二銭銅貨

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ひき逃げ

2006-09-06 | 成瀬映画
ひき逃げ  ☆☆☆☆
1966.04.16 東宝、白黒、横長サイズ
監督:成瀬巳喜男、脚本:松山善三
出演:高峰秀子、黒沢年男、小沢栄太郎、司葉子、賀原夏子、中山仁

母親の悲痛な叫び、
母親の絶望。
母親の引き裂かれた気持ち。
救いようもなく、
なぐさめようもなく、
とりつくしまもなし。

横断歩道。
横断歩道を守る。
横断歩道を渡る子供達を守る。
横断歩道を渡る子供達を暴走する車から守る。
交通事故から守る。旗を持って。永遠に。事故0まで。気の済むまで。

救いの無い母親の悲痛な叫び。

メロドラマ、
社会派ドラマ、
悲劇、
3つの要素、3つの全く違う要素がミックスされた奇妙な設計。
不思議な映画。
でも、何故か、うまく調和している。

たとえば、小沢栄太郎と高峰秀子がからむ、
本来緊張すべきサスペンスのクライマックスが、
何故かプッと吹き出してしまうような演出だったり、
空想の場面とか、画面がネガになる場面とか、
いろいろな実験的な演出があって、やや支離滅裂な感じなのですが、
それでも不思議と調和があって、そして、
各場面が印象に残っています。

黒沢年男のバランス、黒い皮のジャケット。
司葉子の薄くバラバラに分解しそうな気持ちの表現。
賀原夏子の緊張感、
小沢栄太郎の悪徳。

高峰秀子の優れた芝居の表現力。
しっかりと芯の出た、
豊かな演技。
高峰秀子に始まり、
高峰秀子に終わります。
05.10.22 NFC

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