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商標の広場

弁理士の福島が商標のお話をします。

商標入門:意味が違えば登録になる?

2015-08-08 11:02:32 | 日記

「ASG」という他人様の商標権あるとします。そこで、スーツ一筋20年の職人がいたとします。高級スーツには「ASG」を付して販売しています。この「ASG」の由来は「安倍(A)総理(S)のように頑張れ!(G)」という意味で付されています。

お客様からの評判も上々なので職人は商標登録をしたいと考えました。ところが、冒頭のように、既にスーツについて「asg」が商標登録されていました。そこで、「asg」スーツを販売している会社の従業員からこっそり聞き出したところ、「asg」の由来は酔っぱらった社長がつぶやいた「あなた達は(A)最低で(S)がめつい(G)」とのこと。こんな酷い由来のスーツを着ている方が不徳でなりません。スーツの生地も外国の安物が使われている様子。

一方、私の「ASG」を付したスーツは、高尚な理念に基づき、日本国産の最高級の材料で職人が丁寧に仕立てたものです。大文字と小文字の違いもあります。出願書類にこれらの事情を記載するなどして、何とか登録にならないでしょうか?

これについて、残念ながら、「ASG」は登録になることはありません。まず、大文字・小文字の違いはありますが「ASG」と「asg」は互いに類似する商標です。
また、同じ「スーツ」について権利取得を希望するのであれば、実際に販売されているスーツの品質に違いがあっても関係ありません。

特許庁の審査では、商標の由来やそこに込められた想いは一切審査には考慮されません。そのため、スーツについて「asg」が登録されている以上、後からスーツについて「ASG」を登録することはできないのです。

なお、出願書類に「商標の由来やそこに込められた想い」や「○○だからこの商標は登録されるべきだ」といった文章を書き添えることはできません。審査官は、出願書類に記載された商標や指定商品・役務に基づいて審査基準どうりの判断を下します。

ところで、審査官から拒絶理由通知(登録を認めない旨の通知)がされた場合は、「意見書」を提出して「○○だからこの商標は登録されるべきだ」といった主張をすることはできます。ただし、「商標の由来やそこに込められた想い」によって登録が認められることはありません。

せっかく素敵な品質のよいスーツを作られているのですから、是非「ASG」とは別の素敵な商標を考えてみてください。教訓としては、「asg」より早く出願しておけば・・・。商標入門のおそまつでした。