以前にライカのライカのビゾフレックスシステムのヘリコイドに入った謎のレンズを紹介しました。その時に実写結果から、焦点距離は7cm位で開放F値が6.3程度のソフトフォーカスレンズであることを書きました。
このレンズの正体は何者だろうかと気になっていましたが、先日、興味深い記事(*1)を見つけました。
1912年に米国コダックから発売されたベスト・ポケット・コダックというカメラの単玉(2枚貼り合わせのセミアクロマテッィク)レンズの絞り付きレンズフードを外して絞り羽根をより広げて撮影することで、ソフトフォーカス効果が得られるという撮影法が、かつて日本で流行っていたそうです。この撮影技法を「ベス単フード外し」と呼んでいました。この記事では、レンズユニットをカメラから摘出して35mm一眼レフで使えるようにする、という記事です。
そこに書かれていたレンズ構成図に、焦点距離72.2mm、バックフォーカス74.3mm、フード外した最大口径時のF値が6.8と書かれていました。ちなみに謎のレンズのレンズ後端からセンサー面までの距離を測定してみると、約7.5cmでした。
そうなんです、自分でざっくり実測した値に近いのです。
改めてWebに出ているベス単レンズの写真を見ると、何となくソフトフォーカスの具合が似ているようにも思えてきました。
ということで、私が入手したライカのヘリコイドに入った謎のソフトレンズは、「ベス単レンズ」ではないかと推定しました。このレンズのことを勝手に「ベス単(仮)」と表記しようかと思います。
ソフトフォーカスとは言え、ピント合ったところはそれなりにしっかり描写がされていて、けっこう優秀なソフトフォーカスレンズだと思っていましたが、あの名高い「ベス単」とすれば、なるほど納得できそうです。
ベス単とすれば100年以上前のレンズです。こんな素晴らしいレンズが今でもデジタルで撮影できるとは、よい時代です。
いずれもLumix DMC-G2+ベス単(仮)レンズ
(*1):萩谷剛「ベス単レンズを35mm一眼レフで使う」『写真工業 2000年6月号(第58巻第7号,通巻615号)』写真工業出版社、2000年7月1日発行、pp.42