二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

アイーダ/MET09-10舞台撮影

2009-12-20 | オペラ
アイーダ/MET09-10舞台撮影

作曲:ヴェルディ、演出:ソニヤ・フリゼル
指揮:ジョゼフ・コラネリ
出演:ヴィオレッタ・ウルマーナ、ドローラ・ザジック
   ヨハン・ボータ

金色のトランペットの響きが豪快で軽快。威勢の良い行進曲の陰にかき消されるかのようなアイーダとラダメスの、閉塞的で悲惨な恋の物語は薄くはかない。アムネリスの悲愴な恋もまた行進曲にかき消されていく。世の中はそんなものだ。

最後の場面は悲しくも結ばれた2人の恋愛。恋の勝利者の表現。一方、一人寂しく取り残されるアムネリスは勝者のようでいて、実は敗者という、だまし絵のような構図。このアムネリスを注視すると、この物語は実はアムネリスの悲惨、惨めな精神的ダメージの深さが主軸なんではないかとさえ思える。

ヴィオレッタ・ウルマーナが強靭な精神力を持っているかのような印象のアイーダ。ヨハン・ボータが誠実だが、幾分気弱な感じのラダメス。ドローラ・ザジックは自信満々な感じで、悲愴で惨めな印象は少なかった。

09.11.28 東劇
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春琴抄/お琴と佐助

2009-12-18 | 邦画
春琴抄/お琴と佐助 ☆☆
1935.06.15 松竹、白黒、普通サイズ
監督・脚本:島津保次郎、原作:谷崎潤一郎
出演:田中絹代、高田浩吉、斎藤達雄

盲目のお琴はきつい、厳しい。
芸の求道者で琴の達人だ。
豪商の娘で障害者で、
それですこし、すねた所がある。
唇をかむような、
目明きがねたましい気持ち。
美貌が何になる。芸が何になる。
そんなお琴を支えるのが丁稚の佐助だ。
献身的で自己犠牲をいとわない。

お琴の和服姿は凛々しく燦然としている。
その琴の音は細やかで毅然としている。
でも、愛に飢えているのだ。
美貌に引き寄せられてくる斎藤達雄のような男は居るのだが、
そんな安っぽい男は相手にしない。
友人は芸だけ。
恋人は琴だけ。

佐助は丁稚。
お琴の眼となり、いつも手を引いて歩いている。
お琴は彼のことは単なる使用人だと思っている。
深く恋していることは、
自分も知っているのか知らないのか。

佐助はお琴を慕っている。
お琴はお姫さま、自分は丁稚。
恋愛感情なんてもってのほか。
けれど自分がお琴を恋していることを、
自分自身で分かっているのかいないのか。

かすかに自虐的なこの恋の物語は、
いかにも谷崎潤一郎の文学らしい。

映画にはお琴が子供を生むエピソードがある。これについては父親が明らかにされず、他のエピソードとのつながりも無く、何を意図したエピソードなのかも分からない。特に無くても良いようなこのエピソードが何故有るのか一寸不思議に思った。父親が誰なのか気になるところだが、特に示唆的な所も証拠も見当たらない。しかしながら若干それらしい感じの所があって、佐助を父親と見るのが妥当だと思った。そうだとすればこのエピソードには重大な意味が、この恋愛の深い屈折率の表現が現れて来る。この恋のねじれた感じ、秘め事めいた印象だ。原作は読んでいないので良く知らないが、そちらでは佐助の子であるように書かれているらしい。

09.11.28 東劇
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09歌舞伎座12月/身替座禅、大江戸りびんぐでっど/歌舞伎

2009-12-16 | 歌舞伎・文楽
09歌舞伎座12月/身替座禅、大江戸りびんぐでっど/歌舞伎

昼の部(最初の演目、操り三番叟と野崎村は見損なった)

身替座禅(みがわりざぜん )
出演:勘三郎、三津五郎、染五郎

怖い怖い山のカミ、玉の井が三津五郎。
よっぱらい、よろよろの山蔭右京が勘三郎。
きりきり小気味の良い太郎冠者が染五郎。
三者三様の踊りが良い。
他の2人も含めて踊りが綺麗で、喜劇がよけいに楽しめる。
それに芝居が面白くて、踊りがよけいに楽しめる。

大江戸りびんぐでっど
出演:染五郎、七之助、勘太郎、福助、扇雀、三津五郎、勘三郎

宮藤官九郎の脚本、演出。破天荒。とても歌舞伎と言えるものでは無く、いわば歌舞伎のパロディと言う感じ。バイオハザード、マイケル・ジャクソン、落語(らくだ、品川心中)、社会問題(派遣切り)、歌舞伎の掛け声(くさや)など、数々のパロディというかパクリからなる作品。多分、いろいろと主張している部分もあるのではと思えるけれど、そんなの気にしないで、単に楽しめば良い作品だと思った。

七之助の若い女房役の良く通る声、しっかり芯の通った心いきが強靭な感じで、ちょっと軽薄な感じの劇をしっかり締めていたように思う。相手役の染五郎もメリハリがあったように思う。勘三郎の芝居はいくらか抑え気味、出番も少なめで、今回はいい所をすこし若手に譲っているのかなと思った。三津五郎のすっとぼけた浪人が面白い。この芝居を一番楽しんで演じているように見えた。三津五郎って本当に芸の幅が広い。扇雀のゾンビ芸者も良く出来ていた。ゾンビになりきってギクシャクと、それを演じていた。

09.11.06 歌舞伎座(幕見)
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おとうと

2009-12-15 | 邦画
おとうと ☆☆☆☆
1960.11.01 大映、カラー、横長サイズ
監督:市川崑、脚本:水木洋子、原作:幸田文
出演:岸恵子、川口浩、森雅之、田中絹代、岸田今日子

涙が底から滲み出てくるような、
まだらにくすんだ壁の灰色。
茫然と立ち尽くす質素な和服姿の岸恵子。
芥川也寸志のせつない音楽。
少し色あせて、人々の気持ちが重く沈殿しているような、
銀残しの映像の悲しい風合い。

くやしい、くやしい、姉さんの気持ち。
貧血で倒れても、
それでも、
それでも、
白いエプロンを腰に巻いて、
そして、また、手伝いに部屋を出ていく。
弟とはいつまでもピンクのリボンで結ばれているのだから。

医師役の浜村純の頭髪が若干、金髪のように見えて気になった。何か、演出上の意味があったのだろうか?ただ、単にそういうように見えただけなのか。

09.11.28 NFC、昔TVで1回
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マダムと女房

2009-12-05 | 邦画
マダムと女房 ☆☆
1931.08.01 松竹、白黒、普通サイズ
監督:五所平之助、脚本:北村小松
出演:渡辺篤、田中絹代、伊達里子

青い空と脳天気な白い雲。
一面の野原にポツポツと建つ住宅。
白い洋館と日本家屋。
純日本的カミさんと隣の洋装の女性。
愉快なジャズと、
軽快なダンス。

洋館にジャズ仲間と居て、
洋風なメークで日本人離れした感じの若い女性は、
井上雪子というらしいけれども、
そのなりやふりは今風だ。

日本家屋の主人は引っ越して来たばかり。
若いかわいいカミさんは田中絹代だけれども2人の子持ち。
怒ったり、すねたり、泣いたり、甘えたり、
すべて見せます。かわいいね。

最後はだんな様役の渡辺篤とデュエット、私の青空。
「夕暮れに、仰ぎ見る、輝く青空、
日暮れて、たどるは、我が家の細道。
狭いながらも楽しい我が家、
愛の灯影(ほかげ)のさすところ、
恋しい家こそ私の青空。・・・」

冒頭で佐藤忠男さんのトークショー有り。今回の松竹蒲田を中心にした日本映画上映の企画に関連して、当時の監督たちのエピソードなどを時間をオーバーして熱心に語った。特に、島津保次郎、五所平之助、清水宏、小津安二郎などの、俳優の動作をきちんと決めて構想どおりの構図やコンティニュイティーで映画を作っていくやり方と、村田実、溝口健二、内田吐夢など、俳優を極限まで追い込んで撮るスタイルの違いの説明は興味深かった。なる程と思った。確かにそういう感じだ。前者がこの松竹蒲田から起こった新しい流れで、後者が映画製作で先行していた日活で活躍した監督たちである。

09.11.21 東劇
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