下山は、登りの半分の時間と思っていたので、甘かった。![](/img_emoji/悲しい.gif)
下りだけだから、たぶん足が(ひざが)ガクガクするのかなと思っていただけだった。
9合目は、小石まじりの土と約30度の斜面なので、すべるし転びやすいのでどうしても足先に力が入る。そうこうしていると、爪先が剥がれるような痛みを感じた。「爪が伸びていたのかなー。そんな伸びているとは思わないのだけどなー。」
だけど痛くてたまらん。かにさん歩きで(横向き)一歩一歩下がっていった。だから時間がとてもかかる。若い人たちの下りの歩き方は「早いなー」。チャカ、ちゃかと駆け足のごとく下がっていく。
休憩している数人に「すいません。爪きりありますか?」と聞いてみた。ちいさな鋏があるからと、貸してくれた。感謝。自分の爪をまじまじ見た。普段だったら、こんなぐらいは、伸びていると思わないぐらいなのになー。
8合目から見下ろす山々は何と低く見える。足の爪が痛いせいもあって、今いる8合目がとても高く見える。時々後ろ歩きをしている若い人に出会う。上手に歩くなーとびっくり。私も真似をしてみよう。
夫の腕を借り、後ろ歩きで8合目~7合目までひたすら歩いた。平らな道を後ろ歩きするよりもずっと楽だ。もっと早くしていれば良かったなーと思うぐらいだった。
だんだん日が暮れてあの太陽が沈んだら、真っ暗になってしまうなーと心細くなってきた。そんな時、見知らぬ3人の男の人が声を掛けてくれた。私達の歩調に合わせてくれたり、立ち止まって待ったくれたり、心配してくれた。
本格的に暗くなった。登り道を懐中電灯の明かりが点々と見える。夜登って、ご来光を見るのだろうな。随分登っている。ひとシーズンで23万人のひとが富士山に登るとのことだった。昨年に比べて今年は、世界遺産に選ばれて外国の人も多いようだとのこと。
登る人たちは多いけれど下りの道を歩いているのは私達だけになってしまった。一人の人が懐中電灯を持っていたので、足元を照らしたくれた。携帯電話を懐中電灯の変わりにしてみようと思った。意外と明るい。
3人の人にこれ以上帰りが遅くなっては迷惑をかけてしまうので、何とか大丈夫だからと声をかけたが、丁度よい歩き方だからと、言ってくれた。本当に親切な人たちに、めぐり合った。
一人は大学で教えている先生とイタリアの人、そして学生さんでした。下山してから何か御礼をしたいと思って住所を尋ねたが、「いいえ、いいえ」と。こんなに親切にしていただき、御礼もできないのは、ちょっと心苦しい。
おれおれ詐欺やいろんな詐欺が横行している世の中、日本人はどうなっちゃたのかなと思うこの頃、このような人たちにめぐり合えて、力強く感じました。
6合目からなだらかな下山道になったので、普通に前を向いて歩いても爪の痛みは耐えられる。普段履いているサンダル(親指と人差し指をはさむ)をもってくれば良かったなーと。この靴だったらあのサンダルのほうがよっぽども良かったなあー。
5合目に無事到着。夜の9時近くだった。
とうとう3人の住所もわからず仕舞いなので、せめて売店で何か買って御礼をしたい。3人が一緒に来ていたのかと思ったら、学生さんの姿が見えない。学生さんは一人で富士山にきていたのだとのことが、その時わかった。