日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 廣次 Hirotsugu Tanto

2017-09-06 | 短刀
短刀 廣次


短刀 廣次

 室町中期から後期にかかる明應頃の、相州廣次の短刀。総体のバランスを見ると、刃長五寸七分に比較して茎は二寸八分ほどだからかなり長いと感じるが、保持して激しく使うことを考えると、この程度は必要だろう。備前刀でも説明したが、室町時代明應頃にみられる特徴的な造り込みだ。地鉄、焼刃、茎など総体は見るからに相州物。沸強く飛焼が印象深い。
 「長い太刀や刀以外の小ぶりな刃物、小脇差、腰刀、短刀などすべての小ぶりな刃物は、合戦で相手の首を切り落とすための武器である」と言っていることを耳にしたことがある。特に一尺二寸前後の最も扱い易い武器のことを述べているようであったが、さらに小振りの短刀まで、最後に相手の首を落とすための武器だというのである。はたして合戦とは、首を落とすための武器を特別に用意するほどに敵軍を抹殺するためのものだろうか。その説が正しければ、合戦が終わると、そこら中に首のない死体が転げていたことになるが、本当だろうか。歴史家がいたら教えてもらいたい。むしろ、戦いで相手を殺してしまっては、後に部下として有益な働きをするかも知れない尊い力を一つ失うことにもなる。むやみに殺してしまうことはなく、戦闘意欲を失わせるだけで良い。合戦とは殺し合いではないのだ。室町初期に隆盛した小振りの脇差は、綺麗な装飾が施されていることから分かるように、高位の武士が室内での守りとしたものではなかったか。小振りの刃物は首を切るための武器であるという説は頷けない。一歩譲って首を切るためなら、刀でも太刀でもよかろう。この短刀のように六寸ほどの刃物でも首を落とすの?もしあるなら、その説の裏付けを聞きたいものだが、どうだろう。
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