時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

日本の苺は誰が摘むのか(2)

2008年02月02日 | 移民の情景

苺(いちご)の高設栽培の例


  苺摘み取りの例を記事にしたところ、タイミングよく関連して、日本農業賞の発表が行われた。個人大賞には長野県小諸の農家による科学的管理に基づく苺栽培が選ばれていた。TVが伝えるところによると、この農家は苺栽培に関する気象条件、気温や湿度を計測・管理し、計画的に栽培する努力をしてきた。その結果、苺の収穫を計画的に1ヶ月早めることに成功したとのこと。従来の苺作りは、天候まかせの栽培だった。それがこの新方式では、あたかも工場生産のように、計画的に栽培、管理されている。

  それとともに、大変感心したことのひとつは、従来は土耕栽培、石垣栽培などで、地面に接して栽培されていた苺が高設栽培といわれる方式で、あたかも葡萄の木のように棚作りにされていたことである。苺を人の胸の高さくらいの中空で立ったまま採取することができるように工夫されていた。設備費は当然高くなるが、深刻な人手不足の到来を考えると、将来に希望が持てる方向である。

  これまでの苺摘み取り作業は、どこの国でも腰が痛くなるような無理な作業を長時間続けねばならなかった。著しく高齢化が進行した日本の栽培農家にとって、きわめてきつい作業であり、外国人研修・実習生などが働く分野になりつつあった。日本ばかりでなく、アメリカ、カリフォルニア州などでの苺や果実栽培も、メキシコなどからの農業労働者に完全に依存している。苺ばかりでなく、ドイツのアスパラガス採取なども似たところがあり、ドイツ人労働者が次第に働けなくなり、ポーランドなどの外国人季節労働者の手に頼るようになっていた。

  苺の品種改良ばかりか、栽培方法についても、日本の農家が地道に努力していることを知らされ、少し前途に光が見えてきたような気がした。この例など、外国人労働者に採取を委ねるような方向では決して思いつかない、素晴らしい発想だ。農家が日々の努力の過程で、自ら考え、苦労を重ね、工夫した結果が実ったものといえる。

  次のステップで、採取もロボット化することが可能になるかもしれない。そうすれば、外国人労働者に頼ることによる様々な摩擦や紛争もかなり回避することができ、生産性の向上などの好結果につながるだろう。もちろん、すべてがこうした方式に代替しうるわけではないが、日本の農業が目指すひとつの方向を示したものとして評価できる。折りしも、食の安全性が大きな問題となっている。こうした先進技術が普及するような環境が整備、促進されることを望みたい。

 

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