ほのぼのとしたストーリーで人気の宮崎駿監督の長編アニメ「魔女の宅急便」。これって、ヤマト運輸の登録商標です。本来であれば、「魔女の宅配便」でなければいけないはずですが、実は、映画制作者や原作の著者も「宅急便」という言葉がヤマト運輸の登録商標であるということを知らずに、映画制作をしてしまい気が付いた時には、修正ができない状況でした。
あまりにも「宅急便」という言葉が一般化してしまったため、そんな肝心なことに誰も気付いていなかったのです。ヤマト運輸からの忠告で映画制作側が気付いた訳ですが、結局、映画制作側とヤマト運輸とが話し合いをし、ヤマト運輸が筆頭スポンサーになり、また映画「魔女の宅急便」をヤマト運輸の宣伝に自由に使える権利を得たのです。
また、映画制作中にヤマト運輸はあえて強く抗議をせずに、「商標権」だけをちらつかせて相手の妥協引き出しに成功しました。本来であれば、ヤマト運輸側に商標権侵害で訴訟等を起こすことも可能でしたが、大人気の宮崎駿作品ということもあり、その人気にあやかりたい、また逆に訴訟をすれば、企業的イメージの低下が考えられたため、したたかな戦略?に変更したのです。
そして映画公開前に、ヤマト運輸は大手新聞紙に全面広告を出しました。文面によれば、「ヤマトは大きく成長しました。今や、宅急便は一般名称となりつつあります。」という広告です。これは、間接的に宅急便という言葉はヤマト運輸の商標であることをイメージ付け、そして「魔女の宅急便」が公開されるときに、宅急便という言葉が頻繁にメディア露出すれば、その度に「宅急便=ヤマト運輸」のインパクトを与えられると考えたのです。
実際、「魔女の宅急便」のCMがメディアに露出するたびに、自然にヤマト運輸を顧客は連想しました。こうして、ヤマト運輸は宅配便業界最大手の地位を確固たるものとしたのです。「魔女の宅配便」の商標でヤマト運輸は一本勝ち!したたかな企業のマーケティングの事例でした。