「日本語の二人称」は面白い。外国人が日本語を一から勉強するのは大変だろうなぁ~といつも思う。でも、「二人称」が多いというのは便利だ。
二人称(ににんしょう)とは、人称の一つで、話を聞いている相手のことを指す。対称。
日本語の二人称
一人称と同様、日本語では、相手と自分の立場によって使い分けがある。
日本語の共通語(標準語)では一般的な二人称代名詞というものは存在しない。方言には「あんた」「おめえ」などを一般的二人称代名詞として使うものもあるが、これは例外的であり、敬意の対象となる相手は、代名詞で呼ばないのが普通である。
最も古い二人称単数代名詞としては「な」が日本書紀などに見えるが、これさえも一人称から転用されたものとされる(のちに専ら二人称として「なれ」「なむち(なんじ、汝)」の形で使われる)。
また日本語では、二人称代名詞に込められた敬意が歴史的に低下する傾向がある。「あなた」はもともと「貴方」であり、「おまえ」は「御前」で、古くは「貴方様」「御前様」の形で敬意を込めて使われたものである。
よく用いられるものでは以下のようなものがある。
普通
貴方(あなた)
相手の名前にさん付けするか、「あなた」と呼ぶのが日本語では最も無難な二人称である。ただし、両親や尊属、先生に対して使うのは失礼とされる。なお、地方によっては両親に対して方言で「あなた」に相当する語を使うことがある。
君(きみ)
主に男性が同等または目下の相手に使う。女性も使う場合もある。但し、女性から恋人や夫に対してはまず使わないとされてきたが、最近ではたがいに「君」と呼び合うカップルもいる。
そちら
「そちら様」というように、「様」をつけて改まった場で使われることもある。
お宅
他人に対して用いるが、相手が人ではない場合(組織等)であっても使われる。「オタク」の語源でもある。
~さん
相手の名前(姓・名とも)に付ける。軽い敬意をこめることができ、日本語でもっともふつうな二人称といえる。相手に「様」をつけるのは、書面や、サービス業で客に対して使われることが多い。
~ちゃん
相手の名前に付ける。親しみをこめた二人称で、年下の女性(例:友人の妹など)に対して使われることが多い。愛称的に使われることも多いため、あまり面識のない相手や目上に対して相手の名前に直接「ちゃん」を付けて使うのは失礼だが、年上の相手に対し親しみをこめて親族呼称で使うこともある。個人名に付けることが多いが、姓につけることもある。ちなみにテレビ業界では歳上年下先輩後輩に関係なく使われる業界用語である。
相手の職務上の立場
「店長」「課長」など、職場で上司・同僚を呼ぶときに使われる。客や組織外の人が業務担当者に使う時は、「さん」をつけて呼ぶことが多い。「店長さん」「駅員さん」「お巡りさん」など。「マスター」はそれ自体が敬称とみなされ、「さん」なしで使われる。
~氏
相手の名前(姓・名とも)に付ける。ふつうは三人称に使われる語であり、あまり一般的ではない。かつてトキワ荘では漫画家たちの間でたがいに「〜氏」と呼び合う習慣があったが、始まりはシャイな性格の藤子不二雄Aが「~君」「~さん」を使うのが苦手で「~氏」を使っていたこと。藤子Aは今でも二人称に「~氏」を使う。最近はオタクなどがこの表現を用いることも多く、あまり好まれない。
敬意(目上に対して)
血縁関係
お父さん(パパ)・お母さん(ママ)・お爺ちゃん・お婆ちゃん・おじさん・おばさん・等
お兄さん・お姉さん・おじさん・おばさん・おじいさん・おばあさん
本来血縁関係を対象とする言葉だが、ほかの呼称が当てはまらない相手に対しても用いる
陛下・殿下・閣下・猊下
先生
生徒が教師に対して使うほか、教師がたがいに呼び合うときにも使われる。教師のほか、医師、教授、議員など社会的立場の高い知的職業の人や、小説家・漫画家・画家といった著作業には、直接師事していない人も相手に対して敬意を込めて使うことがある。
先輩
部活動や学校のクラブ活動、学校内において下級生が上級生を呼ぶときに使われる。
~様
サービス業で相手の名前に付けて使ったり、手紙の宛名に使われる。宛名の場合は、目上・目下に関係なく使用される。
お客様
客に対して使う二人称。
敬意を払う場合(同輩)
貴官
軍人・自衛官同士など
貴職
社会的に何らかの勤務・職務をしている個人
貴兄・貴姉
書面で使われる
敬意(目下に対して)
卿
主君が臣下を呼ぶ際に使用する呼び名
貴兄
貴君
親しい場合(目上の人に使うのは失礼とされる)
お前
男性が同輩に使ったり、男性や女性が目下の親族(息子、娘、孫、弟、妹など)に使う。元々は尊敬語(御前)。
あんた
「あなた」が訛ったもの。立場上目上でない年長者に親しみをこめて使うこともある。
お前さん
使われ方は「お前」とは異なり、「あんた」に近い。「おまいさん」とも。
じぶん(自分)
関西圏で使われることがたまにある。「てめぇ」が一人称から二人称に転じたような用法か。「ワレ」も同様。
相手の苗字
「さん」「様」をつけず呼び捨てにするのは、目上には失礼とされる。かつてはもっぱら男性が使ったが、今では女性も互いに相手の苗字を呼び合うことがある。
相手の名前
敬称をつけず名前を呼び捨てにするのは、男女世代をとわずよく使われる。
~君
相手の苗字・名前につけるだけではなく、親しみをこめたあだ名の一部として使われたりする。本来は男女を問わず、同輩や目下に対して使われていたが、学校では女性に対しては「~さん」を使うこととされることが多く、女性に対してはあまり使われなくなりつつある。なお女性が男性に対して使用することは比較的多い。
わい
九州などで使用。「お前」の訛りだと思われる。これが使われる地域では一人称としての「わい」が使われず、一人称は主に「おい」などが使用される。
な、なー
津軽方言で使用される二人称。男女の区別なく同等、目下の者に用いられる。
古語の「な」または「汝」の短縮形と思われる。
敵対的
てめぇ
「手前」が訛ったもの。本来は一人称である。
貴様
本来は尊敬語。旧日本海軍では親しい同級士官に対してよく用いられた。
我(われ)・わ
北日本、西日本など。
古風・高貴
汝(なんじ)
英語のthouなどは「汝」と訳される場合が多い。
創作の世界で、神など人智を超えた存在が使うことが多い。
そち、そなた、その方(ほう)
上の地位にある人物が下の地位の人物に対して用いる。
貴君(同輩)
貴殿(目上、改まった場合)
貴公(目下)
主(ぬし)
通常「お」をつけるが、「主」だけでも成り立つ。
うぬ
補足
日本語では漢字を使うことで対象の区別をすることができる。
例)
相手が男性の場合→貴方(貴男)
相手が女性の場合→貴女
日本語以外の二人称
日本語では相手との上下関係、親しさの度合いにより二人称が使い分けられるが、英語の場合はそういった使い分けはない(後述) 日本語以外にも二人称の使い分けをする言語は多数存在する。
ドイツ語では、一般的な"Sie"(敬称)と、特に親しい時(親称)の"du"の区別があり、スペイン語にも一般的な"Ud.(Vd.)"(敬称)と、特に親しい時(親称)の"tu"がある。フランス語その他のヨーロッパ系の言語でも同じような使い分けがある。英語は、過去に二人称単数の"thou"があったが、現在は聖書など一部に残るのみで、単複いずれも"you"となる。ドイツ語、スペイン語、イタリア語では敬称の動詞の活用が三人称の形になる。インド・ヨーロッパ語族では古くから1人に対する敬称として二人称複数形が用いられ、現在このような言語はヨーロッパや西アジアに分布している。世界の言語では、日本語のように代名詞ではなく相手の名前や一般名詞による呼称を二人称として用いる事ができる言語と、それができない言語がある。前者は韓国語やインドネシア語など。後者は英語やフランス語など欧米に多い(動詞の活用が人称変化するため)。ヨーロッパの中でもスウェーデン語では、かつては目上の人には二人称代名詞の使用を避け、「先生」「課長」「~さん」などを用いていた。
日本語の「二人称」は相手との関係性を表している事がよく分かる。
二人称(ににんしょう)とは、人称の一つで、話を聞いている相手のことを指す。対称。
日本語の二人称
一人称と同様、日本語では、相手と自分の立場によって使い分けがある。
日本語の共通語(標準語)では一般的な二人称代名詞というものは存在しない。方言には「あんた」「おめえ」などを一般的二人称代名詞として使うものもあるが、これは例外的であり、敬意の対象となる相手は、代名詞で呼ばないのが普通である。
最も古い二人称単数代名詞としては「な」が日本書紀などに見えるが、これさえも一人称から転用されたものとされる(のちに専ら二人称として「なれ」「なむち(なんじ、汝)」の形で使われる)。
また日本語では、二人称代名詞に込められた敬意が歴史的に低下する傾向がある。「あなた」はもともと「貴方」であり、「おまえ」は「御前」で、古くは「貴方様」「御前様」の形で敬意を込めて使われたものである。
よく用いられるものでは以下のようなものがある。
普通
貴方(あなた)
相手の名前にさん付けするか、「あなた」と呼ぶのが日本語では最も無難な二人称である。ただし、両親や尊属、先生に対して使うのは失礼とされる。なお、地方によっては両親に対して方言で「あなた」に相当する語を使うことがある。
君(きみ)
主に男性が同等または目下の相手に使う。女性も使う場合もある。但し、女性から恋人や夫に対してはまず使わないとされてきたが、最近ではたがいに「君」と呼び合うカップルもいる。
そちら
「そちら様」というように、「様」をつけて改まった場で使われることもある。
お宅
他人に対して用いるが、相手が人ではない場合(組織等)であっても使われる。「オタク」の語源でもある。
~さん
相手の名前(姓・名とも)に付ける。軽い敬意をこめることができ、日本語でもっともふつうな二人称といえる。相手に「様」をつけるのは、書面や、サービス業で客に対して使われることが多い。
~ちゃん
相手の名前に付ける。親しみをこめた二人称で、年下の女性(例:友人の妹など)に対して使われることが多い。愛称的に使われることも多いため、あまり面識のない相手や目上に対して相手の名前に直接「ちゃん」を付けて使うのは失礼だが、年上の相手に対し親しみをこめて親族呼称で使うこともある。個人名に付けることが多いが、姓につけることもある。ちなみにテレビ業界では歳上年下先輩後輩に関係なく使われる業界用語である。
相手の職務上の立場
「店長」「課長」など、職場で上司・同僚を呼ぶときに使われる。客や組織外の人が業務担当者に使う時は、「さん」をつけて呼ぶことが多い。「店長さん」「駅員さん」「お巡りさん」など。「マスター」はそれ自体が敬称とみなされ、「さん」なしで使われる。
~氏
相手の名前(姓・名とも)に付ける。ふつうは三人称に使われる語であり、あまり一般的ではない。かつてトキワ荘では漫画家たちの間でたがいに「〜氏」と呼び合う習慣があったが、始まりはシャイな性格の藤子不二雄Aが「~君」「~さん」を使うのが苦手で「~氏」を使っていたこと。藤子Aは今でも二人称に「~氏」を使う。最近はオタクなどがこの表現を用いることも多く、あまり好まれない。
敬意(目上に対して)
血縁関係
お父さん(パパ)・お母さん(ママ)・お爺ちゃん・お婆ちゃん・おじさん・おばさん・等
お兄さん・お姉さん・おじさん・おばさん・おじいさん・おばあさん
本来血縁関係を対象とする言葉だが、ほかの呼称が当てはまらない相手に対しても用いる
陛下・殿下・閣下・猊下
先生
生徒が教師に対して使うほか、教師がたがいに呼び合うときにも使われる。教師のほか、医師、教授、議員など社会的立場の高い知的職業の人や、小説家・漫画家・画家といった著作業には、直接師事していない人も相手に対して敬意を込めて使うことがある。
先輩
部活動や学校のクラブ活動、学校内において下級生が上級生を呼ぶときに使われる。
~様
サービス業で相手の名前に付けて使ったり、手紙の宛名に使われる。宛名の場合は、目上・目下に関係なく使用される。
お客様
客に対して使う二人称。
敬意を払う場合(同輩)
貴官
軍人・自衛官同士など
貴職
社会的に何らかの勤務・職務をしている個人
貴兄・貴姉
書面で使われる
敬意(目下に対して)
卿
主君が臣下を呼ぶ際に使用する呼び名
貴兄
貴君
親しい場合(目上の人に使うのは失礼とされる)
お前
男性が同輩に使ったり、男性や女性が目下の親族(息子、娘、孫、弟、妹など)に使う。元々は尊敬語(御前)。
あんた
「あなた」が訛ったもの。立場上目上でない年長者に親しみをこめて使うこともある。
お前さん
使われ方は「お前」とは異なり、「あんた」に近い。「おまいさん」とも。
じぶん(自分)
関西圏で使われることがたまにある。「てめぇ」が一人称から二人称に転じたような用法か。「ワレ」も同様。
相手の苗字
「さん」「様」をつけず呼び捨てにするのは、目上には失礼とされる。かつてはもっぱら男性が使ったが、今では女性も互いに相手の苗字を呼び合うことがある。
相手の名前
敬称をつけず名前を呼び捨てにするのは、男女世代をとわずよく使われる。
~君
相手の苗字・名前につけるだけではなく、親しみをこめたあだ名の一部として使われたりする。本来は男女を問わず、同輩や目下に対して使われていたが、学校では女性に対しては「~さん」を使うこととされることが多く、女性に対してはあまり使われなくなりつつある。なお女性が男性に対して使用することは比較的多い。
わい
九州などで使用。「お前」の訛りだと思われる。これが使われる地域では一人称としての「わい」が使われず、一人称は主に「おい」などが使用される。
な、なー
津軽方言で使用される二人称。男女の区別なく同等、目下の者に用いられる。
古語の「な」または「汝」の短縮形と思われる。
敵対的
てめぇ
「手前」が訛ったもの。本来は一人称である。
貴様
本来は尊敬語。旧日本海軍では親しい同級士官に対してよく用いられた。
我(われ)・わ
北日本、西日本など。
古風・高貴
汝(なんじ)
英語のthouなどは「汝」と訳される場合が多い。
創作の世界で、神など人智を超えた存在が使うことが多い。
そち、そなた、その方(ほう)
上の地位にある人物が下の地位の人物に対して用いる。
貴君(同輩)
貴殿(目上、改まった場合)
貴公(目下)
主(ぬし)
通常「お」をつけるが、「主」だけでも成り立つ。
うぬ
補足
日本語では漢字を使うことで対象の区別をすることができる。
例)
相手が男性の場合→貴方(貴男)
相手が女性の場合→貴女
日本語以外の二人称
日本語では相手との上下関係、親しさの度合いにより二人称が使い分けられるが、英語の場合はそういった使い分けはない(後述) 日本語以外にも二人称の使い分けをする言語は多数存在する。
ドイツ語では、一般的な"Sie"(敬称)と、特に親しい時(親称)の"du"の区別があり、スペイン語にも一般的な"Ud.(Vd.)"(敬称)と、特に親しい時(親称)の"tu"がある。フランス語その他のヨーロッパ系の言語でも同じような使い分けがある。英語は、過去に二人称単数の"thou"があったが、現在は聖書など一部に残るのみで、単複いずれも"you"となる。ドイツ語、スペイン語、イタリア語では敬称の動詞の活用が三人称の形になる。インド・ヨーロッパ語族では古くから1人に対する敬称として二人称複数形が用いられ、現在このような言語はヨーロッパや西アジアに分布している。世界の言語では、日本語のように代名詞ではなく相手の名前や一般名詞による呼称を二人称として用いる事ができる言語と、それができない言語がある。前者は韓国語やインドネシア語など。後者は英語やフランス語など欧米に多い(動詞の活用が人称変化するため)。ヨーロッパの中でもスウェーデン語では、かつては目上の人には二人称代名詞の使用を避け、「先生」「課長」「~さん」などを用いていた。
日本語の「二人称」は相手との関係性を表している事がよく分かる。
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