なだれ込み研究所の一日

物語作家を目指すもの書きが、ふとしたことから変な事務所で働くことに!
日々なだれ込んでくる人や仕事、モノやコト観察記。

締め切り厳守のためには

2006-01-31 19:54:55 | ビジネスシーン
なだれ込み研究所で、サイクルツーリズムに関する報告書をまとめている……のだが、締め切りが今日だったと、S藤さんが突然言い出した。
「なんとか文章は昨日までにまとめた! K田は今日中に地図を! K住さんは報告書の誤字脱字のチェックを頼む!」
報告書はA4サイズにびっしり71枚もある。
「ひぇ~っ」と思ったのは私だけではない。地図をパソコン上で作る作業がどれほど大変か、私には想像もつかないが、あまりに半端でない指示に、ぼう然を通り越して笑ってしまった私たちであった……。

さて、S藤さんはそのため、昨日は徹夜だったといばっていた。
私は印刷物の編集を一つ任されているのだが、期日を守るため、ビシビシと様々な人のおしりをたたいている。タイミングを見計らい、ときに優しく、ときに厳しく、ときにピッチリ依頼事項を文書にして。
この仕事をするようになって気づいたのだが、私はこういうことがわりと得意なようなのだ。
でも……、締め切りを知らなかったら原稿の催促はできませんよ~。

ということで。
締め切りを守りたかったら、鬼編集者にきちんと期日を伝えておきましょう。
今日の教訓でした。

さあ、今からチェックの続きだあ~!
(報告書はなかなか素晴らしく、面白い記載が随所にあったのだが、今日はじっくり感動しながら読んでいる時間はないのです~)




インタビュー11人

2006-01-30 17:11:43 | ビジネスシーン
インタビュー11人分の原稿がほぼできあがった。
記事としては400文字。その短い文章の中で、どれだけ的確にその人の活動をとらえ、その人らしさを伝えることができただろうか。

今回のインタビューで、たくさんのことを学んだ。
1~2時間の取材の中で、その人の雰囲気や全体の感じをつかむことができるか、ポイントとなる言葉を拾えるか、そしてそれらをきちんと表現することができるかなど、大切なことを「聞きながら」「感じながら」「書きながら」実感した。
書き手として思うのは、インタビューされた人がその記事を読んだとき、「なんか、違うな」と感じるようなものは書きたくない、ということである。発言した通りに書いたとしても、「こんなこと、言っていない」と感じることはある。それは、「その人の持っているもの」をつかめず、文章の上にその人らしさが流れていないからじゃないだろうか。必要なこと以外のことを、相手が話すままに聞くことの大切さというのは、そんなところに繋がっているのだと思う。

発言した言葉をそのまま書き、事実をありのままに書くだけでは、その人の言いたいことは書けない。じゃあ、何が必要かといえば、その人らしさ、息づかいみたいなものを「感じ」、「捉え」、自分の中で消化した上で再構築する、そして、その感じ取ったことを人に伝わるように表現すること、なのじゃないかと思う。
加えて言えば、私が「すごい!」と感じたことを、どれだけ読み手に伝えられるか、ということなのだと思う。
これが正しいインタビュー記事の書き方かどうか、私にはわからない。もしかしたら、私というフィルターに通すことは、常道ではないのかもしれない。
でも、こういうやり方で、私は11人の方にインタビューをした。
質問事項や話の持って行き方など、まだまだ未熟な点は多くある。
また、皆さんからのご意見を聞かせてもらえればと思います。

さて、途中かなり苦しかったものの、こうして11人の方のインタビューを終えて、今、感じるのは、「この仕事をさせてもらって幸せだった」ということである。インタビューという大義名分を与えられ、11人もの方と知り合うことができた。普通では何年もかかって話してもらえるようなことを、初対面の私にしてくれた。お会いしたその人を好きになったが、でも原稿を書くときには「冷静に」を心がけて書いた。

まだまだ「書き直し」が待っているけれど、一番苦しい「ゼロから1」はできた。
さあ、あともう一人。
頑張らなくちゃね!


生活者と建築家の出会う場

2006-01-29 21:54:27 | ライフスタイル
フロムフォーのお客様がわが家に見学に来るため、朝から大そうじ。5分前の到着となり、まだ掃除機をかけている真っ最中でした。失礼しました~。

さて、「from/for 建築家との住まいづくりレシピ館」は、家を建てたい生活者と建築家とを繋げる出会いの場である。建築家とオリジナルな住まいづくりをしたいと考える人は多くなっているものの、まだまだ敷居が高いイメージがあるのが実情だ。設計事務所に直接行くのも勇気がいるし、一度行ったら断るのも心配だし……。
フロムフォーには、掛川市近隣の建築家のファイルが置いてあり、プロフィールや作品ファイルを自由に見ることができる。
今日、わが家に見えたNさんご夫婦も、作品ファイルを手に取り、3名の建築家を候補にあげ、その中の一人T橋さん設計のわが家を見に来たというわけだ。

「こうやって、実際に暮らしている方から話が聞けるというのはいいですね」
Nさんの言葉に、T橋さんはにやにやしながら私に言った。
「ほれ、いつもみたいにべらべらしゃべって下さいよ」
ということで、T橋さんに設計を依頼するに至った経緯や、ライフスタイルと実際の住まいのポイント、暮らしやすさなど、T橋さんの言葉通り「べらべら」しゃべってしまった。ちょっとしゃべりすぎたかな、と思うくらい。

さて、今日はフロムフォーのT館長も一緒だったのだが、こういう生活者と建築家が出会える場があるというのはすごくいいと思う。
わが家の場合も、「建築家と話をしたいけれど、どこい行けばいいかわからない」という状況の中、県の木造館で建築家の作品をいくつか見ることができ、T橋さんと出会うことができた。今、木造館はなくなってしまったが、フロムフォーができた。
生活者と建築家を結びつける「お見合いおばさん」のように、T館長には頑張ってもらいたいものだ。

それにしても、T館長がわが家をきょろきょろ眺めていると、私の「からかいネタ」でも探しているのではないかとヒヤヒヤした。本棚などじっくり見られると、やたら恥ずかしいものがある。
「この場所が一番日当たりがいいねえ」
などと真顔で言われ、「なんだ、普通に家を見ていたのか」とホッとしたりした。

ということで、Nさん、住まいづくり、頑張って下さいね!

物語に吹く風と現場の風

2006-01-28 23:29:31 | ライフスタイル
日本経済新聞の土曜版特集記事に「読者が一度は見てみたい名画」という統計記事があった。興味深かったのは、「物語ある作品に興味」というコメントである。
記事を抜粋する。

レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」と「最後の晩餐」が1位と2位を占めた。『ダ・ヴィンチ・コード』を読んで興味が増した、という人が非常に多い。
絵の背景に物語があると、心を惹かれやすい。ルーベンスの「キリスト昇架」「キリスト降架」の人気が高いのも、『フランダースの犬』でネロ少年が見たいと願い続けた祭壇画だから、という意見があった。

絵に限らず、「背景に物語があると心を惹かれやすい」ということは、音楽にも言える。絵も音楽もよくわからない私だが、絵画や音楽をモチーフにした小説を読むと、見たくなり、聞きたくなる。
『アーモンド入りチョコレートのワルツ』(森絵都著・角川文庫)に納められている短編「彼女のアリア」は、バッハの「ゴルドベルグ変奏曲」がモチーフだし、『これは王国のかぎ』(荻原規子著・理論社)の各副題は、コルサコフの交響組曲「シェエラザード」にならってつけてある。
物語の上には、確かにその音楽が感じられたし、その風が吹いていた。
(この2冊、どちらもオススメです)

同じ土曜版の裏面には、「ローカル線をゆく~阪境電気軌道~」の記事があった。
軌道とは路面電車のことで、たこ焼き屋の隣りに線路があったり、クルマより電車の方がエラそうに走っていたりという、大坂のごちゃごちゃしたまちの風景が描写されていた。
行ってみたいなあ、と思った。朝刊には「表参道ヒルズ」の記事も載っていて、こちらもに行ってみたいと思ったばかりだった。

今まで、「いろいろなまちを見てみたい」と思ったことなどなかった。なだれ込み研究所で様々な人と出会う中で、建築やまちづくりについて話を聞く中で、少しずつ「現場」というものに興味を持つようになったのかもしれない。

物語の上に吹く風が好きだ。
現場の風も感じてみたい。

ちょっと、出かけてみようかな。

報告下手としゃべりすぎ

2006-01-26 22:34:58 | ビジネスシーン
インタビュー記事の締め切りが迫っていて、連日の取材が続く。今日も1件依頼書を持って行ったところ、その場で即インタビューとなった。

掛川の伝統産業である「葛布」の製造販売をしている小崎葛布さんなのだが、印象的だったのは「つぐり」のお話である。
つぐりは織りの工程に入るため、葛を一本の糸に仕上げ巻き付けた束なのだが、これを倉真や細谷のおじいちゃんやおばあちゃんが作っている。アメリカへ交渉や打ち合わせで行ったあと、帰ってきて、今度はこのおじいちゃんやおばあちゃんのところにつぐりを取りに行く。このふれ合いが何にも代え難い、と小崎さんはおっしゃっていた。
「つぐりを作るのは、根仕事(こんしごと)なんだよ」
この言葉には妙に感動した。
地に足のついた暮らしをしている人たちとしゃべり、まっとうな生き様を見る。日本人がしてきたごく普通の暮らしが今もここに残る。あぶく銭に踊らされる人との違いをまざまざと見せつけられる、とおっしゃっていた。
そのあと、つぐりを作る人達の名簿を見せてもらった。古い、古い帳面だった。明治37年生まれ、というように、生年月日と名前と住所が書いてある。そして、そこには数多くの斜めに引かれた斜線が。
「葛を製造販売しているところも減っているけれど、材料を作ってくれる人も減っているんだよ。亡くなったという知らせを聞くと、涙が出てくるね」

さて、そんなこんなで「じーん」としながら事務所に戻ると、途中、S新聞のI川さんとばったり会って、そのままなだれ込み研究所へ。ひとしきり「書くのは苦しいよね」「やっぱり書く前の儀式があるよね」という、同じ「書き手」として悩みを分かち合ったあと、「きちんと口頭で報告するのは難しい」という話になった。
たとえば、今日もS藤さんが帰ってきたとき、
「I川さんが来ましたよ」と言うと、「どういう話したの?」となるわけだが、それがうまく報告できない。
「ええっと、I川さんが来て……」
「だから、どういう話?」
「あの、その……」
「なに?」
「……だから、儀式でソリティアを20回やるって話と、浜野さんが来て嬉しいって話と……、それから……」
という具合に、起承転結、まったくもってだめである。
I川さんとも話たのだが、「すぐ言えって言われても、S藤さんみたいに話のポイントを的確にピシッと言えないんですよね」ということなのだ。
「あんなにぺらぺらうまくしゃべれる人は滅多にいないから、落ち込まなくていいよ」
I川さんには、こんなふうになぐさめられた。

さて、そのS藤さん。
夜からの会議の席では、ぺらぺらぺらぺら、いつも以上によくしゃべった。
「オレ、しゃべりすぎだったかなあ」
帰り道、心配顔で聞いてきた。
「ええ……、まあ、確かに」
ガックリ肩を落とし、「引かれちゃったかなあ」とポツリとひとこと。
世の中には、いろいろな悩みがあるものですねえ~。

さてと、今からインタビューの原稿起こしと、会議の要点まとめますかっ。

[なだれ込みクイズ①]
「なだれ込み研究所の一日」の画面で、画期的な変化があります。さて、どこでしょう?
(コメント欄に答えは必要なし。にやにや笑ってやって下さいまし。ちなみに、正解者にプレゼントはありません!)


今日の日記

2006-01-25 20:26:31 | ビジネスシーン
午前中、インタビューのアポイントが取れたので、急遽出かけてきました。楽しいお話と、美味しいシュークリームをいただきました。話の中で、実は20年前に出会っていたことがわかり、人の繋がりって不思議だなあと思いました。
事務所に帰ると、S藤さんが東京から戻ってきていて、「写真がへたっぴぃ!」「撮り直し!」と言われました。
ちょっと落ち込んだけれど、事実なのでしょうがないなあと思いました。

お弁当を食べていると、フロムフォーのT館長がやってきて、お弁当をのぞかれました。彼は小学校3年生のときのクラスメートです。昔からいじめっ子だったかどうかは覚えていません。

その後も、たくさんの人がなだれ込み研究所にやってきて、面白いお話を聞かせてくれました。あまりにたくさんありすぎて、頭がクラクラしそうです。知恵熱が出ないように、今日は頭を使わない日記にしました。
ちょうどこれで原稿用紙1枚分です。

 ――おしまい――

パワーは必然を生む

2006-01-24 17:26:47 | ビジネスシーン
今日、S藤さんは東京に出張だ。そして、浜野安宏さんにお会いしている。

話は2日前にさかのぼる。
日曜日の夕方、「あさって浜野さんの事務所に行くことになりました。講演録、間に合う?」と突然メールが入った。昨年の7月にNPO設立1周年記念事業として講演をしていただいたのだが、テープ起こしをしたまま、ズルズルとまとめる作業を引き延ばしていた。「いつでもいいよ」が、ここに来て優先順位が1位になった。ごぼう抜きのぶっちぎりである。

さて、東京への出張は別件で当初から予定していたものなのだが、浜野さんの事務所に行くことになったのは、実にすごい偶然があった。
なだれ込み研究所の外部スタッフであり、カメラマンでフライフィッシャーのO川さんが、フライフィッシングの専門店で遊んでいた(?)とき、そこへ浜野さんが入ってきた。驚いたO川さんはS藤さんにメールをした。
「うひゃひゃひゃーっ! 今、ここに、は、は、浜野さんがいる~!」
そしてその後、電話で直接お話することができ、「講演録のチェックとスローライフスクールの件で、事務所にお伺いします」ということになったのだ。

すごい偶然。
いえ、必然なのかもしれない。
スローライフ掛川のパワーが、S藤さんの熱意が、そしてO川さんの吸引力が、浜野さんを引き寄せたんじゃないかと私は思う。願えば叶う、のである。

さて、講演録は私が文脈を整え、S藤さんが内容の補足を行った。チェックしてもらうからには、きっちりとしたものを渡したい。S藤さんの内容補足には、かなり時間がかかったようだった。

久しぶりに読み返した講演録は素晴らしかった。
講演を聞いていたときにはわからなかったことや、聞き逃していたことが、頭の中にすーっと入ってくる。たぶん、私が成長した分だけ入ってきた。受け皿が少し大きくなった分、こぼれ落ちる量が減ったのだ。

浜野さんは、掛川にこんなエールを下さっていた。

実は今回、初めて掛川に来ました。何も知らなかったし、何も読まずに来て、私はいつもそこの地霊が呼んでいるかどうかで判断する人間で、直感を大事にするのですが、今日、自転車に乗せてもらったり、車で案内してもらったり、農場へ連れて行ってもらったりする中で、事務局の方といい、農場の方といい、陶芸家の方といい、非常にいい笑顔を持っておられるなと思いました。非常に健全だなという感じがしました。
(中略)
僕は、掛川には何かあると思ったね。人も、先ほど言ったようにいい笑顔を持っているし、「これはいけるで」と思ったんです。基本的にね。だから、まず合格。用心棒は何かしてもいいよ、と思いました。

その用心棒浜野さんが、また掛川に来て下さいます!
願えば叶う。パワーは必然を生むのです。


批評は感じたままに

2006-01-23 20:57:24 | ビジネスシーン
S藤さんは、静岡新聞社発行「しずおかのビジネス情報誌 BUSINESS VEGA」にコラムを連載している。テーマは「しずおか自然回帰の旅」
1月末に出る「№81」が連載3回目なのだが、今回は、なかなかのものだった。

過去2回の記事を、無理矢理読まされた方も多いのではないだろうか。S藤さんらしくない、カッコつけた文章というのが私の率直な印象だった。
「この文章じゃあ、まるでS藤さんの色がないじゃないですか」
「それでいいの。文章中に『私』って主語がないだろう。オレが書いているけど、これはエッセイというより、作者を限定しないコピーなの」
「それでも、これは読み物でしょ。読まれて『ナンボ』でしょ。この文章じゃあ、この書き手に会いたいと思いませんよ」
「ふんっ」

『私』という主語を入れる入れないに関わらず、魅力のある文章を読みたいと私は思う。魅力ある文章とは、「この書き手の文章をまた読みたい」「この書き手に会ってみたい」ということだと思っている。いくら、キレイで、カッコいい文章でも、頭を素通りするような文章では魅力を感じない。実際、S藤さんらしさとは、キレイでカッコよさげに見えて(そして、いい加減に見えて)、実はその底に柔軟且つ硬質な芯の部分を併せ持っていることだと私は思っている。
その芯の部分が、過去2回の記事には今ひとつ、文章のキレイさが強すぎて感じられなかった。

さて今回。
タイトルは「巨樹ウオッチングの作法~春埜山の大杉」である。
原稿を見せてもらったのが3ヶ月ほど前。
その時の、感想メールをコピーします。

素晴らしいじゃないですか!
主語に「私」が付いていなくても、書き手の顔の見える文章だと思いました。
S藤さん、という書き手を知らなくても、この書き手になら「会ってみたい」と思わせます。
ラスト9行には脱帽です。「作法」という言葉は、自然に対しての畏敬の念を持っているからこそ言える言葉であり、「自然を畏れ敬うための巡礼ではない」という表現には、自然に対する謙虚な気持ちと、「巡礼」と称して、その本質を見ていない人達へのひねりワザ(皮肉とまでは言わない)を感じました。
お見事!

今、読み返すと、少し褒めすぎかな、と思わなくもないが、その前の「けちょんけちょん」から一転、たぶん、私がS藤さんに対して初めて褒めた文章だと思います。
「しずおかのビジネス情報誌 BUSINESS VEGA 1月号」の82ページ。
写真も素晴らしい。
是非、ご一読を。

[予告編]
『掛川奮闘記~スローライフと生涯学習の真髄』を編集したときの、鬼の編集語録を近々掲載予定。onimasaの所以が明らかに!
どうそ、お楽しみに~。


建築現場で何を見たか!

2006-01-21 13:32:50 | ビジネスシーン
建築家のT橋さんが手がけているY邸。
打ち合わせの様子と現場を見せてもらえるということで行ってきた。
まずはS建設にて、施主と建築家、施工業者と家具造作の会社の担当者が打ち合わせ。建築家を目指すK田さんも同席している。彼女は、「スローライフ・建築・まちづくり・児童文学・ブログ」というキーワードでなだれ込み研究所になだれ込んでしまったのだが、そのあたりのエピソードは、後日、また紹介します。

今回、自分が施主のときとは違った見方で「打ち合わせ」を見ることができた。どう住むのか、何を選び何を捨てるか、どうお金を工面するか、といったことから離れると、施主と建築家と施工業者という三者のやりとりが、どのように絡まり、ほぐれながら、どの方向に進んでいっているのか、その流れが非常によく見えた。あいだに入る建築家は、両者に振れつつ、自分の立ち位置を決して見失わない。

それにしても、建築というものは、すべてにおいて「数字」から成り立っているのだと改めて感じた。施主の「ありたい生活」のためのイメージがまず図面になり、その図面を実際の形にするためのパーツが一つ一つ割り出される。
こんなふうに暮らしたい。こんなふうに住みたい。こんなふうに使いたい。それらはすべて「計られた」ものから成り立っている。生活することすべてを数字に落とし込んでいく作業というのは、理数系でない私には、なんだか途方もないことのように思えたが、同時に、生活実感あってこそだと感じた。

『ぼんくら』(宮部みゆき著・講談社刊)という小説には、なんでも計ってしまう癖がある弓之助という少年が出てくる。
「叔父さまの眉毛と眉毛のあいだはちょうど五分ございますね。右の眉毛は八分に髪の毛一筋ほど余りますが、左の眉毛は九分ございます。右の下まぶたから三寸二分下に黒子がございまして、その黒子の径(さしわたし)は一分にわずか足りません」
なぜ、何でも計ってしまうか、の問いに、弓之助はこんなふうに答える。
「世の中を計るというのは、とても面白いことでございますよ。計れば、ものとものの距離がわかります」
「距離がわかって……何になる?」
「ものの有りようがわかります」

ものの有りようは、計ることでわかる――。
弓之助は実際計ることで、それを確かにつかんでいる(物語の中での弓之助の活躍を見れば、それは非常によくわかる)。
実際に計らなくても、たぶん、私たちは、ものの有りようというものを、無意識のうちに計っているのだ。モノとモノ、モノとコト、コトと人、様々な組み合わせで。

さて、実際の建築現場では、柱にかかるスリッパや、使い込まれた大工道具、黒板に書かれた引き継ぎ事項などが目に入った。それらを見ているだけで、今にも物語が立ち上がってきそうだった。

建築の構造について、一生懸命説明してくれるT橋さんの横で、実はそんなものばかり見て、そんなことばかり考えていた私であった。
いやあ~、T橋さん、失礼しました。
こんな私じゃあ、建築の修行は無理ですね。
まっ、施主ということでお許しを。

おめでとう、県知事賞!

2006-01-20 08:36:35 | ビジネスシーン
なだれ込み研究所には珍しく、朝からアポイントのあるお客様が続く。
スローライフやスロースタイルサイクリングについて、I村さんやS藤さんが話をするのを横で聞きながら、私もときどきチョロッと説明を加えたりする。様々なことが動き出す現場を目の当たりにするというのは、なかなか面白い。

さて、I村さんとS藤さんがお客様と昼食に行っているあいだに、K造さんがやってきた。小学校時代のいじめっ子みたいに、からかうような顔をして私のお弁当をのぞき込む。
「いや、あんたの弁当を見に来たわけじゃないんだ。オレはこれから旅に出る」
「え、そんな。行かないで下さい」
すがりつく私を振り払い、K造さんは旅立っていった。
K造さ~ん。
早くなだれ込み研究所に帰ってきてね~。

さてさて、今日は「しずおかふるさとCM大賞」の受賞作品発表の日だ。
掛川市は昨年の「教育長賞(3位)」に続き、「県知事賞(2位)」を受賞することができた。撮影のお手伝いをしたS藤さんのところに、
「県知事賞だあぁぁ!」
とメールが入り、すぐさま私の所にも転送された。

ちなみに、今年の受賞作品と審査評はこちら。

http://www2.satv.co.jp/furusato/htmls/jushou/dai4_jushou.html

ということで、お祝い会の飲み会に行ってきた。

いや~、楽しかったです。
また酔っぱらっちゃいました。
詳細は、公序良俗に反するので(冗談ですって)省きますが、参加した皆さまからいただいたご意見が、あまりに鋭すぎたり、面白すぎたり、ばかばかしすぎたり、笑っちゃうようなネタなので、自分への覚え書きとして書いておきます。

「あなたみたいなガチガチな女は、なだれ込み研究所に入ってホントによかった」
「そのプライドの高さを、一度ガランガランと壊さないといけないね。そもそも女性は『矜持』なんて言葉を使ったりしないぜ」
「情けない男をとっつかまえて、『てめーら、いい加減にせーよ』と言って、おもむろに肩を出すと、そこには『文章!』っていれずみがしてあるんだ。そうだよー、そうするとカッコいいよ!」

はいはい。
一応、皆さんからのアドバイスは、心にとめさせて頂きます。

それにしても、ホント「県知事賞」、良かったね!