時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

アメリカの大学生が選ぶ、就職したい企業

2005年08月28日 | 仕事の情景
アメリカでも「企業は人」
  秋学期開始も近くなると、キャンパスへ学生が戻り、大学は活気を帯びてくる。今、アメリカの主要大学ではそれに合わせて、優秀な学生を採用しようとするリクルーターが多数訪れているらしい。大学生の就職市場も好転の兆しがあるようだ。 優秀な学生といっても、いろいろな見方があるが、企業側は成績に限ると上位10%くらいを対象にしているようだ。株主主権のアメリカ企業といっても、つまるところ企業は、それを構成する人材の質に大きく規定されている。やはり「企業は人」なのだ。

定着したインターンシップと採用内定
  優秀な大卒人材を求める動きはこのところ活発になっていて、去年くらいまでは内定を3つくらいもらった学生ならば、今年は5つくらいに増えているらしい。そのために、夏に優れた学生にインターンシップを経験してもらい、本採用につなげたいという企業が多い。インターンシップはしばらく前までは、夏場など季節的調整のためのお手伝いと見られてきた。しかし、今ではフルタイム雇用の候補として採用する場合が多くなっているという。
  たとえば、2000人近くになるGEの大卒採用者の60%は、インターン経験者とのことである。こうして多数のインターン経験者は、卒業年の夏には採用内定の通知を手にして、キャンパスへ戻ってくるらしい。

好感度の高い企業とは
  企業は学生に好感度の高いという企業というイメージを植え込むのに力を入れている。そのため、1年中アメリカのキャンパスを訪ねては、学生や教員にコンタクトする専属のスタッフを置いている企業もある。たとえば、GEは戦略的にしぼりこんだ38大学に採用エネルギーを注いでいる。学生側としても、さまざまな形で能力を試されるので売り手市場というわけではない。
  上位にランクされた企業は、それなりに努力をしていることが感じられる。PricewaterhouseCoopers (PWC) は会計事務所だが、200大学に対象を設定している。そして、企業の上級管理者層にあたるパートナーに採用の責任感を持たせ、年間200時間くらいは「キャンパスで同社とのつながりを持たせるよう」指示している。こうした努力は効果があるようだ。  

  Universum という大学ブランド・コンサルタントの企業は約3万人のアメリカ人学生に、彼らが入社したいという会社名を挙げさせた。2005年の調査では、PWCは第2位(04年は4位)、第一位はなんとBMWであった。かつてはMicrosoftが「君臨」していた座をドイツ企業が獲得したのだ。その人気は製品が「クール」だということにあるらしい。日本でもかなり変化してきたが、外資系企業という受け取り方は、ほとんどないようだ。
  それにしても、しばらく前までは金融・投資関係の企業が上位に多数顔を出していたが、大分様子が変わってきた。

時流に乗っている企業
  日本でも同じだが、学生は就職先の選択において企業の製品やサービスの社会的な認知度、内容などに大きな影響を受けるらしい。典型例は昨年41位だったApple Computer が今年は13位に急浮上している。その背景に世界的なiPod人気があることはいうまでもない。

  とりわけ、アメリカらしいと思うのは、最近のTVや映画でFBI(Federal Bureau of Investigation)の活躍ぶりが人気を博し、138位から10位に急上昇したことである。CIAも同様である。アメリカの学生も、時の動きに大分左右されて就職先を選ぶようだ。 
  これも面白いと思われる現象は、EnronやArthur Andersenの社会的失墜も会計士分野には悪影響を及ぼしているわけではないという。会計士という仕事は、単に「数を数えている」だけの仕事ではなく、経営全般に采配が振るえるのだという印象が浸透して着実に応募者が増えているという。確かに、アメリカの4つの大会計事務所はすべて、今年の人気就職先に入っている。
 
重要となるウエッブ上のイメージづくり
  また、最近の大学生は、就職先の選定に際してウエッブ上の企業イメージにも大分影響を受けているようだ。PWC, Microsoft, Ernst & Young などの各社は、この点の評価で金・銀・銅という評価を得た。企業としては、ウエッブ上の好イメージづくりに一段と力をいれざるをえない。 
  
  しかし、伝統的に個人的な対面、インタビューを重視して、そのために上級の経営者をキャンパスに出向かせ、学生に会い、スピーチをすることの方が良質な学生を獲得できるという企業も多い。GEの役員などは頻繁にキャンパスを訪問しているという。人材重視といわれてきた日本企業だが、役員が絶えず大学を訪問して、優秀な人材確保に努めている企業はどこだろうか。

2005 年の人気企業
(アメリカの大学生が理想の働き先と考える企業、事務所)
( ) 内は2004年
BMW 1 (2)
PricewaterhouseCoopers 2 (4)
Ernst & Young 3 (6)
Boeing 4 (7)
Johnshon & Johnson 5 (17)
Deloitte 6 (8)
Coca-Cola 7 (5)
Microdoft 8 (1)
CIA 9 (14)
FBI 10 (138)
Merill Lynch 11 (12)
IBM 12 (11)
Apple Computer 13 (41)
KPMG 14 (16)
J.P. Morgan Chase 15 (18)

Source: Universum Communication

Reference “Undergraduate recruitment” The Economist August 20th 2005
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