていない印刷物の違いが、自分が苦労した分だけ、身に染みてよくわかった。

デザイナーのK出さんに、ここぞとばかり聞いてみた。
「デザインに関して素人の私が、『このデザイン、どう思う?』って聞かれたとき、どこを見て、どんなふうに答えればいいんでしょうね」
「思ったままを言えばいいんだよ」
「思ったまま?」
「うん。『なんか、居心地が悪いなあ』でもいいし、『こっちより、こっちの方が収まりがいいなあ』でもいいし、感じたままを言えばいい」
「……そんな、ものでしょうか」
「素人の素直な目を通して語られる言葉に、ハッとすることもあるんだから」

絵心もなく、その手の知識もなく、ことデザインやビジュアル系に関して全く自分の目を信じられない私は、「これ、どう思う?」と聞かれても、いつも口ごもってしまう。
でも、K出さんの言葉を聞いて、これからはちゃんと自分の意見を持ってみようと思った。自分に問いかけることをしないで、逃げていても前には進まない。「それは違うよ」と言われたときは、じゃあ、どう違うのかを聞いてみよう。

ほかにも、時間軸を大事にする話、それじゃあダメなのだという話など、S藤さん、T橋さんを含めていろいろ話したのだが、それはまた別の機会に。

今朝、妙にゴージャスな気分になりたくて、テンプレートをクレマチスに変えたのだが、今はしっくりくる、落ち着いたテンプレートに戻そうと思う。
どんな気持ちの変化があったのか、自分でも不明である。


嵐来たる!

2006-02-21 23:23:31 | ビジネスシーン
今日、嵐が来た。
びゅーびゅー吹き荒れる嵐でも、嵐のような忙しさでもなく、本物の、ジャニーズの嵐である。

ことの発端は、先週のレンタサイクル。若いにーちゃんとねーちゃんがNPOスローライフに自転車を借りに来た。そのまま貸し出すだけだったら、そこで終わっていたのだが、ただの観光者らしからぬ、業界人っぽい匂いを感じ取ったS藤さんは、二人から話を聞いた。彼らは、フジテレビ系関東ローカルの番組「まごまご嵐」のADだった。
ちなみに「まごまご嵐」は、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』にも載っているのだが、嵐のメンバーが日本各地の老夫婦のもとへ訪問し、一日だけ孫になるという設定の番組らしい。

で、彼らは掛川の風景、店、人、ポイントとなる場所などを探していた。
結局、
「オレらが案内してやるで」
ということになり、NPOスローライフのロケハンガイドスタッフ(I村代表とK造さんとS藤さん)がフル回転、休日返上で、場所と店と人を紹介したのだった。事前案内は4日間にも亘った。
そして、ようやく今日の撮影日を迎えた。

朝、S藤さんはレンタサイクル貸し出しのため、7時前に出社。6台の自転車を貸し出した。私が9時半に出社したときには、竹の丸周辺や蓮池周辺に、何やらそれらしき集団がいた。
昼は紹介した店で、名物の親子丼を食べ(居合わせた客として、I村代表とY下事務局長が登場!)、その後、近くの駄菓子屋さんへ。S藤さんと、ちょっと様子を見に行く。どこで情報を仕入れたのか、周辺には人が集まり始めている。
「嵐の6人のメンバーって、名前知ってます?」
「やだなあ、K住さん。嵐は5人だぜ」
「え? レンタサイクル6台だったから、6人だと思ってました」
その後、なだれ込み研究所にも、メンバーの一人がやってきた。
「このあたりに、面白い場所ってありませんか~」
S藤さんが大日本報徳社を紹介する。彼は、事務所の前に置いてあったS藤さんの自転車を借りて去っていった。
「今のは、誰なんですか?」
「櫻井だよ」
私の質問にS藤さんが答えたら、
「違います。彼は、松潤です!」
近くにいた人に怒られた。
まったくあてにならない、なだれ込み研究所の面々である。

そんなこんなで、夕方までNPOスローライフが紹介した店を、嵐が駆け回った。まちなかには嵐を追い求める人がしだいに増えはじめ、なんだかイベントみたいでワクワクした。私自身は、「あらし~、あらし~」とバレーボールで歌っていたときしか知らないのだが、みんなが盛り上がっていると一緒になって浮かれしまい、ミーハーのようになってしまった。
誰が誰で、何が何だかわからなかったが、妙に愉しい一日だった。

ちなみに、なだれ込み研究所でS藤さんが松潤と話しているとき、私はすっかり固まってしまい、映らないように、邪魔にならないように、小さくなってパソコンに向かっていた。後になって、
「まったくうちの事務所の連中ときたら、みんな知らん顔して、めちゃめちゃ変だったぞ!」
とS藤さんに叱られた。
……だって、テレビ慣れしてなくて、どうしていいか、わからなかったのですよ~。

これが、レンタサイクルから始まった嵐事件の顛末である。

それにしても、嵐までなだれ込んでくるとは――。
ただビジネスライクに自転車を貸し出しただけだったら、決してこうはならなかった。話を聞く、人とつながる、面倒くさがらずに引き受ける、その先に様々なものが見えた出来事でもあった。
嵐が行くであろう先々に連絡を入れ、店の電話番号をファックスし、地図を書き、調整し……。
その間、S藤さんの机の上の書類は減ることなく、うずたかく積まれたままであった。

皆さま、本当にお疲れさまでした。


一体今日は、何人来た?

2006-02-20 21:25:23 | ビジネスシーン
今日も「次から次へのなだれ込み研究所」である。

まずは、静岡新聞社発行「VEGA」編集室の女性お二人。小崎葛布さんへの取材なのだが、なだれ込み研究所があいだを取り持った(?)関係で、ご紹介かたがた私も同席させてもらった。取材の仕方など、修行の一環でもある。
1時間ほどのインタビューだったが、同じ場にいたものとして、どのような記事ができあがるのか楽しみである。
それにしても、文章をまとめなくていいと思うと、ゆったり話が聞けるというものだ。「おまえも、書く気で聞いてこい!」と叱られそうではあるが……。

さて、事務所に戻ると、KフルーツのH野さんがやってきた。ライフスタイルデザインカレッジでは「サスティナブルな農場経営と野外料理の講座」をお願いしなくてはいけないので、ここぞとばかり笑顔を振りまく。
「H野さん、いいところに! お待ちしていましたよ~」
すっかりお調子者の私である。

前回の会議の詳細などを話していると、S藤さんがM新聞堂のIさんと一緒に戻ってきた。H野さんとIさんとがご挨拶。
そんなところへ、「VEGA」編集室の方々が戻られて、続いて卒業旅行帰りのI本くんもやってきた。
別々の用件で来た人達が入り乱れ、ワイワイガヤガヤ、わけのわからない状態に突入した。これが「総なだれ込み」というものか。

さて、レンタサイクルの予約が6台入ったため、グランドホテルに置いてもらっている自転車を取りに行かなくてはいけないのだが、
「そうだ、グランドホテルにはI本くんに行ってもらおう!」
と、I本くんは急遽、なだれ込み研究所のK田さんと共にグランドホテルへ行くことに。
私の方は、二人が出かけるとすぐ、グランドホテルに電話を入れた。
「若いにーちゃんが二人、自転車を取りに行きますが、決してあやして者ではありませんから」と。

あやしいと言えば、S藤さんとK造さんとO川さんがセットで森町に行ったとき、あやしい人たちに見られたそうである。
ちなみに、S藤さんとK造さんがわが家に来たときは、なぜか二人ともスーツ姿だったため、チンピラとマフィアの親分のように見え、思わずご近所の目を気にした私であった。

さてさて、午後にはフロムフォーのT館長とそのお客様ご一行。そして建築家のT橋さんも。今日は次から次へと、しかも一度にたくさんの方がやってくる、妙に人口密度の高い日である。
このままなだれ込み研究所にいたのでは、仕事がたまる一方と見切りをつけた主任研究員は、さっさと家へ帰るのであった。
つづく……。

ライフスタイルデザインカレッジへの道

2006-02-19 00:15:47 | スローライフ
日曜日にも関わらず、NPOスローライフ掛川の運営会議。真っ昼間から、熱い議論の応酬である。

3日前に続いての会議とあって、ライフスタイルデザインカレッジの基本スタイルや運営形態がしだいに形になりはじめる。みんなで決めていっているというより、私には、本来あるべき姿が、話し合いによってしだいに掘り起こされ、その姿があらわれてくるという印象があった。

現在までに決まった講座の概要は、以下の通りである。

[基本的考え方]
知識を知恵に、そして行動に。
自分の生活や地域をクリアに見直したい人に。
地域の楽しい生活・面白い生活・粋な生活をテーマとして、
「まちの新しい使い方」「足るを知る心」「美しい毎日の創造」
を探求し、実践する生活提案スクールです。

[基本スタイル]
基礎講座の【ベーシックプログラム】と【オプションプログラム】の2本立て。

[ベーシックプログラム]
・掛川流(掛川スタイル)のスローな生活提案とは何かなど、ライフスタイルを具現化するためのヒントが1年を通じて学べる。
・講師陣として、
  浜野安宏氏(総合プロデューサー)
  内山 節氏(哲学者)
  宮内 忍氏(サイクルスポーツ誌編集長)
  工藤裕子氏(中央大学教授)
などのお名前が上がっている。
・正統派の講座以外にも、NPOスローライフならではの「なんちゃって系の講座」も開催。その組み合わせの妙を愉しんでもらう。

【オプションプログラム】
[スロースポーツ系]
 ①シーカヤック
 ②フライフィッシング
 ③スロースタイルサイクリング
[文化・アート・雑学系]
 ①陶芸+茶学
 ②サスティナブルな農園運営と野外料理
 ③ありたい生活と住まいづくり

企画も運営も大変だけれど、「こんな講座、どこにもないぞ!」という自負を持って、頑張っていきたいと思います。

「事情」と「ありたい」の狭間で

2006-02-17 22:02:08 | ビジネスシーン
建設会社の印刷物の仕事で、午前は施主に、午後は棟梁に話を聞きに行った。施主としての想いやこだわり、棟梁の「ここを見て欲しい」や仕事への想いを、文章の中に醸し出せるような表現をしたいと思った。

「大工さんとして、職人として、どんなことをモットーに仕事をされていますか?」
この質問に対して、帰りの車の中でS藤さんに言われた。
「だめだよ、あんな抽象的な質問をしても」
「え、そうなんですか」
「普通、答えられない」
「だって、質問メモに『大工としてのモットー』って書いてあったじゃないですか」
「そのまま聞いてもだめなの。具体的なことを一つ一つ聞いていくの」
職人というものに興味があったし、常々、人それぞれの仕事に対する考えというものを知りたいと思っているので、よけいストレートな聞き方になったのかもしれない。

このときふと、インタビューと小説を書くことの共通性を思った。
小説は「こんな世界が書きたい」「こんな人間を表現したい」という抽象的なものを浮かび上がらせるために、一つ一つのエピソードを重ねていく。つまり、主人公の行動や、人と関わる中での会話や反応、そういう具体的なことで「世界」や「人」を表現する。
「主人公の○○は、こういう人生観を持っているので、どうしてもこのことがしたかったのです」
と書いても小説にならないように、インタビューの質問事項も、ストレートに聞いたのでは答えられないようなことをどう聞くか、どう表現するかが大事なのかもしれない。
……う~ん、難しいなあ。

さて、施主のお話を聞いて思ったのは、現実と事情とありたい生活の関係性についてである。
最近、なだれ込み研究所は建築に関するお客様も多いのだが、S藤さんがよく言うのは、こんな言葉である。
「人は、『現実』と『事情』と『ありたい生活(ありたい姿)』の三つを計りにかけ、たいてい現実や事情を優先させる。こうありたいけど、現実はなかなかそうはいかないんだよって。でも、オレらだって残りの人生はたかだか30年。こうありたいと思ってるなら、それを優先させればいいんじゃないか」

こうありたいという生活スタイルがあるのに、30年も我慢して暮らすほど、その現実や事情は、本当に、それほど重要な事情なのか。人は、目の前の軋轢(あつれき)を避けたくて、現実や事情を優先しているだけではないのか。
S藤さんの言葉には、そんな問題提起が含まれているような気がした、

「もっと、自分の目を、価値観を、ライフスタイルを信じていいんじゃない?」
まったくその通りなのだが、なぜそうできないのか、軋轢を避けようとする弱さの正体とは何なのか、考えてしまう。
問題提起されると、一つ一つ掘り下げて考えたがる私は、相変わらず七面倒くさいヤツだなあと、自分で感じながらも、日々「やらなくてはいけない様々な事情」を差し置いても、ブログを書き、考え続けている。それはある意味、幸せ者なのかもしれないなと、ふと思ったりした。


激論5時間「ライフスタイルデザインカレッジ」

2006-02-16 01:12:41 | スローライフ
4月から開校される「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」に関する運営会議が行われた。7時に始まり、終わったのが12時近く。5時間近い激論であった。

メンバーの他に、フライフィッシングの講師を務めるO川さんが富士から見え、トレッキングと野外料理の講師であるY村さんも同席してくれた。
生活提案NPOとして、掛川でスローな生活デザインするための講座をどんなふうに運営していくか、しだいに形が見えてくる。今後、その詳細を詰めていくことになる。

メモを取りまくり、頭をフル回転したためへろへろである。
そのうえ、帰り際、私が気になったことをひとこと発したら、そこに残っていた人たちの意見を一身に受けることになってしまった。
「それは違うよ、K住さん」
「あなたは頭が固すぎる」
「すぐ枠にはめるのがよくない」
「そうキチキチと物事は進まない」
うまく自分の気持ちを表せず、そのうえ何が何だかよく分からなくなってしまい、様々な場数を踏んだ海千山千の男たちに言われっぱなしであった。

とにかく眠い。
議事録の作成は明日にしよう。
でも明日は取材の仕事が……。
あの仕事もあの仕事も……。

スカーレットオハラが言っていたっけ。
「明日は明日の風が吹く」


ブログとレンタサイクル

2006-02-15 23:08:06 | スローライフ
今日も朝から続々とお客様がやってくるなだれ込み研究所。

まずは、以前トラックバックなるものをしてくれた「『深』のめも」さんご夫婦。「なだれ込み研究所の一日」を読み込んでくれているようで、初対面にも関わらず、様々な情報が共有化されていて不思議な感じがした。ブログで情報発信していくことの意味など、じっくり話をした。そんなところへ、なんと北海道から電話が!
「北の心の開拓記」の発信者K松さんからであった。
「へえ~、『なだれ込み研究所』を見ている人が来てくれたの?」
「はい、『北の心の開拓記』も見ているそうですよ。『掛川奮闘記』も買ってくれました」
「ほう~、なんか面白いねえ」
リアルとバーチャルと電話がごちゃまぜになった、本当に面白い体験だった。

さて続いて、先週の土日にロケハンに来たテレビ局のスタッフが再びやってきた。レンタサイクルで掛川城周辺をまわりながら、番組の詳細を決めるという。
アシスタントディレクターの彼は27歳。
その仕事ぶりを見ていると、いわゆるADというイメージや、テレビ業界の人というイメージだけでひとくくりにしていた自分が、ちょっと恥ずかしくなった。
「いろいろ案内してもらって、天竜浜名湖鉄道沿いの道とか、風景とかも紹介したいんですけど、番組の制作意図や時間の関係で、そこで撮影できないかもしれません」
彼は申し訳なさそうに、そして心から残念そうに言った。
I村代表やS藤さんのロケハンガイドで、たぶんパンフレットをなぞっただけではない、様々な顔を持つ掛川を見たのだろう。だからこそ出てきた言葉だと思った。
だから私も心から言った。
「あなたが自分の番組持てるようになったら、また是非来て」

最近、レンタサイクルを媒体に、様々なバリエーションの展開があるような気がする。ただ観光のために自転車を借りるのではない、様々なパターン。今回のロケハンもその一つ。
「レンタサイクル」という事業は、もしかして、とてつもなく様々な可能性を秘めているのかもしれないと、ふと思った。取っつきやすく、簡単に借りられる、様子見ができるなど、いろんな意味で垣根が低い。そこから出発して、NPOスローライフと関わることで、別の可能性に広がったり深まったりする。

それは、最近S藤さんがベラベラ言うところの、
「とにかく自転車に乗ってみなよ!」
というのと同じなのかもしれない。
そして、ブログという気軽な情報発信手段も。

人との出会いも、繋がっていくことも、ビジネスも、そしてその他の様々な可能性も、「とりあえず、ちょっとやってみる」ところからはじまるのかもしれない。
都市再生モデル調査を実施していた頃や、「機械オンチの私がブログですか~!」と尻込みしていた頃には想像もしていなかったような展開に、今、なりつつある気がする。
事務局として、渦のまん中にいる者として、最近感じることである。