例年より寒いのではないかと思った冬だったが、春の女神が急に足どりを速めたようだ。桜の開花が例年よりかなり繰り上がっている。
春を告げる花は桜に限ったわけではない。桜はもちろん、だんとつで美しいが、あのエニシダも好みの花のひとつだ。マメ科エニシダ属(Cytisus)に分類されているが、200種近くになるようだ。小さな花が多数開花する。花の色は黄色が多いが、白色、赤、ピンクなどの交配種もあるようだ。世界的な気候変動で、季節感が狂った感じだが、開花期は春から初夏というべきだろうか。
イギリス人はことのほか、この花を好むようだ、管理人がイギリス滞在中に隣人からガーデニングの基本を教わった折も、しばしば登場した。イギリスでは庭木や公園用樹木としてよく見かける。イギリス人はしばしば broom(ほうき)と呼んでいたが、実際に箒の材料でもある。あの魔女が空を飛ぶ箒も、この枝で作る?らしい。ちなみに花言葉は「みだしなみ」「謙遜」とのこと。
エニシダは春になると、黄色の小さな花が多数開花する。日本の花屋などで売られているのは、ヒメエニシダと呼ばれる、小さな低木であることが多いようだ。開花の期間は桜と比較してもかなり長く、庭木としても楽しめる。かなりの風にも耐えるのだが、散り際は鮮やかであっという間に散ってしまう。その散り際は桜のように見事だ。
この花がリチャードIII世*につながるプランタジネット朝と関連があることは、以前に記したが、ゆかりの地アンジェ(フランス北西部の都市、ヘンリーII世時代、「アンジュー帝国」と呼ばれた拠点)は、これまで2度ほど訪れたことがある。一度はパリからTGVで、2度目は同じパリからドライヴを楽しんだ。独特の形の塔を持った城が印象的だ。アンジェについては、記すことが多いので、別の機会にしたい。
*イギリス史上、悪名高い、しかし謎の多いリチャードIII世については、シェークスピアを始め、関連する出版物はあまりに多い。この王のことを楽しみながら、手軽に?知るについては、ジョセフィン・テイ女史の『時の娘』が、歴史ミステリーとして知られてきた。いつか読んでみたいと思っていたが、すでに邦訳されていたことを知った。ご存知の方は多いと思われるが、メモ代わりに記しておく。
ジョセフィン・テイ(小泉喜美子訳)『時の娘』ハヤカワ文庫、1977年
The Daughter Of Time by Josephine Tey (6 Aug 2009)