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外套/ジャンニ・スキッキ/新国立劇場オペラ研修所公演2011

2011-03-27 | オペラ
外套/ジャンニ・スキッキ/新国立劇場オペラ研修所公演2011

作曲:プッチーニ、演出:デイヴィッド・エドワーズ
指揮:ドミニク・ウィラー
演奏:トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ
出演:
(外套)
ミケーレ:西村圭市、ジョルジェッタ:立川清子
ルイージ:村上公太、タルパ:北川辰彦、フルーゴラ:堀万里絵
(ジャンニ・スキッキ)
ジャンニ・スキッキ:高橋洋介、ラウレッタ:木村眞理子

暗い闇の中から1枚のドアをかすかに開いて、
その隙間からこちらにこっそりと、
1人の若い女性が抜け出てくる。
不安そうに心配そうに。
数年前に小さな子を亡くした蒼ざめた黒い記憶、
夫の嫉妬を思う暗い不安な気持ち、
そして若い男に惚れる新しいエネルギー。
その暗い輝きからこの音楽が始まる。

フタの無い黒い大きな箱を、開いた口をこちらに向けて横倒しにして作ったような形のセットがメイン。舞台脇の両サイドに背の高い黒い鉄骨の骨組みがある。天井からは太い真新しい銀色のチェーンが3本くらい下がっている。その先に太いフック。ダークな印象の美術の中から、何やら心配そうなジョルジェッタが出て来て、そして「外套」の音楽が始まる。

飾り気が無く庶民的で生活感のあるジョルジェッタを立川清子が演じ、それも含めて演出全体が何かイタリア映画のネオ・リアリズモを思わせる印象のものであった。立川清子の歌唱は強くて良かった。若い男に想いを馳せる人妻の不安と希望、恐怖と絶望の放心したような表情の芝居も良かった。西村圭市のミケーレは暗い芝居と暗い歌、村上公太のルイージは若々しく張りのある声で芝居も若々しかった。タルパとフルーゴラは年配の夫婦役で安定した歌と芝居だった。特に堀万里絵は役者なみの芝居をする人だと思った。

演出は細かいところまで行き届いたもので、特に最後のシーンは印象に残った。ミケーレがゆっくりと大きな引き戸を開けると、そこに逆さ吊りのルイージ。ジョルジェッタの絶叫。

休憩の後、同じセットを使い、置物を変えることによって引き続きジャンニ・スキッキの公演があった。こちらはうって変わって明るいパステルカラーの雰囲気。それでも遺産相続のトラブルだから、背景にはかなりの暗さは秘めている。「ブォーゾは実は死んで無い、死んだ振りをしていただけ」、あるいは「幽霊か何かになって生き返った」というような明るいオチがこの演出の面白いところ。芝居ではケチケチ婆のような腰の曲がった婆さん、ツィータ役の塩崎めぐみの芝居が良かったように思う。ジャンニ・スキッキの高橋洋介は芝居も歌も安定していて迫力もあって良かった。スキッキらしさが良く伝わった。ラウレッタは木村眞理子で背の高い良家の娘さんな感じ。白のドレスが良く似合っていた。歌も美しい。

舞台が一周回転している前で父親を追いかけながら、袖を捕まえながら「私のお父さん」を歌うラウレッタがいじらしく美しい。美しい演出。

O! mio babbino caro, mi piace, e bello, bello; ...

北川辰彦は「外套」のタルパ役やスキッキの公証人役、また鼻にかかった潰れたような声でスキッキの医師役をやった。それらは同じ人がやっているとは思えないような芝居だったので達者な人だと思った。

演奏はメリハリがあって良かった。

公演は4日間だったが東日本大震災で、10、12日の組は12日が中止、11、13日の組は11日が途中で中止だったらしい。バイオリニストの松井利代子さんのブログによると「外套」の22ページ目までいったところで中止になったようだ。2時開演、2時46分地震なのでラストに近いあたりだったようだ。

11.03.13 新国立劇場、中劇場