ISO成功法

ISOと継続的改善を両立させよう。ISOは継続的改善のための、基盤整備に役立つ。基盤整備と継続的改善のコツを整理したい。

1.PDCAはマネジメントの基本

2009-01-25 | 継続的改善52
ISO9001の序文0.2にはPDCAの説明がある。
PLAN:顧客要求、組織の目標、現状把握などから目標を設定し、実施計画を作成する。
DO:実施計画、実施プロセスにそって実施する。
CHECK:目標と実績を比較し反省と評価をする。
ACTION:反省や評価をもとに原因を解析し、処置をとると共に、計画に反映させる。

環境マネジメントのISO14001もPDCAで構成されている。国際規格であるISOがマネジメントの基本をPDCAにおいていることには大きな意義がある。


PDCAの原動力は「燃える情熱」
PDCAの起源を紹介したい。
PDCAという品質管理の基本的考えができるまでには次のような歴史がある。日本の品質管理の基礎ができたのは60年前のことで、デミング博士の功績は大きい。博士によると品質管理は、品質を重視する観念と品質に対する責任感という基盤の上に設計、製造、販売、調査・サービスの各部門が協力して行う活動である。品質に対する責任感とは「自分がつくった製品の裏書をすること、品質を保証することである。」とデミング博士は説明した。そしてこの根底に、良好なかつ均質な製品をつくろうという「燃える情熱(a burning desire)」が必要であることを繰返し強調した。このデミング博士の情熱が当時,セミナーに参加した経営者、技術者、学者の心を動かし、「燃える情熱」になり、日本の品質管理の基礎を作ったことを忘れてはならない。1950年7月のことである。

始めの講義でデミング博士が紹介したのは、恩師シューハート博士の考えを取り入れたサイクルである。

統計学者で市場調査の専門家のデミング博士は、顧客の満足を重視した。「マーケティングという言葉はただ販売だけでなく、それは、毎月毎月製品を買う人が生産品について何を考え、またそれを再び買うかどうかその理由などを知る一つの科学なのであります」
そのマーケティングの考えを含めて全社的活動を整理したものが、日本における品質管理のはじまりである。

デミング博士の日本製品を育てようとする献身的な講義に感激して、品質管理への取り組みを始めた企業は少なくない。

日本には古くからものを大切にする文化があり、ものづくりの名人、職人芸を尊敬する気風があった。その点、設計と製造にはっきりした格差のある欧米の文化とは対照的である。その日本が欧米と圧倒的な力の差を見せ付けられたのは、戦争であり戦後の輸出製品に対する返品の山であった。

この現状を打破すべく産学協同で品質管理の研究に取組んだグループがあった。
戦後、壊滅的打撃をうけた日本が立ち直るためには「ものづくり」しかない。
もともと資源の少ない日本が戦争で資源を使い果たしたので、海外から原材料を輸入して製品に仕上げ海外に輸出する。クレームによる返品は最大のむだである。品質を良くしないと日本は生き残れないと考えた。その試みは、成功への確信より危機感のほうが強かった。品質管理を勉強するうちに危機感は希望に変化した。希望は情熱になり品質管理という活動となった。

当時JHQのスタッフとして来日していた統計学者のデミング博士に日参し講義を依頼した。日本人の情熱に動かされたデミング博士は講義の冒頭に全社で協力し品質をよくする活動の根底に「燃える情熱」がなければならないことを話した。日本人の情熱に動かされデミング博士の講義が続いた。講義には当時の多くの企業の技術者や経営者、学者などが参加した。用意された講義料をデミング博士は受け取ろうとしなかった。「日本の産業の発展に役立てて欲しい」という博士の友情を基金としてデミング賞がつくられた。

この講義に関係した不思議がある。
全社で協力して品質を作り上げる概念をデミング博士は恩師シューハート博士の考えをもとにデミング博士の哲学を加えてシューハートサイクルと名付けた。
その講義から多くの示唆を受けたある日本の学者がPDCAというサイクルとして、デミング博士の経営哲学を紹介した。いまいわれるPDCAである。当然のことデミングサイクルと名付けられた。これらの根底には国を超えた三人の学者の信頼と友情がある。
これが日本の品質文化の根底にあることを誇りに思う。

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