今年もトマトを育てる季節となり、ホームセンターなどでは、既に多くのトマト苗が売り出されて並んでいます。新プランター野菜栽培でも露地栽培ができる丈夫なトマト品種を求めて、今年は初めてアメリカの人気トマト、「ブランデーワイン」の種子を3月の始めに播種しました。切込みの無いジャガイモ葉のような変わった本葉が出始めています。
―ジャガイモ葉のブランデーワイントマトー
扨て、アメリカで今、注目され、話題となっているエアルームトマトと言えば、アメリアの種子保存交換団体、「シードセイバーズエックスチェンジ」(SSE)の品評会のトマト試食コンテストで、2011年には1位となり、2012年では2位になったトマト品種の「デスタートマト」です。
どんな特徴のエアールームトマトなのか、大変興味が湧きます。実は、その謂れがネット上に出ていましたので、一寸紹介させて頂きます。
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Seed Savers Exchange ーサイトイラストより
この「デスタートマト」、1個が400gから600gにもなるピンクのビーフステーキトマトであり、スライスにすると、芳醇で甘い香りが抜群と言います。
そして、その種子の謂れは、或るアーミッシュの女性から種子保存交換団体、シードセイバーズエックスチェンジ(SSE)の会員の方に渡って、コレクションリストに登場したと言い、其の出所はと言えば、1970年代にインデイアナ洲に住むお医者さんのデスター夫妻のもとで、「お手伝いさん」をしていたその女性が、ドイツから手に入れたと言うご夫妻の自慢のトマト品種、いわゆる「デスタートマト」を、ドクターのデスターさんから特別に分けて頂き、其のアーミッシュ女性が家族と共に宝物のようにして何十年も大切に守って来たトマトと言います。
―SSEの試食コンテストで、1位、2位となったデスタートマトー
全米のトマト栽培愛好家向けに、このトマト種子がネット上で売り出されていますが、試験栽培用と言う30粒入りワンパックが、なんと僅かのU$2.25です。
このアーミッシュ女性が家族で守ってきた貴重な固定種トマト、SSEを通じてトマト愛好家の手に渡ったのですが、何十種にも及ぶトマト品種の中での試食会コンテストで、1位、2位となれば、日本ならこんな価額ではとても出ては来ません。
―近代文明に背いて暮らすアーミッシュの人達―WebPhotoesより
当然、品薄で種子の入手は難しいでしょうが、アメリカのトマト愛好家の多くの人に、其の種子を分かち合うNPO団体、シードセイバーズエックスチェンジ(SSE)の趣旨に拍手を送りたいと思いです。
何とも羨ましいく話ですが、其の種子の通販サイトには、こんな風に書かれて居ました。
―ビーフステーキトマト、デスターWebPhotoesよりー
“デスタートマト、所謂デスターのアーミッシュビーフステーキトマト、SSEのトマト試食会で2011年に1位、2012年に2位を獲得した事は、これは素晴らしい味のトマトと思った多くの人達が居たからです。”
“その源となるトマト種子を、会員のLarry Pierce氏に提供したアーミッシュ女性は、「この種は何代にもわたって家族の中に有りましたが、どうぞ皆さんに‥‥」と彼に告げ、そのLarryさん、その種を育てSSEに提供すると共に、自らのウェブサイトでも販売しています。”
―SSE栽培農園内の施設―SSEサイトより
それでは、ご存知の方も多いとは思いますが、将来のF1種子の氾濫と遺伝子組み替え作物に依る遺伝子資産の乱用時代の到来を見越していたかのような、アメリカのNPOの種子保全交換団体、「シードセイバーズエックスチェンジ(SSE)」の設立の動機と目的の概要をネット上から覗いて見ましたので一寸紹介させて頂きます。
―SSE設立者の一人、Diane Ott Whealy女史―
1975に設立されたSSEのサイトの冒頭には、「私達の使命は、危険にさらされているアメリカの文化的に多様な食糧作物遺産である先祖伝来の種子や植物を、将来の世代のために収集し、育て、共有する事によって、それらの保存の促進を図る事にあります」と書かれています。
そして、この団体の設立の原点は、今わの際の祖父が、二人の孫の姉弟に後生までも伝えて欲しいと渡した先祖伝来の「朝顔」と「ドイツトマト」の種がその始まりと言います。
遠く祖国のドイツ、ババリア地方から1870年代に、新大陸のアメリカ、アイオア洲のセントルーカスに移り住んだ曾祖父のOtt Whealy氏が大切に守って伝えてきた種子であり、それが、{オットーお爺さんの朝顔}と「ドイツピンクトマト」で有ったとあります。
―SEEの通販サイトのロゴー
その活動については、「SSEは、会員による参加型の種子保全を奨励し、安全な種子の誓約書に署名することによって、大きな農業代替モデルを提供するものであり、私たちの住む惑星の未来は遺伝的に多様な食糧供給に依存しており、私たちの重要な作業を遂行するには以下に依ると承知しています」とあります。
- 北米のいずれでも、この種では最大規模の種子バンクでのスイカからアマランサスに至るまで、何千もの異なる種類の植物品種の維持。
- 隔離農場での種子再生産と理想的な条件での種子格納。
- 貴重な品種とそれらの歴史に関する文化情報の文書化。
- シードセイバーズエックスチェンジ年鑑、及びシードセイバーズエックスチェンジカタログを通じての会員、及び一般購入者向けのエアルーム品種の情報配布。
- コロラド州のフォートコリンズの農務省の種子銀行、及びノルウェーのスバールバルにある世界種子貯蔵施設でのバックアップ時用の種子保存。これらのオフサイト貯蔵種子はSSEに帰属。
―SEE発祥のジャーマンピンクトマト、ーSEEカタロクより
このSSEのユニークな活動を支えているのは、賛同する団体会員による安全な種子提供を約束する誓約書に署名しての全員参加型の種子保全交換の非営利事業で有る事です。
F1種子のような遺伝子資源の権利独占とは対称的に、人類共有の遺伝子資産である固定種植物やその種子を、皆で共有する事で次の世代に受け渡して行くと言う、賛同と協力の「きずな」で支える非営利精神でしか為し得ない事業です。
―SEE発祥のGrandpa Ott'sの朝顔ーSEEカタロクより
営利事業なら、法に触れない限りどんな事でもと、遺伝子組み換え作物種子で、既存種子を放追するような事で物議を醸した同じアメリカの事ですから当然であり、驚くには当たりません。
日本で今、TPO参加を巡って農業分野の将来を懸念する声があがっていますが、TPO参加によって農産物関税障壁の撤廃、農業制度の変更や規制緩和等、もし、そんな不安や憶測であるならば、現状維持が好ましいと思う、一部の利害関係者の目線からの私情でしかないと申せます。
―TPPを巡ってメキシコ大統領と握手する阿部総理―
グローバル化の進む国際社会の中で、「高き所より低きに流れ落ちる水」に逆らっても、事は止められると言うならば、たやすい事ですが、農業者の食糧供給責任の自覚を以って消費者ともども日本全体の将来の真の方向をしっかり考えるべきです。
―耕作放棄地―再生整備農業法人サイトより
農業の大切さのハッキリした理念を以って日本農業のあるべき姿と進むべき方向を掲げ、何を守るのか、食の安全なのか、農業生態系なのか、農業諸制度なのか、食の原点となる種子遺伝子資源なのか、そのカテゴリー毎に意義と大切さをしっかり検討して異議あれば対案を示すべきであり、本音は、「国情の違い、農業コスト競争で負ける」では、議論に弱い駄目な日本人の典型!情けない話です。もし、「農業の衰退は国土荒廃の始り」と耕作放棄地を指して言うならば、これぞ日本人特有の短絡思考です。―偉そうに御託を並べて申し訳ありません。気に障ったなら、用済み老人のたわごととお許しあれ!―
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