仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

青菜 / 春風亭一之輔

2021年12月12日 | エンタメ
落語『青菜春風亭一之輔
噺は、「ある夏の日。あまりの暑さから、どうにも仕事にとりかかる気がしない植木屋。煙草を吸っているとご隠居さんから声を掛けられた。縁側で柳蔭と鯉の洗いをご馳走になり、"青菜は好きか" と聞かれたので、"大好物です" と返事をすると・・・」という内容。
初めて鯉の洗いを食べたという植木屋は、それよりも酢味噌が気に入って、「これでごんごうは飲めますよ」と、ずっと箸で舐めている様子が面白い。
扇子を箸に見立ててしきりに舐める描写が最高。
(^_^)
さて、演者の一之輔師匠は【落語で全国ツアー ドッサりまわるぜ】という独演会を平成25(2013)年から毎年続けているようで、おおよそ二月かけて10~14か所を回っているようだ。
機会があればこれもぜひどこかで見てみたいものである。
ちなみに、"柳蔭"というのは、みりんに焼酎を加えた酒で、関東では "本直し" と呼び、夏に冷用酒としてよく飲まれていたらしい。
今度夏が来たら、暑い日に飲んでみよう。

寄合酒 / 春風亭一之輔

2021年10月31日 | エンタメ
落語『寄合酒』春風亭一之輔。
噺は、「手に入れた酒三升を一人で飲んでしまうのも申し訳ないから、みんなで飲もうという。ただ、酒の肴がないので、みんな何か一つ持ち寄ってくれとのこと。さっそく源ちゃんが鯛を一匹持ってきたので、"高かっただろ?" と聞くと、"うん。買えば高いだろうね" との返事がかえってきて・・・」との内容。
"正直源ちゃん"と呼ばれていると言うが、それは自称。
どうにも怪しいので詳しく聞けば、往来に放置されていた魚金のはんだいから "金ちゃん、猫が鯛を一匹咥えて逃げて行ったぜ" と何故か言ってしまったので、つじつまを合わせるために一匹持ってきたという。
それはアウト。
(^。^)
続けて何かを持ってくる連中みんながそんな感じなものだから、ホントどうしようもない。
さて、演者の春風亭一之輔師匠は、枕で風邪のことを話されていたが、確かに不特定多数が集まる所に出掛けるようだと風邪は防げない。
客席の人達もやっぱりアウトだ。

加賀の千代 / 春風亭一之輔

2021年09月12日 | エンタメ
落語『加賀の千代春風亭一之輔
噺は、「まったくお金がない甚兵衛さん。支払いが出来ないので、いつものように借りてきなさいと嫁さんに言われるがまま、饅頭を買ってご隠居さんの所に出掛けたのだが・・・」という内容。
まるで可愛がっている犬や猫を扱うかのように甚兵衛さんを無条件に受け入れるご隠居さん。
本当に必要なのは八円五十~六十銭なものの、嫁さんの入れ知恵通り二十円借してほしいと言う甚兵衛さんに、何の躊躇もなく二十円を貸そうとするばかりか、百二十円や二百二十円を貸そうとする。
さらには「千二百円なのかい!?」と驚きながらも、お金を用意するため本家に電話を入れようとまでするのだから、その可愛がりぶりに驚きなのだが、この家のお手伝いのお清さんもこういったご隠居さんと甚兵衛さんの様子を見て楽しんでいるようだ。
さて、演者の春風亭一之輔師匠は、枕でご自分の家族のことを話されてもいたが、「子供をどっか連れて行ったらいいじない」「仕事だよ、俺は」「落語じゃない。だって」という会話には笑ってしまった。
なかなか強気な感じに聞こえてくる奥さんの様子と、噺に登場する主人公の奥さんのイメージが重なるのだった。
また、クリスマスプレゼントのエピソードと池田先生のエピソードは無茶苦茶面白かったのだが、"カミさんは強いね" というのが、一之輔ワールドの基本なのかもしれない。
(^_^)

鼠穴 / 春風亭一之輔

2021年07月12日 | エンタメ
落語『鼠穴春風亭一之輔
噺は、「飲む打つ買うを覚えて、親から相続した田地田畑をすべて売り払ってしまった竹次郎は、江戸で商売を始めて成功した兄を訪ねた。奉公させてほしいと願う竹次郎に、"元手を貸してやるから商いをしろ" と言う。"利息なんかいらない。大切に使えよ" と言いながら、三日間何も食べてない竹次郎に貸したのは僅か三文。江戸の酒は旨いというから借りたお金でまず腹ごしらえをしようと、包みを開けた竹次郎は、その額に腹が立ったのだが、思い直して、それから一生懸命に働き・・・」という内容。
「目は覚めたのか」と聞く兄に「覚めました」と答える竹次郎だったが、借りたお金でまず酒を飲もうと考えてしまったのは、まだまだ目は覚めていなかったということなのだろうし、「商いというのは難しいものだ。生き馬の目を抜く世界だ」と言いながら三文を渡した兄は、そういった所を見抜いていたのか。
それとも、やはりただのケチだったのか。
さて、演者の春風亭一之輔師匠は、いつもなら登場人物を現代風にアレンジしたりして話を進めていくのだが、さすがにこの演目では一切そういったことはなかった。
まぁ、そういうことも有りだろう。
(^_^)

尻餅 / 春風亭一之輔

2020年10月20日 | エンタメ
落語『尻餅春風亭一之輔
噺は、「大晦日。三十六軒ある長屋の中で餅をついてないのは大工の八五郎の家だけ。"おまえさん、どうするんだい。正月くらいお餅を食べたいじゃないのさ!!" とせっつく女房に、餅屋のふりをして餅をつく真似をするという八五郎だが・・・」という内容。
町内をぐるっと一回りして餅屋の親方に成りきり、「こんばんは」と戸を叩くと、「はい、どちら様?」と女房が返事をする。
ところが、餅屋に成りきったはずなのに、八五郎は「俺だよ」と答えてしまうのだった。
これでは元も子もない。
(^。^)
そのあとは親方、若い衆の辰公、金太、そして自分の合わせて四人分の声で、近所に聞こえるように芝居をしなければならないのだから大変で、賑やかには聞こえるものの、何とも切ない大晦日の夜なのだった。
さて、演者の春風亭一之輔師匠は、「私は江戸っ子なので・・・」と話されていたのだが、実は師匠は千葉県出身。
ここであまり笑いを取れなかったのは残念だったのではないだろうか。
(^_^;)


かぼちゃ屋 / 春風亭一之輔

2019年01月08日 | エンタメ
落語『かぼちゃ屋春風亭一之輔
噺は、「二十歳になってもぶらぶらしている与太郎。叔父さんが仕入れてくれたかぼちゃを売ることになった。売り声を出さずにぶつぶつ呟きながら歩いているものだから、まったく売れない。道行く人に、"とーなす屋でござい" とでも声を出しながら売って歩けと助言を受け、さらには・・・」という内容。
叔父さんに言われた通り路地に入って行ったはいいものの、行き止まりで方向転換が出来なくなった。
まぁ簡単に何とでもなることなのだが、与太郎には、ここで生涯を過ごさなくてはならないかもしれない程の一大事で、「路地を広げろ~!!」と大騒ぎ。
とにかく面白い。
(^。^)
さて、演者の春風亭一之輔師匠は、平成13(2001)年に春風亭一朝師匠に入門し、平成24(2012)年に真打に昇進したらしいのだが、真打昇進の際はなんと21人抜きだったという。
凄い。


茶の湯 / 春風亭一之輔

2018年11月06日 | エンタメ
落語『茶の湯春風亭一之輔
噺は、「蔵前のご隠居さん。根岸に良い物件が見つかったことから、お気に入りの小僧・定吉と越してきた。その定吉が、"ご隠居さん、何か趣味を持ったらいかがですか"と言うので、離れに茶室もあることだからと茶の湯を始めることにしたのだが・・・」という内容。
引っ越してきたばかりの知らない土地なので、どんな所なのかと近所を探検した定吉は、隣の家を覗いて、「目の前に大きな鰹節を置いて、猫の爪のようなものをつけた指で、鬼の形相でベンベラベンベラ掻き乱している綺麗な娘さんがいましたけど、あれは化け猫かもしれません」とか、またその隣の家は「綺麗なお花を前に、鋭利で大きなハサミを持って端からザクザク鬼の形相で切り刻んで、グサグサ針の山に突き刺していました」等とご隠居さんに報告するのだが、その言い方は何とも心配になってくる表現だ。
対するご隠居さんも、「昔、歌舞伎に凝っていたことがあったが、前の前の前の定吉を斬り殺した」とか、「鍼に凝っていた時は、一八という太鼓持ちを刺し殺した」等と、こちらはどうしようもない嘘をつく人のようで、何とも訳の分からない迷コンビだ。
(^_^;)
おまけに、知ったかぶりをしてしまうご隠居なことから、二人が始めた茶の湯は、とんでもない内容。
これに巻き込まれる孫店の皆さんにとってはホント迷惑な話なわけだ。
(^_^)
さて、落語協会のウェブページを見ると、一之輔師匠の趣味の紹介に、"程をわきまえた飲酒"、"徒歩による散策"などとある。
何かちょっとしたこだわりがありそうな表現だが、そういうちょっとしたこだわりが、面白い表現や楽しい噺を生み出す材料の一つになっているのではないかと思う。

天狗裁き / 春風亭一之輔

2018年08月02日 | エンタメ
落語『天狗裁き春風亭一之輔
噺は、「こんな所で寝ると風邪を引くよと旦那を起こす女房。ニヤニヤ笑いながらぶつぶつ寝言を言っていたのでどんな夢を見てたのかと聞くのだが、八は夢を見てないと答える。その後もどんな夢だったのかとあまりにしつこく聞くものだがら、ついに八は怒り出し、夫婦喧嘩になってしまい・・・」という内容。
夢なんか見てないと言っても信じない女房。
そのうち、「面白いことがあったら分かち合うのが夫婦でしょ」、「どうせつまらない夢見てたんでしょ」、「少ない稼ぎしやがって。甲斐性なし」とどんどん興奮していく。
八のほうも「いいかげんにしろ、この野郎。てめぇ、ひっぱたくぞ」と言って引っ込みがつかなくなっていく。
この時の「殴れるものなら殴ってみろ」と挑発する女房のしぐさが、ホント腹立つ感じだ。
(^o^)
仲裁に入った隣の旦那も「で、どんな夢を見てたんだ?」と聞くし、この旦那同士が喧嘩になって仲裁に入った大家さんも「で、どんな夢を見てたんだ?」と聞いてくる。
「勘弁してくださいよ。見てないんですよ」と答えても誰も信じてくれない。
これはもうどうしようもない。
(^_^)
これは、落語『羽団扇』の前半部分が独立して一席の落語となったものだそうで、演者の春風亭一之輔師匠は、古典落語の登場人物を現代風の設定に変えて、ざっくばらんな口調で話す。
落ち着いている大家も、威厳がある南町奉行も、くだけた口調になっていくのが面白い。

千早ふる / 春風亭一之輔

2018年03月23日 | エンタメ
落語『千早ふる』春風亭一之輔
噺は、「男が隠居を訪ねてきた。娘が百人一首の"ちはやふる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは"という在原業平(ありわらのなりひら)の歌の意味を聞いてきたが、自分には分からないので教えてほしいという。実はこの隠居も歌の意味をマッタク知らなかったのだが・・・」という内容。
古典落語なので物語の舞台は江戸時代なのだけれども、一之輔師匠はかなり現代風にアレンジしているので、「都会の絵の具に染まっちまったんだよ」というヒット曲の歌詞をもじった台詞や、「リモコンで全消去できるんですよ」など、昭和や平成のエピソード満載なのが面白い。
おまけに、「この噺は吉原の描写とか、ちゃんとやらなくちゃいけないんですよ」と、男が隠居にクレームをつけながら、自虐的に展開していくのも良い。
ゆるさといったら一之輔師匠はトップクラスだし、「七代前の杉山さんだよ」も適当過ぎて最高だ。
(^。^)
演者の春風亭一之輔師匠は、ブログやツイッターを使っての情報発信も積極的にしているようで、やはり"いまふう"な落語家だ。
(^_^)

鰻の幇間 / 春風亭一之輔

2018年03月03日 | エンタメ
落語『鰻の幇間(うなぎのたいこ)』春風亭一之輔
噺は、「夏の暑い日。太鼓持ちの一八が腹を空かせて歩いていると、浴衣姿の男に声をかけられた。誰なのか思い出せなかったのだが、これ幸いと付いていった薄汚い鰻屋の二階の座敷で・・・」という内容。
酒を飲んだり、鰻を食べたり、なかなかに贅沢な昼食だ。
(^。^)
一体誰なのか思い出せない男と一緒なわけだから、普通に考えれば、ゆっくりと楽しむことなんてできないと思うのだが、そこは普段から調子よく相手に合わせている商売柄なのだろうか、一生懸命だ。
そして、それがこの商売の悲しいところでもある。
さて、演者の春風亭一之輔師匠は、自身がテレビ番組『プロフェッショナル』に出演した時のエピソードなどの話をしていたが、(推察すると)この日は前座からなかなかに盛り上がっていたようで、随分とノリノリのように見えたのだった。
(^_^)

粗忽の釘 / 春風亭一之輔

2018年01月24日 | エンタメ
落語『粗忽の釘』春風亭一之輔
噺は、「引っ越しの日。大工の八は箪笥を担いで引っ越し先へと向かった。女房は近所の人達と大八車で後を追いかけたが、先に着いてしまい、八はなかなか到着しなかった。随分と迷ったらしい。一服したいところだったが、箒を掛ける釘を打ってくれと言われ、しぶしぶ釘を打つ八。八寸という随分と長い釘で壁を打ち抜いてしまったものだから、女房に言われた通り、隣の様子を伺いに出かけた八だったが・・・」という内容。
主人公の八は、"おっちょこちょい"とか、"そそっかしい"などという領域をはるかに超越した存在。
(^。^)
箪笥を担いで運ぼうとして家の柱まで一緒に括るし、「箪笥ってのは重たいもんだな。いまだに肩に食い込んでるような気がするよ」と、まだ箪笥を担いだまま嘆く。
相手をする女房は、なかなか到着しなかった八に「箪笥を担いだ旅人だね」と怒らないし、八が隣でもない家に「壁から釘が出てませんか?」と尋ねてるのを見てても「ずっと見てた。ホントにおまえさんはいいね。一緒になって良かった」と、そういった粗忽さを楽しんでいるようなのが面白い。
演者の春風亭一之輔師匠は、春風亭一朝師匠の弟子。
なかなかにエネルギッシュな落語家さんのようで、メディアへの出演も忙しい中、年間900席以上の高座をこなしているのだという。
「この道もローマへ?」
これも笑った。
(^_^)