思考の踏み込み

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王貞治4

2014-01-23 08:50:24 | 
そもそも荒川博が巨人軍の打撃コーチとなったのも、かつて榎本喜八という天才打者を荒川が指導した、というその一点をもって川上哲治に招かれたそうだ。

榎本喜八。

伝説の天才打者である。
彼はメジャーリーグにはけしていないタイプの日本球界の誇るべき選手であろう。いや、個性のない選手ばかりになった現代NPBにも今や棲息できないタイプの選手である。

それは野村克也をして背筋を寒からしめた、というほどの打者である。



榎本について語りだすと主題がそれるのでやめるるが、いずれ「前田智徳」という主題で別に投稿してみたい。

要するに荒川という人は天才たちを見つけること、育てることの上手いコーチであって、指導するレベルが高過ぎて、平均的な選手を育てることには不向きだったのではないか?

その意味で、高校野球の監督が荒川批判を酒の席で冗談半分に言うことは全く見当違いともいえないが、これはそれだけ人を育てるということが難しいということの証でもある。

その荒川と同じ轍を王も巨人軍監督時代に踏んでしまう。
選手に要求するものが高く、そして厳し過ぎた。

王貞治はしかし、ホークススに移ってからは見事にこの点を修正し、監督としても優秀な成績をあげ、WBC初代優勝監督という栄光を手にした。

その類稀な努力と持ち合わせた運の強さ。王貞治が世界で尊敬されているのも当然であろう。


王貞治3

2014-01-23 08:07:30 | 
王の集中力の凄まじさを伝える話はまだある。

巨人軍の宿舎の一室であるとき王が素振りをしていた。
ある選手がその部屋に入ろうとしたが
王の気迫があまりに恐ろしくとても近づけなかった、というものだ。

たかだか素振りにおいてすでにこの気迫。やはり王は普通人ではない。



その王を育てたとして知られるのが荒川博。

知人の高校野球監督経験者がある時、酒の席で言っていた話をふと思い出す。

「一本足打法は王だからできた。
というより、一本足打法なんかやらなかったら王はもっと本塁打を打っていた。一本足はそれほど不合理な打ち方で事実その後、荒川の指導で大成した選手はいない。」

ー これは面白い意見だが、半分は当たっているかもしれない。

一本足が単純に理にかなった打撃フォームかどうか、野球経験者ならわかることである。
もっと打ちやすい形はいくらでもある。ではなぜ一本足なのか。

それはこの形はバットを振り、ボールを打つということが主眼のフォームではないことにある。

この形は明らかに集中力を高める "型"
である。やってみればわかる。
あえてバランスの悪い片足で立つことで重心が下に安定していなければその体勢が保てない。
そして王が完成させた型は見事に骨盤が引き締まる姿をしている。

骨盤の開閉は人間の集中力を生み出す本である。しかしこれは身体技術としては高度な範疇のものであるが、王の体には合っていたのだろう。

一本足打法の本質と王の真髄の関係性はここにこそある。