記述的商標とは、商標法は一定の場合に商標の登録ができない事由(不登録事由)を定めており、その中の一つが裁判で問題となった、その商品の品質などを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法3条1項3号)です。
正確には、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は登録できません。
上記のような商標を「記述的商標」といいます。具体的には、アサヒビールの「本生」についても、知財高裁平成19年3月28日判決は、「本願商標は、これを本願指定商品中『熱処理をしていないビール風味の麦芽発泡酒』に使用しても、これに接する需要者をして、単に商品の品質を表示したものと認識させるにすぎず、商標法3条1項3号に該当する」と判断しました。
しかし、具体的な事例において、記述的商標と判断されるものとそうでないものの区別は難しい場合があります。「こくうま」の事例では、A社は、平成17年6月21日に「食用油脂、乳製品、卵、冷凍野菜、肉製品、加工水産物、加工野菜及び加工果実、豆乳、カレー・シチュー又はスープのもと、お茶漬けのり、ふりかけ、なめ物」等を指定商品として「こくうま」の商標登録出願をしました。しかし、特許庁から「本件商標を指定商品に使用しても、該商品が美味であることを理解させるにとどまるから、商標法3条1項3号に該当する」旨の拒絶理由通知を受けたため、指定商品を「キムチ」のみとする補正を行って、本件商標登録をしたという経緯がありました。
つまり、「こくうま」の商標については、「食用油脂、乳製品、卵、冷凍野菜、肉製品、加工水産物、加工野菜及び加工果実、豆乳、カレー・シチュー又はスープのもと、お茶漬けのり、ふりかけ、なめ物」などに使う場合には、記述的商標となりますが、「キムチ」に使う場合には、記述的商標とはならず識別性のある商標となかった訳です。記述的か識別性ある商標かを考えると、今晩も眠れそうにありません。