goo blog サービス終了のお知らせ 

商標の広場

弁理士の福島が商標のお話をします。

もし商標権を侵害されたら?

2015-07-31 16:26:04 | 日記

もし、御社の商標権が侵害されたら?御社は差止請求権、損害賠償請求権、不当利得返還請求権、信用回復措置請求権を行使するほか、刑事責任を追求することも可能です。

他人から商標権を侵害されたときは、救済措置として次のような権利を行使することが出来ます。1.差止請求権(将来の侵害行為の阻止)商標権者もしくは専用使用権者は、他人によって商標権が侵害または侵害されるおそれがある場合に、侵害の停止、予防を請求することで商標の使用を差し止めることでができます。 侵害者に故意または過失があることは要件ではありません。

2.損害賠償請求権(過去の侵害行為に対する救済)、商標権者もしくは専用使用権者は、もし商標権を侵害された場合、それによって被った損害賠償を求めることができます。故意または過失による侵害で生じた損害の賠償を請求することができます。

3.不当利得返還請求権、侵害行為によって商標権者の財産から不当な利益を受けた者に対して、その商標権者の損失分を不当利得として返還請求をすることが可能な権利です。

4.信用回復措置請求権(名誉挽回)、他人による商標の使用によって信用を害されたことへの救済措置で、商標権者は業務上の信用に回復に必要な措置を侵害した者に対して命ずるよう裁判所に請求できる権利です。

5.刑事責任の追及、商標権侵害は非親告罪であるため、悪質な場合は商標権者が警察に訴えなくても、警察が自ら侵害者を逮捕することもあります。以上が民事上の権利であり、商標権の侵害者に対して罰金等の刑事上の罰則も科せられます。今日は真面目な日記となりました。


東京五輪エンブレム酷寺似している?

2015-07-30 15:31:58 | 日記

昨日の心配が本当になったよ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムが、ベルギーにある劇場のロゴと似ていると指摘されている。ことについて、東京都の舛添知事は、30日午前に会見しました。

記者団に対して、知事は「IOC(国際オリンピック委員会)もOKを出したと聞いているので、問題ないと思っている。でも、似ているといえば似ている」と述べました。

また舛添知事は、組織委員会が国内外の商標を確認しているので、デザインを見直す必要はないのではという認識を示したが、ベルギーのデザイナーから訴えられたら、対応を考えないといけないとも会見で述べていました。

東京五輪の商標問題が、若い日本人のデザイナーを傷つけないよう、そして五輪が成功のうちに迎えられるよう小生は祈念するのみです。


やきとりオリンピックの夢

2015-07-29 15:28:59 | 日記

「やきとりオリンピック」は商標登録できるか?商標法4条1項6号は、国、地方公共団体等の著名な標章の登録を認めないことを規定しています。ただし、本人が出願する場合は、この規定は適用されません(商標法4条2項)。

したがって、都道府県をはじめ、オリンピック、IOCなどの標章を、関係のない者が出願しても商標法4条1項6号が適用されて登録が認められません。さて、「やきとりオリンピック」商標事件の概要は概ね次のとおりです。

登録第5336468号商標「図形/YAKITOLYMPIC/やきとリンピック」(指定役務 第41類「セミナー又は講演会の企画・運営又は開催、やきとりに関するイベント・博覧会又はシンポジウムの企画・運営又は開催」)に対して、IOC( 国際オリンピック委員会)が異議を申立てました。その結果、登録は取消されました。

IOCは、日本においても第41類の役務について、「オリンピック」、「OLYMPIC」および、五輪の図形に関し商標権を所有しています。IOCの異議申立ての根拠は、前述の4条1項6号の他に、公序良俗違反の商標法4条1項7号、商標類似に関連する商標法4条1項11号、15号、19号の規定が挙げておりました。

特許庁は、商標を構成する欧文字「YAKITOLYMPIC」の部分が「OLYMPIC」を含んでいることから、著名な「OLYMPIC」標章と類似すると判断して、商標法4条1項6号違反で登録されたものであるからとしてその登録を取り消しました。

そこで、権利者はIOCから異議申立てを受けた後に、別途「YAKITOLYMPIC」の文字を削除し、輪の数を5個から7個に変更した)「図形/やきとリンピック」の形で第41類の役務を指定して再度(?)出願し登録されています(登録第566064号)

なお、IOCは、この商標に対しても、同じような理由で異議申立てをしましたが、特許庁は、「やきとリンピック」の文字から「オリンピック」の称呼・観念が生じることはなく、図形部分も五輪マークとは明らかな相違があると判断し、IOCの主張を退けました。

2020年の東京オリンピックは決まりましたが、「おめでとう東京」などの商標も新たな話題になりそうですが、こうした商標問題が東京オリンピックを「おめでたくないオリンピック」にしないよう願うのは、小生だけではないと思います。


禁止権の蹴りあいの具体例

2015-07-23 11:30:03 | 日記

昨日は、商標の禁止権の蹴りあいについて触れた。今日はその具体例を考えよう。例えば、「獅子」と「ライオン」とは、観念が一致するので、両者は類似する。また、「ライオン」と「テイオン」は、「ラ」と「テ」が紛らわしく、全体の外観が似ているので、両者は類似する。

しかし、「獅子」と「テイオン」とは類似しません。そこで「獅子」と「テイオン」とが商標登録されている場合、登録商標「獅子」に「ライオン」が類似するからといって、「獅子」の権利者が「ライオン」を使用すると、「ライオン」は登録商標「テイオン」にも類似しているので、登録商標「テイオン」の禁止権を侵すことになる。

一方、登録商標「テイオン」に「ライオン」が類似するからといって、「テイオン」の権
利者が「ライオン」を使用しますと、「ライオン」は登録商標「獅子」にも類似しているので、登録商標「獅子」の禁止権を侵すことになる。

したがって、登録商標「獅子」の権利者も登録商標「テイオン」の権利者も、ともに自己の登録商標と類似する商標である「ライオン」を使用することができない。これを禁止権の蹴りあいといいますぞ。なお、昨日も触れたように「使用権」は商標を使用する権利で、「禁止権」は他人の使用を排除する権利ということをお忘れなく。

ついでに、例えば商品「味噌」の商標権を持っている権利者は、味噌にしか商標を使用できないが味噌は調味料に包含されるので「調味料」の範疇に他人を寄せ付けない。これを禁止権という。ちょっと説明が下手ですみません。要するに商標でも結構奥深いと理解してくださいな。


商標の禁止権の蹴りあい!

2015-07-22 17:59:55 | 日記

商標権は専用権と禁止権に大別されます。ここで「専用」とは、商標を専用して使用できる権利です。「禁止」とは、他人による登録商標およびその類似範囲にある商標の使用を排除できる権利です。

ここで注意すべきは、登録商標そのものの使用は安全が保証されていますが、登録商標に類似する商標については使用の安全が保証されているわけではないということです。つまり、登録商標に類似する商標については、使用すると差し支えのある場合が存在します。

この差し支えのある場合とは、自己の登録商標に類似する商標が他人の登録商標にも類似している場合、つまり、2つの登録商標の禁止権が重なっている場合です。これを禁止権の「蹴り合い」といいます。まるで格闘技のようなケースです(類似する登録商標が2つある場合)です。こうした場合には互いに仲良くしたいものです。具体的な事例は別の機会に譲りますね。あ、忘れました。2つの類似商標はいずれも更新できます安心してください。