そもそも、ベルギーの劇場ロゴは商標登録がされていなかった。だから今回の五輪エンブレム問題は商品・役務での誤認混同の問題ではないでしょう。問題は、著作権の問題だろう。著作権侵害が認められるためには、既に存在する他人の著作物を利用して作品を作出したことと、比較対象となる両者のデザインが類似していると判断されることが必要です。
他のこのような裁判では、この2つの要件を著作権者すなわちベルギーのデザイナーが証明しなければならないということがポイントです。オリビエ・ドビ氏が、佐野氏が劇場ロゴに依拠したという事実を証明することは難しいでしょう。
まず、五輪エンブレムは、モノトーンであるベルギーのロゴとは色彩が全く異なります。また、右上にある赤丸は、五輪エンブレムにしか存在しません。さらに、中心の縦線と左上・右下から伸びる線との接触の有無でも、両者には違いがあります。以上の点から、2つの作品には差異があり、類似性は否定されると考えられます(某情報通の意見)。
こうした意見に賛同する方は「問題なし」と考え、一方、類似すると考える方は「盗用」と考えるでしょう。この問題、最終的にどのように収まるか他人事ではありません。当方は商標の代理人でもありますから・・・。