ちくま新書
鈴木 大介【著】
いま、日本のどこかで起きていること。
明日は、自分や家族の身にふってくるかもしれない。友人が、そうなっているかもしれない。
自分との距離感がとても近い犯罪と、それを行う彼らの存在に、気付いていますか?
本書のタイトル、『老人喰い』とは高齢者向けの犯罪のこと。振り込め詐欺など、60歳以上の方々を対象とした犯罪は年々拡大。全国の消費者センターへの相談の7割以上。総被害額は、2014年1月〜11月で498億7343万円にのぼると著者はいう。犯罪を行うのは、若者が多い。彼らの実情に迫るのは『最貧困女子』を記した鈴木大介さん。振り込め詐欺に携わる人々への取材を元に、彼らの内実を物語調で描く。
そこから見えてきたのは、実行者達の徹底的な効率化と、合理化だ。詐欺の電話をかける者は朝スーツで「出社」する。髪の長さやエレベーターのボタンの押し方まで気を使う。出社先は頻繁に引越し、詐欺作業は細分化され、縦の繋がりは絶たれる。逮捕されない為だ。詐欺対象は「名簿」化され、データーは蓄積し続けている。今40代の男性へも、10年後20年後まで視野に入れて、牙を研いでいる。判断力が低下する時を狙っているのだ。
また、業界のスピードが速い。生え抜きの人物が集う。技術は飛躍的に進化する。月4000万稼ぐ者もいる。潰れる者も多く、残り続ける者は少ない。「詐欺」であることを抜いて見ると、IT業界や金融業界の営業を見ている気持ちになる。
彼らの根本にあるものの1つは、飢えだと感じた。貧困や諦念感を下敷きに、詐欺を行う「先輩」達への憧れと、多額の金を稼ぐ興奮が、彼らを突き動かす。同時に、稼いだお金で母に仕送りを送る人、東日本大震災の際には多額の寄付を行う人も居た。彼らにとって、そこに矛盾はないのだろう。
著者は末尾に、大切なのはこれからの世代に「与え、育てること」と言う。飢えを減らすこと。その為に時間をかけ、継続し他者と向き合い続けること。綺麗ごとでもいい。努めることは、いつからでも出来るのではないか。



鈴木 大介【著】
いま、日本のどこかで起きていること。
明日は、自分や家族の身にふってくるかもしれない。友人が、そうなっているかもしれない。
自分との距離感がとても近い犯罪と、それを行う彼らの存在に、気付いていますか?
本書のタイトル、『老人喰い』とは高齢者向けの犯罪のこと。振り込め詐欺など、60歳以上の方々を対象とした犯罪は年々拡大。全国の消費者センターへの相談の7割以上。総被害額は、2014年1月〜11月で498億7343万円にのぼると著者はいう。犯罪を行うのは、若者が多い。彼らの実情に迫るのは『最貧困女子』を記した鈴木大介さん。振り込め詐欺に携わる人々への取材を元に、彼らの内実を物語調で描く。
そこから見えてきたのは、実行者達の徹底的な効率化と、合理化だ。詐欺の電話をかける者は朝スーツで「出社」する。髪の長さやエレベーターのボタンの押し方まで気を使う。出社先は頻繁に引越し、詐欺作業は細分化され、縦の繋がりは絶たれる。逮捕されない為だ。詐欺対象は「名簿」化され、データーは蓄積し続けている。今40代の男性へも、10年後20年後まで視野に入れて、牙を研いでいる。判断力が低下する時を狙っているのだ。
また、業界のスピードが速い。生え抜きの人物が集う。技術は飛躍的に進化する。月4000万稼ぐ者もいる。潰れる者も多く、残り続ける者は少ない。「詐欺」であることを抜いて見ると、IT業界や金融業界の営業を見ている気持ちになる。
彼らの根本にあるものの1つは、飢えだと感じた。貧困や諦念感を下敷きに、詐欺を行う「先輩」達への憧れと、多額の金を稼ぐ興奮が、彼らを突き動かす。同時に、稼いだお金で母に仕送りを送る人、東日本大震災の際には多額の寄付を行う人も居た。彼らにとって、そこに矛盾はないのだろう。
著者は末尾に、大切なのはこれからの世代に「与え、育てること」と言う。飢えを減らすこと。その為に時間をかけ、継続し他者と向き合い続けること。綺麗ごとでもいい。努めることは、いつからでも出来るのではないか。



