今日は久しぶりにドイツレンズの紹介です。しかもちょっとレアなマウントの広角レンズ、Enna Lithagon 35mm F4.5(Argus C4 GEISSマウント)です。
レンズ構成 4群4枚
最短撮影距離 0.9m
重量 179g(実測)
アーガス(Argus)社のカメラとしては、ブリック(煉瓦)のような形をした距離計連動式レンジファインダーカメラのC3が有名です。このC3は1939年から1960年までの長期にわたって生産された、レンズ交換式のカメラでした。アーガス社は後継機として1950年代に様々なタイプのカメラを発売するのですが、その中にCタイプの次の番号を持つ1951年発売のArgus C4があります。ただこのC4はレンズ固定式になってしまいました。(*1) このC4は、洗練されたスタイルでかなりのベストセラーカメラだったようです。市場からのレンズ交換の強い要望もあって、1954年から1956年までの期間、シカゴにあったガイス(Geiss)社で本体(約85ドル)に10ドルを追加支払うことで、レンズ交換機能を付加した改造を受け付けていました。それが、Argus C4 Geissマウントです。(*2)
交換レンズとしては下記が用意されていたそうです。
・Enna Lithagon 35mm F4.5(ドイツ製)
・Enna Lithagon 45mm F1.9 (ドイツ製)
・Cintar 50mm F2.8(米国製)
・Enna Tele-Lithagon 100mm F4.5(ドイツ製)
・
Enna Tele-Lithagon 135mm F3.5(ドイツ製)
(135mm F3.5は以前に見慣れないマウントのレンズとして紹介していましたが、調べた結果、Argus C4 GEISSマウントであることが分かりました)
レアなマウントですからマウントアダプターは市販されていないので、マウントを改造することにしました。改造にあたってはWebの先達の方々のやり方を参考にさせていただきました。最終的にはライカL/Mリングを使ってMマウント化しています。
Mマウントになれば、ヘリコイドアダプターを使ってソニーEマウントで使うことができます。

さて、写りのほうはどうでしょうか。絞り開放では周辺光量落ちはわずかにありますが、開放絞り値が大きい、いわゆる暗いレンズですので、四隅まで解像しています。
最短撮影距離付近では、少し二線ボケの傾向があり、硬いボケになっています。
さらにヘリコイドアダプターを使って最短撮影距離よりも近づくと、しっかりボケてくれました。
条件によっては、少しだけ廻っているようにもみえます。

いずれもSONY α7+ENNA LITHAGON 35mm F4.5
暗いレンズの割には、いろいろな表情を見せてくれるレンズです。70年前のレンズとしてはかなり良いレンズと言えるのではないでしょうか。
参考文献
(*1):高島鎮雄「アーガス35の系譜」『カメラレビュー クラシックカメラ専科 70』朝日ソノラマ、2003年12月25日発行、pp.80
(*2):Stephen Gandy's CameraQuest https://www.cameraquest.com/arggeiss.htm