Time 誌(December 26-Januaarury 2, 2017)
可愛いですね!
しかし、この赤ちゃんには重大な秘密が・・・・・・。
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ある朝目覚めてみると、黒い旗の下、長いひげの男たちの中にいた。
年末から新年にかけても、TVや新聞は世界各地のテロリストによる爆発や射撃の事件を絶え間なく報じていた。年頭からシリアやリビアなどの難民、移民が、海路や陸路で少しでも安全な地へと逃げ惑う姿を思い浮かべることになる。シリアの破滅的状況は隣国トルコへと波及し、新たな惨事を生む。
一昨年来、シリアやアフガニスタンなどの諸国から多数の難民がエーゲ海や地中海を渡ってヨーロッパへ押し寄せた。多くの写真や映像が人々の目を捉えた。最も衝撃的だったのは、あの波打ち際に打ち寄せられていた小さな男の子の姿ではないか。この一枚の画像に心を動かされ、難民救済への努力は当初加速度的に進んだ。
しかし、その後、実態が大きく改善したとは到底言い難い。迫害や恐怖から逃れる途上にある難民たちの中には、多数の子供たちの姿もある。そればかりか、文字通り瓦解と破滅の中で、自分か子供のいずれを救うかという急迫した状態に追い込まれた母子あるいは父子もいた。シリア内戦の過程で、500万人を越えるシリア人が2015年から2016年にかけて母国を捨てたと言われる。その過程で彼らを支えてきた母国での地域のつながり、とりわけ人間の共同体も破壊された。
地上に天使がいるならば
最近、Time 誌(December 26-Januaarury 2, 2017)は、ギリシャの難民キャンプで生まれたシリア難民の子供のことを報じている。この表紙に取り上げられたのはヘルン(Heln)ちゃんという昨年9月13日、ギリシャの難民キャンプで生まれた子供である。
この世に天使なるものがいるとすれば、この子たちのような存在ではないか。破滅と混乱の極限ともいうべき状況で、この激動の世界に生を受けながら、そこがいかなるところであるかについては、無垢というべき白紙のままにある。その小さな命が果たして永らえるものであるかも、自分では何も知り得ない。
さらに幸い命を永らえても、この子たちには国籍がないのだ。ギリシャや多くの受け入れ国は難民やその子供たちに原則、国籍を与えることはしない。次の受け入れ国が現れる時まで、暫定的に難民キャンプで最低限度の生活を提供しているに過ぎない。幸い受け入れが決まっても、問題が解決するわけではない。難民という存在が単に現在苦難の真っ只中にある人々にとどまらず、次世代の生死に関わる衝撃的影響を秘めていることを改めて考えさせられる。世界の多くの国が国境の壁を高くしている今、難民・移民の問題はさらに深く、深刻な重みを加えつつある。
Time誌は、この子を含めて同じような状況でこの世に生を受けた4人の難民の子供たちの今後を追って記事とすると公表している。